ペルーの経済情勢(2020年第2四半期)

令和2年7月31日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲32.75%(5月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率1.60%(6月までの一年間)、対米ドル為替相場3.471ソル(6月平均値)、リマ首都圏の完全失業率16.3%(6月)、財政収支2,107百万ソルの赤字(6月)、貿易収支229百万米ドルの赤字(5月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、5月は特に宿泊・飲食業,建設及び運輸・倉庫・郵便等の成長率が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲32.75%(前年同月比)となった。

 
 
イ インフレ率
 6月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、▲0.27%となり、最近12か月(昨年7月~6月)の上昇率は、1.60%となった。

 
ウ 為替相場
6月の対米ドル為替相場の平均は3.471ソルであった。

 
 
エ 失業率
 6月のリマ首都圏の完全失業率は16.3%であった。

 
オ 財政収支
 6月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で34.6%減となった。歳出は対前年同月比で23.4%減となった。全体では、プライマリーバランスは2,107百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると2,396百万ソルの赤字となった。

 
カ 貿易収支
 5月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比52.5%減、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が32.9%減となり、全体では1,969百万米ドル(対前年同月比46.9%減)となった。主要輸出品目は銅、金、アボカドであった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が31.1%減、中間財は37.1%減、資本財が45.3%減となり、全体で2,197百万米ドル(対前年同月比38.3%減)となった。この結果、貿易収支は229百万米ドルの赤字となった。主要輸入品目はマスク、トウモロコシ、大豆油かすであった。


 
 キ 外貨準備高
6月末の外貨準備高は71,450百万米ドルとなった。 

 
ク 対外累積債務
2020年3月末の対外債務累積総額は80,356百万米ドルとなった。

 
 
   
 (注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
 

(2) 最近の主な出来事
・ペルー貿易協会報告:COVID-19パンデミックの中、農産物輸出額の見通し堅調(4月17日GESTIÓN紙4面
 新型コロナウイルス流行初期にあたる今年2月の農産物輸出額は4億5,100万米ドル(前年同月比で16.1%増)、食料品の輸出入継続で3月以降も堅調の見通し。4~5月には柑橘類やアボカド、下半期にはアスパラガス、ブルーベリー、ブドウに期待。3月中旬までのアボカド輸出実績は65%以上の伸長、しかし外出制限期間の進行に伴い伸び率は次第に減少。一方、3月はペルーを含む主要アボカド輸出国の対外輸出減少により単価は向上。ミカンは苦戦。
 
・経財省発表:新型コロナウイルス(COVID-19)対策の地方政府の予算消化率は26%(4月23日GESTIÓN紙2面)
 コロナウイルス対策予算総額は33億5,930万ソル。予算消化率(4月21日付)は45.2%で15億1,950万ソル。その内訳は中央政府13億5,658万ソル(予算消化率46.9%)、地方自治体1億1,124万ソル(同41.3%)、地方政府5,167万ソル(同26.3%)。地方政府の消化率が極端に低く首都圏リマを含め20%以下が14州。消化率が高い州はトゥンベス、ピウラ、ラ・リベルタ。
 
・リマメトロ電鉄2号線工事の遅滞、年間工事進捗率はわずか6%(5月8日GESTIÓN紙5面)
 2014年にプロジェクト契約が交わされ、2018年に第2補正契約が実施されている。現在までの工事進捗率は35%、すでに輸入されているトンネル掘削機は未使用のまま。予定ではサンタアニタ市場駅からエビタメント駅までは2021年工事完了、2024年全線開通となっているが、年間工事進捗率はわずか6%に留まっており、このままの状態であれば全線工事完了には10年以上かかる。工事日程も含めて抜本的な構造改革の必要に迫られている。
 
・検察庁発表:新型コロナウイルスパンデミック下で公務員の汚職が横行(5月28日GESTIÓN紙2面)
 COVID-19感染拡大の中、公務員の汚職が増加。検察は国家緊急事態宣言発令以降、全国で506事案を捜査中、1,000人以上の公務員が関与。170の自治体では貧困層向け生活支給品の水増しの疑いもある。保健衛生セクターでは5月20日までに46事案が発覚、多くは病院がらみで、リマ首都圏のCOVID-19指定病院を始め、アレキパ、イキトス、ピウラを含む全国26の医療施設で医療機器や救急車、人工呼吸器、防疫装備などの水増し購入の疑いにより捜査が行われた。
 
(了)