6月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

令和2年10月15日

【概要】

(内政)

●4日、ペルー政府が、6月10日から9月7日までの期間において国家緊急衛生事態

宣言を延長する最高令を公布した。

●27日、政府が、国家緊急事態宣言を7月1日から7月31日までの期間延長する最高令を公布した。

(外交)

●24日、ビスカラ大統領がサンチェス・スペイン首相他ラ米・カリブ各国大統領との新型コロナウイルスの流行等に関する経験を共有するためのビデオ会議に出席した。

 

【本文】

1 内政

(1)新型コロナウイルスを巡る状況

ア 各種措置・対策の実施他

(ア)4日、ペルー政府は6月10日から9月7日までの期間において国家緊急衛生事態宣言を延長する最高令を公布した。

(イ)17日、教育省及び保健省は、新型コロナウイルスの感染がゼロあるいは極めて感染レベルが低い農村部を中心とする全国663地区の農村部(※先住民族コミュニティやアマゾン農村部の言語の問題を抱える地域が対象。)に位置する初・中等教育機関11,952校において7月1日からの登校再開を許可した。

(ウ)22日、モンテネグロ農業灌漑大臣は、アレキパ州における新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために6月23日~30日の間、公共・民間セクターの活動、さらには公共交通機関及びタクシーによるサービスの提供を一時停止することを決定したと発表した(※薬局、銀行及び市場における基本的サービスの提供は維持。)。

(エ)23日、都市交通労働連合(UGTU)は政府に対して新型コロナウイルス対策に関する乗車人数の制限に伴う運賃収入の減少に対し補助金を求め、同日午前4時から無期限でリマ市及びカジャオ地区におけるサービスを停止した。これに対し、同日、ロサダ運輸通信大臣が国内全土の正規の都市交通企業に対し総額1.8億ソル(約5,100万ドル)の補助金の支給を検討する旨発表し、本ストライキが解除された。

(オ)24日、私立病院協会は、公的保険加入者である新型コロナウイルスの重症患者に対する私立病院での入院治療費を一律5万5千ソル(約1万5千ドル)とすることで政府と合意した。

(カ)26日、モンテネグロ女性社会的弱者大臣は、政府が国民に対する電気代のための一時金支給のために8億ソル(約2.2億ソル)を手当てすることを発表した。

(キ)27日、政府は国家緊急事態宣言を7月1日から7月31日までの期間延長する最高令を公布した(※同期間において、14歳以下の子供及び65歳以上の成人及び一部地域のみが引き続き強制的な社会的隔離措置の対象とされた。)。

イ 経済活動の再開及び経済支援策の実施

(ア)5日、経済活動再開計画の第2段階(小・中規模鉱山、ペットフード・アルコール

飲料・タバコ等の製造他)を開始するための最高令が公布された。

(イ)20日、バリオス生産大臣は経済活性化メカニズムの一部として「ペルー零細企業からの購入(Compras a Myperu)」プログラムを7月から開始すると発表した。同プログラムを通じて、各省庁は繊維・縫製、靴、金属機械・材木、プラスチックの4つの分野の調達を国内零細企業を通じて行う。

(ウ)22日、国内全土を対象(※イカ州、ラ・リベルタ州、アレキパ州、ワヌコ州、サン・マルティン州及びアンカシュ州沿岸地域(サンタ郡、カスマ郡及びワラス郡)を除く)に、ショッピングセンター、複合商業施設及び量販店での店頭対応及び理髪店・美容室等の営業が再開された。

(エ)23日、政府は、新型コロナウイルスによる緊急事態下において完全に労働が停止された月給2,400ソル(約685ドル)以下の(フォーマル部門の)労働者に対し760ソル(約270ドル)の補助金を支給するための緊急令を公布した。

(オ)30日、ビスカラ大統領は観光部門に従事する企業を支援するための基金(5億ソル(約1.4億ドル)の設置及び同30日から企業に対する流動性融資プログラム「Reactiva Peru」の第2フェーズの入札を開始した旨発表した。

(カ)30日、経済活動再開計画の第3段階を開始するための最高令が公布された(レストランにおける店内飲食や陸路・空路による国内移動他)。

ウ 経済の現状と見通し

(ア)2日、パラシオ労働省雇用促進・労働訓練担当次官は、緊急事態宣言下において民間のフォーマル部門では435,600名の労働者が職を失う一方、195,000名の労働者が新たに労働市場に参入したと発表した。なお、失業者は、サービス、農業、製造業及び商業分野において多く見られた旨述べた。

(イ)15日、ペルー国家統計院(INEI)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国家緊急事態宣言の影響により首都リマにおいて3月~5月の間に従業員の40.7%(1.2百万人)、個人事業主の56.9%(82.8万人)が仕事を失ったと発表した(前年同期比47.6%減)。なお、失業率は13.1%。

(ウ)19日、ベラルデ中銀総裁は、今年2020年は当初予想の3.8%からマイナス12.5%、来年2021年は11.5%となり、2022年第1四半期に入ってようやく新型コロナウイルスによる経済的ダメージから回復するであろうと述べた。なお、同総裁によれば、今年の内需は11.9%、投資は30%収縮し、貧困率は現在の20.2%から27.4%まで上昇する見通し。

(エ)26日、IMFは、ペルーにおける2020年のGDP成長率が外需や雇用の低下を引き起こした長きにわたる社会的隔離措置の実施により-14%となる見通しであると発表した。なお、本年下半期における規制措置の解除により徐々に経済が回復し、2021年には6.5%の成長を記録する見通しであるとしつつも、新型コロナウイルスにより国内外の取組により経済成長率が減少するリスクがあり続けることも併せ指摘した。

エ その他:フジモリ元大統領に対する人身保護請求(habeas corpus)の棄却

 5日、ペルーの裁判所は第二審において、新型コロナウイルスの流行を理由としてフジモリ元大統領の子息から提出された同大統領に対する人身保護請求(habeas corpus)に関し、持病を有する同大統領がコロナ禍においても必要とされる経過観察を定期的に受けていることを理由に本件請求を棄却した。

 

(2)ビスカラ大統領の支持率

ア イプソス社:11日~12日実施、全国(対象1,015名)、誤差±3%、信頼度95

   支持:70%(80%) 不支持:27%(17%)

イ IEP社:1723日実施、全国(対象1,244名)、誤差±2.8%、信頼度95

   支持:66%(74%) 不支持:31%(21%)

ウ ダトゥム社:18日~22日実施、全国(対象1,018名)

   支持:65%(76%) 不支持:27%(19%)

 

2 外交

(1)新型コロナウイルスを巡る他国との連携・協力

ア 各国大統領他との会談

24日、ビスカラ大統領は、サンチェス・スペイン首相他ラ米・カリブ各国大統領との新型コロナウイルスの流行等に関する経験を共有するためのビデオ会議に出席した。同会合を通じて発出された共同宣言において、各国大統領は、新型コロナウイルスに立ち向かうために全ての手段を講じる意思等を表明した。

イ 国際協力

(ア)1日、保健省はプレスリリースを通じて、韓国政府から新型コロナウイルス抗体迅速検出キット(Genbody社製IgM/IgG)計5万セットの供与を受けたことを発表した。

(イ)4日、在ペルー・ドイツ大使館は、ペルー海軍に対し人工呼吸器12台を供与した。

(ウ)4日、キューバ政府は、キューバ人医療関係者を乗せた空軍機が3日ペルーに到着したと発表した。

(エ)6日、韓国Dohwa Engineering社は、保健省に対し抗体検査キット3,000個を供与した。また、同日、同じく勧告Gencurix, Inc.,社がクスコ州の地域保健センターに対し抗体検査キット2,000個を供与した。

(オ)23日、米国政府は米国際開発庁(USAID)を通じてペルー政府に対し250台の人工呼吸器を供与した。

 

(2)公共事業に関する各国との政府間協定(G2G)締結

ア 英国とのG2G協定締結

 22日、2017年のエルニーニョによるペルー北部豪雨災害復興のための公共投資プロジェクトに関するペルーと英国の政府間協定(G2G)が締結された。遠隔で行われた同協定の署名式にはビスカラ大統領及びジョンソン英国首相(ビデオ・メッセージを通じて参加。)が出席した。本プロジェクトは9州を対象とし、本年及び2021年の2年間で70億ソル(約20億ドル)の投資が見込まれている。

イ フランスとのG2G協定締結

 28日、ペルー及びフランスの両政府は、首都リマ及びクスコ州の2つの公立病院における保健サービスの向上・拡大のための政府間協定(投資総額1,900万ドル)に署名を行った。

 

(3)ベネズエラ情勢

 16日、リマ・グループの構成国である各国政府(ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス、パナマ、パラグアイ、ペルー、サンタ・ルシア及びベネズエラ)は共同コミュニケを発出し、ベネズエラの最高裁判所を通じた全国選挙評議会(CNE)のメンバーの違法な任命を拒絶し、認めないとする立場を表明した。