11月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

令和5年12月22日
【概要】
1 内政
●6日、ボルアルテ大統領は、2024年の食料提供プログラムの予算に対し1億ソレス追加する旨を発表した。
●6日、ヘルバシ外相は辞表を提出し、7日、政治学者のゴンサレス-オラエチェア氏が新外相に任命された。
●7日、検察庁の汚職捜査チームは、ボルアルテ大統領の兄であるニカノル・ボルアルテ氏、オヨス・ナンチョク町長(カハマルカ州)に対する予備捜査を開始した。ニカノル氏は21日、オヨス町長は20日にそれぞれ検察庁から出頭を命じられていたが、2名とも出頭しなかった。
●7日、リマ上級裁判所は、10月25日に全国司法審議会(JNJ)から要請のあった予防措置を受け入れ、国会に対し国会での手続きを停止するよう命じる決定を行った。8日に予定されていた国会での最終報告書に関する討議等にJNJが出席しない旨表明したため、ソト国会議長は延期を発表した。9日、国会代理人は憲法裁判所に対し、リマ上級裁判所から発出された上記命令を無効にするよう要請した。
●15日、国会はロメロ内務大臣に対する譴責動議を可決し、同大臣は辞任した。21日、元ペルー国家警察次長のトーレス氏が新内務大臣に任命された。
●16日、国会本会議は、現行の一院制について2026年に予定されている次回総選挙から二院制とする憲法改正案を可決した(憲法改正には、次期会期での再度の可決が必要)。
●25日、ボルアルテ大統領は、看護師、助産師、大学教授の給与を増額する旨発表した。
●25日、ボルアルテ大統領は、暴力被害の危険性のある青少年に特化した国家保護プログラムを創設する旨発表した。
●26日、ボルアルテ大統領は、明年の独立確立200周年記念行事開始式に出席し、各種プロジェクト等について説明した。
●27日、検察庁と国家警察の特別チームは、ベナビデス検事総長の主任顧問を逮捕するとともに、同検事総長の事務所等を家宅捜索した。
●27日、ベナビデス検事総長は、抗議デモ中の死亡事件により、ボルアルテ大統領、オタロラ首相、3名の元・前内務大臣を告訴した。
●28日、憲法裁判所は、2022年3月17日付け同裁判所判決に基づき、担当判事に対し、フジモリ元大統領の釈放手続きを進めるよう命令を発出した。
●29日、国会はベラ・エネルギー・鉱山大臣を召喚した。
●29日、ボルアルテ大統領は、2隻のパトロールボートの建設着工式に出席した。
 
2 外交
●13-18日、APEC閣僚会合等のために訪米したゴンサレス-オラエチェア外相は、日本を含む4か国のカウンターパートと二国間会談を行った。
●14-18日、APEC首脳会議のために訪米したボルアルテ大統領は、中国、韓国を含む7か国の首脳と会談を行った。
●22-24日、ゴンサレス-オラエチェラ外相は、ノボア・エクアドル大統領の就任式に出席するとともに、ソマーフェルド外相と二国間会談を行った。
 
【本文】
1 内政
(1)ボルアルテ大統領による2024年社会福祉プログラム予算の増額発表
 6日、ボルアルテ大統領は、2024年、牛乳瓶(当館注1)の予算に追加で1億ソレスを当てる旨を発表した。これは、本年、地方自治体に対し当該社会福祉プログラムの財源のために移転された金額とほぼ同額である。また、受益者の登録をアップデートするための命令が発出された他、開発社会包括省とともに当該プログラム業務を実施する地方自治体への技術協力も行った旨を説明した。
 
(2)ヘルバシ外相の辞表提出
 6日、ヘルバシ外相は、ボルアルテ大統領が経済繁栄のための米州パートナーシップ(APEP)出席のため訪米した際、バイデン米国大統領との二国間首脳会談をセットできなかった責任をとって辞表を提出した。
 
(3)新外相の任命
 7日、ヘルバシ前外相の後任として、政治学者のゴンサレス-オラエチェア氏が新外相に任命された。
 
(4)検察庁によるボルアルテ大統領兄等に対する捜査・その1
 7日、検察庁の汚職捜査チームは、国に損害を与えた重大な共謀及び職権乱用の疑いで、ボルアルテ大統領の兄であるニカノル・ボルアルテ氏、オヨス・カハマルカ州サンミゲル郡ナンチョク町長に対する予備捜査を開始した(当館注2)。
 
(5)国会によるJNJ調査・その1
ア 7日、リマ上級裁判所は、10月25日に全国司法審議会(JNJ)から要請のあった予防措置を受け入れ、国会に対しJNJメンバーの解任に関する国会の手続きを一旦中断するよう命じる決定を行った。なお、国会での法務人権委員会提出の最終報告書に関する討議及び投票は8日に行われる予定となっていた。
イ 国会は、権力の均衡及び説明責任は民主主義の基礎的柱であるとして、上記リマ上級裁判所の決定を拒否した。
 
(6)国会によるJNJ調査・その2
 8日、ソト国会議長は、JNJメンバーが司法当局の決定を遵守して本会議には出席しない旨述べたため、JNJに関する最終報告書について討議する予定だった本会議を適切なときまで延期する旨発表した。
 
(7)国会によるJNJ調査・その3
 9日、国会代理人(procurador)は憲法裁判所に対し、リマ上級裁判所から発出された国会によるJNJメンバーの調査手続きの停止命令を無効にするよう要請した。
 
(8)ロメロ内務大臣の辞任
 15日、国会本会議は、賛成75、反対28、棄権14により、ロメロ内務大臣に対する譴責動議を可決した。ロメロ大臣はこれを受けて辞任し、17日、ボルアルテ大統領は辞任を承諾した。
 
(9)二院制に関する憲法改正案の可決
 16日、国会本会議は、賛成93、反対28、棄権1により、現行の一院制について2026年に予定されている次回総選挙から二院制とする憲法改正案を可決した(明年3月1日から開始される次期国会にて同様に議員数の2/3以上の賛成票を得て上記憲法改正案が可決されれば、2026年総選挙から二院制が復活)。
 
(10)検察庁によるボルアルテ大統領兄等に対する捜査・その2
 20日、検察庁に同日の出頭を命じられていたオヨス・ナンチョク町長は出頭しなかった。
 
(11)検察庁によるボルアルテ大統領兄等に対する捜査・その3
 21日、検察庁に同日の出頭を命じられていたニカノル・ボルアルテ氏は出頭しなかった。
 
(12)新内務大臣の任命(往電第1552号参照)
 21日、ボルアルテ大統領は、元ペルー国家警察次長のトーレス氏を新内務大臣に任命した。
 
(13)ボルアルテ大統領による看護師等の給与増額の発表
 25日、ボルアルテ大統領は、約3億ソレスを割り当てて、看護師、助産師、大学教授の給与を増額させる旨発表した。看護師・助産婦への増額は12月に実施され、14万人が裨益する。大学教授については、2万8千人以上が増額の対象となる。
 
(14)ボルアルテ大統領による青少年保護プログラムの発表
 25日、ボルアルテ大統領は、危険な状況にあり保護を受けていない青少年のために特化した国家保護プログラムを創設する旨発表した。同プログラムは2024年に開始し、予算は6千万ソレスである。最初は国内の25の裁判区で開始するが、徐々に全国に広げていく。年間8万7千人の青少年が裨益する予定。また、明年には青少年が被害者となっている暴力に対する予防と手当てのためのマルチ・セクター戦略が実施される予定である。
 
(15)ボルアルテ大統領による2024年独立確立200周年についての発表
 26日、ボルアルテ大統領は、2024年独立確立200周年記念活動プログラムの開始式に出席し、2024年中、記念行事がペルー全国で実施される旨発表した。
 発表内容の概要は、以下のとおり。
ア 2024年は愛国者による軍がペルーの独立を揺るぎないものにしたフニンの戦いやアヤクチョの戦いを思い起こさせるものであり(当館注:いずれも1824年)、2024年200周年は我が国とって歴史的節目(hito)となる。
 
イ 我々のアイデンティティが強調され、国家の絆が強化されることになる記念イベントへのすべての国民の参加を呼びかける。また、アルゼンチン、チリ、ボリビア、エクアドル、コロンビア、ベネズエラの他、アメリカ大陸の国々がこの祝典に参加することを願っている。
 
ウ 明年はクスコ州でのチョケキラオ・ケーブルカー、プーノ州フリアカ郡での上下水道、アプリマック州、アヤクチョ州、ワンカベリカ州、フニン州、クスコ州、プーノ州及びウカヤリ州での天然ガスの市場流通化、リマの地下鉄2号線など、遺産(legado)ともなるインフラ整備事業がある。
 
エ その他、ピウラ市及びカスティージャ町での上水システム、パスコ州での包括的接続性のためのブロードバンド・プロジェクト、14州での水の備蓄(cosecha de agua)、国民健康保険事業(EsSalud)による象徴的な11の病院、75の200周年記念学校等のインフラ整備(改善)事業も予定されている。
 
(16)ベナビデス検事総長等に対する捜査
 27日、検察庁と国家警察の特別チームにより、ベナビデス検事総長の主任顧問宅が家宅捜索を受けた後、同顧問が逮捕された。また、同検事総長の事務所と他の2名の顧問宅も家宅捜索を受けた。同検事総長の容疑は、検察庁内の犯罪組織のヘッドとして、(1)JNJメンバーの解任、(2)オンブズマン選出、(3)前検事総長の公職追放に関して、国会議員に不法に働きかけを行ったというもの。
 
(17)ベナビデス検事総長によるボルアルテ大統領等の告訴
 27日、ベナビデス検事総長は、2022年12月-2023年1月の間の政府・国会に対する抗議デモ中に起きた死亡事件により、ボルアルテ大統領、オタロラ首相、3名の元・前内務大臣を告訴した。
 
(18)憲法裁判所によるフジモリ元大統領の釈放命令
 28日、憲法裁判所は、フジモリ元大統領の釈放を認めた2022年3月17日付け同裁判所判決について、判決は最終的なものであり、いかなる方法でも変更されうるものではないとして、担当判事に対し、釈放執行のための手続きを進めるよう命令を発出した。
 
(19)国会によるベラ・エネルギー鉱山大臣の召喚
 29日、ベラ・エネルギー・鉱山大臣は、鉱業活動によるプーノ州のジャジマヨ川、ハトゥン・マイヨ川、チャカパルカ川の盆地での汚染問題に関し国会本会議に召喚され、説明を行った(その後、国会で譴責動議は提出されなかった)。
 
(20)ボルアルテ大統領によるパトロールボート建設着工式出席
 29日、ボルアルテ大統領は、チンボテにて、警戒及び自然災害による緊急対応業務のために建設される2隻のパトロールボートの着工式に出席した。2隻は、防衛の他、環境・海洋動物を保護し、違法漁業や公海での犯罪等を取り締まり、救難活動・人道支援のための配給を支援する予定。本建設事業により1,500の雇用を生む予定。
 
II 外交
(1)ゴンサレス-オラエチェア外相のAPEC閣僚会議出席時の二国間外相会談
 13-18日、サンフランシスコでのAPEC閣僚会議等のため訪米したゴンサレス-オラエチェア外相は、米国、日本、チリ、ブルネイのカウンターパートと二国間会談を行った。
 
(2)ボルアルテ大統領のAPEC首脳会議出席時の二国間首脳会談
 14-18日、サンフランシスコでのAPEC首脳会議出席のため訪米したボルアルテ大統領は、マレーシア、韓国、中国、インドネシア、シンガポール、フィリピン、ベトナムのとの間で首脳会談を行った。
 
(3)ゴンサレス-オラエチェア外相のエクアドル大統領就任式出席及び二国間外相会談
 22-24日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、ノボア・エクアドル大統領就任式出席のためエクアドルを訪問した。また、ソマーフェルド・エクアドル外相と二国間会談を行った。
 
(当館注1)2001年制定の法律によって開始された社会福祉プログラム。社会的弱者とされる国民に日々の食料を提供するもので、6歳までの乳幼児(第1優先)、妊婦(第1優先)、7-13歳までの子ども、高齢者、結核患者が対象。
 
(当館注2)本年10月18日、オヨス町長がリマのニカノル氏自宅で開かれたパーティに参加した直後、住民約1,400人のナンチョク町の5つの投資プロジェクトに対し国から約2千万ソレスが支払われた。