ペルーの経済情勢(2023年第3四半期)

令和5年11月29日
1 総論
 最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率▲1.29%(9月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率5.04%(9月までの一年間)、対米ドル為替相場3.731ソル(9月平均値)、リマ首都圏の完全失業率6.7%(7月~9月)、財政収支約15億ソルの赤字(9月)、貿易収支約12億米ドルの黒字(9月)となった。
 
2 各論
(1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。
 
ア 経済成長率
 最新の経済成長率(GDP成長率)について、9月は主に漁業等の成長率の伸びが見られた一方、建設業、製造業等がマイナスとなり、全体としてGDP成長率は▲1.29%(前年同月比)となった。


 


イ インフレ率
 9月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.02%となり、最近12か月(202210月~20239月)の上昇率は、5.04%となった。




ウ 為替相場
 9月の対米ドル為替相場の平均は3.731ソルであった。
 


 

 
エ 失業率
 7月~9月のリマ首都圏の完全失業率は6.7%であった。




オ 財政収支
 9月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で12.6%減となり、歳出は同比で2.0%減となった。全体では、プライマリーバランスは約15億ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると約20億ソルの赤字となった。




カ 貿易収支
 9月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比1.3%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代的農業産品、繊維製品、工業製品等)が12.0%減となり、全体では約56億米ドル(対前年同月比2.4%減)となった。主要輸出品目は銅、金、重油であった。
 輸入額は、対前年同月比で消費財が4.6%減、中間財は8.3%減、資本財が4.0%減となり、全体で約44億米ドル(対前年同月比6.4%減)となった。この結果、貿易収支は約12億米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油、軽油、自動車であった。






キ 外貨準備高
 9月末の外貨準備高は約712億米ドルとなった。




ク 対外累積債務
 2023年9月末の対外債務累積総額は約1,025億米ドルとなった。



 
 
(注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。


(2) 最近の主な出来事
・外務省発表:WTO漁業補助金協定に関する受諾書の寄託
 7月19日、ペルー外務省は、ヘルバシ外相(当時)がWTO事務局を往訪し、漁業補助金協定に関する受諾書を寄託した旨発表した。ペルーの受諾は中南米で初となる。ヘルバシ外相は、世界の漁業資源の枯渇の主要な要因であるIUU漁業への補助金を禁止するという点で、本協定は環境、特に海洋の持続可能性に焦点を当てた最初のWTO協定であると強調した。ペルーの受諾は、スイス、シンガポール、セーシェル、米国、カナダ、アイスランド、UAE、EU、ナイジェリア、ベリーズ、中国、日本及びガボンに続く14番目であり、発効にはWTO加盟国の3分の2の受諾書の寄託が必要となる。
 
・リマメトロ2号線の試験運行の開始
 7月26日、運輸通信省は、リマメトロ2号線のコンセッション事業者と1A区間(メルカド・サンタ・アニータ駅からエビタミエント駅までの5kmの区間)の試験運行について合意し、12月から試験運行が開始されることとなった。リマメトロ2号線の建設は2014年に開始し、アテ区からカヤオ市までの全長35kmで27駅が設置される予定。現在進捗は全体の52%で、日立レール社が車両・信号システム供給で参加している。2号線によって1日あたり最大66万人の輸送が見込まれ、リマ市内の著しい交通渋滞の緩和に貢献することが期待されている。
 
・外務省発表:ペルーのASEAN加盟申請
 9月4日、ペルー外務省は、ヘルバシ外相(当時)がインドネシアを公式訪問し、カオ・キムホンASEAN事務総長に対して、「開発パートナー」としてのペルーのASEAN加盟を申請する公式文書を手交したと発表した。ヘルバシ外相は、同事務総長との会談において、ASEANと太平洋同盟及び2024年APEC議長国としてのペルーのイニシアティブの間で共通のアジェンダを追求できる可能性について強調した。
 
・「OECD経済審査ペルー2023」報告書の発表
 9月26日から28日まで、ペルーのOECD加盟プロセスの一環でコーマンOECD事務総長がペルーを訪問し、「OECD経済審査ペルー2023」報告書が発表された。報告書では、ペルーの堅固なマクロ経済制度が強調されつつも、財政の分権化、競争、司法、公務員などの分野で構造改革が必要である旨提言され、また、長期的な成長の促進、インフォーマル雇用の撲滅と社会保護の拡大、持続可能な財政の維持、環境への配慮という4つの大きな課題があると指摘されている。
 
(了)