8月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

令和4年9月9日
【概要】
1 内政
●4日、国会はカスティージョ大統領のコロンビア訪問の承認要請を否決した。
●5日、カスティージョ大統領は辞意を表明していたトーレス首相の続投を決定し、他方で6大臣の交代を発表した。
●12日、国家検察庁はカスティージョ大統領に対して6件目の予備捜査の開始を発表した。
●24日、カスティージョ大統領が新たに国防大臣、女性社会的弱者大臣、環境大臣の就任を発表した。
 
2 外交
●4日、カスティージョ大統領がメキシコのエブラルド外相と会談した。
●19日、ペルー外務省が「サハラ・アラブ民主共和国」との「国交」の断絶を発表した。
●29日、第22回アンデス共同体(CAN)首脳会合がリマで開催された。
 
【本文】
1 内政
(1)内閣の動き
ア カスティージョ大統領がトーレス首相の続投と6大臣の交代を発表
 8月5日、カスティージョ大統領は、同3日に辞意を表明していたトーレス首相の辞任を承認せず、続投させることを明らかにした。一方で、外務大臣、経済財政大臣、労働雇用促進大臣、運輸通信大臣、住宅建設上下水道大臣、文化大臣の計6大臣の交代を発表し、宣誓式を行った。
 
イ カスティージョ大統領が国防大臣他計3大臣の交代を発表
 8月24日、カスティージョ大統領は、同17日に辞任を表明していたガビディア国防大臣の後任として、リチャルド・ティネオ氏を任命した。また、ミロスラビチ女性社会的弱者大臣に代わりクラウディア・ダビラ氏を、モントヤ環境大臣に代わりウィルベルト・ロサス氏をそれぞれ新大臣に任命した。
 
(2)国会の動き
ア 新政党「統合と開発(Integridad y Desarrollo)」の結成
 8月2日、フロル・パブロ党首をはじめ計5名の議員で構成する新政党「統合と開発(Integridad y Desarrollo)」が結成された。これにより、国会は13の政党で構成されることとなった。
 
イ 国会がカスティージョ大統領のコロンビア訪問の承認要請を否決
 8月4日、国会は、カスティージョ大統領が8月6日から8日まで、コロンビアのペトロ新大統領の就任式に出席するために出国することを承認する決議案について、賛成42、反対67、棄権5で否決した。否決の主な理由として、大統領は現在の政権及び政治の危機に対処すべきとする意見が多数を占めた。
 
ウ 国会がアルバラド運輸通信大臣に対する国会喚問の実施を承認
 8月29日、国会はヘイネル・アルバラド運輸通信大臣に対する国会喚問動議について採決を実施し、賛成多数で可決されたと発表した。同大臣は、住宅建設上下水道大臣在任時に組織犯罪に関与した疑いで捜査対象となっている。
 
(3)大統領の汚職疑惑に関する動き
ア 国家検察庁がカスティージョ大統領に対して6件目の予備捜査を開始
 8月12日、国家検察庁はカスティージョ大統領が住宅建設上下水道省内における組織犯罪に関与したとして、同大統領に対して6件目の予備捜査を開始した。当時住宅建設上下水道大臣を務めていたアルバラド運輸通信大臣も本件への関与の疑いから捜査対象となっている。
 
イ 国家検察庁が大統領夫人とその兄弟らに対する予備捜査の実施を決定
 8月20日、国家検察庁の権力の腐敗に対する検察特別チームは、リリア・パレデス大統領夫人とその親族に対し、大統領やアルバラド運輸通信大臣の関与も疑われている組織犯罪に関与した疑惑があるとして予備捜査を実施すると正式決定した。
 
ウ 司法当局が大統領の義理の妹らに対し30ヶ月の公判前拘留を決定
 8月28日、司法当局は大統領の義理の妹であるジェニファー・パレデス氏とホセ・メディナ・アンギア市長に対し、カスティージョ大統領の関与も疑われている組織犯罪に関与したとして、30ヶ月の公判前拘留を命じた。
 
(4)カスティージョ大統領の支持率(括弧内は前回数値)
ア ダトゥム 社:1日~3日、全国(1,202名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:19%(20%)、不支持:76%(75%)
イ イプソス 社:11日~12日、全国(1,247名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:25%(20%)、不支持:69%(74%)
ウ IEP 社:20日~25日、全国(1,206名、誤差±2.8%、信頼度95%)
  支持:29%(24%)、不支持:63%(67%)
 
2 外交
  • カスティージョ大統領がメキシコのエブラルド外相と会談
 8月4日、カスティージョ大統領はメキシコのエブラルド外相と会談し、ビジネス部門における連携を確立することで、国民の幸福を保証することの重要性を強調した。会談にはペルー側からランダ外相(当時)、グラハム経済相(当時)、エレラ・エネルギー鉱山大臣、サンチェス通商観光大臣が参加したほか、メキシコ人投資家らも同席した。
 
(2)ボルアルテ副大統領とロドリゲス外相がペトロ・コロンビア大統領の就任式に出席
 8月6日、ボルアルテ副大統領とロドリゲス外相がペトロ・コロンビア新大統領の就任式に出席し、会談を行った。会談では、ボルアルテ副大統領が自然環境やアマゾン地域の保護、地域統合の強化、組織犯罪対策等における二国間関係の良好さを強調した。一方ペトロ次期大統領は、二国間関係のさらなる強化の必要性を強調するとともに、来年クスコにて開催予定の第7回二国間首脳会談・合同閣議への参加に同意した。
 
(3)ロドリゲス・クアドロス国連大使(常駐代表)及びフォルサイト米州機構(OAS)担当大使が辞任
 8月10日、ロドリゲス・クアドロス国連大使(常駐代表)とフォルサイト米州機構(OAS)担当大使が辞任を発表した。ロドリゲス・クアドロス大使は、トレド政権下で外務大臣を務めた他、駐ユネスコ大使の職務に就いた経験がある。一方、フォルサイト大使は、日本、米国、中国、イタリア、コロンビアで大使を歴任し、外務副大臣や国連食糧農業機関(FAO)等の常駐代表も務めた経験がある。
 
(4)ペルー外務省が「サハラ・アラブ民主共和国」との「国交」断絶を発表
 8月19日、ペルー外務省は、ロドリゲス外相がモロッコのブリタ外相と電話会談し、「サハラ・アラブ民主共和国」(SADR)との「国交」断絶を決定したことを伝えたと発表した。なお、ペルーは2021年9月、マウルトゥア外相(当時)のもと、SADRとの国交を再確立すると発表していた。
 
(5)第22回アンデス共同体(CAN)首脳会合の開催
 8月29日、リマにて第22回アンデス共同体(CAN)首脳会合が開催され、カスティージョ大統領のほか、エクアドルのラッソ大統領、ボリビアのアルセ大統領、コロンビアのペトロ大統領が出席した。同式典において、カスティージョ大統領はラッソ大統領から2022年から2023年のアンデス共同体議長国を引き継いだ。