10月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和3年12月10日
【概要】
(内政)
●6日、ベジド内閣が総辞職し、同日、バスケス新内閣が発足した。
●25日、バスケス新首相が国会において所信表明演説を行った。
(外交)
●21日、マウルトゥア外務大臣がブリンケン米国務長官とボゴタにおいて外相会談を行った。
●30日、カスティージョ大統領及びアルセ・ボリビア大統領が、第6回ペルー・ボリビア合同閣議に出席した。
 
【本文】
1 内政
(1)ベジド内閣の総辞職とバスケス新内閣の発足
ア 1日、ベジド首相は国会に対する内閣信任決議案の提出について示唆したところ、6日、カスティージョ大統領は、内閣信任決議や国会喚問、罷免といった手段の政治的利用について否定した上で、ベジド首相の辞任を発表した。
イ 同日、ベジド首相の辞任を受けて内閣が総辞職し、ミルタ・バスケス新首相(前国会議長)率いる新内閣が発足した。同新首相は就任後Twitterを通じて、「差別のない尊厳ある生活のために闘い、現実的な改革を促進するこの国の女性及び男性のために取り組んでいく。」と発信した。
ウ 25日、国会においてバスケス首相が所信表明演説を行い、内閣の優先事項として社会的保護システムの強化等を挙げながら、政府の各種政策について説明を行った。
エ バスケス首相の所信表明演説後、バスケス新内閣に対する内閣信任決議の審議が行われていたが、同審議中、与党ペルー・リブレの議員が急死したことから審議が中断された(審議継続は11月4日に延期された。)。
 
(2)フジモリ元大統領の入院他
ア 1日、フジモリ元大統領は血中酸素飽和濃度が低下し、さらに胸部の痛みを訴えたことから、日秘移住百周年記念病院に搬送された。
イ 4日、国家刑務庁(INPE)及びケイコ・フジモリ人民勢力党党首は、フジモリ元大統領がサン・イシドロ地区にあるサンナーエル・ゴルフ(Sanna-El Golf)病院に移送され、約40分間にわたる外科的処置を受け、約70%の狭窄が見られる部分にカテーテル手技によりステントが留置された旨明らかにした。
ウ 5日、トーレス法務人権大臣は、「フジモリ元大統領は重大な罪を犯したため、現在の警察施設内の収監先から一般の刑務所に移動させるべきである。退院後の最初の数日間現在の収監先に戻って完全に回復するのを待ってから一般刑務所に移動する必要がある。」と発言した。
 
(3)政府によるペルー中央準備銀行総裁の任命
 5日、カスティージョ大統領は、Twitterを通じて、2006年から中央準備銀行総裁を務めるフリオ・ベラルデ氏の続投を決定した旨発表した(任期は5年)。
 
(4)行政府による内閣信任を問う権限を制限する法案への拒否権の発動
ア 6日、政府は、国会が可決した政府による国会への内閣信任を問う権限を制限する法案に関し、権力分立と公共政策の立案及び実施に係る行政府の権限を侵害するものであるとして拒否権を発動した。
イ 20日、国会は、政府が拒否権を発動した本法案を賛成多数で再度可決した。
ウ 22日、政府は憲法裁判所に対し本法に係る違憲審査申請を提出した。
 
(5)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:14日~15日実施、全国(1,204名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:42%(42%)、不支持:48%(46%)
イ ダトゥム社:16~19日実施、全国(1,205名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:40%(42%)、不支持:50%(46%)
ウ IEP社:25日~28日実施、全国(1,224名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:35%(40%)、不支持:48%(42%)
 
2 外交
(1)ペルー政府による岸田総理就任に対する祝意表明
 4日、ペルー外務省はTwitterを通じて岸田文雄総理の就任に関し祝意を表するとともに、総理としての成功を祈念するメッセージを発信した。
 
(2)マウルトゥア外務大臣のOECD閣僚理事会への出席
 6日、マウルトゥア外務大臣は、オンライン形式でOECD閣僚理事会に出席し、新型コロナウイルスの影響に対するペルー政府の取り組みについて発言するとともに、ペルー政府としてのOECD正式加盟国入りへの意向を繰り返し述べた。
 
(3)カスティージョ大統領の第130回広州交易会開幕式への出席
 14日、カスティージョ大統領は第130回中国輸出入商品交易会(広州交易会)の開幕式にオンライン形式で出席し、アジア太平洋における特に対外通商及び投資分野におけるペルーの戦略的パートナーとしての中国の重要性を評価している旨の発言を行った。
 
(4)ペルー・ニュージーランド二国間外相会談
 12日、マウルトゥア外務大臣はマフタ・ニュージーランド外務大臣とオンライン形式で会談を行った。両外相は良好な二国間関係を確認するとともに、2022年にペルーとニュージーランドが外交関係樹立50周年を迎えることから、両国関係をさらに強化していく旨表明した。
 
(5)対韓外交
ア 14日、バスケス首相は訪秘したYeo Seung Bae外務政務官と共に、両国のデジタルサービス分野協力促進を目的として設置されたペルー韓国デジタルトランスフォーメーション協力センターの開所式に立ち会った。
イ 15日、マウルトゥア外務大臣はYeo Seung Bae外務政務官と二国間会談を行い、パンデミック対策、経済活性化、科学技術協力等の分野における両国の協力促進について意見交換した。また、双方は地域・多国間情勢についても意見交換を行い、APECや太平洋同盟における協力他、朝鮮半島和平プロセスへの支持について強調した。
 
(6)ベネズエラとの外交関係再開他
ア 15日、ペルー外務省はコミュニケを通じて、ペルー政府が新駐ベネズエラ・ペルー大使としてリチャード・ロハス・ガルシア氏を任命し、ベネズエラ政府は新駐ペルー・ベネズエラ大使にアレクサンダー・ジャニェス・デレウセ氏を任命した旨発表するとともに、これら決定はノルウェーの仲介とオランダ及びロシア政府の支援を得て開始された交渉の枠組みの進展に応じたものである旨説明した。
イ 18日、ペルー検察は、与党ペルー・リブレの選挙キャンペーン資金の不正受け取り及び資金洗浄等の疑いにより捜査対象となっているロハス大使の出国禁止を裁判所に請求した。
ウ 20日、ペルー裁判所はロハス大使に対する6ヶ月の出国禁止を命じた。
エ 22日、ペルー政府は本件大使任命手続きを取り消す決定を行った。
 
(7)ペルー米国二国間外相会談
 21日、マウルトゥア外務大臣は、コロンビアで行われた移民に関する外相会合のマージンでブリンケン米国務長官と外相会談を行った。両外相は、二国間関係の様々な側面について協議を行い、ペルーの民主主義に向けたコミットメントについて強調した。
 
(8)カスティージョ大統領及び関係閣僚のボリビア訪問
 30日、カスティージョ大統領及びアルセ・ボリビア大統領は、ボリビアで行われた第6回ペルー・ボリビア合同閣議に出席した。同合同閣議では、両国における将来的なガスパイプラインの連結、ペルーのイロ港を通じたボリビア・ガス輸出の可能性、チチカカ湖周辺住民の生活向上のための資源の持続的な利用、通商及び観光促進のためのアマゾン地域国境開放等につき協議が行われ、計71の項目から成るラ・パス宣言への署名が行われた。また、両大統領は、テロ、麻薬、ジェンダーに基づく暴力、国際犯罪等への対応における協力強化についても協議した。