9月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
令和5年11月28日
【概要】
1 内政
●9月5日、ボルアルテ大統領は先住民女性に係る国際デー行事に出席し、社会福祉プログラム等について説明した。
●9月6日、6大臣が交代した。
●9月7日、国会法務人権委員会が全国司法審議会(JNJ)を調査の上、14日以内に報告書を提出することが決定した。同月20日、調査・報告書提出期間が14日間延長された。
●9月8日、ボルアルテ大統領は奨学金給付数拡大を発表した。
●9月13日、国会はチャベス国防大臣を召喚した。
●9月22日、ボルアルテ大統領は悪化する治安に関する対策を発表した。
2 外交
●9月17-21日、ボルアルテ大統領は、国連総会等出席のためNYを訪問した。
【本文】
1 内政
(1)ボルアルテ大統領の先住民女性に係る国際デー行事出席
9月5日、先住民女性に係る国際デーに際し、ボルアルテ大統領は、明年40億ソレス以上が、牛乳瓶(Vaso de Leche、当館注1)、大衆食堂(comedores populares、当館注2)、あなたと伴に(Contigo、当館注3)のようなプログラムに向けられる旨を発表した。さらに、HAKU WINAY/NOA JAYATAIプログラム(当館注4)に2億5,000万ソルが、地方・先住民女性のビジネス計画に2,800万ソレスが、それぞれ割り当てられる予定である旨も発表した。
(当館注1)2001年制定の法律によって開始された社会福祉プログラム。社会的弱者とされる国民に日々の食料を提供するもので、6歳までの乳幼児(第1優先)、妊婦(第1優先)、7-13歳までの子ども、高齢者、結核患者が対象。
(当館注2)(1)貧困・極貧にある者、(2)子ども、結核患者、高齢者、道徳的危険・遺棄状態にある、又は家族による、あるいは政治的暴力の犠牲者である障がい者を対象とする「食料補助プログラム」を通じ、低価格で食事を提供するために草の根レベルの団体が設けている食堂。
(当館注3)貧困・極貧状態にある重篤の障がい者を対象に隔月で300ソレスの年金を支給するプログラム。
(当館注4)地方の貧困世帯の収入手段拡大及び食料アクセス改善のため、生産能力と起業を促進するプログラム。
(2)6大臣の交代
9月6日、法務人権大臣、教育大臣、農業開発灌漑大臣、労働雇用促進大臣、生産大臣、運輸通信大臣の6大臣が交代した。
(3)国会によるJNJ調査・その1
ア 9月7日、国会本会議は、当国憲法第法157条の規定に基づき全国司法審議会(JNJ)メンバーの解任について討議した後、法務人権委員会によるJNJメンバーの略式調査及び14日間内の報告書提出を委任する旨を賛成84、反対22、棄権7により可決した。
イ JNJは、カスティージョ前大統領がその職にあった当時に「カ」前大統領に対する汚職に関する捜査を進めなかったアバロス前検事総長(当館注:本年6月、国会は5年間の公職追放を決定)を支持し、国会はJNJメンバーの係る行為は権力の乱用であると非難していた。
ウ 同日、ペルー国連システムは、国家権力のバランスの観点から上記国会の決定に懸念を表明した。
(参考:当国憲法第157条 全国司法審議会メンバーの解任)
全国司法審議会メンバーは、重大な事由があれば、国会議員定数の2/3の投票による合意により解任される。
(4)ボルアルテ大統領による奨学金給付数拡大の発表
9月8日、ボルアルテ大統領は、奨学金(Beca18、当館注5)給付数を就任時の5,000から倍の10,000にした旨及び2026年には30,000にする旨を発表した。
(当館注5)成績はよいものの、経済的困窮にある又は社会的弱者の高等学校5年生又は高等学校卒業生に対し、大学での勉学のための奨学金を支給するプログラム。
(5)国会によるチャベス国防大臣の召喚
9月13日、チャベス国防大臣は、同月4日、アプリマック・エネ・マンタロ河渓谷(VRAEM)地域において麻薬密売グループにより4名の軍人が殺害された事件に関し、国会本会議に召喚され、尋問を受けた(当館注:その後、国会で譴責動議に対する投票が行われることはなかった。)。
(6)国会によるJNJ調査・その2
9月20日、国会は、法務人権委員会によるJNJメンバーの略式調査及び報告書提出の期日を14日間延長した。
(7)ボルアルテ大統領による治安対策の発表
9月22日、ボルアルテ大統領は、9月18日に治安悪化のために非常事態宣言が発出されたサンフアン・デ・ルリガンチョ区(リマ市)の区長、サンマルティン・デ・ポレス区(リマ市)の区長、スヤナ郡(ピウラ州)の郡長、スヤナ郡内の6つの町の町長と会合を開き、治安対策のために5,450万ソレスが割り当て割れる旨発表した。右予算の具体的内訳・目的は以下のとおり。
ア 1,500万ソレスは、上記自治体における照明、監視ビデオカメラ、包括的なパトロールの費用に当てられる。
イ 1,900万ソルは、警察業務の強化に向けられ、このうち800万ソレスはスヤナ郡及びサンフアン・デ・ルリガンチョ区並びにサンマルティン・デ・ポレス区を含む4つの区での対犯罪特別隊の活動の実施のために内務省に割り当てられる。
ウ また、150万ソルは、ルリガンチョ及びミゲル・カストロ・カストロの両刑務所内部で計画される犯罪を予防するため、両刑務所での治安強化に当てられる。
エ 残り1,900万ソルは、現行犯逮捕を目的とするスナヤ郡での3つのユニット、サンフアン・デ・ルリガンチョ区での4つのユニット、サンマルティン・デ・ポレス区での2つのユニット設立のために使用される。
2 外交
○ボルアルテ大統領の国連総会等出席
9月17-21日、ボルアルテ大統領は国連総会等出席のためNYを訪問した。
(1)18日に開催されたSDGに向けての進捗を加速する手段の強化をテーマとするSDGサミットにおいて、概要以下のとおり演説した。
ア ペルーは、より良い生活基準と持続可能な発展を達成することに確固として、かつ継続してコミットしており、これは政府によってペルー国民のために推進されている様々な政策に反映されている。
イ 持続可能な発展へのコミットメントの証として、99%の国民が健康保険に加入しており、そのうち70%は包括的健康保険(SIS、国の健康保険制度)である。また、約1億1,400万ドルが国家腫瘍ネットワーク(Red Oncologica Nacional、当館注6)実施のために割り当てられてきている。
ウ 教育分野では、2言語による異文化の教育が先住民言語で書かれた書籍や教材を通して強化されており、英語学習は初期段階から推進されている。労働分野では、Winay Warmi(当館注7)への支援により、62万人の女性が条件のよい雇用に就くことができた。
エ 生物多様性及び環境分野については、森林・河川の保全地域を増加させるためにアマゾンサミットにコミットしており、年末までに1,000万本が植樹される予定である。
(当館注6)がん患者が一極に集中せず分散して治療を受けるようにするため、私立病院・クリニックの集合によるネットワーク。
(当館注7)女性のより良い雇用と労働条件を促進するセクター横断的な戦略。
(2)19日の国連総会における一般討論演説の内容は以下のとおり。
ア 連帯・レジリエンス・相互依存を基本に、エルニーニョのような気象現象の影響に直ちに取り組むための国際的な協力・行動を定める協定を提案した。
イ 政府は、前例のない出来事を前に国民保護を強化するため40億ソレスの投資を伴う、エルニーニョへの大々的な行動キャンペーンに着手したことを強調した。
ウ ペルーは民主主義、法の支配、人権及び国際法を尊重しており、他国との協力にコミットしている旨述べた。
エ 政府の主目的は貧困と闘うことであり、金銭的貧困だけではなく、多次元での貧困に立ち向かうための政策を採った旨も述べた。さらに、100以上の停止していたプロジェクトが再開しており、飲料水や基礎的衛生をより多くの国民に届けることができることになる旨も述べた。
オ また、政府は無料かつ全国民のための医療を保障し、医療施設のインフラや設備を強化しており、生後2か月から5歳までの乳幼児に対し、ポリオ及びはしかのワクチンを接種することができたと述べた。
カ 他国のリーダー等に、ペルーへの投資を継続するよう呼びかけた。ペルーには、明確で透明性のある競争ルール及び安定性・法的確実性があるとともに、インフレ率は低く、十分な外貨準備高があり、(政府の)唯一の目的は持続性あるすべての成長のために働くことであると説明した。
1 内政
●9月5日、ボルアルテ大統領は先住民女性に係る国際デー行事に出席し、社会福祉プログラム等について説明した。
●9月6日、6大臣が交代した。
●9月7日、国会法務人権委員会が全国司法審議会(JNJ)を調査の上、14日以内に報告書を提出することが決定した。同月20日、調査・報告書提出期間が14日間延長された。
●9月8日、ボルアルテ大統領は奨学金給付数拡大を発表した。
●9月13日、国会はチャベス国防大臣を召喚した。
●9月22日、ボルアルテ大統領は悪化する治安に関する対策を発表した。
2 外交
●9月17-21日、ボルアルテ大統領は、国連総会等出席のためNYを訪問した。
【本文】
1 内政
(1)ボルアルテ大統領の先住民女性に係る国際デー行事出席
9月5日、先住民女性に係る国際デーに際し、ボルアルテ大統領は、明年40億ソレス以上が、牛乳瓶(Vaso de Leche、当館注1)、大衆食堂(comedores populares、当館注2)、あなたと伴に(Contigo、当館注3)のようなプログラムに向けられる旨を発表した。さらに、HAKU WINAY/NOA JAYATAIプログラム(当館注4)に2億5,000万ソルが、地方・先住民女性のビジネス計画に2,800万ソレスが、それぞれ割り当てられる予定である旨も発表した。
(当館注1)2001年制定の法律によって開始された社会福祉プログラム。社会的弱者とされる国民に日々の食料を提供するもので、6歳までの乳幼児(第1優先)、妊婦(第1優先)、7-13歳までの子ども、高齢者、結核患者が対象。
(当館注2)(1)貧困・極貧にある者、(2)子ども、結核患者、高齢者、道徳的危険・遺棄状態にある、又は家族による、あるいは政治的暴力の犠牲者である障がい者を対象とする「食料補助プログラム」を通じ、低価格で食事を提供するために草の根レベルの団体が設けている食堂。
(当館注3)貧困・極貧状態にある重篤の障がい者を対象に隔月で300ソレスの年金を支給するプログラム。
(当館注4)地方の貧困世帯の収入手段拡大及び食料アクセス改善のため、生産能力と起業を促進するプログラム。
(2)6大臣の交代
9月6日、法務人権大臣、教育大臣、農業開発灌漑大臣、労働雇用促進大臣、生産大臣、運輸通信大臣の6大臣が交代した。
(3)国会によるJNJ調査・その1
ア 9月7日、国会本会議は、当国憲法第法157条の規定に基づき全国司法審議会(JNJ)メンバーの解任について討議した後、法務人権委員会によるJNJメンバーの略式調査及び14日間内の報告書提出を委任する旨を賛成84、反対22、棄権7により可決した。
イ JNJは、カスティージョ前大統領がその職にあった当時に「カ」前大統領に対する汚職に関する捜査を進めなかったアバロス前検事総長(当館注:本年6月、国会は5年間の公職追放を決定)を支持し、国会はJNJメンバーの係る行為は権力の乱用であると非難していた。
ウ 同日、ペルー国連システムは、国家権力のバランスの観点から上記国会の決定に懸念を表明した。
(参考:当国憲法第157条 全国司法審議会メンバーの解任)
全国司法審議会メンバーは、重大な事由があれば、国会議員定数の2/3の投票による合意により解任される。
(4)ボルアルテ大統領による奨学金給付数拡大の発表
9月8日、ボルアルテ大統領は、奨学金(Beca18、当館注5)給付数を就任時の5,000から倍の10,000にした旨及び2026年には30,000にする旨を発表した。
(当館注5)成績はよいものの、経済的困窮にある又は社会的弱者の高等学校5年生又は高等学校卒業生に対し、大学での勉学のための奨学金を支給するプログラム。
(5)国会によるチャベス国防大臣の召喚
9月13日、チャベス国防大臣は、同月4日、アプリマック・エネ・マンタロ河渓谷(VRAEM)地域において麻薬密売グループにより4名の軍人が殺害された事件に関し、国会本会議に召喚され、尋問を受けた(当館注:その後、国会で譴責動議に対する投票が行われることはなかった。)。
(6)国会によるJNJ調査・その2
9月20日、国会は、法務人権委員会によるJNJメンバーの略式調査及び報告書提出の期日を14日間延長した。
(7)ボルアルテ大統領による治安対策の発表
9月22日、ボルアルテ大統領は、9月18日に治安悪化のために非常事態宣言が発出されたサンフアン・デ・ルリガンチョ区(リマ市)の区長、サンマルティン・デ・ポレス区(リマ市)の区長、スヤナ郡(ピウラ州)の郡長、スヤナ郡内の6つの町の町長と会合を開き、治安対策のために5,450万ソレスが割り当て割れる旨発表した。右予算の具体的内訳・目的は以下のとおり。
ア 1,500万ソレスは、上記自治体における照明、監視ビデオカメラ、包括的なパトロールの費用に当てられる。
イ 1,900万ソルは、警察業務の強化に向けられ、このうち800万ソレスはスヤナ郡及びサンフアン・デ・ルリガンチョ区並びにサンマルティン・デ・ポレス区を含む4つの区での対犯罪特別隊の活動の実施のために内務省に割り当てられる。
ウ また、150万ソルは、ルリガンチョ及びミゲル・カストロ・カストロの両刑務所内部で計画される犯罪を予防するため、両刑務所での治安強化に当てられる。
エ 残り1,900万ソルは、現行犯逮捕を目的とするスナヤ郡での3つのユニット、サンフアン・デ・ルリガンチョ区での4つのユニット、サンマルティン・デ・ポレス区での2つのユニット設立のために使用される。
2 外交
○ボルアルテ大統領の国連総会等出席
9月17-21日、ボルアルテ大統領は国連総会等出席のためNYを訪問した。
(1)18日に開催されたSDGに向けての進捗を加速する手段の強化をテーマとするSDGサミットにおいて、概要以下のとおり演説した。
ア ペルーは、より良い生活基準と持続可能な発展を達成することに確固として、かつ継続してコミットしており、これは政府によってペルー国民のために推進されている様々な政策に反映されている。
イ 持続可能な発展へのコミットメントの証として、99%の国民が健康保険に加入しており、そのうち70%は包括的健康保険(SIS、国の健康保険制度)である。また、約1億1,400万ドルが国家腫瘍ネットワーク(Red Oncologica Nacional、当館注6)実施のために割り当てられてきている。
ウ 教育分野では、2言語による異文化の教育が先住民言語で書かれた書籍や教材を通して強化されており、英語学習は初期段階から推進されている。労働分野では、Winay Warmi(当館注7)への支援により、62万人の女性が条件のよい雇用に就くことができた。
エ 生物多様性及び環境分野については、森林・河川の保全地域を増加させるためにアマゾンサミットにコミットしており、年末までに1,000万本が植樹される予定である。
(当館注6)がん患者が一極に集中せず分散して治療を受けるようにするため、私立病院・クリニックの集合によるネットワーク。
(当館注7)女性のより良い雇用と労働条件を促進するセクター横断的な戦略。
(2)19日の国連総会における一般討論演説の内容は以下のとおり。
ア 連帯・レジリエンス・相互依存を基本に、エルニーニョのような気象現象の影響に直ちに取り組むための国際的な協力・行動を定める協定を提案した。
イ 政府は、前例のない出来事を前に国民保護を強化するため40億ソレスの投資を伴う、エルニーニョへの大々的な行動キャンペーンに着手したことを強調した。
ウ ペルーは民主主義、法の支配、人権及び国際法を尊重しており、他国との協力にコミットしている旨述べた。
エ 政府の主目的は貧困と闘うことであり、金銭的貧困だけではなく、多次元での貧困に立ち向かうための政策を採った旨も述べた。さらに、100以上の停止していたプロジェクトが再開しており、飲料水や基礎的衛生をより多くの国民に届けることができることになる旨も述べた。
オ また、政府は無料かつ全国民のための医療を保障し、医療施設のインフラや設備を強化しており、生後2か月から5歳までの乳幼児に対し、ポリオ及びはしかのワクチンを接種することができたと述べた。
カ 他国のリーダー等に、ペルーへの投資を継続するよう呼びかけた。ペルーには、明確で透明性のある競争ルール及び安定性・法的確実性があるとともに、インフレ率は低く、十分な外貨準備高があり、(政府の)唯一の目的は持続性あるすべての成長のために働くことであると説明した。