ペルーの経済情勢(2020年第1四半期)

令和2年4月30日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は,経済成長率3.83%(2月:前年同月比),リマ首都圏のインフレ率1.82%(3月までの一年間),対米ドル為替相場3.493ソル(3月平均値),リマ首都圏の完全失業率7.6%(3月),財政収支2,100百万ソルの赤字(3月),貿易収支392百万米ドルの黒字(2月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると,ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について,2月は主に漁業,製造業及び建設業の成長率の伸びが見られ,全体としてGDP成長率は3.83%(前年同月比)となった。

 
 
イ インフレ率
 3月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は,0.65%となり,最近12か月(昨年4月~3月)の上昇率は,1.82%となった。

 
ウ 為替相場
3月の対米ドル為替相場の平均は3.493ソルであった。

 
 
エ 失業率
 3月のリマ首都圏の完全失業率は7.6%であった。

 
オ 財政収支
 3月の政府全体の財政収支は,歳入が対前年同月比で17.6%減となった。歳出は,対前年同月比で14.0%増となった。全体では,プライマリーバランスは,2,100百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると,2,391百万ソルの赤字となった。
 
カ 貿易収支
 2月の輸出額は,伝統産品(鉱物資源,魚粉,コーヒー等)が対前年同月比5.6%減,非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品,繊維製品,工業製品等)が1.5%減となり,全体では3,371百万米ドル(対前年同月比4.5%減)となった。主要輸出品目は銅,金,原油であった。
輸入額は,対前年同月比で消費財が1.2%増,中間財は11.7%減,資本財が6.8%減となり,全体で2,979百万米ドル(対前年同月比7.3%減)となった。この結果,貿易収支は,392百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油,自動車,軽油であった。
 
 キ 外貨準備高
3月末の外貨準備高は,68,022百万米ドルとなった。 

 
ク 対外累積債務
2019年12月末の対外債務累積総額は,79,956百万米ドルとなった。

 
 
   
 (注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
 

(2) 最近の主な出来事
・ペルー自動車協会(AAP)2019年乗用車(軽量車)新車販売実績2.4%増加(1月8日GESTIÓN紙4面
 2019年乗用車販売実績は151,997台で前年比2.4%増加。選択消費税(ISC)税率引下げがプラス要因(2018年実績▲9.32%)。昨年上半期は▲7%だったが下半期で回復。特に12月(14,397台)は+40.6%と急増。今年は融資クレジットがカギとなるが5%増予測。2019年メーカー別実績:(1)TOYOTA 29,799(+4.7%)(2)HYUNDAI 18,645(▲9.7%)(3)KIA 14,204(▲16.7%)(4)CHEVROLET 8,568(+0.2%)(5)NISSAN 7,573(+30.4%)(6)SUZUKI 6,722(▲18.1%)(7)RENAULT (8)MITSUBISHI。
 
・エネルギー鉱山省 2019年鉱業投資61億5,700万ドル(1月31日El Peruano紙10面)
 2019年鉱業投資は目標(60億ドル)を超え前年(49億4,700万ドル)比24.5%増加し61億5,700万ドルに達した。3年連続増加した。うちインフラ投資が13億1,600万ドルで開発投資額の次を占め下半期から増加した。大型投資はQUELLAVECO(ANGLO-AMERICAN)モケグア州,MINA-JUSTA(MAR COBRE)イカ州ナスカ,TOROMOCHO拡張(MINERA CHINARCO)フニン州。12月単月の投資額は8億3,200万ドルで11.6%増加した。
 
・運輸通信省 チンチェロ国際空港旅客ターミナル2021年6月着工予定(2月18日GESTIÓN紙11面)
 現在技術的な最終調査段階にあるクスコ州チンチェロ国際空港建設事業,運用開始予定時期は2024年10月と発表。2018年着手の空港用地整備が昨年10月に終了,翌11月には韓国企業とコンサルティング契約を締結し事業は第2段階へと進行。旅客ターミナル着工は2021年6月と見込む。第2段階の工程は4フェーズで構成。しかし今年6月開始予定の第1フェーズに相当する用地整備未完を理由に,インフラ系の着工は来年以降にずれ込む見通し。
 
・通商観光省 2019年ペルーの輸出仕向け国のトップは中国,輸出シェア29%(2月21日 La República紙15面)
 2019年輸出実績459億7,800万ドル(2018年480億ドル,今年の目標480億ドル)。仕向け国のトップは(1)中国で,135億300万ドルで輸出全体の29%を占める(96%が伝統的産品でほとんどが鉱物資源,魚粉)。以下は(2)欧州連合(EU)61億5,700万ドル(3)米国56億7,900万ドル(4)太平洋同盟(メキシコ・コロンビア・チリ)25億5,900万ドル(5)カナダ24億800万ドル(6)欧州自由貿易連合(EFTA)(7)アンデス共同体(CAN)22億9,200万ドル(8)韓国22億2,800万ドル(9)日本19億7,400万ドル。
 
・駐秘中国大使 COVID-19終息後の対ペルー輸出増加を示唆(2月24日GESTIÓN紙16面)
 リアン・ユー・セ駐秘中国大使は本国で2,400名以上の死者が出ている新型コロナウイルスにつき,短期間における制御を予測し事態を楽観視。武漢市の封鎖が解除されればすべてが通常に戻ると発言。5G通信用基地局の設置やコンピューターなどのIT機器による多量の銅需要に言及し,ペルーを含むラ米諸国へのウイルス流行終息を見据えた輸出増を示唆。大使はさらに,ペルーを「貿易と投資のトップパートナー」と位置付け両国の良好な関係を強調した。
 
・バスケス通商観光相 2019年外国人観光客数停滞,宣伝費は急増(3月4日GESTIÓN紙12面)
 2019年ペルーを訪問した外国人観光客数は昨年並みの440万人。目標の480万人(+9%)を達成できなかった。しかし政府の観光プロモーション費は2,200万ドルから5,590万ドルと過去最高となった。バスケス同相は今まで観光ビサでペルーに入国していた労働目的のベネズエラ人に「人道的ビサ」が必要となったため,数字が停滞したと指摘。欧米人・南米人のペルー訪問数は6%増とした。観光外貨収入48億9,500万ドル(2018年)。
 
(了)