ペルーの経済情勢(2021年第1四半期)

令和3年5月27日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲4.18%(2月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率2.60%(3月までの一年間)、対米ドル為替相場3.709ソル(3月平均値)、リマ首都圏の完全失業率15.3%(1月~3月)、財政収支2,324百万ソルの赤字(3月)、貿易収支749百万米ドルの黒字(2月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
最新の経済成長率(GDP成長率)について、2月は金融・保険及び建設業の伸びが見られた一方、宿泊・飲食業及び運輸・倉庫・郵便等が大幅マイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲4.18%(前年同月比)となった。

 
 
イ インフレ率
 3月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.84%となり、最近12か月(2020年4月~2021年3月)の上昇率は、2.60%となった。

 
ウ 為替相場
3月の対米ドル為替相場の平均は3.709ソルであった。

 
 
エ 失業率
 1月~3月のリマ首都圏の完全失業率は15.3%であった。

 
オ 財政収支
 3月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で43.4%増となった。歳出は対前年同月比で29.1%増となった。全体では、プライマリーバランスは2,324百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると2,597百万ソルの赤字となった。


カ 貿易収支
 2月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比19.1%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が15.2%増となり、全体では4,207百万米ドル(対前年同月比17.9%増)となった。主要輸出品目は銅、金、魚粉であった。
輸入額は、対前年同月比で消費財が3.9%増、中間財は18.4%増、資本財が22.8%増となり、全体で3,457百万米ドル(対前年同月比15.9%増)となった。この結果、貿易収支は749百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油、携帯電話、軽油であった。


 
 キ 外貨準備高
3月末の外貨準備高は79,922百万米ドルとなった。 

  
ク 対外累積債務
2020年12月末の対外債務累積総額は88,382百万米ドルとなった。

 
 
   
 (注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
 

(2) 最近の主な出来事
・国家税務監督庁発表:2020年度税収 前年比▲17.4%(2021年1月12日GESTIÓN紙13面
 昨年度の税収は合計931億2,800万ソル。前年実績比で17.4%(176億3,400万ソル)の減収となり、世界金融危機が発生した2009年(▲9.8%)を上回る下落幅となった。COVID-19パンデミックに伴う国内経済活動の停滞が影響した結果であったが、昨年下半期以降は経済活動再開の流れに乗り、12月単月税収は前年比▲3.1%(93億7,600万ソル)まで回復した。一般販売税(IGV)と所得税の前年比減収幅はそれぞれ81億1,300万ソルと58億4,900万ソルとなった。
 
・農業省発表:2020年農産品輸出4.4%増、果物輸出が15%増と伸長(2021年2月15日GESTIÓN紙15面)
 昨年の農産品輸出実績は77億9,100万ドルとなり、前年比4.4%の増加となった。伝統的産品が7億2,400万ドルと前年比▲6.5%であったのに対し、非伝統的産品は70億6,700万ドルとなり、前年比5.7%増であった。特に果物が39億ドルと15%伸長し、ぶどうが10億4,600万ドル(+19.5%)、ブルーベリーが10億300万ドル(+22.3%)に急増した。今年の農産品輸出は84億ドル(+7.8%)を想定しており、ブルーベリーがぶどうを超える見込みである。また、マンゴーは前年比40.8%増、アボカドは同比0.9%増、アスパラガスは同比3.7%減となる見通し。
 
・エネルギー鉱山省発表:2020年銅産出 チリとの格差拡大(2021年2月17日GESTIÓN紙13面)
 世界の銅産出量第2位(1位はチリ)のペルーはコロナ禍の直撃で、2020年の銅産出が約215万トンとなり、前年比12.5%の大幅減となった。チリは約570万トンで0.95%減に留まり、世界シェアも前年の28.1%から28.0%とほぼ変化がなかったのに対し、ペルーは11.9%から10.5%に減退した。将来の銅産出の新規プロジェクトはチリが200件であるのに対し、ペルーは64件と差をつけられ、新規探査投資も世界4位から6位に後退しているが、生産自体は昨年10月以降回復基調にある。
 
・FRASER世界鉱業投資魅力度ランキング2020でペルー34位に後退(2021年2月24日GESTIÓN紙12面)
 FRASER世界鉱業投資魅力度ランキング2020で、ペルーは世界77か国中34位となり、2019年の24位から10ランク後退した。2016年以降の推移は16年:28位(104か国)→17年:19位(91か国)→18年:14位(83か国)→19年:24位(76か国)→20年:34位(77か国)というように、2018年から毎年10位ずつ順位を落とし、ラ米域内でも前年の3位から4位に下落した。中でも鉱業潜在性指標の低下が顕著(前年比18ポイント下落)であり、その要因について全国鉱業石油エネルギー協会は探鉱投資の継続的減少が主因と説明している。実際、不明瞭な探鉱調査許可取得規準が足かせとなり、同投資は前年比35.5%減となった。
 
・ペルー自動車協会(AAP)発表:2月期トラック、オートバイ販売増、乗用車低調(2021年3月5日GESTIÓN紙6面)
 社会的隔離策の中、資材原料・商品運搬用の重量車両(トラック)の2月期販売実績は、車両買替えの時期と需要増で1,252台と前年同月比10.1%増加した。一方、軽量車両(セダン、SUV等)は購入動機の30%を占めるショールーム、ショッピングセンター展示販売が休業となったことで21.6%減となった。オートバイ(二輪、三輪)の販売実績は、宅配需要の増加により前年比26.3%増の2万8,401台と好調だった。
 
・Anglo American ケジャベコ(Quellaveco)、銅山開発工事最終段階へ(2021年3月11日GESTIÓN紙6面)
 アングロ・アメリカン(英国本社)が総額53億ドルを投資するケジャベコ銅山開発(モケグア州)は、3年半続いた工事が今年4月から最終段階(14億ドル投資)に入る。操業開始予定は2022年、年間銅産出は30万トンで、ペルーの銅産出に大きく寄与する。操業は労働者の安全確保を含めて100%デジタル化された初めてのケースとなる。すでに水資源確保の用水路建設工事は98%進捗済み。
 
・総選挙を控えて政局先行き不安 ドル為替相場史上最高を更新(2021年3月30日GESTIÓN紙1,2面)
 3月29日付為替相場は1ドル=3.750ソルと米ドルが対ソル史上最高額を更新した。3月に入りソル切り下げ率は2.74%(3.65➡3.75ソル)となった。中銀(BCRP)が直接ドル買い(1億1,100万ドル)とスワップ為替(12億1,900ソル)で市場に介入したが、ドル高ソル安を制御することはできなかった。有力大統領候補の3分の2がアンチ市場性傾向を示していることから、外国投資家筋の懸念が増幅し、ドル需要が増え続けている。また大統領選決選投票は必至の情勢のため、政局不安が長引くことも懸念されている。市場筋は今後3.75~3.80ソルの浮動を予測している。
 
(了)