ペルーの経済情勢(2019年第4四半期)

令和2年2月20日
1 総論
 最新のペルーの月例主要経済指標は,経済成長率1.86%(11月:前年同月比),リマ首都圏のインフレ率1.90%(12月までの一年間),対米ドル為替相場3.355ソル(12月平均値),リマ首都圏の完全失業率5.4%(12月),財政収支10,095百万ソルの赤字(12月),貿易収支669百万米ドルの黒字(11月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると,ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
 最新の経済成長率(GDP成長率)について,11月は主に金融・保険分野及び宿泊・飲食業の成長率の伸びが見られ,全体としてGDP成長率は1.86%(前年同月比)となった。
 

  

 

イ インフレ率
 12月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は,0.21%となり,最近12か月(昨年1月~12月)の上昇率は,1.90%となった。
 


   

ウ 為替相場
 12月の対米ドル為替相場の平均は3.355ソルであった。



  

エ 失業率
 12月のリマ首都圏の完全失業率は5.4%であった。
 


 

オ 財政収支
 12月の政府全体の財政収支は,歳入が対前年同月比で7.6%増となった。歳出は,対前年同月比で4.2%増となった。全体では,プライマリーバランスは,10,095百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると,10,449百万ソルの赤字となった。


カ 貿易収支
 11月の輸出額は,伝統産品(鉱物資源,魚粉,コーヒー等)が対前年同月比11.1%減,非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品,繊維製品,工業製品等)が7.6%増となり,全体では3,904百万米ドル(対前年同月比6.4%減)となった。主要輸出品目は銅,金,原油であった。
 輸入額は,対前年同月比で消費財が8.9%減,中間財は9.0%減,資本財が1.9%増となり,全体で3,235百万米ドル(対前年同月比5.7%減)となった。この結果,貿易収支は,669百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油,自動車,携帯電話であった。

 




キ 外貨準備高
 12月末の外貨準備高は,68,316百万米ドルとなった。 




 
ク 対外累積債務
 2019年9月末の対外債務累積総額は,81,999百万米ドルとなった。



 
 
注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。

 
(2) 最近の主な出来事
・世界経済フォーラム(WEF)2019年国際競争力ランキング(141か国),ペルーは65位(10月9日)
 昨年の63位から65位に後退,12項目のうち8項目が昨年を下回った。ラ米諸国22か国中ペルーは6位(ペルーより上位はチリ,メキシコ,ウルグアイ,コロンビア,コスタリカ)。項目別順位(1)制度(94)(2)インフラ(88)(3)情報通信(ICT)(98)(4)マクロ経済安定(1)(5)保健衛生(19)(6)教育(81)(7)生産市場(56)(8)労働市場(77)(9)金融システム(67)(10)市場規模(49)(11)ビジネスのダイナミズム(97)(12)技術革新(90)。1位シンガポール,2位米国,日本6位。
 
・フィナンシャル・タイムズ,ケジャベコ銅山開発(10月16日)
 アングロ・アメリカン社(本社:英国ロンドン)が主導し,三菱商事も資本参加しているケジャベコ銅山開発(モケグア州)が本格化。総開発投資50億米ドル,推定銅埋蔵量は13億トン,100年間操業可能,開発事業雇用9,000件,操業事業雇用2,500件、年間33万トン産出。2022年操業開始予定で,開始4年後にペイバック投資回収が開始される。フィナンシャル・タイムズに対してペルー本社代表が期待感を表明。
 
・世銀-アンデス開発公社(CAF),ラ米諸国汚職対策抜本的改革が必須(11月7日)
 ペルーを含むラ米諸国は汚職対策の統合的な改革が必要。具体策として(1)非政府系団体(NGO),専門家やアカデミックな分野から政治とは無縁の人物がリーダーシップを採る(2)政治構造の変化にも対応できる制度機関を確立する(3)市民参加と協力できる体制を確立する。ペルーの企業家の20%が国との契約成立に賄賂を支払っている,リマ市民の30%が役人から賄賂を要求されたと回答。賄賂支払いベネズエラが40%以上で1位。
 
・国立情報統計庁全国雇用統計,インフォーマル就労増加・フォーマル就労減少(11月15日)
 2018年10月~2019年9月全国雇用統計,フォーマル就労者(440万人)は前年同期比で0.6%減少(▲2万6,500人),インフォーマル就労者(880万人)は3.3%増加(+28万2,500人)。前者は農業,漁業,鉱業,サービス各部門で,後者は一次産業,建設,商業,サービスを中心に増加した。期間平均月収は1,609.8ソル(+49.7ソル),建設と商業は下落。リマ首都圏(※8~10月)では1,761.6ソル(+55.6ソル)になった。
 
・国際通貨基金報告(IMF),ペルー経済減速の一因に政府責任示唆(12月4日)
 IMFはペルーの今年度経済成長率を2.4%に下方修正。世界的な景気不安に加え,年次予算消化率の低さを始めとする政府責任による背景も示唆。2021年の財政赤字をGDP比1%以内に収束させるため必要以上の予算調整に走る傾向が政府内に散見され,さらなる景気減速を招いていると報告。景気拡大に向け地方政府や自治体に対し十分な予算措置が講じられているとしても,支出プロセスの管理と補完的対策を通じた財政・金融刺激策が肝要と指摘。
 
・農業省,農産品輸出 今年は75億米ドル,2021年は100億米ドルを目指す(12月16日)
 1月~10月農産品輸出実績57億8,700万米ドル,前年比4.8%増加。今年は75億米ドル,2021年100億米ドルを目指す。輸出実績品目別:アボカド7億3,700万米ドル(+2.0%),ブルーベリー5億6,000万米ドル(+43.0%),ぶどう4億4,400万米ドル(+19.0%),アスパラガス3億600万米ドル(+6.0%),みかん1億2,600万米ドル(+10.0%),カカオ1億2,000万米ドル(+6.0%)。仕向け地は米国,オランダ,スペイン,イギリス,エクアドル,中国など。
 
・経財省,12月25日時点の政府公共事業予算消化率59%,残額204億ソル(12月27日)
 同省年次修正予算(PIM)に基づく政府3レベルの今年度公共事業割当予算は498億1,710万ソル。12月25日時点の同消化率は59%(中央政府66.6%、地方政府55.8%、地方自治体51.7%),昨年度実績(消化率65.4%・PIM493億3,420万ソル)比で6.4ポイントの後退。労働雇用促進省や保健省(消化率各50%未満),ラリベルタ州やカヤオ特別区(同30%未満),アレキパ含む全国5自治体(同50%未満)等で予算の未消化が目立つ。
 
(了)