3月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和3年5月10日

【概要】

(内政)

●ビスカラ元大統領は、新型コロナウイルスの不当なワクチン接種を理由とする国会の弾劾プロセスの差し止めを求めてペルー司法(5日)及び米州人権委員会(CIDH)(27日)に申し立てを行った。

●11日、ペルー検察はケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首他を起訴した。

(外交)

●5日、サガスティ大統領はトルドー・カナダ首相とオンラインで首脳会談を行った。

 

【本文】

1 内政

(1)ワクチンゲート事件関連

ア ビスカラ元大統領は、国会における所謂ワクチンゲート事件を巡る弾劾プロセスは性急なものであるとして右プロセスの差し止めを求め、5日にペルー司法に対し、また27日には米州人権委員会(CIDH)に対しても申し立てを行った旨明らかにした。

イ 30日、本弾劾プロセスを担当する国会の弾劾小委員会は、不当なワクチン接種によりビスカラ元大統領他に対し公職追放措置を執ることを勧告する報告書を承認した。同報告書においてビスカラ元大統領には10年、アステテ前外務大臣には1年、マセッティ前保健大臣には8年の公職追放措置を執ることが提案された。

 

(2)ケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首の起訴

 11日、ペルー検察は、2006年及び2011年の大統領選挙キャンペーンにおいて伯オデブレヒト社等から不正な資金を受け取っていた疑いにより約2年4ヶ月にわたり捜査を行っていたケイコ人民勢力党(FP)党首他同党関係者等41名に対し、組織犯罪、資金洗浄、司法妨害及び行政手続きにおける虚偽の申告の容疑により起訴した。検察は、ケイコ党首に対し30年10ヶ月の禁固刑を求刑するとともに、36ヶ月の出国禁止措置を要求した。また、ケイコ党首の夫マーク・ビト・ビジャネラ氏(米国籍)に対しても22年8ヶ月の禁固刑を求刑した。

 

(3)ビスカラ元大統領に対する勾留請求

ア 12日、ペルー検察は、モケグア州知事時代の公共事業入札を巡る賄賂授受疑惑で捜査を行うビスカラ元大統領につき、司法逃れ及び司法妨害の蓋然性があるとして裁判所に対し18ヶ月の勾留措置請求を行った。

イ 18日、ペルー裁判所は検察が要請したビスカラ元大統領に対する18ヶ月の未決勾留措置を棄却した。

ウ 23日、ペルー検察はビスカラ元大統領に対する未決勾留措置の棄却を受け、上訴した。

 

(4)運輸関係者による全国ストライキの実施

ア 15日、国家運輸・運転手組合(GNTC)は燃料価格の高騰他への対応を求める無期限の全国ストライキを国内全土で開始し、国内各地で道路封鎖等が行われた。

イ 20日、国内運輸関係者と運輸通信省他の関係省庁は補助金によりディーゼル燃料の価格を据え置くこと等で合意し、同ストライキが解除された。

 

(5)国会における厚生年金基金(AFP)引出容認法の可決

 30日、国会本会議において厚生年金基金(AFP)加入者の事前引き出しを認める法が賛成多数で可決された(賛成86票、反対6票、棄権13票)。

 

(6)憲法裁判所におけるフジモリ元大統領の即時釈放の棄却

 フジモリ元大統領弁護団は、昨年5月にリマ高等裁判所がフジモリ元大統領に対する人身保護請求(habeas corpus)を棄却したことに疑義を呈し、憲法裁判所に対し同決定の取り消しと同元大統領の即時釈放を求めていたところ、6日、憲法裁判所はこれら請求を棄却した。

 

(7)サガスティ大統領の支持率(括弧内は前回数値)

ア ダトゥム社:5日~7日実施、全国(対象1,200名)、誤差±2.8%、信頼度95

支持:28%(40%) 不支持:61%(52%)

イ イプソス社:10日~11日実施、全国(対象1,206名)、誤差±2.8%、信頼度95

  支持:29%(38%) 不支持:62%(51%)

ウ IEP2225日実施、全国(対象1,212名)、誤差±2.8%、信頼度95%

  支持:20%(22%) 不支持:65%(65%)

 

(8)新型コロナウイルスを巡る状況

ア ワクチン確保の状況

(ア)2日、サガスティ大統領はペルー政府がロシア製ワクチンの調達についてロシアのガマレア研究所と交渉を行っている旨明らかにした。

(イ)3日、米ファイザー社から初めてとなるワクチン5万回分がペルーに到着し、8日から同ワクチンの高齢者向け接種が開始された。

(ウ)11日、サガスティ大統領は、10日に「Covaxファシリティ」による初の供給となる米ファイザー社製ワクチン117,500万回分が到着したと述べた。

イ 各種措置他

(ア)13日、ペルー政府は地域毎の感染警戒レベルの見直しと社会的隔離措置を3月15日から28日まで延長する最高令を公布した。また、同期間中、英国、南アフリカ及びブラジルから渡航、また同地域で乗り継ぎを行った非居住外国人のペルー入国を引き続き停止とした。

(イ)27日、ペルー政府は国家緊急事態宣言を4月1日から30日まで延長すると共に、地域毎の感染警戒レベルの見直しと社会的隔離措置を延長する最高令を公布した。

 

2 外交

(1)サガスティ大統領とトルドー・カナダ首相の会談

 5日、サガスティ大統領は、トルドー・カナダ首相とオンラインで会談を行い、両国関係及びベネズエラ移民への対応に係る取組を強化する必要性について意見を交わした。

 

(2)ボリビアのアニェス暫定政権時の閣僚による難民申請

 15日、ペルー外務省はTwitterを通じて、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との調整によりボリビアのアニェス暫定政権時に通信大臣を務めたロクサナ・リサラガ氏の難民申請を受領した旨明らかにした。

 

(3)グリンスパン・イベロアメリカ事務局長との会談(オンライン)

 22日~25日、グリンスパン・イベロアメリカ事務局長はオンラインでサガスティ大統領、ベルムデス首相及びバグネル外務大臣他閣僚と会談した他、貧困との闘いに関するセミナーを開催し、ペルーとの恒常的な取組やイベロアメリカ地域におけるペルーとの協力の重要性について強調した。

 

(4)新型コロナウイルス関連の国際協力

 26日、中国政府は保健省に対しICU用ベッド50床を供与した。