5月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
【概要】
(内政)
●10日、国会が,アラオス副大統領の辞任を承認した。
●29日、国会が,賛成多数でセバーヨス内閣の内閣信任決議を可決した。
(外交)
●ビスカラ大統領が、習中国国家主席(2日)、トランプ米大統領(9日)、安倍首相(19日)等の各国首脳と新型コロナウイルス対策をテーマに電話会談を行った。
【本文】
1 内政
(1)新型コロナウイルスを巡る状況
ア 新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長
(ア)8日、ビスカラ大統領は、新型コロナウイルス対策のための緊急事態宣言を5月 24日まで延長する旨発表した。
(イ)22日、ビスカラ大統領は、国家緊急事態宣言を6月30日まで延長する旨発表した。
イ 経済的支援・経済活動再開に向けた動き他
(ア)経済活動の再開
2日、ビスカラ大統領は、5月4日から8月末まで4段階で経済活動が再開されると発表した。
(イ)アビアンカ・ペルー社の解散・精算発表
10日、アビアンカ・ペルー社は本社の合理化の一環として解散・精算手続きに入ることを正式に発表した。今後のペルーにおけるオペレーションについては、国際商用便再開の後他のボゴタやサンサルバドルといった拠点から継続することとなる。
(ウ)LATAM航空の破産申請
26日、LATAM航空の関連会社であるLATAMペルーは、米国連邦破産法第11条の適用を申請し、ペルー公正競争・知的財産保護庁(INDECOPI)に対し倒産防止プロセスの開始を申請することを決定したことを明らかにした。
(エ)業種変更の手続きの簡素化承認
12日、政府は各事業主が個別に各自治体に対し自己申告書(declaracion jurada)を提出することで業種変更を認める最高令を承認した。これにより、各事業主は今後認められる活動分野への迅速な業種変更が可能となる。
(2)内閣信任決議
ア セバーヨス首相の演説
28日、セバーヨス首相は、国会本会議において、(1)国会閉会時における政府の取り組み、(2)同期間に政府が公布した緊急令、(3)政府の政策の柱、(4)新型コロナウイルスに係る取り組みについて説明を行った。同首相は6月30日までの緊急事態宣言の延長下において、(1)汚職を排除するための公共調達の包括的改革、(2)国民による各種行政手続きの電子化、(3)コミュニティレベルでの精神衛生システムの強化、(4)必要な市民に対する大衆食堂を通じた食糧供給システムの確立、(5)地方政府を通じた一時雇用プログラムの推進、(6)異なるレベルの政府の責任・権限の適正化に取り組んでいく旨明らかにした。
イ 内閣信任決議の可決
29日未明、国会は賛成多数(賛成89票、反対35票、棄権4票)でセバーヨス内閣の内閣信任決議を可決した。
(3)その他国会の動き
ア アラオス副大統領の辞任
10日、国会は昨年の国会解散後に辞任を表明していたアラオス副大統領の辞任を正式に承認した。
イ 憲法改正法案の提出
(ア)12日、ペルー統一党(UPP)は新憲法制定のための制憲議会招集に関する法案を提出した。提出された文書によれば、同法案では現行の1993年憲法の破棄と一部条項を除いた1979年憲法の復活が提唱されている。また、UPPは15日に軍役を義務化する法案を国会に対し提出した。
(イ)26日、最大会派人民行動党(APP)は、来年4月の大統領・国会議員選挙の際に、全面的な憲法改正もしくは経済体制・環境・天然資源等の章に関する部分的な憲法改正の是非を問う国民投票を行うための法案を提出した。
(4)文化大臣の交替
29日、ソニア・ギジェン文化大臣が辞任し、31日、アレハンドロ・ネイラ氏が文化大臣に就任した。
(5)フジモリ元大統領に対する人身保護請求の却下
フジモリ元大統領の家族がペルー裁判所に対し、新型コロナウイルス感染の危険性を理由に同元大統領の人身保護請求を行ったのに対し、12日、裁判所は各種の措置等により感染の危険性は高くないとして人身保護請求を却下した。
(6)ビスカラ大統領の支持率
ア イプソス社:14日~15日実施,全国(対象1,020名),誤差±3%,信頼度95%
支持:80%(83%) 不支持:17%(16%)
イ IEP社:21~28日実施,全国(対象1,490名),誤差±2.5%,信頼度95%
支持:74%(80%) 不支持:21%(17%)
ウ ダトゥム社:18日~21日実施,全国(対象1,023名)
支持:76%(82%) 不支持:19%(9%)
2 外交
(1)新型コロナウイルスを巡る他国との連携・協力
ア 各国大統領との会談
(ア)習近平国家主席との電話会談
2日、ビスカラ大統領は習近平国家主席と電話を通じて会談し、中国が医療用器材及び新型コロナウイルスの流行における取組について科学的知見をもってペルーに対し支援を行うことで合意した。
(イ)トランプ米大統領との電話会談
9日、ビスカラ大統領はトランプ米大統領と電話で会談し、ベネズエラを中心に地域における民主主義や新型コロナウイルス後の経済面における課題等について協議を行った。
(ウ)安倍首相との電話会談
19日、ビスカラ大統領と安倍首相は電話首脳会談を行い、新型コロナウイルスに関する情報を共有すると共に、医療機材の供与等について意見交換した。
(エ)グアイド・ベネズエラ暫定大統領との電話会談
20日、ビスカラ大統領はグアイド・ベネズエラ暫定大統領と電話で会談を行い、新型コロナウイルスの緊急事態下にあるペルーにおけるベネズエラ人の状況について協議した。
イ 国際協力
(ア)キューバからの支援
15日、ペルー政府は、ペルー及びキューバ両政府がキューバ人の保健の専門家85名から成る人道支援部隊をペルーに派遣するための覚書に署名する予定であると発表した。
(イ)中国からの支援
23日、中国湖北省から呼吸器及び感染症等を専門とする医療グループ(4名)がペルーに到着した。サモラ保健大臣は、同医療チームの訪問のみならず、中国からはICUを強化するための支援や医療従事者を保護するための備品に係る供与を受けた旨述べた。
(2)その他:メサ=クアドラ外務大臣とポンペオ米国務長官との会談
26日、メサ=クアドラ外務大臣はポンペオ米国務長官と電話で会談を行い、新型コロナウイルスやベネズエラを巡る状況等に関する意見交換等を行った。また、26日、同外務大臣は、スペイン及びEU主催による新型コロナウイルス状況下のベネズエラ避難民・移民支援国際ドナー会合(ビデオ形式)に出席し、ペルーにおける各種取り組みについて言及した。