9月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和3年10月29日
【概要】
(内政)
●10日、与党ペルー・リブレは、あらゆる憲法改正は国会により承認される必要がある旨を定めた憲法206条を改正する憲法改正案を国会に提出した。
●30日、マラビ労働雇用促進大臣の国会喚問が行われた。
(外交)
●17日~22日、カスティージョ大統領は大統領就任後初めてとなる外遊でメキシコ及び米国を訪問した。
 
【本文】
1 内政
(1)マラビ労働雇用促進大臣の国会喚問と内閣信任決議提出に向けた動き
ア 1日、人民刷新党はマラビ労働雇用促進大臣の国会喚問を要求する動議を提出した。
イ 1日、アルバ国会議長はツイッターを通じて、カスティージョ大統領に対しマラビ大臣の交代を求めた。
ウ 3日、マラビ大臣は、国会喚問に出席し、辞任はしない旨発言した。
エ 17日、国会においてマラビ大臣の国会喚問を要求する動議が賛成多数(賛成81票、反対37票、棄権1票)で受諾され、同大臣に対する喚問が30日に行われることが決定した。
オ 29日、ベジド首相は、「必要とあればマラビ大臣続投のために国会に対し信任を問うつもりである。」と述べたところ、アルバ国会議長他国会の各会派のスポークスマンがカスティージョ大統領を訪れ会合を行った。同会合後、アルバ国会議長は、Twitterを通じて、「カスティージョ大統領は我々に対し国会への内閣信任決議の提出はアジェンダに無いと述べた。」と明らかにした。
カ 30日、国会はマラビ大臣を召喚し、テロ組織との関係について説明を求めたところ、同大臣は自身とテロ組織との繋がりについて否定した。
キ 同日、野党会派(人民勢力党(FP)、人民刷新党(RP)、国家前進党、進歩のための同盟(APP)及びPodemos Peru)は、マラビ大臣がセンデロ・ルミノソ(SL)と繋がりがないことを納得させることができなかったとして、同大臣に対する罷免決議を提出する意向を示した。
 
(2)全国選挙裁判所による政党登録の抹消
 6日、全国選挙裁判所(JNE)は、2021年総選挙(大統領・国会議員選挙)の結果を踏まえ、全国政党としての登録維持要件を満たさなかった団体の政党登録抹消を発表し、拡大戦線(FA)、ペルー農業人民戦線(FREPAP)、キリスト教人民党(PPC)及びペルー統一党(UPP)等15団体が全国政党としての政党登録を抹消された。2019年の政党法改正により、2021年国会議員選挙以降、(1)直近の総選挙において2選挙区以上から計5名以上の国会議員が当選し、かつ、(2)少なくとも有効投票率5%以上を獲得できなければ政党登録が抹消されることとなっており、その結果、今次総選挙で国会議席を獲得した9団体のみが全国政党として存続することとなった。なお、紫の党(PM)はJNEに申し立てを行い登録抹消が取り消された。
 
(3)与党ペルー・リブレ(PL)による制憲議会招集のための憲法改正法案提出
 10日、与党ペルー・リブレ(PL)は、あらゆる憲法改正は国会により承認される必要がある旨を定めた憲法206条を改正する憲法改正案を国会に提出した。具体的な改正内容として、憲法の全面改正は制憲議会、部分的改正は通常の国会承認により成立するとした上で、制憲議会の招集は国民投票を通じて決定され、同206条改正が成立する場合には大統領が国民投票を招集する旨提案している。
 
(4)SL指導者・創設者の死亡
 11日、SLの創設者・指導者であり、カヤオ海軍基地内の特別刑務所にて服役中であったアビマエル・グスマン受刑者が死亡した。
 
(5)国会における与野党の動き
ア 国会における行政府による内閣信任を問う権限を制限する法案の可決
 17日、国会は、政府が国会に対し内閣の信任を問う権限を制限し、政府の一般的政策に関係した事案のみが対象となる等とする法案を賛成多数(賛成80票、反対40票、棄権0票)で可決した。
イ 表現の自由を制限する法案
 17日、与党PLは国会に対し、緊急と認められる際に政府がメディアや通信業者の活動を制限することを認めるための法案を提出した。これに対し、国内各セクターから懸念の声が挙がった。
 
(6)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:9日~10日実施、全国(1,205名)、誤差±2.8%、信頼度95%
 支持:42%(38%)、不支持:46%(45%)
イ ダトゥム社:12~15日実施、全国(1,202名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:42%(39%)、不支持:46%(41%)
ウ IEP社:20日~23日実施、全国(1,209名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:40%(38%)、不支持:42%(46%)
 
2 外交
(1)USAIDとの協力協定更新に対するギジェルモ・ベルメホ国会議員(与党PL)による批判
 3日、ペルー政府は米国国際開発庁(USAID)との経済協力協定を2026年まで更新したところ、ベルメホ議員は、「ラテンアメリカにおける全てのクーデターの共犯者でありペルーにおけるスパイ機関でもあるUSAIDとの間で外務大臣が協定を更新したことは許されない。このような外交政策は左派政権のものではない。」との内容のツイッターを発して批判した。
 
(2)当国におけるロシア製ワクチンSputnikVの製造プラントの設置に向けた動き
 6日、カスティージョ大統領は、国民向けメッセージにおいて、ペルー政府とロシア政府がペルーにおけるSputnikVの製造プラント建設に関する調整を行っていることを明らかにした。
 
(3)サハラ・アラブ民主共和国との外交関係の再開
ア 8日、ペルー外務省はコミュニケを通じて、ペルー政府及びサハラ・アラブ民主共和国政府が外交関係を再開することで合意した旨発表した。右発表を受けて、当地モロッコ大使館は「ペルー政府の決定は間違っており、驚きの原因であり、国際社会とは逆に向かっている。」と反応した。
イ 10日、ブスタマンテ国会外交委員会委員長は上記決定に関し、マウルトゥア外務大臣に対し説明を求めた。
ウ 13日、マウルトゥア外務大臣は国会外交委員会に対し、「今回の決定は民主主義の伝統及び国際法を完全に遵守するペルーの歴史に一致するものであり、ペルー政府の行動は、西サハラについて非自治地域として如何なる国家にも属さないとした1975年国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見に沿っている。また、国連事務総長主導による当事者間の直接交渉を支持する。」との説明を行った。
 
(4)カスティージョ大統領のメキシコ及び米国訪問
ア 17日~22日、カスティージョ大統領は大統領就任後初めてとなる外遊でメキシコ及び米国を訪問し、本外遊にはマウルトゥア外務大臣、フランケ経済財政大臣、サンチェス通商観光大臣及びセバーヨス保健大臣が同行した。
イ 最初の訪問国のメキシコ(17日~19日)では、第6回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合に出席した他、右会合の機会を利用し、ロペス・オブラドール・メキシコ大統領、ディアス=カネル・キューバ大統領及びアルセ・ボリビア大統領等と会談を行った。
ウ 続いて訪問した米国においては、20日、ワシントンで行われた米州機構(OAS)常設理事会に出席し、アルマグロOAS事務総長やエディエンヌ汎米保健機構(PAHO)事務局長と会談した他、米国商工会議所主催の民間企業約70社代表と会合を行った。
エ 21日、ニューヨークに移動したカスティージョ大統領は第76回国連総会に出席して一般討論演説を行い、パンデミックによる経済回復や社会的排他性等のペルーが抱える問題への取り組み他について述べた。また、グテーレス国連事務総長、クレバ=キャローン米州開発銀行(IDB)総裁及びマルバス世銀総裁等と会談を行った。
 
(5)対ベネズエラ外交
ア 19日、フォルサイトOAS常駐代表は、「リマ・グループはそのサイクルを遂げた。我々は既にマドゥーロ政権と野党間の対話フェーズにいるため、これ以上継続することはない。」と述べた。
イ 21日、ペルー外務省は対ベネズエラとの関係に関し、「ペルーはベネズエラとの外交関係を破棄したことは一度もない。これらの関係は過去の政権においても維持され、現在は領事レベルの関係にある。」とのコミュニケを発出した。
ウ 28日、マウルトゥア外務大臣は国会外交委員会に対し、カスティージョ大統領が外遊先のメキシコでマドゥーロ大統領と会談した件に関し、マドゥーロ大統領のCELAC首脳会合への出席が確認されていなかったことから、両大統領の会談は事前に準備されたものではなく、かつ、公式のアジェンダに入っていたものではなかったと説明した。