12月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和4年3月7日
【概要】
(内政)
●7日、国会においてカスティージョ大統領に対する罷免決議が却下された。
●16日、カスティージョ大統領を巡る公共事業絡みの汚職疑惑が報じられた。
●21日、国会はガジャルド教育大臣に対する罷免決議を可決し、同大臣が罷免された。
●28日、ロセンド・セルナ新教育大臣が就任した。
(外交)
●3日、アルマグロOAS事務総長がペルーを訪問し、カスティージョ大統領他と会合を行った。
●3日、マウルトゥア外務大臣が王毅中国国務委員兼外交部長と電話外相会談を行った。
 
【本文】
1 内政
(1)国会における大統領罷免決議の却下
7日、国会においてカスティージョ大統領罷免決議に関する審議・採決が行われ、受諾に必要とされる52票の賛成を得られず却下された(賛成46票、反対76票、棄権4票)。採決においては、本決議提出を支持した右派3会派(国家前進党、人民勢力党及び人民刷新党)が受諾に向けた賛成票を投じたのに対し、その他の左派与党ペルー・リブレや中道会派は主に反対票を投じた。
 
(2)カスティージョ大統領に対する汚職疑惑
ア 16日、法務・人権問題NGO「法律擁護協会(IDL)」は、カスティージョ大統領が大統領選挙キャンペーン時から私的に居住するリマ市ブレニャ地区の住居において公共事業落札関係企業等と会合を行っていたことへの非難が高まる中、同会合参加者の一人でありロビイストのカレリム・ロペス氏が公共事業落札のためカスティージョ大統領に賄賂を贈ったことを検察に対し証言していた旨報じた。また、IDLはロペス氏が検察に対し、サン・マルティン州ワジャガ川のタラタ橋建設に係る公共事業落札のため、パチェコ元大統領府官房長(同元官房長官は、職権乱用等汚職に関与した疑いにより辞任。)を通じ事前に合意した金額(現金)をカスティージョ大統領側に渡したとの証言を行った旨明らかにした。なお、同公共事業は、ロペス氏の関係会社を含む企業コンソーシアムが落札している。
イ 17日、検察はパチェコ元官房長官及びロペス氏の自宅他に対する家宅捜索を実施した。また、同日、ダニエル・ソリア国家代理人弁護士(Procurador General del Estado)は、ブレニャ地区の住居においてカスティージョ大統領がロペス氏等と会合を行っていた等を理由に、職権乱用罪他の疑いで同大統領を告発した。
 
(3)教育大臣の交代
ア 21日、国会は人民刷新党、進歩のための同盟、国家前進党、Podemos及び人民勢力党の議員により提出されたガジャルド教育大臣に対する罷免決議を賛成多数(賛成70票、反対38票、棄権7票)で可決し罷免が成立した。ガジャルド前大臣は、2021年教員採用試験の漏洩問題他、(カスティージョ大統領が教員時代に設置した)教員組合やテロ組織センデロルミノソ(SL)の政治部門とされる「恩赦と基本的人権のための運動(MOVADEF)」との繋がり等に対し疑義が呈され、国会喚問を受けていた)。
イ 28日、カスティージョ大統領は新教育大臣にロセンド・レオンシオ・セルナ・ロマン氏を任命した。セルナ新大臣は2019年から教育省ワヌコ事務所長を務めていた。
 
(4)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア ダトゥム社:4日~7日実施、全国(1,175名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:32%(40%)、不支持:59%(50%)
イ イプソス社:9日~10日実施、全国(1,206名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:36%(35%)、不支持:58%(57%)
ウ IEP社:13日~16日実施、全国(1,206名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:28%(25%)、不支持:60%(65%)
 
2 外交
  • アルマグロ米州機構(OAS)事務総長のペルー訪問
 11月30日~12月1日、アルマグロOAS事務総長がペルーを訪問し、カスティージョ大統領やマウルトゥア外務大臣等と会談を行い、民主主義継続の重要性などについて改めて確認した。また、民主主義に関する共同宣言、中小零細企業の能力開発、米州における多面的な安全の問題に取り組むための協定等に署名を行った。なお、ペルーは2022年OAS総会の開催国。
 
(2)ペルー・中国電話外相会談の実施
 3日、マウルトゥア外務大臣は、王毅中国国務委員兼外交部長と電話外相会談を行った。両外相は、包括的な戦略的パートナーシップのステージにある両国の良好な二国間関係について確認すると共に、今後も引き続き両国関係を強化していくコミットメントを表明した。
 
  • マウルトゥア外務大臣の第3回中国・CELAC閣僚会合への出席
 3日、マウルトゥア外務大臣はオンライン形式で第3回中国・CELAC閣僚会合に出席し、新型コロナウイルスのパンデミック後の経済回復、技術進歩や持続的な開発に係る中国とラ米の協力促進におけるペルーの支援を表明した。
 
(4)新駐日ペルー大使の任命
 7日、新駐日ペルー大使にロベルト・エルナン・セミナリオ・ポルトカレロ氏が任命された。
 
  • 核兵器禁止条約の発効
 9日、国会において核兵器禁止条約が批准され、10日、同条約が発効した。ペルーは2017年9月20日に本条約に署名を行っていた。
 
  • マウルトゥア外務大臣のイタリア・バチカン訪問
 8日~13日、マウルトゥア外務大臣がイタリア及びバチカンを訪問し、食料と農業のための世界土地・水資源白書(SOLAW2021)発行記念イベントに出席した他、イタリアにおいてはドンギュ国連食糧農業機関(FAO)事務局長やウングボ国際農業開発基金(FIDA)会長等と、バチカンにおいてはパロリン国務長官やギャラガー外務長官等と会合を行った。
 
  • カスティージョ大統領の米国民主主義サミットへの出席
 11日、カスティージョ大統領はバイデン米大統領主催の民主主義サミットにオンライン形式にて出席した。その中で同大統領は、選挙を通じ、保健、教育、飲料水、機会の平等、住居及び尊厳のある労働や契約を保証する効果的な民主主義を達成する必要がある旨述べた。
 
  • 第5回古代文明国フォーラム閣僚会議(オンライン形式)
 16日、第5回古代文明国フォーラム閣僚級会合が開催され、マウルトゥア外務大臣及びオルティス文化大臣が議長を務めた。同会合において、文化遺産の持続的な管理、同遺産と観光との関係、同遺産に係る不法取引対策等保全と保護に向けた取り組み等について意見交換が行われた。
 
(9)チリ大統領選挙決選投票に対する祝意表明
 19日及び20日、カスティージョ大統領及びマウルトゥア外務大臣は、各々Twitterを通じて、チリ大統領選挙決選投票で勝利したガブリエル・ボリッチ次期大統領に対する祝意を表明した。