2月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和4年5月4日
【概要】
(内政)
●1日、バレル新首相率いる新内閣が発足したものの、8日には家庭内暴力のスキャンダルによりバレル首相が辞任し、トーレス新内閣が発足した。
(外交)
●17日、カスティージョ大統領は、ファイサル・サウジアラビア王国外務大臣と会談を行った。
 
【本文】
1 内政
  • バレル新内閣の発足と同内閣の退陣
ア 1日、1月31日のバスケス首相の辞任を受けて内閣が総辞職し、バレル新首相(2021年国会議員選挙で人民刷新党(右派)から初当選。)率いる新内閣が発足した。就任後、バレル首相は、「政府は選挙キャンペーンの公約を遂行しており、新憲法のための制憲議会招集の機会を作る。これには国家の全ての活力ある勢力を招集するという目的をもって少なくとも4年はかかる。内閣改造を引き起こした政治的危機は既に過ぎ去った。」と述べた。
イ 2日、バレル首相が過去に家庭内暴力を振るい、昨年亡くなった夫人及び娘等から告訴されていたことが明らかとなった。バレル首相は家庭内暴力の事実を否定するも、ペルー国内で同首相任命に対する非難が高まり続け、同首相の辞任を求める抗議デモが招集された。また、一部閣僚が同首相に辞任を求めた他、与党会派ペルー・リブレを初めとする国会各会派が同内閣に信任を与えない立場を表明した。
ウ 4日、バレル首相はアルバ国会議長に対し、5日の新内閣信任決議採決を求めたが、アルバ国会議長は右要請を拒絶した。
エ 5日、カスティージョ大統領に辞任を申し入れたバレル首相が記者会見を行い、「先般の選挙でカスティージョ大統領に敗北し、今般も自分の名誉と尊厳を汚そうとした政治グループとの戦いを終わらせるために首相職を辞任する。」と述べた。
オ 8日、バレル首相が辞任したことでバレル内閣が総辞職し、トーレス新首相(前法務人権大臣)率いる新内閣が発足した。
 
(2)カスティージョ大統領に対する汚職疑惑を巡る動き
ア 18日、客年12月に報じられたカスティージョ大統領を巡る公共事業入札絡みの汚職疑惑について、検察の捜査を受けるカレリム・ロペス氏(国内橋梁建設計画の公共事業入札において落札企業のロビイストを務めていた。)が本汚職疑惑に関する自身の関与を認める供述を行うとともに、同供述においてカスティージョ大統領他が汚職に関与していたと発言していたことが明らかになった。また、同氏は、運輸通信省内にカスティージョ大統領、シルバ前運輸通信大臣、アルバラド住宅建設上下水道大臣の他、人民行動党(中道)の国会議員5名も運輸通信省の公共事業入札に係る不正に関与していた旨併せ明らかにした。
イ 27日、カスティージョ大統領は国民向けメッセージを通じて、「(ロペス氏による)供述とされるものがメディアに広まっていることに関し、右を断固として拒絶する。(検察の捜査情報がメディアに流出していることに関し、)検察が政府を弱体化するための陰謀に加担していることを証明するものである。」と述べるとともに、本疑惑による自身の辞任を否定した。
 
(3)マドレ・デ・ディオス州知事に対する36ヶ月の予備拘留
 19日、ペルー裁判所は違法伐採及びその販売取引に加担した疑いにより予てより検察の捜査対象となっていたルイス・オキムラ・マドレ・デ・ディオス州知事に対し36ヶ月の予備拘留を命じた。
 
(4)運輸通信大臣の辞任
 28日、シルバ運輸通信大臣が辞任を表明し、同日晩、カスティージョ大統領がTwitterを通じて同辞任を受理したと発表した。シルバ運輸通信大臣については、任命当初から大臣としての資質に対し疑義が呈されていたことに加え、運輸通信次官が同省内で情実人事が横行している旨告発し辞任したこと等を受け、国会において同大臣に対する罷免決議が提出されていた。
 
(5)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:10日~11日実施、全国(1,214名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:25%(33%)、不支持:69%(60%)
イ IEP社:21日~23日実施、全国(1,213名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:28%(29%)、不支持:63%(62%)
 
2 外交
  • ウクライナ情勢に関する外務省コミュニケの発出他
ア 24日、ペルー外務省は、ロシア軍によるドネツク及びハンスクにおける介入について、ウクライナの主権と領土一体性の侵害であるとした国連事務総長の発言を支持する旨のコミュニケを発出した。
イ 24日、ヤボリブスキ在ペルー・ウクライナ臨時代理大使は、ペルー政府がロシアによるウクライナへの軍事行為に言及することを求める発言を行った。
 
(2)2024年APEC首脳会合ペルー議長国の発表
 10日、2022年APEC議長国であるタイは、ペルーが2024年にAPEC議長国となる旨発表した。ペルーが同議長国を務めるのは次が3回目となる。
 
(3)ファイサル・サウジアラビア王国外務大臣のペルー訪問
 17日、カスティージョ大統領はランダ外務大臣同席の下、ペルーを訪問したファイサル・サウジアラビア王国外務大臣と大統領府において会談を行い、二国間関係の緊密化と通商関係及びペルーにおけるサウジアラビアからの投資機会の促進について協議を行った。なお、サウジアラビアの外務大臣がペルーを訪問したのは今回が初めてのことである。