ペルー安全対策情報(2023年4~6月分:邦人被害例等)
1 社会・治安情勢
(1)2022年12月7日の国会による前大統領の罷免、新大統領の就任以降、国内各地において、大統領の辞任及び選挙の早期実施等を求める抗議活動が継続していたため、ペルー政府は、昨年12月15日よりペルー全土を対象とした30日間の非常事態宣言を発出しましたが、現在はプーノ州などの一部地域を除き非常事態宣言は解除されました。しかしながら、抗議活動の目的が解消されたわけではないので、依然として社会・治安情勢は流動的であり、引き続き注意が必要です。
また、観光客が多く訪れるマチュピチュも、デモ隊による線路封鎖や大雨被害による土砂崩れ等により鉄道の運行が休止することがあり、その場合には、他に移動手段が徒歩だけとなるので最新の情報の入手に努めてください。
(2)原油及び食料品の高騰を原因とした生活不安による犯罪件数の増加も顕著です。また、テロ組織は一部山間部地域に潜伏し、麻薬密輸を資金源に現在も活動を続け、軍や国家警察に対する武力攻撃を続けています。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全般
ア 2022年中の刑法犯罪認知件数は、全国で481,057件(前年比103,704件増・同27%増)と前年から大きく増加しました。これまでコロナ禍による外出制限や各種規制により犯罪は減少傾向が続いていましたが、2021年以降、各種制限の撤廃に伴い現在では都市部を中心に急激に犯罪が増加しています。
罪種別の統計では、殺人や傷害等の生命及び身体に対する犯罪72,468件(前年比10,714件増)、強盗や窃盗等の財産に対する犯罪300,095件(前年比75,804件増)となっており、これらの犯罪は、首都リマ市・カヤオ憲法特別市において集中的に発生しています。これら件数はあくまで警察に被害申告がなされたことにより把握された犯罪件数の統計であり、実際には未申告の更に多くの犯罪が発生しているものと考えられます。
イ コロナ収束後、外国人観光客が被害者となる長距離バス車内での犯罪やタクシー強盗の発生が報告されています。具体的には夜間、知らないうちに人気のない場所に連れていかれ、その場所で待ち伏せていた強盗犯人が乗り込み乗客の金品を奪い立ち去る手口の他、運転手や他の乗客から薬物が混入した菓子や飲み物等を勧められ口にしたところ昏睡してしまい、所持品を奪われる等の手口です。長距離バスやタクシー利用時はなるべく夜間の利用は避ける、運転手や乗客の身分確認が徹底されている会社を選ぶなどの対策が必要です。
ウ 比較的安全とされているミラフローレス区やサン・イシドロ区等においても、日中からオートバイを使用した犯人らによる、ひったくりや強盗が多発しています。また高級腕時計や貴金属を持つ者の後をつけ、人気の無い場所で襲うといった手口は従来から継続して発生しており装飾・携行品には特に注意してください。
エ 特に携帯電話を使用中の歩行者を狙った、ひったくりの発生が急増しており被害時に抵抗したため犯人から銃撃される事例が多く発生しています。国内で1日あたり5,000件を超える携帯電話の盗難が発生しているとの統計もあり、外出時は自分の持っている携帯電話は犯人にとって「高級品」であることを自覚し、十分注意すると共に、被害時には絶対に抵抗しないことが重要です。また、携帯電話の盗難件数の増加に伴い、被害品の携帯電話に保存された個人情報を悪用したインターネット犯罪も増加しています。歩きながらの携帯電話の使用は控え、やむを得ず、携帯電話を屋外で使用する場合は、周囲をよく警戒することが大切です。
オ 強盗の手口として、一般人を装った共犯者(連絡役)が市内各所(店舗の出入口、銀行・ATM前、飲食店内、空港の出入口付近等)に配置されており、共犯者が、被害者を物色・選定し、実行犯に連絡するという手法が取られていることから、これまで以上に所持品・携行品は他人から見えない様に携行し、華美な服装は避ける等といった、ターゲットにならないための注意を払う必要があります。特に被害者が金融機関を利用した直後に襲われる事件が多発しています。
(2)主な犯罪発生例等
ア 在留邦人が多く住む地区での犯罪
(強盗)リマ市ミラフローレス区において、配車アプリを利用してタクシーに乗車した客が気づかないうちに人気のない場所へ連れていかれ、その場に待ち伏せていた運転手の仲間から暴行を受け、身に付けていた貴重品を奪われた上、口座等の情報を要求された。
(誘拐)リマ市サン・イシドロ区において、乗り合いバスに乗車した客が連れ去られ、誘拐される事件が発生した。被害者らは騒ぎを聞きつけた警察官により、救出された。誘拐を企図し、現場で逮捕された犯人らは乗り合いバスの乗客に扮した犯罪グループ構成員であった。
イ 上記以外の地区での犯罪
(殺人)リマ市ラ・ビクトリア区において、自動車運転手が窓ガラス拭きの露天商とトラブルになり、胸部に刃物を刺されて殺害された。
(殺人)リマ市リマ区において、銃撃事件が発生し、犯人は拳銃を捨て、現場から逃走した。
(監禁)アレキパ州アレキパ郡において、男性5人組の武装グループが女性2名を監禁し、ATMまで連れていき、高額現金を引き出させる短時間誘拐事件が発生した。
(殺人)リマ市サン・ファン・デ・ルリガンチョ区において、近隣住民と喧嘩になった男性が相手方により銃殺された。
(強盗)リマ市サン・ファン・デ・ルリガンチョ区において、帰宅途中の女性が所持していたハンドバッグをひったくられる事件が発生した。被害者は、犯人車両引きずられ怪我を負った。
(強盗殺人)リマ市ロス・オリボス区において、強盗に襲撃された男性が犯人に抵抗し、犯人から反撃を受け、殺害された。
(強盗殺人)リマ市ビジャ・マリア・デル・トリュンフォ区において、帰宅中の男性がバイクに乗った2人組に襲われて携帯電話を盗まれそうになり、抵抗し、犯人に銃で撃たれて殺害された。
3 テロ・爆弾事件発生状況
アプリマック・エネ・マンタロ川渓谷(VRAEM)地域の一部地域では、引き続き武装組織と治安部隊との衝突が度々発生しています。同地域における非常事態宣言は今後も継続される見通しです。これらの地域に対しては、日本政府としても危険情報のレベル3(渡航中止勧告)を発出していますので、理由の如何にかかわらず立ち入らないでください。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
ペルーではリマ市を含む各地で、年少者被害の誘拐や、ATMから現金を引き下ろさせる目的の誘拐強盗(短時間誘拐)が発生しています。
また、富裕層を対象とした脅迫、恐喝、殺人事件が発生しています。被害の対象とならないためには、普段からパターン化した行動を避け、犯人に行動を予知されないようにすることが大切です。
これらの犯罪グループ同士による銃撃戦も発生しています。外出する際は、周囲への警戒を怠らないことが肝要です。
5 日本企業の安全に係わる状況
現在、特段の情報はありません。