ペルーの経済情勢(2020年第3四半期)
令和2年10月30日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲9.82%(8月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率1.82%(9月までの一年間)、対米ドル為替相場3.556ソル(9月平均値)、リマ首都圏の完全失業率16.5%(9月)、財政収支4,495百万ソルの赤字(9月)、貿易収支321百万米ドルの黒字(8月)となった。
2 各論
(1) 主要経済指標
ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、8月は特に宿泊・飲食業、運輸・倉庫・郵便等及び企業貸付の成長率が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲9.82%(前年同月比)となった。

イ インフレ率
9月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.14%となり、最近12か月(昨年10月~9月)の上昇率は、1.82%となった。
ウ 為替相場
9月の対米ドル為替相場の平均は3.556ソルであった。
エ 失業率
9月のリマ首都圏の完全失業率は16.5%であった。
オ 財政収支
9月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で21.4%減となった。歳出は対前年同月比で15.0%増となった。全体では、プライマリーバランスは4,495百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると4,768百万ソルの赤字となった。
カ 貿易収支
8月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比31.1%減、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が2.3%増となり、全体では3,075百万米ドル(対前年同月比21.9%減)となった。主要輸出品目は金、銅、魚粉であった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が10.7%減、中間財は33.1%減、資本財が20.2%減となり、全体で2,753百万米ドル(対前年同月比24.0%減)となった。この結果、貿易収支は321百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は携帯電話、軽油、自動車であった。

キ 外貨準備高
9月末の外貨準備高は72,354百万米ドルとなった。
ク 対外累積債務
2020年6月末の対外債務累積総額は82,314百万米ドルとなった。
(2) 最近の主な出来事
・農業省発表:コロナ禍でも農産品輸出は好調、プラス維持(7月20日El Peruano紙10面)
1月~5月の農産品輸出24億2,800万ドル、前年同期比0.6%増とプラス成長を維持。非伝統的産品(果物・野菜)輸出が15億2,700万ドルで9.4%増加。品目別では生鮮ぶどう4億4,900万ドル(+26%)、生鮮アボカド3億2,000万ドル(+9%)、生鮮マンゴー(2億2,200万ドル)、冷凍マンゴー9,700万ドルなど。輸出仕向け地別では米国30%、オランダ8%、スペイン7%、エクアドル5%、コロンビア4%、英国3%、その他22%。
・政府年次修正予算の運輸セクター予算消化率未だ19%(7月30日GESTIÓN紙2面)
今年度政府当初予算は1,773億6,700万ソル、政府3レベル25セクターにおける現在の修正予算は211億1,600万ソル増の1,984億8,400万ソルで7月28日時点消化率は40.4%。公共投資の要である運輸セクターの予算は当初比で33%増だが、消化率は19%にとどまっている。予算の約半分を占める投資事業の同率はわずか18%であり、政府は下半期の加速に期待。地方政府同部門の今年度予算消化目標は前年比9%増の66億7,800万ソル。
・中銀(BCR)・国家税関税務監督庁(SUNAT)発表:上半期ペルー産品の輸出相手国は米国のみが増加(8月11日GESTIÓN紙12面)
上半期輸出減、輸出相手国1位は中国でシェアは低下、増加は米国のみ。(1)中国42億8,400万ドル(前年比▲38.6% シェア前年29.7%➡今年25.6%)(2)ラ米諸国25億9,300万ドル(▲36.3% 17.8%➡15.5%)(3)米国26億9,600万ドル(+8.3% 10.9%➡16.1%)(4)アジア諸国(中国以外)29億2,800万ドル(▲26.5% 17.5%同率)(5)欧州諸国22億4,100万ドル(▲19.5% 12.2%➡13.4%)。
・ケジャベコ(QUELLAVECO)銅山開発、コロナ禍の影響甚大(8月26日GESTIÓN紙6面)
ペルー最大の銅開発プロジェクト、QUELLAVECO銅山(英国資本ANGLO AMERICAN)=モケグア州=はコロナ禍の影響を受けており、開発は防疫隔離策に準じて4月から中断状態であるほか、関連就業者1万6,000人のうち現在の就業者は水処理・防災対策の1,300人のみとなっている。防疫衛生面の見直しはロジスティクス面だけでなく坑内現場作業関連にも影響し、就業者総数は1万人~1万2,000人に削減方針。しかし投資予定50億ドル~53億ドルに変更はなし。
・新車販売台数、コロナ禍以前の水準回復は2022年(8月26日GESTIÓN紙11面)
1月~7月車両販売実績(AAP)は5万4,033台、前年同期比▲44.3%。公共交通機関利用によるコロナ感染危惧、企業営業再開によるデリバリー用及び作業用商用車(ワンボックスカー、ピックアップ車)需要、重量車両の買い替え等もあり、今年下半期の販売台数は回復基調で、今年の販売台数は▲30%と予測(SCOTIABANK)。雇用不安・所得逓減が続いているところ、ワクチン実効化により消費者の信頼が回復し、コロナ禍以前の販売台数に回復するのは2022年と予測。
・貿易協会発表:今年度非伝統的農産物輸出額70億ドル、ブルーベリー首位と予想(9月14日GESTIÓN紙18面)
1~7月の非伝統的産品農産物輸出額実績は前年比▲2.3%の34億6,000万ドル。8月以降は主要品目のアボカド、ブドウ、マンゴーを軸に年初来の落ち込みが払拭され、今年度累計は昨年を3億1,200万ドル上回る約70億ドルと予想。7月はブドウ(+38%)とマンゴー(14%)、アボカド(+21.5%)共に輸出量は増加。ただし、アボカドだけは世界的な供給過剰による価格下落から輸出額が減少。今後収穫期を迎えるブルーベリーの輸出額貢献にも期待。
・バリオス通商観光相:観光セクターの回復は2026年、6年かかる(9月18日GESTIÓN紙11面)
コロナ禍以降、現在まで最も深刻な打撃を受けて、未だに休業状態の観光セクターの回復には2026年まで6年かかるとバリオス同相が指摘。今年の外国人観光客ペルー訪問者数は90万人、前年比350万人の減少となり、19年前の2001年に逆戻りした。収入は80%減、38億ドルの損失。昨年同水準に回復するには漸進的で緩慢な状態。同省は税支払いや融資に優遇策、防疫衛生プロトコル基準の支援、観光振興策を推進。
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲9.82%(8月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率1.82%(9月までの一年間)、対米ドル為替相場3.556ソル(9月平均値)、リマ首都圏の完全失業率16.5%(9月)、財政収支4,495百万ソルの赤字(9月)、貿易収支321百万米ドルの黒字(8月)となった。
2 各論
(1) 主要経済指標
ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、8月は特に宿泊・飲食業、運輸・倉庫・郵便等及び企業貸付の成長率が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲9.82%(前年同月比)となった。
イ インフレ率
9月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.14%となり、最近12か月(昨年10月~9月)の上昇率は、1.82%となった。
ウ 為替相場
9月の対米ドル為替相場の平均は3.556ソルであった。
エ 失業率
9月のリマ首都圏の完全失業率は16.5%であった。
オ 財政収支
9月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で21.4%減となった。歳出は対前年同月比で15.0%増となった。全体では、プライマリーバランスは4,495百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると4,768百万ソルの赤字となった。
カ 貿易収支
8月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比31.1%減、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が2.3%増となり、全体では3,075百万米ドル(対前年同月比21.9%減)となった。主要輸出品目は金、銅、魚粉であった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が10.7%減、中間財は33.1%減、資本財が20.2%減となり、全体で2,753百万米ドル(対前年同月比24.0%減)となった。この結果、貿易収支は321百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は携帯電話、軽油、自動車であった。
キ 外貨準備高
9月末の外貨準備高は72,354百万米ドルとなった。
ク 対外累積債務
2020年6月末の対外債務累積総額は82,314百万米ドルとなった。
(注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
(2) 最近の主な出来事
・農業省発表:コロナ禍でも農産品輸出は好調、プラス維持(7月20日El Peruano紙10面)
1月~5月の農産品輸出24億2,800万ドル、前年同期比0.6%増とプラス成長を維持。非伝統的産品(果物・野菜)輸出が15億2,700万ドルで9.4%増加。品目別では生鮮ぶどう4億4,900万ドル(+26%)、生鮮アボカド3億2,000万ドル(+9%)、生鮮マンゴー(2億2,200万ドル)、冷凍マンゴー9,700万ドルなど。輸出仕向け地別では米国30%、オランダ8%、スペイン7%、エクアドル5%、コロンビア4%、英国3%、その他22%。
・政府年次修正予算の運輸セクター予算消化率未だ19%(7月30日GESTIÓN紙2面)
今年度政府当初予算は1,773億6,700万ソル、政府3レベル25セクターにおける現在の修正予算は211億1,600万ソル増の1,984億8,400万ソルで7月28日時点消化率は40.4%。公共投資の要である運輸セクターの予算は当初比で33%増だが、消化率は19%にとどまっている。予算の約半分を占める投資事業の同率はわずか18%であり、政府は下半期の加速に期待。地方政府同部門の今年度予算消化目標は前年比9%増の66億7,800万ソル。
・中銀(BCR)・国家税関税務監督庁(SUNAT)発表:上半期ペルー産品の輸出相手国は米国のみが増加(8月11日GESTIÓN紙12面)
上半期輸出減、輸出相手国1位は中国でシェアは低下、増加は米国のみ。(1)中国42億8,400万ドル(前年比▲38.6% シェア前年29.7%➡今年25.6%)(2)ラ米諸国25億9,300万ドル(▲36.3% 17.8%➡15.5%)(3)米国26億9,600万ドル(+8.3% 10.9%➡16.1%)(4)アジア諸国(中国以外)29億2,800万ドル(▲26.5% 17.5%同率)(5)欧州諸国22億4,100万ドル(▲19.5% 12.2%➡13.4%)。
・ケジャベコ(QUELLAVECO)銅山開発、コロナ禍の影響甚大(8月26日GESTIÓN紙6面)
ペルー最大の銅開発プロジェクト、QUELLAVECO銅山(英国資本ANGLO AMERICAN)=モケグア州=はコロナ禍の影響を受けており、開発は防疫隔離策に準じて4月から中断状態であるほか、関連就業者1万6,000人のうち現在の就業者は水処理・防災対策の1,300人のみとなっている。防疫衛生面の見直しはロジスティクス面だけでなく坑内現場作業関連にも影響し、就業者総数は1万人~1万2,000人に削減方針。しかし投資予定50億ドル~53億ドルに変更はなし。
・新車販売台数、コロナ禍以前の水準回復は2022年(8月26日GESTIÓN紙11面)
1月~7月車両販売実績(AAP)は5万4,033台、前年同期比▲44.3%。公共交通機関利用によるコロナ感染危惧、企業営業再開によるデリバリー用及び作業用商用車(ワンボックスカー、ピックアップ車)需要、重量車両の買い替え等もあり、今年下半期の販売台数は回復基調で、今年の販売台数は▲30%と予測(SCOTIABANK)。雇用不安・所得逓減が続いているところ、ワクチン実効化により消費者の信頼が回復し、コロナ禍以前の販売台数に回復するのは2022年と予測。
・貿易協会発表:今年度非伝統的農産物輸出額70億ドル、ブルーベリー首位と予想(9月14日GESTIÓN紙18面)
1~7月の非伝統的産品農産物輸出額実績は前年比▲2.3%の34億6,000万ドル。8月以降は主要品目のアボカド、ブドウ、マンゴーを軸に年初来の落ち込みが払拭され、今年度累計は昨年を3億1,200万ドル上回る約70億ドルと予想。7月はブドウ(+38%)とマンゴー(14%)、アボカド(+21.5%)共に輸出量は増加。ただし、アボカドだけは世界的な供給過剰による価格下落から輸出額が減少。今後収穫期を迎えるブルーベリーの輸出額貢献にも期待。
・バリオス通商観光相:観光セクターの回復は2026年、6年かかる(9月18日GESTIÓN紙11面)
コロナ禍以降、現在まで最も深刻な打撃を受けて、未だに休業状態の観光セクターの回復には2026年まで6年かかるとバリオス同相が指摘。今年の外国人観光客ペルー訪問者数は90万人、前年比350万人の減少となり、19年前の2001年に逆戻りした。収入は80%減、38億ドルの損失。昨年同水準に回復するには漸進的で緩慢な状態。同省は税支払いや融資に優遇策、防疫衛生プロトコル基準の支援、観光振興策を推進。
(了)