10月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。
令和元年12月2日
ペルー政治情勢 2019年
【概要】
(内政)
●1日,アラオス副大統領が副大統領職及び暫定大統領を辞すると発表した。
●4日,セバーヨス新内閣が発足した。
●30日,政府が統領府において所信表明演説を行った。
(外交)
●10日,ペルー・イカ州において第三回ペルー・チリ合同閣議が開催された。
●24日,ビスカラ大統領が大統領府においてモウラン・ブラジル副大統領と会談した。
●28日~29日,メサ=クアドラ外務大臣がEU/国連主催ベネズエラ難民・移民危機に関する国際会合に出席するためにブリュッセルを訪問した。
【本文】
1 内政
(1)ビスカラ大統領による国会解散・国会議員選挙招集決定後の動き
ア 1日,オラエチェア国会議長は,リマ市内のアラオス暫定大統領宅を私的に訪問し
会談。アラオス暫定大統領は,ビスカラ大統領の国会解散措置について当地テレビ局に対し,「憲法裁判所が合憲性について判断すべきであり,自分はその判断を尊重する。」としつつ,「国会が最悪であることは事実だがそれが解散をする理由にはならない。ゲームのルールを変えることは経済に影響を与える。行政府と立法府はコンセンサス形成により出口を見出さなければならない」として,ビスカラ大統領に対話を呼びかけた。また,暫定大統領として組閣を行う考えはないと発言した。
イ 1日,拡大戦線(左派)はアラオス暫定大統領,オラエチェア国会議長,サラサー
ル議員(人民勢力党)の各議員に対し,国会解散という憲法規定に従わず国会の権能を不当にさん奪(usurpacion)したとしてこれら議員を検察庁に刑事告発した。
ウ 1日,国会は常設委員会会合を2日に招集すると発表した。
エ 1日,全国選挙裁判所(JNE)が,30日の国会解散及び国会議員選挙招集の決定を受け同日を有権者登録の締切日とし,全国身分登録事務所(RENIEC)に対し10月7日までに有権者リストを提出するよう要請した旨発表した。
オ 1日,米州機構(OAS)は,「ペルー国家機関が組織として下した決定に関し合法か
非合法か,また正統か否かの判断,及び憲法解釈に係る判断はペルー憲法裁判所が下すべきものと認識する。」との声明を発表した。
(2)アラオス副大統領の辞任
ア 1日,アラオス副大統領はオラエチェア国会議長宛書簡を発出し,ビスカラ大統領の国会解散宣言により憲法秩序が破壊されたことを理由に,2016年の公職選挙において選出され憲法によって自身に与えられた副大統領職を辞任すると発表した。また,ビスカラ大統領の国会解散措置の合憲性につきOASがペルー憲法裁判所の憲法判断を求めたことを受け,目下国会が自身に与えた暫定大統領としての職責を全うする条件が存在しないとして同暫定大統領職を辞すると発表した。
イ 2日,セバーヨス首相はテレビ番組に出演し,アラオス副大統領の辞表はビスカラ
大統領に対してではなくオラエチェア国会議長に提出されたものであり,また他方で国会が解散されていることから有効ではないとして同副大統領の辞任は認められないとの立場を示した。
ウ 2日,オラエチェア国会議長は人民勢力党他の国会議員とともに国会で記者会見を行い,改めてビスカラ大統領の国会解散措置は違憲であり国会は解散されていないとの認識を示した上で,「アラオス副大統領が辞任した今,ペルーは国の長がいない状態に陥っている。かかる危機を乗り越える唯一の方法は,我々全員が直ちに辞任し,大統領・国会議員総選挙を招集して国民に決定を委ねることである。」としてビスカラ大統領に辞任を呼びかけた。
エ 2日に開会した国会常設委員会において,アラオス副大統領の副大統領職及び暫定大統領の辞任について審議され,オラエチェア常設委員会委員長(※国会が解散されたことを受け,国会議長は国会休会時と同様に常設委員会委員長となる。)は,暫定大統領就任式は国会本会議で行われたことから,同暫定大統領職を辞する場合も国会本会議で承認されなければならないため,アラオス氏の辞意は「次の国会本会議」が決定する事項であるとの認識を示した。
(3)セバーヨス新内閣発足
4日,セバーヨス新首相の下に新内閣が発足し,デル・ソラール前内閣の閣僚7名が留
任し,12閣僚が交代した。外務大臣にはメサ=クアドラ国連大使,国防大臣には,マル
トス3軍統合参謀長(退役軍人。陸軍参謀長。),経済財政大臣には,アルバ経済財政省予算局長(アルバ国立工科大学(UNI)学長の娘。)が就任した。
(4)政府の所信表明演説
ア 30日,政府は大統領府において4日の新内閣発足に伴う所信表明演説を行い,今後の政府の政策について発表した。冒頭,ビスカラ大統領が演説を行い,オラエチェア国会常設委員会委員長が憲法裁判所に求めた国会解散に関する違憲審査要請について,29日,憲法裁判所が違憲審査を行う決定をしたことを歓迎すると発言するとともに,2020年1月26日の国会議員選挙を経て,新国会が発足するまで如何なる外遊も行わないことを決定したと述べた。
イ ビスカラ大統領の演説に続き,セバーヨス首相は,ビスカラ政権の5本の柱((1)汚職との闘い,(2)統治のための制度強化,(3)公正かつ競争力のある持続可能な経済成長,(4)社会開発及び国民福祉,(5)地方分権化)に基づき所信表明演説を行い,政府として,国民皆保険制度や最低賃金の引き上げに取り組む予定であると述べた。
2 外交
(1)第三回ペルー・チリ合同閣議
ア 10日,ペルー・イカ州パラカスにおいて第三回ペルー・チリ合同閣議が開催され,
ビスカラ大統領とピニェラ・チリ大統領及び両国の閣僚が出席した。今回の合同閣議において,両国の統合及び両国民の生活向上を促進するための160のイニシアチブを含む「パラカス宣言」が採択された。
イ ビスカラ大統領及びピニェラ・チリ大統領は,第三回ペルー・チリ合同閣議において,エクアドルにおいて生じている暴力行為に関し,モレノ・エクアドル大統領を支持することを確認した。
(2)ビスカラ大統領及びモウラン・ブラジル副大統領の会談
24日,ビスカラ大統領は,大統領府においてメサ=クアドラ外務大臣及びマルトス
国防大臣同席の下,ペルーを訪問したモウラン・ブラジル副大統領と会談した。会談では国境地域の住民の発展,安全・防衛分野における協力,汚職対策,経済統合にかかるアジェンダ及び通商促進等の共通の関心事項において二国間の関係を強化することへの断固とした意思が繰り返し表明されるとともに,共通の将来に向けた関係を強化・拡大するために,近々,国境地域において二国間の首脳会談を実現することの必要性について合意した。
(3)メサ=クアドラ外務大臣のブリュッセル訪問
28日~29日,メサ=クアドラ外務大臣は,EU/国連主催ベネズエラ難民・移民危機に関する国際会合に出席するためにブリュッセルを訪問し,右機会を利用して,ボレル次期EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表兼副委員長,グランディ国連難民高等弁務官(UNHCR),ビトリーノ国際移住機関(IOM)事務局長及びロペスEUラ米議会代表とそれぞれ会談した。
【概要】
(内政)
●1日,アラオス副大統領が副大統領職及び暫定大統領を辞すると発表した。
●4日,セバーヨス新内閣が発足した。
●30日,政府が統領府において所信表明演説を行った。
(外交)
●10日,ペルー・イカ州において第三回ペルー・チリ合同閣議が開催された。
●24日,ビスカラ大統領が大統領府においてモウラン・ブラジル副大統領と会談した。
●28日~29日,メサ=クアドラ外務大臣がEU/国連主催ベネズエラ難民・移民危機に関する国際会合に出席するためにブリュッセルを訪問した。
【本文】
1 内政
(1)ビスカラ大統領による国会解散・国会議員選挙招集決定後の動き
ア 1日,オラエチェア国会議長は,リマ市内のアラオス暫定大統領宅を私的に訪問し
会談。アラオス暫定大統領は,ビスカラ大統領の国会解散措置について当地テレビ局に対し,「憲法裁判所が合憲性について判断すべきであり,自分はその判断を尊重する。」としつつ,「国会が最悪であることは事実だがそれが解散をする理由にはならない。ゲームのルールを変えることは経済に影響を与える。行政府と立法府はコンセンサス形成により出口を見出さなければならない」として,ビスカラ大統領に対話を呼びかけた。また,暫定大統領として組閣を行う考えはないと発言した。
イ 1日,拡大戦線(左派)はアラオス暫定大統領,オラエチェア国会議長,サラサー
ル議員(人民勢力党)の各議員に対し,国会解散という憲法規定に従わず国会の権能を不当にさん奪(usurpacion)したとしてこれら議員を検察庁に刑事告発した。
ウ 1日,国会は常設委員会会合を2日に招集すると発表した。
エ 1日,全国選挙裁判所(JNE)が,30日の国会解散及び国会議員選挙招集の決定を受け同日を有権者登録の締切日とし,全国身分登録事務所(RENIEC)に対し10月7日までに有権者リストを提出するよう要請した旨発表した。
オ 1日,米州機構(OAS)は,「ペルー国家機関が組織として下した決定に関し合法か
非合法か,また正統か否かの判断,及び憲法解釈に係る判断はペルー憲法裁判所が下すべきものと認識する。」との声明を発表した。
(2)アラオス副大統領の辞任
ア 1日,アラオス副大統領はオラエチェア国会議長宛書簡を発出し,ビスカラ大統領の国会解散宣言により憲法秩序が破壊されたことを理由に,2016年の公職選挙において選出され憲法によって自身に与えられた副大統領職を辞任すると発表した。また,ビスカラ大統領の国会解散措置の合憲性につきOASがペルー憲法裁判所の憲法判断を求めたことを受け,目下国会が自身に与えた暫定大統領としての職責を全うする条件が存在しないとして同暫定大統領職を辞すると発表した。
イ 2日,セバーヨス首相はテレビ番組に出演し,アラオス副大統領の辞表はビスカラ
大統領に対してではなくオラエチェア国会議長に提出されたものであり,また他方で国会が解散されていることから有効ではないとして同副大統領の辞任は認められないとの立場を示した。
ウ 2日,オラエチェア国会議長は人民勢力党他の国会議員とともに国会で記者会見を行い,改めてビスカラ大統領の国会解散措置は違憲であり国会は解散されていないとの認識を示した上で,「アラオス副大統領が辞任した今,ペルーは国の長がいない状態に陥っている。かかる危機を乗り越える唯一の方法は,我々全員が直ちに辞任し,大統領・国会議員総選挙を招集して国民に決定を委ねることである。」としてビスカラ大統領に辞任を呼びかけた。
エ 2日に開会した国会常設委員会において,アラオス副大統領の副大統領職及び暫定大統領の辞任について審議され,オラエチェア常設委員会委員長(※国会が解散されたことを受け,国会議長は国会休会時と同様に常設委員会委員長となる。)は,暫定大統領就任式は国会本会議で行われたことから,同暫定大統領職を辞する場合も国会本会議で承認されなければならないため,アラオス氏の辞意は「次の国会本会議」が決定する事項であるとの認識を示した。
(3)セバーヨス新内閣発足
4日,セバーヨス新首相の下に新内閣が発足し,デル・ソラール前内閣の閣僚7名が留
任し,12閣僚が交代した。外務大臣にはメサ=クアドラ国連大使,国防大臣には,マル
トス3軍統合参謀長(退役軍人。陸軍参謀長。),経済財政大臣には,アルバ経済財政省予算局長(アルバ国立工科大学(UNI)学長の娘。)が就任した。
(4)政府の所信表明演説
ア 30日,政府は大統領府において4日の新内閣発足に伴う所信表明演説を行い,今後の政府の政策について発表した。冒頭,ビスカラ大統領が演説を行い,オラエチェア国会常設委員会委員長が憲法裁判所に求めた国会解散に関する違憲審査要請について,29日,憲法裁判所が違憲審査を行う決定をしたことを歓迎すると発言するとともに,2020年1月26日の国会議員選挙を経て,新国会が発足するまで如何なる外遊も行わないことを決定したと述べた。
イ ビスカラ大統領の演説に続き,セバーヨス首相は,ビスカラ政権の5本の柱((1)汚職との闘い,(2)統治のための制度強化,(3)公正かつ競争力のある持続可能な経済成長,(4)社会開発及び国民福祉,(5)地方分権化)に基づき所信表明演説を行い,政府として,国民皆保険制度や最低賃金の引き上げに取り組む予定であると述べた。
2 外交
(1)第三回ペルー・チリ合同閣議
ア 10日,ペルー・イカ州パラカスにおいて第三回ペルー・チリ合同閣議が開催され,
ビスカラ大統領とピニェラ・チリ大統領及び両国の閣僚が出席した。今回の合同閣議において,両国の統合及び両国民の生活向上を促進するための160のイニシアチブを含む「パラカス宣言」が採択された。
イ ビスカラ大統領及びピニェラ・チリ大統領は,第三回ペルー・チリ合同閣議において,エクアドルにおいて生じている暴力行為に関し,モレノ・エクアドル大統領を支持することを確認した。
(2)ビスカラ大統領及びモウラン・ブラジル副大統領の会談
24日,ビスカラ大統領は,大統領府においてメサ=クアドラ外務大臣及びマルトス
国防大臣同席の下,ペルーを訪問したモウラン・ブラジル副大統領と会談した。会談では国境地域の住民の発展,安全・防衛分野における協力,汚職対策,経済統合にかかるアジェンダ及び通商促進等の共通の関心事項において二国間の関係を強化することへの断固とした意思が繰り返し表明されるとともに,共通の将来に向けた関係を強化・拡大するために,近々,国境地域において二国間の首脳会談を実現することの必要性について合意した。
(3)メサ=クアドラ外務大臣のブリュッセル訪問
28日~29日,メサ=クアドラ外務大臣は,EU/国連主催ベネズエラ難民・移民危機に関する国際会合に出席するためにブリュッセルを訪問し,右機会を利用して,ボレル次期EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表兼副委員長,グランディ国連難民高等弁務官(UNHCR),ビトリーノ国際移住機関(IOM)事務局長及びロペスEUラ米議会代表とそれぞれ会談した。