ペルーの経済情勢(2021年第4四半期)

令和4年2月7日
1 総論
 最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率3.47%(11月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率6.43%(12月までの一年間)、対米ドル為替相場4.037ソル(12月平均値)、リマ首都圏の完全失業率7.8%(10月~12月)、財政収支14,062百万ソルの赤字(12月)、貿易収支1,960百万米ドルの黒字(11月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
 最新の経済成長率(GDP成長率)について、11月は主に宿泊・飲食業、運輸・倉庫・郵便等及び漁業の成長率の伸びが見られ、全体としてGDP成長率は3.47%(前年同月比)となった。


 
 
イ インフレ率
 12月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.78%となり、最近12か月(1月~12月)の上昇率は、6.43%となった。

 
ウ 為替相場
 12月の対米ドル為替相場の平均は4.037ソルであった。

 
 
エ 失業率
 10月~12月のリマ首都圏の完全失業率は7.8%であった。

 
オ 財政収支
 12月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で22.2%増となった。歳出は対前年同月比で4.5%減となった。全体では、プライマリーバランスは14,062百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると14,655百万ソルの赤字となった。
 
カ 貿易収支
 11月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比53.3%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が19.5%増となり、全体では6,115百万米ドル(対前年同月比43.1%増)となった。主要輸出品目は銅、金、天然ガスであった。
 輸入額は、対前年同月比で消費財が1.0%増、中間財は46.7%増、資本財が12.8%増となり、全体で4,154百万米ドル(対前年同月比25.2%増)となった。この結果、貿易収支は1,960百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は携帯電話、原油、軽油であった。
 


 
 キ 外貨準備高
 12月末の外貨準備高は78,495百万米ドルとなった。

 
ク 対外累積債務
 2021年9月末の対外債務累積総額は98,137百万米ドルとなった。

 
 
   
 (注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
 

(2) 最近の主な出来事
・アジア・インフラ投資銀行(AIIB)参加法案の承認
 11月18日、ペルー国会本会議において、ペルーのアジア・インフラ投資銀行(AIIB)への参加を提起する立法決議案が賛成多数により承認された。同決議案は、2018年10月に政府から提出され同年11月に外務委員会を通過した後、これまで本会議で審議されることなく保留にされていた。外務委員会の人民勢力党のエルネスト・ブスタマンテ・ドナイレ委員長は、AIIBはアジアとアジア域外におけるエネルギー、運輸、通信、地方インフラや農業開発など社会及び経済開発を目的とした多国籍銀行で、ペルーの参加はこれらの開発計画への参画権利を得られるほか、ペルー自体も官民のインフラ計画に対する開発融資や技術協力の受益者となり得ることを強調した。
 
・中銀(BCR)政策金利引上げ、2.0%から2.5%に上昇
 12月9日、中銀(BCR)理事会が政策金利引上げを決定した。8月以降5か月連続の引上げで2.50%となる。この政策金利引上げは、食糧や燃料の国際相場価格上昇及びソル安の要因により直近12か月のインフレ率が8月時点の4.95%から11月時点で5.66%へ上昇し、中銀(BCR)の年間インフレ率目標枠(1%~3%)を超えていることに対応するインフレ抑制策の一環とされている。中銀(BCR)は、一過性要因(燃料及び食料品価格並びに為替レート)のインフレへの影響が薄れるにつれて、2022年下半期に明確な低下傾向を示し、2022年末までには目標範囲に戻ると予測。
 
・国際経営開発研究所(IMD)発表:ペルー、世界デジタル競争力ランキングで順位低下
 スイスの国際経営開発研究所(IMD)が公表した2021年世界デジタル競争力ランキング(評価対象64か国・地域)で、ペルーは前年55位から57位へ順位を下げた。政府によるデジタル技術の開発・活用が社会全般の変革をもたらす程度を分析・評価しており、下位10か国にラ米諸国の5か国が含まれる結果となった(ペルーの他、メキシコ56位、コロンビア59位、アルゼンチン61位、ベネズエラ64位)。ランキング1位は米国、次いで香港、スウェーデン、デンマーク、シンガポールとなった。
 
・2021年のスマートフォン販売台数、過去最高を記録(GESTIÓN紙報道)
 2021年のスマートフォン販売台数は、コロナ禍におけるテレワークや遠隔教育の常態化等の増加要因を背景として、過去最高だった2016年(900万台)を上回る約950万台となった。メーカー別シェアは上位5社で全体の約80%を占め、第1位:Samsung(32.4%)、第2位:Xiaomi(28.4%)、第3位:Motorola(12.9%)、第4位:Huawei(2.4%)、第5位:Apple(2.1%)となった。また、電気通信民間投資監督庁(OSIPTEL)は、1日平均3,600台(年間130万台)のスマートフォンが盗難に遭い、2021年の販売台数の14%が盗難被害による買換え需要によるものと公表した。
 
・2021年ペルーは食糧品輸出世界第21位(GESTIÓN紙報道)
 農産物輸出関連の情報分析会社Fresh Fruitは、2021年のペルーの食糧品輸出額は88億700万米ドル(前年比17%増)となり、オーストラリア(22位)、チリ(23位)を抜いて世界第21位になるとの分析結果を公表した。果物のみではエクアドル(11位)、イタリア(12位)を抜いて世界第10位であり、輸出額10億米ドルを超えているのはブルーベリー(前年比25%増、世界シェア30%)、ぶどう(前年比27%増、世界シェア13%)、アボカド(前年比44%増加、世界シェア16%)と公表した。
 
・輸出業協会(ADEX)発表:1月~11月輸入総額、過去20年間の最高額に
 2021年1月~11月の輸入総額は過去20年間で最高額となる460億米ドル、前年同期比43%増となり、コロナ禍以前の2019年比でも18.4%増加した。最大の輸入品目は機械金属であり、全体の34.1%を占める総額156億7,500万米ドル(前年同期比41.5%増)であった。その他、化学品(医薬品含む)が34.6%増、農産品が28.5%増、石油・ガスが108.7%増、鉄鋼が77.6%増であった(いずれも前年同期比)。
(了)