ペルーの経済情勢(2020年第4四半期)
令和3年2月3日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲2.81%(11月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率1.97%(12月までの一年間)、対米ドル為替相場3.603ソル(12月平均値)、リマ首都圏の完全失業率13.8%(10月~12月)、財政収支19,852百万ソルの赤字(12月)、貿易収支763百万米ドルの黒字(11月)となった。
2 各論
(1) 主要経済指標
ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、11月は金融・保険及び建設業の伸びが見られた一方、宿泊・飲食業及び運輸・倉庫・郵便等が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲2.81%(前年同月比)となった。

イ インフレ率
12月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.05%となり、最近12か月(1月~12月)の上昇率は、1.97%となった。
ウ 為替相場
12月の対米ドル為替相場の平均は3.603ソルであった。
エ 失業率
10月~12月のリマ首都圏の完全失業率は13.8%であった。
オ 財政収支
12月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で6.5%増となった。歳出は対前年同月比で39.8%増となった。全体では、プライマリーバランスは19,852百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると20,153百万ソルの赤字となった。
カ 貿易収支
11月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比0.1%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が7.4%増となり、全体では4,064百万米ドル(対前年同月比2.4%増)となった。主要輸出品目は銅、金、ブドウであった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が6.5%増、中間財は5.3%増、資本財が7.1%減となり、全体で3,301百万米ドル(対前年同月比1.5%増)となった。この結果、貿易収支は763百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は軽油、携帯電話、自動車であった。

キ 外貨準備高
12月末の外貨準備高は74,707百万米ドルとなった。
ク 対外累積債務
2020年9月末の対外債務累積総額は84,914百万米ドルとなった。
(2) 最近の主な出来事
・経財省発表:第3四半期末公共事業予算消化率全国1,680自治体で50%未満(2020年10月12日GESTIÓN紙2面)
2020年9月30日時点の公共事業予算消化率は全国1,874中1,680の自治体で50%未満と判明。うち762自治体では20%未満、さらに6自治体は0%。リマ市における消化率50%超えは2区のみ。コロナ禍に伴う各措置の影響に加え、支出回復も遅延と説明。建物等構造物建設向け2020年度修正予算165億3,760万ソルの消化率はわずか22%、道路インフラ整備(予算12億9,780万ソル)は20.1%、上下水道整備(7億8,750万ソル)は21.3%。
・国際通貨基金(IMF)発表:2020年、国民一人当たりの国内総生産(GDP-PBI)14.8%減(2020年10月15日GESTIÓN紙2面)
2020年、ペルーの国民一人当たりのGDP(10,895米ドル)は前年比▲14.8%と域内諸国でベネズエラ(5,259米ドル▲25.4%)を除いて域内諸国最高の減少率となり過去8年間で最低を記録した。厳しい防疫隔離策で経済麻痺が要因(BBVA RESEARCH)。アルゼンチン(19,271米ドル▲12.7%)、エクアドル(10,045米ドル▲12.2%)、メキシコ(17,790米ドル▲9.9%)、ボリビア(7982米ドル▲9.2%)、コロンビア(13,374米ドル▲9.1%)、チリ(22,190米ドル▲7.7%)、ブラジル(13,777米ドル▲6.4%)。
・農業灌漑省発表:農産品輸出にフルーツ貢献、ブドウは2020年度10億米ドル突破の見込み(2020年10月19日GESTIÓN紙22面)
2020年1~8月農産品輸出額は43億3,630万米ドル。世界的な需要減退により輸出額全体(▲23.5%)が落ち込む中、前年同期比▲1.6%で善戦。さらに同省は9~12月の伸び代(+13%)に期待、年間では78~80億米ドル(+4.4%)に到達と見込む。うち主要輸出品のフルーツは37億4,000万米ドル(+10%)、ブドウとブルーベリーが2トップ。1~8月のブドウ輸出額は4億3,656万米ドル(+21%)、年末には単品初の10億米ドル超えと予想。
・国際銅価格相場、7年来の最高値となる(2020年11月26日GESTIÓN紙14面)
2020年11月25日付ロンドン金属取引所(LME)銅価格は直近7年間、2014年1月以来の最高値7,360米ドル/トン当たり(終値7,299米ドル)をつけた。10月中旬比で15%増加と上昇傾向加速。COVID-19ワクチンの実用化、中国の新規建設プロジェクト発表による銅需要回復への期待感を反映した。新興国(ブラジル、ロシア、メキシコ、インド等)の株式市場でもワクチンと中国の動向を反映している。しかし市場筋は過度な期待感への警戒心示している。
・首相府発表:経済活動再開計画第4フェーズの修正(2020年11月27日El Peruano紙4面)
ペルー政府は、2020年11月26日付で経済活動再開計画第4フェーズを修正。修正内容は、第4フェーズで再開が認められた経済活動のうち、(1)海上旅客運送サービスの最大収容人数を50%以下から100%に拡大、(2)国内水路(河川及び湖沼)による旅客及び貨物運搬サービスの最大収容人数を50%以下から100%に拡大。
・MOODY’S 2021年度大統領・国会議員一般選挙の結果次第で格付け引き下げも(2020年12月9日GESTIÓN紙23面)
同社は最新報告で、ペルーの国会がパンデミック前後に少なくとも2度大統領の失脚に関与し国家統治における空白期間を生んだと強調。中道のサガスティ新大統領には前政権の広範な政策継承を望む一方、2021年4月予定の一般選挙の結果が国家財政の安定及び格付決定の鍵になるとし、為政と政治機構の弱体化を意図する近年の傾向がこのまま継続すればペルーの信用低下につながると指摘。強力な政党が推す大統領候補が見当たらず、当選後の国会支持獲得を懸念。
・ペルー自動車協会(AAP)予測:電動車・ハイブリッド車の販売増加、価格同等化へ(2020年12月14日GESTIÓN紙21面)
自動車市場の世界の潮流の中、ペルーは後発国だが、電動車、ハイブリッド車(ガソリン併用)の世界的増加に合わせて、ペルーでも2020年同車の販売は550台で、前年(366台)比50.2%増加した。バッテリーコスト減や技術革新等で2024年~2026年ガソリン車とほぼ同じ価格になる。2021年の販売は1,465台と3倍弱と予想。今後、価格低下と共に更に増え、2029年は50万台と自動車市場の10%を占めると予測。
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲2.81%(11月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率1.97%(12月までの一年間)、対米ドル為替相場3.603ソル(12月平均値)、リマ首都圏の完全失業率13.8%(10月~12月)、財政収支19,852百万ソルの赤字(12月)、貿易収支763百万米ドルの黒字(11月)となった。
2 各論
(1) 主要経済指標
ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、11月は金融・保険及び建設業の伸びが見られた一方、宿泊・飲食業及び運輸・倉庫・郵便等が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲2.81%(前年同月比)となった。
イ インフレ率
12月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.05%となり、最近12か月(1月~12月)の上昇率は、1.97%となった。
ウ 為替相場
12月の対米ドル為替相場の平均は3.603ソルであった。
エ 失業率
10月~12月のリマ首都圏の完全失業率は13.8%であった。
オ 財政収支
12月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で6.5%増となった。歳出は対前年同月比で39.8%増となった。全体では、プライマリーバランスは19,852百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると20,153百万ソルの赤字となった。
カ 貿易収支
11月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比0.1%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が7.4%増となり、全体では4,064百万米ドル(対前年同月比2.4%増)となった。主要輸出品目は銅、金、ブドウであった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が6.5%増、中間財は5.3%増、資本財が7.1%減となり、全体で3,301百万米ドル(対前年同月比1.5%増)となった。この結果、貿易収支は763百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は軽油、携帯電話、自動車であった。
キ 外貨準備高
12月末の外貨準備高は74,707百万米ドルとなった。
ク 対外累積債務
2020年9月末の対外債務累積総額は84,914百万米ドルとなった。
(注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
(2) 最近の主な出来事
・経財省発表:第3四半期末公共事業予算消化率全国1,680自治体で50%未満(2020年10月12日GESTIÓN紙2面)
2020年9月30日時点の公共事業予算消化率は全国1,874中1,680の自治体で50%未満と判明。うち762自治体では20%未満、さらに6自治体は0%。リマ市における消化率50%超えは2区のみ。コロナ禍に伴う各措置の影響に加え、支出回復も遅延と説明。建物等構造物建設向け2020年度修正予算165億3,760万ソルの消化率はわずか22%、道路インフラ整備(予算12億9,780万ソル)は20.1%、上下水道整備(7億8,750万ソル)は21.3%。
・国際通貨基金(IMF)発表:2020年、国民一人当たりの国内総生産(GDP-PBI)14.8%減(2020年10月15日GESTIÓN紙2面)
2020年、ペルーの国民一人当たりのGDP(10,895米ドル)は前年比▲14.8%と域内諸国でベネズエラ(5,259米ドル▲25.4%)を除いて域内諸国最高の減少率となり過去8年間で最低を記録した。厳しい防疫隔離策で経済麻痺が要因(BBVA RESEARCH)。アルゼンチン(19,271米ドル▲12.7%)、エクアドル(10,045米ドル▲12.2%)、メキシコ(17,790米ドル▲9.9%)、ボリビア(7982米ドル▲9.2%)、コロンビア(13,374米ドル▲9.1%)、チリ(22,190米ドル▲7.7%)、ブラジル(13,777米ドル▲6.4%)。
・農業灌漑省発表:農産品輸出にフルーツ貢献、ブドウは2020年度10億米ドル突破の見込み(2020年10月19日GESTIÓN紙22面)
2020年1~8月農産品輸出額は43億3,630万米ドル。世界的な需要減退により輸出額全体(▲23.5%)が落ち込む中、前年同期比▲1.6%で善戦。さらに同省は9~12月の伸び代(+13%)に期待、年間では78~80億米ドル(+4.4%)に到達と見込む。うち主要輸出品のフルーツは37億4,000万米ドル(+10%)、ブドウとブルーベリーが2トップ。1~8月のブドウ輸出額は4億3,656万米ドル(+21%)、年末には単品初の10億米ドル超えと予想。
・国際銅価格相場、7年来の最高値となる(2020年11月26日GESTIÓN紙14面)
2020年11月25日付ロンドン金属取引所(LME)銅価格は直近7年間、2014年1月以来の最高値7,360米ドル/トン当たり(終値7,299米ドル)をつけた。10月中旬比で15%増加と上昇傾向加速。COVID-19ワクチンの実用化、中国の新規建設プロジェクト発表による銅需要回復への期待感を反映した。新興国(ブラジル、ロシア、メキシコ、インド等)の株式市場でもワクチンと中国の動向を反映している。しかし市場筋は過度な期待感への警戒心示している。
・首相府発表:経済活動再開計画第4フェーズの修正(2020年11月27日El Peruano紙4面)
ペルー政府は、2020年11月26日付で経済活動再開計画第4フェーズを修正。修正内容は、第4フェーズで再開が認められた経済活動のうち、(1)海上旅客運送サービスの最大収容人数を50%以下から100%に拡大、(2)国内水路(河川及び湖沼)による旅客及び貨物運搬サービスの最大収容人数を50%以下から100%に拡大。
・MOODY’S 2021年度大統領・国会議員一般選挙の結果次第で格付け引き下げも(2020年12月9日GESTIÓN紙23面)
同社は最新報告で、ペルーの国会がパンデミック前後に少なくとも2度大統領の失脚に関与し国家統治における空白期間を生んだと強調。中道のサガスティ新大統領には前政権の広範な政策継承を望む一方、2021年4月予定の一般選挙の結果が国家財政の安定及び格付決定の鍵になるとし、為政と政治機構の弱体化を意図する近年の傾向がこのまま継続すればペルーの信用低下につながると指摘。強力な政党が推す大統領候補が見当たらず、当選後の国会支持獲得を懸念。
・ペルー自動車協会(AAP)予測:電動車・ハイブリッド車の販売増加、価格同等化へ(2020年12月14日GESTIÓN紙21面)
自動車市場の世界の潮流の中、ペルーは後発国だが、電動車、ハイブリッド車(ガソリン併用)の世界的増加に合わせて、ペルーでも2020年同車の販売は550台で、前年(366台)比50.2%増加した。バッテリーコスト減や技術革新等で2024年~2026年ガソリン車とほぼ同じ価格になる。2021年の販売は1,465台と3倍弱と予想。今後、価格低下と共に更に増え、2029年は50万台と自動車市場の10%を占めると予測。
(了)