9月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

2020/11/5

【概要】

(内政)

●10日、国会において、ビスカラ大統領に対する罷免決議が提出された。

●11日、国会本会議において、大統領罷免決議の受諾に関する審議及び採決が行われた結果、本件決議が正式に受諾された。

●18日、国会本会議において、ビスカラ大統領に対する罷免決議が反対多数で否決された。

(外交)

● 22日、ビスカラ大統領が、第75回国連総会一般討論演説(ビデオ形式)を行った。

 

【本文】

1 内政

(1)国会におけるビスカラ大統領に対する罷免決議を巡る動向

ア 2日、国会監査委員会は、歌手リチャード・スイング氏(名字のスイングは芸名で本名はシスネロス)が新型コロナウイルスによる社会的隔離措置期間に文化省の委託で同省員向け講演を行い多額の謝礼を受けていたことが国費の不適切な支出であると批判を集め、同歌手とビスカラ大統領を含む政府関係者との癒着を疑う声が強まる中、ビスカラ大統領を国会に召喚することを決定したが、同大統領は右召喚を拒否し、国会に対し書面にて質問事項を送付するよう求めた。

イ 10日、監査委員会においてアラルコン委員長はスイング氏とビスカラ大統領との癒着及び各種の汚職を示唆するオーディオ計3本を提出した。また、国会は複数の会派(ペルー統一党(UPP)、人民行動党(AP)、進歩のための同盟(APP)、人民勢力党(FP)及びSomos Peru)議員による署名をもって罷免決議が提出されたことを明らかにした。同決議において、ビスカラ大統領が繰り返し継続的な形で国家に対し真実を欠いており、「リチャード・スイング」事案について国会及び検察の調査・捜査を妨害していることから、同大統領は国家を代表する人物として倫理的に不能であると主張され、ビスカラ大統領が憲法113条第2項で定められる「恒久的な倫理的不能(permanente incapacidad moral)」に当たるとして罷免を求めた。

ウ 11日、国会本会議において、大統領罷免決議の受諾に関する審議及び採決が行われた結果、本件決議が正式に受諾された(賛成65票、反対36票、棄権24票)。

エ 14日、政府は憲法裁判所に対し、国会が推進する大統領罷免プロセスの違憲審査及び差し止めを請求した。政府は本件申請にあたり、罷免プロセスが一般政策を実施する大統領権限に影響を与えるものであり、「恒久的な倫理的不能(permanente incapacidad moral)」を理由としてビスカラ大統領に対し罷免を宣言することは国会による権限の不適切な行使に当たると主張した。

オ 17日、憲法裁判所は、国会での大統領罷免プロセスに対する違憲審査及び差し止めの申請に関し、違憲審査請求については受諾する一方で差し止め請求については却下する決定を行った。

カ 18日、国会本会議においてビスカラ大統領に対する罷免決議に係る審議が行われ、採決の結果、反対多数で同罷免決議が否決された(賛成32票、反対78票、棄権15票)。なお、右審議に先立ち、当初、ビスカラ大統領は弁明を弁護人に任せる決定を行っていたが、国会においてビスカラ大統領自身が弁明を行うべきとの意見が強まったことから、急遽、同大統領が国会に赴いて自身の立場を擁護する発言を行った。

キ 28日、国会におけるビスカラ大統領に対する罷免決議の提出及び否決後初めて、メリーノ国会議長の求めに応じて28日、大統領府においてビスカラ大統領がメリーノ国会議長と会談し、当国に資する法案についての合意を達成するために共に取組・対話を行うことで一致した。

 

(2)国会におけるアルバ経済財政大臣に対する罷免決議を巡る動向

 9日、国会本会議において、ペルー統一党(UPP)、ペルー農業人民戦線(Frepap)、Podemos Peru及び拡大戦線(FA)等の議員の署名をもって、新型コロナウイルス流行下における経済活動再開計画の実施を理由にアルバ経済財政大臣に対する罷免決議が提出されたが、15日、国会本会議において反対多数で右罷免決議が否決された(賛成46票、反対76票、棄権6票)。

 

(3)2021年総選挙(大統領・国会議員選挙)

ア 大統領及び副大統領候補他の届け出締め切り日他の発表

 29日、全国選挙裁判所(JNE)は、2021年総選挙に大臣・副大臣、国家機関高官、軍人・警察官、地方政府の長が立候補する場合には、10月12日までに辞任して公職を離れる必要がある旨、大統領及び副大統領候補並びに国会議員候補者リストの届け出締め切りが12月22日である旨発表した。

イ 2021年大統領選挙有力候補者の動向

(ア)有力候補の党員登録

ⅰ 15日、マキシモ・サンロマン氏(実業家。フジモリ政権第一期目で第一副大統領を務めた。)がコンティーゴ(※クチンスキー前大統領の政党であった変革のためのペルー国民(PPK)から分派した政党)から立候補することを明らかにした。

ⅱ 23日、当地紙は2021年大統領選挙への出馬を意図し、フェルナンド・シジョニス氏(企業家出身、前イカ州知事。)がTodos por el Peruに、ロケ・べナビデス氏(ペルー経団連(Confiep)元会長、鉱山関連の会社を経営。)がアプラ党に各々党員登録を行ったと報じた。

ⅲ 29日~30日、当地紙は2021年大統領選挙への出馬を目指し、エルナンド・デ・ソト氏(国際的なエコノミストでシンクタンク会長。)がAvanza Pais、ダニエル・サラベリー元国会議長がSomos Peruに、ベロニカ・メンドサ氏(2016年大統領候補、元国会議員)がJuntos por el Peruに、カテリアノ前首相がTodos por el Peruフェルナンド・シジョニス氏(企業家出身、前イカ州知事。)もTodos por el Peruに党員登録。)

に、ダニエル・ウレスティ国会議員(Podemos Peru、元内務大臣)がPodemos Peruに各々党員登録したと報じた。

(イ)28日、ケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首はTwitterを通じて、同党の活動に100%復帰すると発表した。本年4月の釈放後、ケイコ氏が自身の政治活動について言及したのは今回が初めて。

 

(4)汚職関連

ア ケンジ・フジモリ元国会議員(アルベルト・フジモリ元大統領の子息)

 17日、2018年12月のクチンスキー前大統領の罷免を回避するために国会において買収工作を行った疑い(通称:ママニ事件)で検察に起訴され、予審プロセスが開始されたケンジ・フジモリ氏に対し、ペルー裁判所は検察による請求を受け入れ、18ヶ月間の国外出国禁止を命じた。

イ ナディン・エレディア・ウマラ元大統領夫人

 18日、ペルー裁判所は、2011年大統領選挙キャンペーンにおいてオデブレヒト社から300万ドルを受け取った疑い他により、ウマラ元大統領夫人に対し、24ヶ月間の自宅勾留を命じた。なお、ペルー裁判所は、2017年7月にウマラ元大統領及び同元大統領夫人に対し勾留を命じたが、2018年4月、憲法裁判所が両名の弁護団による人身保護請求を受け入れたことから、勾留が解除されていた。

 

(5)内務大臣の交代

 11日、新型コロナウイルスの流行により社会的集まりが禁止される中、ディスコにおいて開催された違法なパーティーを警察が摘発した際に死亡者が出た責任を取りモントーヤ内務大臣が辞任した。その後、セサル・ヘンティージャ氏が新内務大臣に就任した(元内務省市民安全局長、元国家警察(PNP)リマ管区司令官及びラ・リベルタ管区司令官を務めた経験あり。)。

 

(6)ビスカラ大統領の支持率

(ア) IEP:1日~12日実施、全国(対象1,219名)、誤差±2.8%、信頼度95

   支持:56%(66%) 不支持:40%(31%)

(イ)イプソス社:11日~12日実施、全国(対象1,006名)、誤差±3.1%、信頼度95

   支持:57%(60%) 不支持:39%(37%)

   

(7)新型コロナウイルス関連

ア 26日、新型コロナウイルスに係る国家緊急事態宣言の延長(10月1日~31日の期間延長)に係る最高令が公布された。

イ 28日、閣議において経済活動再開計画第4段階の開始が承認され、図書館・資料館、博物館・美術館、考古学遺跡及び文化センター(映画・演劇等を除く)等の活動再開や一部国際商用便の再開(10月5日~)等が認められることとなった。

 

2 外交

(1)ビスカラ大統領の第75回国連総会一般討論演説

 22日、ビスカラ大統領は、(1)汚職との闘い、(2)ガバナビリティの危機と政権移行、(3)新型コロナウイルス対策、(4)ベネズエラ情勢及び(5)気候変動他を柱とする一般討論演説を行った(ビデオ形式)。

 

(2)2020年マレーシアAPEC

 23日、オンラインで開催された2020年マレーシアAPEC保健と経済に関するハイレベル会合(大臣級会合)にマセッティ保健大臣他が参加した。本会合においてマセッティ大臣は、新型コロナウイルスの流行が、保健分野における投資を優先する公共及び民間セクターの関係を再考する必要性を提起したと述べた。