天皇誕生日レセプションにおける挨拶

令和5年3月2日
   こんにちは。日本大使公邸にようこそ。

   明日2月24日はロシアのウクライナ侵略が開始されて1年を迎えます。この機会に犠牲者を追悼するとともに日本はウクライナとともにあることを改めて表明したいと思います。また、6日に発生したトルコ南東部を震源とする地震により多くの死傷者が生じていることにつき心からの弔意とお見舞いを改めて表明します。

   さて、本日2月23日は、今上天皇陛下63歳の誕生日です。日本国憲法第1条は、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴と定めています。皆様とともに、天皇誕生日を心よりお祝いしたいと存じます。ちなみに、私も天皇陛下と同じ年に生を受けましたので、感慨も特別です。

   私にとり、南米、そしてスペイン語圏勤務は約40年に及ぶ外交官生活の中で初めての経験です。赴任直前に東京の外務省研修所で初歩スペイン語を学びましたが、その時のスペイン人講師は2006年から天皇陛下の家庭教師をされていました。天皇陛下と同じ先生から習ったことは私の密やかな誇りです。

   2020年9月に着任した私にとり、ペルーで迎える3回目の天皇誕生日です。そして、今回、初めて祝賀レセプションを開催することができ、誠に光栄に存じます。

   ペルーに赴任して2年5ヶ月が経過しました。この間、総選挙が行われ、独立200周年をお祝いし、5人の大統領を経験しました。幸い新型コロナ感染状況は改善され、大使館の対外活動も活発化し、ペルーの方々の暖かい支援により、私の当地での仕事と生活も軌道に乗ってきました。

   ペルーは世界的な自然、歴史、文化遺産に恵まれた魅力に富む国です。着任後、リマ市内に留まらずアレキパ、カラル、マチュピチュ、クスコ、ワラル、パチャカマック、ピスコ、パラカス、イカ、ナスカ、カニエテ、イキトス、タクナ、モケグア、プーノ、チクラヨ、トルヒージョ、カハマルカ、クントルワシ、バランカ、マドレデディオス等各地を訪問する機会に恵まれ、改めてペルーの多様性に感銘を受けました。

   また、ペルーは日本と同様美食の国でもあり、毎週末、評判のレストランを100軒以上訪れました。世界的に有名なレストラン「セントラル」が昨年東京に支店を開店し、高い人気を博しています。ちなみに、本日は、日本料理や日本酒、日本のデザートも用意しておりますので堪能下さい。

   ペルーは、海外で3番目に大きな日系人社会を擁しています。来年は最初の移民船がカヤオに到着して125周年を迎えます。沖縄出身者が過半数ですが、私の郷里広島からも多くの移住者が渡って来ました。日系ペルー人として彼らが当地社会で活躍し、信頼を勝ち取り、両国の架け橋として重要な役割を果たしていることを誇りに思います。

   着任してからの主要な出来事を振り返って見ますと、2021年は、日・ペルー租税条約が発効し、更に、ペルーが南米初、世界で8番目のCPTPP締約国となり、経済活動の環境が更に改善されました。昨年は、2国間EPA(経済連携協定)締結10周年でもありました。

   また、2021年はリマに日本公使館実館が設置されてちょうど100周年でしたが、その記念すべき年にヘスス・マリア区に立派な大使館新事務所が竣工するという嬉しい出来事もありました。

   新型コロナ対策に関し、日本政府からペルー政府に対してこれまで約1,200万ドルの支援を実施して参りました。この関係で今年度日本から救急車95台がペルーに到着し、3度に亘り大統領出席の下で供与式を行いました。

   更に、地震や津波等の防災分野の協力をはじめ、経済、社会、環境、考古学、文化、学術、スポーツ等幅広い分野で両国は協力・交流関係を推進しています。例えば、昨年日本人考古学者によってパコパンパで新たに貴重な遺跡の発見がありました。

   本年2023年は、日本が中南米最初の国としてペルーと外交関係を樹立して150周年を迎えます。先般、外務省においてヘルバシ外務大臣とともに立ち上げの記念行事を行いました。実行委員会の設置、ロゴマークの制定、記念切手・硬貨の発行、練習艦隊の相互訪問、各種経済、文化、スポーツ、学術、人物交流等年間を通じて両国官民による様々な記念行事を展開し、戦略的パートナーシップ関係を更に発展強化させて参りたいと存じますので、是非皆様の積極的な支援と参加をお願いします。また、ペルーの政局が安定し、要人往来や観光客を含めた国民間の交流が早期に回復することを切に願っています。

   本年5月には日本がG7議長国として広島サミットを開催します。世界が「歴史の分岐点」を迎える今、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するとの強い意志を岸田総理から改めて世界に発信します。

   明年2024年にはペルーで3度目のAPECが開催されます。更に、2025年には大阪・関西万博が日本で開かれます。

   このように日・ペルー関係にとって重要な行事が続き、関係発展の好機に、日本大使としてペルーで勤務できることは誠に幸運かつ名誉あることと存じます。

   日本人のペルーへの関心を喚起するため、昨年日本でペルーに関する著書を出版しました。いずれスペイン語版が出版されることを期待しております。

   最後に、天皇陛下の末永き御健康と、日・ペルー外交関係樹立150周年記念行事の成功並びに両国関係の更なる発展、そして皆様の御健勝を祈念しまして、私の挨拶とさせて頂きます。

   ありがとうございました。(了)