8月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
【概要】
(内政)
●ケイコ・フジモリ人民勢力党党首の勾留取消請求につき,最高裁での票決のやり直しが決定した。
●2019-2020年会期国会委員長ポストが決定した。
●南部アレキパ州でティア・マリア鉱山開発反対運動が再度発生し,政府が同鉱山の開発許可の効力を一時停止とする措置を採った。
(外交)
●リマ・グループ拡大会合「ベネズエラにおける民主主義に関する国際会議」及び「グアイド暫定大統領支援会合」がリマで開催された。
●第5回ペルー・コロンビア合同閣議がペルーで開催された。
【本文】
1 内政
(1)ケイコ・フジモリ人民勢力党党首の勾留取消請求
9日,最高裁でケイコ・フジモリ人民勢力党党首の勾留無効化請求に係る票決が読み上げられ,無効化に賛成の判事が3,反対が2で結審に必要な4票に達しなかったことから,別の最高裁判事による票決を再度行うことが決定した。ただし,勾留無効化の場合であっても,勾留期間を36か月から18か月に短縮するとの条件が付いていることから,弁護側が求めるケイコ党首の即時釈放は実現しないとされる。
(2)2019-2020年会期国会委員長ポストの決定
15日,24の国会常任委員会で,2019-2020年会期の委員長ポストが決定した。委員長ポストは最大野党会派人民勢力党が10委員会を占め,以下ペルーの進歩のための同盟,拡大戦線,新しいペルー(それぞれ2委員会),カンビオ21,変革のためのペルー国民,人民行動,コンティーゴ,アプラ,リベラル会派,共和国行動,共和国のための団結(それぞれ1委員会)の配分となった。なお,外交委員長には,人民勢力党のトゥビーノ(Carlos TUBINO)議員(ウカヤリ州選出)が就任した。
(3)社会紛争の動向
ア 5日,アレキパ州労働連盟(FDTA)の呼びかけにより同州においてティア・マリア鉱山開発反対を訴える無期限ストライキ及び抗議活動が始まり,幹線道路の封鎖が行われたほか,アレキパ市街地でも騒動が起き公共交通機関や商店などへの襲撃が発生した。また学校が休校となり,37万人の生徒に影響したと報じられた。地元経済団体の試算によれば紛争により同州が被っている経済的損失は1日あたり2,500万ソーレス(約740万ドル)。また8日にはカセレス同州知事が政府に本件紛争解決の意思がないとしてビスカラ大統領を強く非難した。
イ 9日,エネルギー鉱山省鉱業審議会(Consejo Nacional de Mineria)がサザン・カッパー社に対して付与したティア・マリア鉱山開発許可の効力を例外的措置として一時停止(suspender)すると発表した。効力一時停止期間は120日間で,この期間に開発許可の妥当性が再検討される。
ウ 10~12日,7月にアレキパ州で行われたビスカラ大統領と州知事らとの会合の様子を記録した音声がリークされ,その中でビスカラ大統領が州知事らに対し開発許可の取消を内々約束するような発言をしているとして財界や野党勢力から強い批判の声が上がった。
エ その他,8月には南部モケグア州においてケジャベコ鉱山(アングロ・アメリカン社)に対する抗議活動が発生したほか,プーノ,タクナ,クスコ,アプリマック等の各州で紛争が発生した。
(4)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア イプソス社:1~2日実施,全国(対象1210名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:57%(44%) 不支持:34%(45%)
イ ダトゥム社:2~4 日実施,全国(対象1219名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:60%(55%) 不支持:35%(40%)
ウ イプソス社:14~15日実施,全国(対象1205名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:54%(57%) 不支持:38%(34%)
エ IEP:17~21日実施,全国(対象1224名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:47%(40%) 不支持:45%(50%)
2 外交
(1)リマ・グループ拡大会合「ベネズエラにおける民主主義に関する国際会議」の開催
6日,「ベネズエラにおける民主主義に関する国際会議」と題するリマ・グループ拡大会合がリマで開催され,計59か国及び3つの国際機関が出席した。また合わせて「グアイド暫定大統領支援会合」が開催され,計44か国が出席した。リマ・グループは7か国が閣僚級,米国はボルトン大統領補佐官及びロス商務長官が出席した。他方,ペルーが参加を呼びかけた中国,ロシア,キューバ及びトルコは出席しなかったほか,当初は参加を表明していたメキシコ及びウルグアイが最終的には欠席した。今次会合では,ボルトン補佐官が前日に米政府が発表した新たな対ベネズエラ制裁措置につき述べつつ,ロシアや中国に対しこれ以上マドゥーロ政権を支持しないよう警告したことが注目された。
(2)第5回ペルー・コロンビア合同閣議
27日,ペルー東部ウカヤリ州プカルパ市において第5回ペルー・コロンビア合同閣議が開催され,(1)社会問題,(2)ガバナンス,(3)環境問題,(4)鉱業・エネルギー,(5)通商,(6)経済・観光開発,(7)治安,(8)防衛(国境問題・移民)の8つを柱とするテーマが話し合われた。特にアマゾン地域の保護及び持続的利用に係る両国の取組の統合,ベネズエラにおける危機の解決等が強調され,会合の最後に上記内容を含む36の項目から成る「プカルパ宣言」が採択された。また8つの二国間文書に署名が行われた。