ペルー安全対策情報(2023年7~9月分:邦人被害例等)
令和5年10月2日
在ペルー日本国大使館
1 社会・治安情勢
(1)2022年12月7日の国会による前大統領の罷免、新大統領の就任以降、国内各地において、大統領の辞任及び選挙の早期実施等を求める抗議活動が継続していましたが、現在は沈静化しています。他方、リマ州及びピウラ州の一部地域に対して、犯罪や不法移民増加を背景とした治安対策のための非常事態宣言が発出されるなど、以前として社会・治安情勢は流動的です。また、窃盗等の邦人被害が急増しており、外出時にはより一層の注意が必要です(下記2(2)アのとおり)。
また、観光客が多く訪れるマチュピチュも、デモ隊による線路封鎖や大雨被害による土砂崩れ等により鉄道の運行が休止することがあり、その場合には、他に移動手段が徒歩だけとなるので最新の情報の入手に努めてください。
(2)原油及び食料品の高騰を原因とした生活不安による犯罪件数の増加も顕著です。また、テロ組織は一部山間部地域に潜伏し、麻薬密輸を資金源に現在も活動を続け、軍や国家警察に対する武力攻撃を続けています。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全般
ア 2022年中の刑法犯罪認知件数は、全国で481,057件(前年比103,704件増・同27%増)と前年から大きく増加しました。これまでコロナ禍による外出制限や各種規制により犯罪は減少傾向が続いていましたが、2021年以降、各種制限の撤廃に伴い現在では都市部を中心に急激に犯罪が増加しています。
罪種別の統計では、殺人や傷害等の生命及び身体に対する犯罪72,468件(前年比10,714件増)、強盗や窃盗等の財産に対する犯罪300,095件(前年比75,804件増)となっており、これらの犯罪は、首都リマ市・カヤオ憲法特別市において集中的に発生しています。これら件数はあくまで警察に被害申告がなされたことにより把握された犯罪件数の統計であり、実際には未申告の更に多くの犯罪が発生しているものと考えられます。
イ コロナ収束後、外国人観光客が被害者となる長距離バス車内での犯罪やタクシー強盗の発生が報告されています。具体的には夜間、知らないうちに人気のない場所に連れていかれ、その場所で待ち伏せていた強盗犯人が乗り込み乗客の金品を奪い立ち去る手口の他、運転手や他の乗客から薬物が混入した菓子や飲み物等を勧められ口にしたところ昏睡してしまい、所持品を奪われる等の手口です。長距離バスやタクシー利用時はなるべく夜間の利用は避ける、運転手や乗客の身分確認が徹底されている会社を選ぶなどの対策が必要です。
ウ 比較的安全とされているミラフローレス区やサン・イシドロ区等においても、日中からオートバイを使用した犯人らによる、ひったくりや強盗が多発しています。また高級腕時計や貴金属を持つ者の後をつけ、人気の無い場所で襲うといった手口は従来から継続して発生しており装飾・携行品には特に注意してください。
エ 特に携帯電話を使用中の歩行者を狙った、ひったくりの発生が急増しており被害時に抵抗したため犯人から銃撃される事例が多く発生しています。国内で1日あたり5,000件を超える携帯電話の盗難が発生しているとの統計もあり、外出時は自分の持っている携帯電話は犯人にとって「高級品」であることを自覚し、十分注意すると共に、被害時には絶対に抵抗しないことが重要です。また、携帯電話の盗難件数の増加に伴い、被害品の携帯電話に保存された個人情報を悪用したインターネット犯罪も増加しています。歩きながらの携帯電話の使用は控え、やむを得ず、携帯電話を屋外で使用する場合は、周囲をよく警戒することが大切です。
オ 強盗の手口として、一般人を装った共犯者(連絡役)が市内各所(店舗の出入口、銀行・ATM前、飲食店内、空港の出入口付近等)に配置されており、共犯者が、被害者を物色・選定し、実行犯に連絡するという手法が取られていることから、これまで以上に所持品・携行品は他人から見えない様に携行し、華美な服装は避ける等といった、ターゲットにならないための注意を払う必要があります。特に被害者が金融機関を利用した直後に襲われる事件が多発しています。
(2)主な犯罪発生例等
ア 邦人被害例
(窃盗)友人らと旅行中の被害者がイカ市内のレストランに立ち寄り、テーブル付近に置けなかった大きな荷物を少し離れた広いスペースに置いていたところ、他の客が大声で店員ともめ出し、レストラン内が騒然となり、そちらの様子に気を取られているうちに、まとめて置いてあったはずの荷物を盗まれてしまった。
(窃盗)サン・ミゲル区内コンサート会場にて、被害者が友人と前日から場所取りの列に並んでいたところ、その場所を確保するため、ほんの少しの間だけ、その場を離れて戻ると、置いてあったはずの貴重品が入ったカバンがなくなっていた。
(窃盗)友人とペルーを旅行中の被害者が滞在拠点であるホテルの金庫にパスポートと現金を入れ、一日外出した際、金庫の鍵が壊れていたため、清掃不要のタグをドアに掲げ、誰も入らないようにして外出したが、帰宅すると、部屋が清掃されており、金庫に入れておいたはずの貴重品がなくなっていた。
(窃盗)ミラフローレス区内飲食店において、友人と酒を飲んでいた被害者が机の脚元に置いていたカバンがなくなっていることに気付いた。友人の1人が帰ったため、カバンをそのままにし、席を移動してしまった。その店には物売りがよく来ていたので、そのうちの誰かに盗まれたかもしれない。
(強盗)留学生の被害者が友人とヘスス・マリア区内下宿先から近くのレストランに徒歩で向かっているところ、車から降りてきた覆面を被った男2人組に呼び止められ、持っていた財布や携帯電話等、一切の貴重品を盗まれた。犯人の1人は拳銃を所持していた。
イ 在留邦人が多く住む地区での犯罪発生例
(殺人)リマ市サンティアゴ・デ・スルコ区において、殺し屋による報復殺人が発生した。犯人らは、被害者らが車両に乗り込んだ直後、車両に近づき、被害らを銃撃した。
(強盗)リマ市プエブロ・リブレ区において、住宅侵入の強盗事件が発生した。被害者は近くの店舗に買い物に出かけた際に、犯人らに跡をつけられ、帰宅直後、玄関の鍵を開けたタイミングで住宅に侵入された。
(強盗)リマ市リンセ区のコンビニエンスストアにおいて、強盗事件が発生した。犯人らは拳銃所持の2人組の少年であった。
(窃盗)リマ市サン・ボルハ区において、女性ばかりを狙ったひったくり事件が連続発生した。
(窃盗)リマ市サンティアゴ・デ・スルコ区において、自動車窃盗事件が発生した。防犯カメラ映像によると、犯人は被害者が路上駐車後、5分ほどで犯行を遂げていた。
(強盗)リマ市ヘスス・マリア区(大使館から1ブロック先の通り)において、拳銃使用の携帯電話強盗が発生した。被害者はいつも同じ時間帯に同所を通行する近所の人間で、犯人に待ち伏せされ、被害に遭った。
(窃盗)リマ市ヘスス・マリア区(大使館から2ブロック先の通り)において、携帯電話で通話していた歩行者が、後ろからオートバイに乗っていた犯人に狙われ、携帯電話ひったくりの被害に遭った。
3 テロ・爆弾事件発生状況
アプリマック・エネ・マンタロ川渓谷(VRAEM)地域の一部地域では、引き続き武装組織と治安部隊との衝突が度々発生しています。同地域における非常事態宣言は今後も継続される見通しです。これらの地域に対しては、日本政府としても危険情報のレベル3(渡航中止勧告)を発出していますので、理由の如何にかかわらず立ち入らないでください。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
ペルーではリマ市を含む各地で、年少者被害の誘拐や、ATMから現金を引き下ろさせる目的の誘拐強盗(短時間誘拐)が発生しています。
また、富裕層を対象とした脅迫、恐喝、殺人事件が発生しています。被害の対象とならないためには、普段からパターン化した行動を避け、犯人に行動を予知されないようにすることが大切です。さらに、リマ州及びピウラ州の一部地域に対して、犯罪や不法移民増加を背景とした治安対策のための非常事態宣言が発出されています。特に、リマ州サン・ファン・デ・ルリガンチョ区では、犯罪組織による恐喝事件が急増しており、殺し屋による殺人事件や組織同士の対立による銃撃戦も発生しています。外出する際は、周囲への警戒を怠らないことが肝要です。
5 日本企業の安全に係わる状況
現在、特段の情報はありません。