3月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり。

令和4年5月4日
【概要】
(内政)
●8日、国会においてトーレス新内閣が信任された。
●8日、国会においてカスティージョ大統領に対する罷免決議が提出された。
●17日、ペルー憲法裁判所は、フジモリ元大統領に関する人身保護請求(ヘイビアス・コーパス)を認める判決を下した。
●28日、国会においてカスティージョ大統領に対する罷免決議が否決された。
●30日、米州人権裁判所は、ペルーに対しフジモリ元大統領の釈放一時差し止めを要請した。
(外交)
●10日及び11日、カスティージョ大統領はチリを訪問した。
 
【本文】
1 内政
  • 閣僚の交代
ア 新運輸通信大臣の任命
 4日、大臣としての資質等を問われて辞任したフアン・シルバ運輸通信大臣に代わり、ニコラス・ブスタマンテ新運輸通信大臣が就任された。同大臣はカスティージョ大統領と同郷のカハマルカ州チョタ郡生まれで、昨年11月末から運輸通信省の官房長を務めていた。
イ 法務人権大臣の交代
 19日、アンヘル・イルデフォンソ法務人権大臣が辞任し、フェリックス・チェロ新法務人権大臣が同職に就任した。イルデフォンソ前大臣は、アンカシュ州で訴訟代理人を務めていた際に職務怠慢で告発されていたこと等を理由に国会喚問を受けていたが、就任から1ヶ月弱での辞任となった。
 
(2)トーレス新内閣に対する内閣信任決議の可決
ア 8日、国会においてトーレス新首相が所信表明演説を行い、各勢力に対し合意形成のための対話を呼び掛けた。
イ 9日未明に行われた内閣信任決議採決の結果、賛成64票、反対58票、棄権2票の賛成多数でトーレス新内閣が信任された。左派系の与党ペルー・リブレやJuntos por el Peru、ペルー民主主義党が賛成票を投じる一方、右派系の人民勢力党、国家前進党及び人民刷新党が反対票を投じた。また、中道系の進歩のための同盟、人民行動党、Somos Peru及びPodemosについては会派内で票が割れる結果となった。
 
(3)カスティージョ大統領に対する大統領罷免決議の提出
ア 8日、アレハンドロ・ムニャンテ議員(人民刷新党)は、汚職疑惑に対する矛盾した発言や不適切な閣僚任命等を理由にカスティージョ大統領への罷免決議を提出した。なお、今次罷免決議は右派系の人民刷新党、人民勢力党、国家前進党の他、中道系のSomos Peru、Podemos、進歩のための同盟による計50議員の署名と共に提出された。
イ 14日、国会は大統領罷免決議に関する審議・採決を行い、右派系野党及び中道会派を中心とした幅広い賛成票により同罷免決議が正式に受諾された(全130議席中、賛成76票、反対41票、棄権1票)。なお、与党ペルー・リブレ及び右派系のペルー民主主義党及びJuntos por el Peruは反対票を投じた。
ウ 28日、国会本会議において、カスティージョ大統領及び同弁護人による弁明に続き、大統領罷免決議に係る審議が行われた。その後、本件採決が行われた結果、罷免に必要な票(国会議員の3分の2となる87票)に達しなかったことから同罷免決議が否決された(賛成55票、反対54票、棄権19票)。中道会派の人民行動党の殆どが棄権票を投じた他、進歩のための同盟やSomos Peruは会派内で票が割れる結果となった。
 
(4)フジモリ元大統領に対する恩赦の回復
ア 17日、ペルー憲法裁判所は、フジモリ元大統領が不当に身体の自由を奪われていると訴える人身保護請求(ヘイビアス・コーパス)を認める判決を下した。この判決の結果、最高裁がフジモリ元大統領に対する恩赦を取り消した決定が覆され、恩赦の効力が回復されて同元大統領が再び釈放される運びとなった。
イ 24日、ペルー司法は検察の要請を認め、フジモリ元大統領に対する18ヶ月の国外出国禁止を命じた。
ウ 今次憲法裁判所の決定を受け、同元大統領に対する有罪判決の基となった人権侵害事件の犠牲者が米州人権裁判所(CIDH)に対し憲法裁判所決定について提訴した。これを受け、30日、CIDHは決議をもって右提訴に対する決定を行うまではフジモリ元大統領を釈放しないようペルー政府に要請した。その結果、ペルー政府はCIDHの請求を受け入れ、同元大統領の釈放が一時的に凍結された。
 
(5)全国規模の抗議デモの発生・拡大
 28日、フニン州の運輸業者が中心となり、政府に対し燃料価格高騰への対策を求める抗議デモを開始した。これに対し、政府の対応が遅れる中、肥料価格高騰対策を求める農業従事者や商品価格高騰対策を求める商業関係者等も抗議に加わったことから、同抗議デモが全国規模に拡大し国内主要幹線道路が封鎖された。その結果、抗議デモの影響により人や物の移動に影響が出た他、首都リマの卸売市場においては農産物他の供給不足により価格が上昇し、一部の学校では休校措置がとられた。また、抗議デモに乗じて国内各地で商店における強奪等が散発的に発生した。
 
(6)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア イプソス社:8日、全国(1,206名、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:26%(25%)、不支持:66%(69%)
イ ダトゥム社:2月26日~3月1日実施、全国(1,209名)、誤差±2.8%、信頼度95%
  支持:25%(29%)、不支持:67%(64%)
 
2 外交
(1)ウクライナ情勢
 6日、カスティージョ大統領及びランダ外務大臣は、ペルー政府の支援を得てウクライナから避難しペルーに帰国したペルー国民(第一陣及び第二陣併せて計17名)をホルヘ・チャベス国際空港で迎えた。
 
  • カスティージョ大統領他のチリ訪問
ア 10日及び11日、カスティージョ大統領は、ランダ外務大臣同行の下、チリ大統領就任式出席のため同国を訪問した。
イ 10日、カスティージョ大統領は、ボリッチ・チリ新大統領と会談を行い、両国合同閣議の再開、太平洋同盟の強化・拡大、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)やOASにおける対話の促進、両国の国境再開等について意見交換を行った。
ウ 10日、カスティージョ大統領は、ラッソ・エクアドル大統領と会談を行い、両国合同閣議の再開、国境地域における河川汚染や違法鉱業活動等への対応、太平洋同盟へのエクアドル正式加盟推進、ペルーのアンデス共同体議長国(2022年~2023年)就任等について意見交換を行った。
エ 10日、カスティージョ大統領は、アルセ・ボリビア大統領と会談を行い、ボリビアの液化石油ガス(LPG)輸入、両国国境地域住民への天然ガス供給、ペルー南部ガスパイプラインとボリビア・ガスパイプラインの接続、ボリビアによるイロ港活用等について意見交換を行った。
 
(3)ランダ外務大臣とマラレット・アンデス開発公社(CAF)総裁との会合
 18日、ランダ外務大臣はマラレット・アンデス開発公社(CAF)総裁と会合を行い、持続的な社会開発プロジェクトや原油流出事故への対応における協力等について意見交換を行った。