7月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

令和4年8月19日
【概要】
(内政)
●3日、国家検察庁は、権力の腐敗について捜査する特別チームを創設すると正式に発表した。
●4日、6月末に辞任したセンマチェ氏に代わり、ゴンサレス氏が新内務大臣に就任した。
●5日、ボルアルテ副大統領は、国会による自身の弾劾手続きを阻止するため米州人権委員会に申し出た。
●13日、国家検察庁は、カスティージョ大統領の汚職疑惑に関する予備調査を再開した。
●20日、解任されたゴンサレス氏に代わり、ウィリー・ウエルタ氏が新内務大臣に就任した。
●26日、ブルーノ・パチェコ元大統領府官房長が検察に出頭したと発表された。
●26日、国会執行部選挙が実施され、レディ・カモネス氏が新国会議長として選出された。
●28日、カスティージョ大統領が就任1年目の一般教書演説を行った。
 
(外交)
●2日、ペルー政府はベネズエラ難民危機に対応するためのキト・プロセス(Proceso de Quito)の第8次共同宣言に署名した。
●18日、ペルー外務省が日本外務省(中南米局長)との会談を実施した。
●18日、ランダ外務大臣がバチェレ国連人権高等弁務官と意見交換を行い、人権分野の協力強化について確認した。
●29日、ランダ外務大臣が独立201周年を記念し、国際社会に向けて声明を発表した。
 
【本文】
1 内政
(1)国家検察庁が権力の腐敗を捜査する特別チームを創設
 7月3日、パトリシア・ベナビデス検事総長は、「権力の腐敗に対する検察特別チーム(el Equipo Especial de Fiscales contra la Corrupcion del Poder: EFICCOP)」の創設を正式に発表した。同チームは、公務員の汚職や組織犯罪、不正薬物取引やマネーロンダリング、選挙や任命によって得た権力の行使中に行われた関連犯罪の捜査を専門に行うことになる。
 
(2)新内務大臣の就任
 7月4日、6月末に罷免されたセンマチェ内務大臣に代わり、マリアノ・ゴンサレス氏が後任として選出された。ゴンサレス新内務大臣は弁護士で、クチンスキー政権時代に2016年7月から11月まで国防大臣を務めていた。
 
(3)ボルアルテ副大統領が米州人権委員会に自身の弾劾手続き停止を直訴
 7月5日、ボルアルテ副大統領兼開発社会包摂大臣は、国会による自身の憲法違反の弾劾手続きを阻止するため、米州人権委員会(IACHR)に申し出た。同副大統領は、同役職と並行して私的団体の代表を兼任し、憲法に違反したとして訴追されている。
 
(4)国家検察庁が大統領の汚職疑惑に対する予備調査を再開
 7月13日、ベナビデス検事総長は、カスティージョ大統領に対する予備調査を中断するとしていた決定を無効とすると発表し、優越的地位の濫用の容疑で同大統領の予備調査を再開した。今回具体的に再開されたのは、軍隊の人事に対する不正な介入疑惑に関する調査である。
 今年1月、当時のアルバロス元検事総長は、現職の大統領は反逆罪、議会解散、選挙妨害をした場合にのみ起訴できるとする憲法に従い、カスティージョ大統領の任期終了まで検察の捜査を凍結していた。しかし、ベナビデス検事総長はこの判断に同意せず、予備調査を再開した。
 
(5)内務大臣の交代
 7月20日、前日に解任されたマリアノ・ゴンサレス氏の後任として、ウィリー・ウエルタ氏が新内務大臣に選出された。ゴンサレス氏は就任からわずか2週間での交代となった。ウエルタ新内務大臣は、大学で行政学を専攻し、弁護士でもある。
 解任されたゴンサレス氏は、汚職に関与した疑惑で捜査対象となり現在逃亡中となっている大統領側近の捜索を強化した矢先に突如として解任されたため、大統領が司法妨害を行っていると主張した他、大統領が一連の汚職疑惑に関与していることに疑いの余地はなく、辞任すべきと強く批判した。
 
(6)国家検察庁がブルーノ・パチェコ元大統領府官房長の出頭を発表
 7月26日、ベナビデス検事総長は、100日間以上にわたって逃亡を続けていたブルーノ・パチェコ元大統領府官房長が当局に出頭したと発表した。同氏は、カスティージョ大統領の関与が疑われている、公共事業の入札を不正に受注したとされる事件に関与した容疑で予備的勾留措置の対象となっていたが、逃走を続けていた。
 
(7)レディ・カモネス新国会議長の就任
 7月26日、2022年~2023年任期の国会執行部選挙が実施され、野党・進歩のための同盟(APP)で、国会第一副議長のレディ・カモネス氏が新国会議長に選出された。
 
(8)カスティージョ大統領が就任1年目の一般教書演説を実施
 7月28日、就任一周年を迎えたカスティージョ大統領が、国会にて一般教書演説を実施した。演説では2時間弱にわたり、1年目の成果や今後の政策等について述べた。
 
(9)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア ダトゥム 社:8日~12日、全国(1,202名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:20%(23%)、不支持:75%(71%)
イ イプソス 社:14日~15日、全国(1,243名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:20%(23%)、不支持:74%(70%)
ウ IEP 社:― (※7月統計なし)
  支持:―%(19%)、不支持:―%(71%)
 
2 外交
(1)ペルー政府がキト・プロセスの第8次共同宣言に署名
7月2日、ブラジリアにて開催された第8回ベネズエラ国民の地域内移動にかかる国際技術会議(la VIII Reunion Tecnica Internacional sobre Movilidad Humana de Ciudadanos Venezolanos en la Region)にて、ペルー政府はベネズエラ難民危機に対応するためのキト・プロセス(Proceso de Quito)の第8次共同宣言に署名した。同会議にて、ペルー政府はベネズエラ難民の保護と受け入れのための地域的対応の実施に向けた協力姿勢を改めて表明した。
 
(2)日本外務省の中南米局長がペルーを訪問
 7月18日、ペルー外務省のフェルナンド・キロス・アジア大洋州局長は、ペルーを訪問中の日本外務省・小林麻紀中南米局長と会談した。会談では、二国間関係の強化が再確認され、アジア太平洋経済協力(APEC)等の重要性についても話し合われた。
 
(3)ランダ外務大臣がバチェレ国連人権高等弁務官と会談
 7月18日、セサル・ランダ外務大臣は、当地を公式訪問していたミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官の訪問を受け、両者は人権分野における協力強化について確認した。
 
(4)ランダ外務大臣が国際社会に向けて声明を発表
 7月29日、ランダ外務大臣は、独立201周年を記念して国際社会に向けて声明を発表し、ペルーが平和、対話、多国間主義のための使命を維持することを確約した。同声明では、民主的ガバナンス、人権の保護、不平等および貧困への挑戦、自由貿易や環境保全についても言及した。