7月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
令和元年9月12日
【概要】
(内政)
●国防大臣及び文化大臣が交代した。
●米国滞在中のトレド元大統領が汚職の嫌疑でのペルー政府からの引渡請求に基づいて米当局に拘束された。
●政府の政治改革6法案の審議が全て終了し,国会よる修正案が可決成立した。
●国会執行部選挙(2019年7月~2020年7月)で野党のオラエチェア議員が新国会議長に選出された。
●ビスカラ大統領が独立記念日の大統領教書演説において大統領・国会議員の任期短縮と総選挙の前倒しのための憲法改正を提案した。
●南部アレキパ州でティア・マリア鉱山開発計画に反対する抗議活動が発生した。
(外交)
特になし。
【本文】
1 内政
(1)国防大臣及び文化大臣の交代
8日,大統領府において新しい国防大臣及び文化大臣の任命・宣誓式が行われた。国防大臣については,ウエルタ大臣の急死(6月24日)に伴い国防大臣職が空席となったことを受けてのもの。また文化大臣については,報道によればオルムキスト大臣の健康上の理由によるもの。
ア 新国防大臣:ホルヘ・モスコソ・フローレス(Jorge MOSCOSO Flores)
職業軍人。退役海軍中将。元陸・海・空三軍統合司令官。41年の軍歴を有し,海上保安庁長官,アマゾン地域作戦部総司令官等を歴任。
イ 新文化大臣:ルイス・ハイメ・カスティーヨ(Luis Jaime CASTILLO)
考古学者(博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校))。カトリカ大学人文学部教授。元文化省文化遺産・文化産業担当副大臣(ウマラ政権)。ハーバード大,スタンフォード大,メキシコ国立自治大等で客員教授を務めた。
(2)トレド元大統領の米国における拘束
16日,ペルー検察庁は,汚職疑惑を理由としたペルー政府の引渡請求に基づいて米国当局がトレド元大統領を拘束したと発表した。トレド元大統領に対しては,太洋間横断道路(Carretera Interoceanica)建設事業においてブラジルの建設会社オデブレヒト社から賄賂を受け取った疑惑がかけられており,2017年2月にはペルー司法府が汚職及び資金洗浄の疑いで同元大統領の18か月勾留を命じていた。セバーヨス法務人権大臣は,トレド元大統領のペルーへの引渡実施時期の見通しについて,引渡プロセスは今後1~2年かかる可能性があるとの見方を示した。
(3)政治改革法案の可決成立
25日,再度のデル・ソラール内閣信任後に通常国会会期を延長して集中審議が行われてきた政府の政治改革6法案の審議が全て終了し,国会憲法委員会(バルトラ委員長(人民勢力党))による修正案が可決成立した。6法案のうち,国会議員の不逮捕・不起訴特権の剥奪権を国会から最高裁に移すとする法案が注目されていたが,最終的に特権剥奪のために多くの条件を設けるなど修正が行われた上で国会を通過した。
(4)新国会議長の選出
27日,国会執行部選挙(2019年7月~2020年7月)が行われ,主として最大野党フジモリ派が支持するペドロ・オラエチェア(Pedro OLAECHEA)議員(野党「共和国行動(AR)」所属)が新国会議長に選出された。オラエチェア新議長は就任演説で,国権の間での対話と協働が不可欠であると述べつつ,経済成長等の重要課題に立ち向かうことの必要性を訴えた。
(5)ビスカラ大統領による総選挙前倒し実施の提案
28日,ビスカラ大統領は,独立記念日に際し,国会での大統領教書演説において,政権発足から今日までの成果及び同政権の5本の柱((1)汚職との戦い,(2)統治のための制度強化,(3)公正かつ競争力のある持続可能な経済成長,(4)社会開発及び国民福祉,(5)地方分権化)に基づく今後の行動計画を発表した。
またビスカラ大統領は演説において,国会が政府の提出した政治改革法案の本質的内容を歪めるなどして汚職との闘いを妨害し,無処罰(impunidad)を推進しているとして強く非難した。その上でビスカラ大統領は,民主主義制度の危機を脱出するためとして,大統領自身及び現国会議員の任期を短縮して2020年7月28日までとし,総選挙を前倒しで実施するための憲法改正案を提出した。ビスカラ大統領が総選挙前倒しを提案した際,国会議場は大きくざわつき,拍手やブーイング等様々な反応が示された。
(6)社会紛争の動向
15日,南部アレキパ州ティア・マリア鉱山(サザン・カッパー社(メキシコ資本))の所在地である同州イスライ郡タンボ渓谷の住民が鉱山開発反対を訴えて抗議活動を開始した。9日にエネルギー鉱山省がサザン・カッパー社に対しティア・マリア鉱山の開発許可を付与する旨決定したことを受けてのもの。24日にはビスカラ大統領がアレキパに入り,開発許可の取消を要求するカセレス州知事,地元イスライ郡の各自治体の長等と会談した。会談後ビスカラ大統領は,アレキパ州政府側からエネルギー鉱山省に提出された開発許可の見直し請求を政府が検討する間,抗議活動を止めるよう求めたと述べた。しかしビスカラ大統領のアレキパ訪問後も抗議活動は終息せず,住民と警察との衝突が続いた。
(7)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:5~8日実施,全国(対象1216名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:55%(58%) 不支持:40%(37%)
イ イプソス社:17~19日実施,全国(対象1221名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:44%(50%) 不支持:45%(41%)
ウ IEP:13~17日実施,全国(対象1230名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:40%(47%) 不支持:50%(45%)
2 外交
特になし。