11月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和3年12月10日
【概要】
(内政)
●4日、バスケス新内閣に対する信任決議が可決された。
●25日、国会において大統領罷免決議が提出された。
(外交)
●2日、ペルーを訪問したボレル欧州連合(EU)外務・安全保障上級代表兼欧州委員会副委員長がカスティージョ大統領他と会合を行った。
●9日~11日、シャーマン米国務副長官がペルーを訪問し、カスティージョ大統領他と会談を行った。
 
【本文】
1 内政
(1)閣僚の交代
ア 3日、コカ栽培促進の立場や警察官時代の懲戒歴等から大臣としての資質が疑われていたバランスエラ前内務大臣が辞任した。4日、アベリノ・ギジェン氏(元検事。過去にフジモリ元大統領の人権侵害や汚職に関する刑事事案の捜査を行った人物。)が新内務大臣に就任した。
イ 14日、アヤラ前国防大臣は、国軍幹部に対し特定将校昇進のための不当な圧力を加えた疑いにより国会喚問が設定されたことを受け辞任を表明した。これを受け、17日、ベジド前内閣で内務大臣を務めたフアン・カラスコ氏(元検察官)が新国防大臣に就任した。
ウ 17日、インシオ前生産大臣が辞任し、ホルヘ・プラド新生産大臣(公認会計士)が就任した。
 
(2)バスケス内閣に対する信任決議の可決
 4日、与党ペルー・リブレの議員の急死により中断されていたバスケス新内閣に対する内閣信任決議の審議が再開され、採決の結果、賛成多数で同信任決議が可決された(賛成68票、反対56票、棄権11票)。
 
(3)カスティージョ大統領による政権発足100日の成果に関する演説
 11日、カスティージョ大統領はアヤクチョ州において政権発足100日の成果に関する演説を行い、経済、新型コロナウイルス対策及び社会政策の各分野における成果について強調すると共に、新憲法制定のための制憲議会招集の必要性について訴えた。
 
(4)国会における大統領罷免決議の提出
ア パチェコ前大統領府官房長の辞任
(ア)19日、パチェコ前大統領府官房長は、国軍幹部に対する特定将校昇進のための不当な圧力を加えた疑いへの関与や、特定企業及び個人に便宜を図るよう税務監督庁(SUNAT)に圧力を加えた疑いによる非難が高まる中、辞任を表明した。
(イ)同日、ペルー検察は職権乱用疑惑等によりパチェコ前官房長に対する予備捜査(investigacion preliminar)を開始した旨発表した。その後、大統領府において家宅捜索を行ったところ、同前官房長の執務室のトイレから現金20,000米ドルが見つかった旨明らかにした。
イ 大統領罷免決議の提出
 25日、国家前進党、人民勢力党及び人民刷新党の野党3会派からなる国会議員28名の署名をもって、「恒常的な倫理的不能(permanente incapacidad moral)」を理由とする大統領罷免決議が提出された。
 
(5)トーレス法務人権大臣のフジモリ元大統領の恩赦の可能性に関する発言
 16日、トーレス法務人権大臣は、ツイッター他を通じて、現段階でフジモリ元大統領側から恩赦の要請は無いと説明しつつも、フジモリ元大統領の病状が深刻である場合、仮に恩赦が要請されるのであれば、人道的見地から法的枠組みに基づいて恩赦について検討する用意がある旨発言した。
 
(6)2022年度予算案の可決
 25日、国会は総額約1970億ソル(約500億ドル、対前年度7.6%増)に上る予算案を賛成多数で可決した(賛成116票、反対1票、棄権7票)。
 
(7)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:11日~12日実施、全国(1,205名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:35%(42%)、不支持:57%(48%)
イ IEP社:22日~25日実施、全国(1,210名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:25%(35%)、不支持:65%(48%)
 
2 外交
(1)ボレル欧州連合(EU)外務・安全保障上級代表兼欧州委員会副委員長のペルー訪問
ア 2日、カスティージョ大統領はマウルトゥア外務大臣及びサンチェス通商観光大臣と共に、ボレル上級代表との会談を行った。同会談において、カスティージョ大統領はEU諸国からの投資誘致等について協議を行った。また、カスティージョ大統領及びボレル上級代表はEUによる経済協力が展開される地方州知事とも会合を行った。
イ 2日、マウルトゥア外務大臣はフランケ経済財政大臣と共にボレル上級代表と会談を行い、ペルー・EU間の良好な関係を確認した。ボレル上級代表は包摂的で環境に配慮された対ペルー投資に向け、今後3年間で57百万ユーロの支出が予定されている旨発表した。
 
(2)ペルー・中国外交関係樹立50周年
ア 2日、ペルーと中国が外交関係樹立50周年を記念したウェビナーが開催され、開会イベントにマウルトゥア外務大臣及び梁宇駐ペルー中国大使が出席した。
イ 2日、カスティージョ大統領はユーチューブを通じて記念のメッセージを発信し、両国の絆が中国コミュニティの存在によりペルーの歴史を通じて築かれた旨述べた。
 
(3)ニカラグア情勢に関するペルー外務省コミュニケ
 8日、ペルー外務省はニカラグア情勢に対するコミュニケを発出し、7日にニカラグアで実施された大統領・国会議員選挙が米州民主主義憲章に定められた最低限の基準を満たしていない旨表明した。
 
(4)シャーマン米国務副長官のペルー訪問
ア 10日、マウルトゥア外務大臣はペルーを訪問したシャーマン副長官と会談し、二国間協力、パンデミック対策、経済活性化、国境を越えた組織犯罪対策、汚職対策及び気候変動の問題等二国間及び多国間の主要テーマについて協議した。また、両者は、「航空・海上捜索及び救出に関する合意」を発効するための書簡の高官を行った。
イ 11日、カスティージョ大統領はオンライン形式でシャーマン副長官と会談し、米国が主導する「より良い世界再建(ビルド・バック・ベター・ワールド(B3W)」イニシアティブへの参画に対する関心を表明した。また、シャーマン副長官は、ペルーとの同盟の継続、ペルーの包摂的で持続的な成長に向けた米国の協力及び新型コロナウイルス対策等に対するペルーの取り組みへの支援を再確認した旨明らかにした。
ウ 11日、シャーマン副長官はアルバ国会議長と会談し、新型コロナウイルスの終息、国家及び地域の安全保障促進、環境問題への取り組み及び気候変動対策といった両国の共通の目標達成に向け二国間で協力することが重要であると述べた。
 
(5)マウルトゥア外務大臣の第51回米州機構(OAS)総会への出席
ア 10日~12日、マウルトゥア外務大臣はグアテマラで開催された第51回OAS総会に出席した。
イ 15日、ペルー外務省は、プレスリリースを通じて、ペルーが2022年OAS総会の開催国となることが決定されたことを発表した。
 
(6)カスティージョ大統領とバルセナ国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長との会合
 16日、カスティージョ大統領は、マウルトゥア外務大臣及びフランケ経済財政大臣同席の下、当国を訪問中のバルセナECLAC事務局長と会合を行い、新型コロナウイルスのパンデミック後の経済回復や社会的格差の削減に向けた構造的改革等について協議を行った。
 
(7)マウルトゥア外務大臣のイベロアメリカ・サミット出席
 26日、マウルトゥア外務大臣はドミニカ共和国で開催された第28回イベロアメリカ・サミットに出席した。また、会合のマージンにおいてカフィエロ・アルゼンチン外務大臣等とバイ会談を行った。