11月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和2年12月17日
【概要】
(内政)
●9日、国会において、ビスカラ大統領に対する罷免決議が採決の結果、賛成多数で可決された。
●10日、メリーノ国会議長が、国会において大統領就任のための宣誓を行った。
●15日、メリーノ大統領が、大統領職からの辞意を表明した。
●17日、サガスティ国会議長が、新大統領に就任した。
●18日、ベルムデス新首相率いる新内閣が発足した。
 
(外交)
●5日、ロペス外務大臣が、王中国国務院兼外交部長と電話外相会談を行った。
●18日、ペルーの人権分野における政治危機の影響を調査するために国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のミッションがペルーを訪問した。
 
【本文】
1 内政
ビスカラ大統領の罷免とメリーノ新大統領の就任
ア 2日、国会において、ビスカラ大統領がモケグア州知事時代に灌漑事業や州立病院の入札を巡り当地ゼネコンから賄賂を受け取っていた旨の汚職疑惑が報じられたことを受け、同統領に対する罷免決議に関する審理・採決が行われた結果、必要とされる国会議員5分の2以上(52票)の賛成票をもって同決議の受諾が決定された。
イ 9日、国会において、ビスカラ大統領による弁明後、ビスカラ大統領に対する罷免決議に係る審議が行われ、票決の結果、賛成多数で同決議が可決された(賛成105票、反対19票、棄権4票。なお、大統領罷免決議可決には国会議員の3分の2(87票))以上の賛成が必要。)。
ウ 同日夜、ビスカラ大統領は、国民向けに演説を行い、国会による罷免という決定については賛成しないが、民主主義に対する確信から何らかの対抗策をとることはせず、同日をもって大統領職を離れる旨述べた。
エ 10日、メリーノ国会議長が国会において大統領就任のための宣誓を行った。また、確立された日程に基づいて進行している選挙プロセスを尊重する旨明言した。
オ 11日、フローレス=アラオス氏(元国防大臣)が宣誓式を経て新首相に就任した
カ 12日、フローレス=アラオス新首相率いる新内閣が発足した。
 
(2)抗議デモの発生
ア ビスカラ前大統領罷免及びメリーノ新大統領就任に対する全国抗議デモ
9日夜からリマ市セントロ地区(旧市街)のサン・マルティン広場他国内各地でビスカラ大統領前大統領罷免及びメリーノ新大統領就任に反対する抗議デモが開始され、12日には右デモが過去20年間で最も大規模な全国抗議デモに発展した。14日夜に行われた全国抗議デモにおいては、警察の火器使用により2名の若者が死亡した他、100名以上のデモ参加者が負傷した
イ 死者の発生を受け、14日~15日には国内でメリーノ大統領の辞任を要求する声が強まった。
 
(3)メリーノ大統領の辞任とサガスティ新大統領の就任
ア 14日未明、首相を含めた19閣僚のうち13閣僚が辞任を表明した。
イ 15日、メリーノ大統領は国民向けメッセージを発出し、抗議デモにおいて亡くなった2名の家族に対し深い哀悼の意を示しつつ、大統領職からの辞意を表明した。
ウ 15日、メリーノ大統領の辞任に続き、フローレス=アラオス首相率いる内閣が総辞職した。
エ 15日、国会は臨時本会議を開催し、メリーノ大統領の辞任に係る受諾を決定した(賛成120票、反対1票、棄権0票)
オ 16日、国会本会議において国会議長及び3名の副議長から成る国会執行部の選出に係る採決が行われ、サガスティ議員(紫の党(PM))が新国会議長に就任した(賛成97票、反対26票、棄権0票。)。
カ 17日、サガスティ国会議長が新大統領に就任し、抗議デモで無くなった若者に対し哀悼の意を示すとともに、移行政権として2021年総選挙(大統領・国会議員選挙)の実施を約束する旨大統領就任演説で言及した。
キ 18日、ベルムデス新首相率いる新内閣が発足した。
 
(4)サガスティ大統領による国民向けメッセージの発出
23日、サガスティ大統領はテレビを通じて就任後初めてとなる国民向けメッセージを発出し、抗議デモにおいて死者が出たことを念頭にペルー国家警察(PNP)改革に取り組む方針を明らかにし、PNP長官含む幹部の交代他を発表した。
 
(5)ビスカラ前大統領を取り巻く状況
ア ペルー裁判所によるビスカラ前大統領の出国禁止命令
13日、ペルー裁判所は検察の要請に基づき、モケグア州知事時代の公共事業に関する汚職疑惑で予備捜査(investigacion preliminar)を受けるビスカラ前大統領に対し、18ヶ月間の出国禁止命令を通達した。
イ ビスカラ大統領の2021年国会議員選挙への出馬表明
27日、ビスカラ前大統領は、2021年国会議員選挙にSomos Peruから出馬することを明らかにした。
 
(6)新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言の延長
30日、政府は、新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言を12月1日~31日の期間延長する最高令を公布した。
 
2 外交
(1)ペルー・中国電話外相会談
5日、ロペス外務大臣は王中国国務院兼外交部長と電話外相会談を行い、二国間の主要なアジェンダについて協議を行い、特に新型コロナウイルスに立ち向かうための協力について確認した。
 
(2)ビスカラ大統領によるバイデン次期米国大統領他への祝意表明
7日、ビスカラ大統領はツイッターでバイデン次期米国大統領及びハリス次期副大統領に対する祝意を表明した。
 
(3)国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のペルー訪問
18日、ペルーの人権分野における政治危機の影響を調査するために国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のミッションがペルーを訪問し、国内アクターとの会合を実施した。
 
(4)サガスティ大統領と米州開発銀行(IDB)総裁との会談
30日、サガスティ大統領はクレバー・キャローン米州開発銀行(IDB)総裁と電話会談を行った。
 
(5)アステテ外務大臣のイベロアメリカ首脳会合臨時閣僚級会合への参加
30日、アステテ外務大臣はバーチャル形式で開催されたイベロアメリカ首脳会合閣僚級会合に出席し、イベロアメリカ首脳会合のアジェンダ達成に向けた各協力について強調した。