ペルー安全対策情報(2023年10~12月分:邦人被害例等)
在ペルー日本国大使館
1 社会・治安情勢
(1)2022年12月7日の国会による前大統領の罷免、新大統領の就任以降から1年が経過し、同時期に継続していた大統領の辞任及び選挙の早期実施等を求める抗議活動は沈静化しています。他方、一部山間部地域、国境地帯、リマ州、ピウラ州、ラ・リベルタ州の一部地域や国道・州道・両側500メートルの場所に対して非常事態宣言が発出されるなど、依然として社会・治安情勢は流動的です。また、下記2(1)のとおり犯罪件数の増加も顕著であり、下記2(2)アのとおり窃盗等の邦人被害が急増しており、外出時にはより一層の注意が必要です。
(2)観光客が多く訪れるマチュピチュも、デモ隊による線路封鎖や大雨被害による土砂崩れ等により鉄道の運行が休止することがあり、その場合には、他に移動手段が徒歩だけとなるので最新の情報の入手に努めてください。
(3)テロ組織は一部山間部地域に潜伏し、麻薬密輸を資金源に現在も活動を続け、軍や国家警察に対する武力攻撃を続けています。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全般
ア 2022年中の刑法犯罪認知件数は、全国で481,057件(前年比103,704件増・同27%増)と前年から大きく増加しました。これまでコロナ禍による外出制限や各種規制により犯罪は減少傾向が続いていましたが、2021年以降、各種制限の撤廃に伴い現在では都市部を中心に急激に犯罪が増加しています。
罪種別の統計では、殺人や傷害等の生命及び身体に対する犯罪72,468件(前年比10,714件増)、強盗や窃盗等の財産に対する犯罪300,095件(前年比75,804件増)となっており、これらの犯罪は、首都リマ市・カヤオ憲法特別市において集中的に発生しています。これら件数はあくまで警察に被害申告がなされたことにより把握された犯罪件数の統計であり、実際には未申告の更に多くの犯罪が発生しているものと考えられます。
イ コロナ収束後、外国人観光客が被害者となる長距離バス車内での犯罪やタクシー強盗の発生が報告されています。具体的には夜間、知らないうちに人気のない場所に連れていかれ、その場所で待ち伏せていた強盗犯人が乗り込み乗客の金品を奪い立ち去る手口の他、運転手や他の乗客から薬物が混入した菓子や飲み物等を勧められ口にしたところ昏睡してしまい、所持品を奪われる等の手口です。長距離バスやタクシー利用時はなるべく夜間の利用は避ける、運転手や乗客の身分確認が徹底されている会社を選び、タクシー会社や配車アプリに登録していないタクシー等の利用は避けてください。
ウ 比較的安全とされているミラフローレス区やサン・イシドロ区等においても、日中から、オートバイを使用した犯人らによる、ひったくりや強盗が多発しています。また高級腕時計や貴金属を持つ者の後をつけ、人気の無い場所で襲うといった手口は従来から継続して発生しており装飾・携行品には特に注意してください。
エ 特に携帯電話を使用中の歩行者を狙った、ひったくりの発生が急増しており被害時に抵抗したため犯人から銃撃される事例が多く発生しています。国内で1日あたり5,000件を超える携帯電話の盗難が発生しているとの統計もあり、外出時は自分の持っている携帯電話は犯人にとって「高級品」であることを自覚し、十分注意すると共に、被害時には絶対に抵抗しないことが重要です。また、携帯電話の盗難件数の増加に伴い、被害品の携帯電話に保存された個人情報を悪用したインターネット犯罪も増加しています。歩きながらの携帯電話の使用は控え、やむを得ず、携帯電話を屋外で使用する場合は、周囲をよく警戒することが大切です。
オ 強盗の手口として、一般人を装った共犯者(連絡役)が市内各所(店舗の出入口、銀行・ATM前、飲食店内、空港の出入口付近等)に配置されており、共犯者が、被害者を物色・選定し、実行犯に連絡するという手法が取られていることから、これまで以上に所持品・携行品は他人から見えない様に携行し、華美な服装は避ける等といった、ターゲットにならないための注意を払う必要があります。特に被害者が金融機関を利用した直後に襲われる事件が多発しています。
(2)主な犯罪発生例等
ア 邦人被害例
(強盗)イカ州ワカチナの砂丘で、単身夕日を観賞した後に徒歩でホテルに向かっていたところ、ナイフを所持した男に脅されて、所持品を全て奪われた。日が沈んだ後の現場は暗く、周囲に観光客の姿は見られなかった。
(強盗)イカ市内から郊外に向かうために被害者が流しのモト・タクシーに単身乗車したところ、人気のない場所に連れて行かれ、待ち伏せしていた男性に貴重品を強奪された。その際に載せていた荷物と共にモト・タクシーも逃走したため、全ての所持品を奪われてしまった。
(窃盗)地方都市において、民泊やホステル等の廉価な宿泊施設に滞在中の単身の被害者が外出先から自室に戻ったところ、何者かが侵入した形跡があり、金銭や貴重品が盗まれていた。
イ 在留邦人が多く住む地区での犯罪発生例
(強盗)リマ市内で、被害者は銀行から預金を引き出したあと、自宅前で男性2名に襲われて現金やその他所持品を奪われた。犯人らは銀行から自宅まで尾行して犯行に及んだと思われる。
(強盗)リマ市サン・イシドロ区において、住宅前で荷物を奪われる強盗事件が発生した。被害者は旅行帰りで多くの荷物を持っており、男性2人組の犯人らは空港から自宅までバイクで尾行を行って犯行に及び、逃走の際に拳銃を発砲した。
(強盗)リマ市リンセ区の路上で停車していた被害者2名が、男性2人組の犯人に拳銃で脅されて、金品を奪われた強盗事件が発生した。犯人らは被害者車両が発車できないように、前方を犯行車両で封鎖して犯行に及んだ。
(窃盗)リマ市サン・ボルハ区において、女性ばかりを狙った携帯電話のひったくり事件が連続発生した。犯人はデリバリー業者を装って強盗を繰り返している。
(強盗殺人)リマ市パチャカマック区の売店で強盗事件が発生し、拳銃を持った2人組の男性にハンドバッグを奪われそうになった女性が抵抗して胸部を撃たれた。女性は病院に搬送されたあとに死亡した。
3 テロ・爆弾事件発生状況
アプリマック・エネ・マンタロ川渓谷(VRAEM)地域の一部地域では、引き続き武装組織と治安部隊との衝突が度々発生しています。同地域における非常事態宣言は今後も継続される見通しです。これらの地域に対しては、日本政府としても危険情報のレベル3(渡航中止勧告)を発出していますので、理由の如何にかかわらず立ち入らないでください。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
ペルーではリマ市を含む各地で、年少者被害の誘拐や、ATMから現金を引き下ろさせる目的の誘拐強盗(短時間誘拐)が発生しています。
また、富裕層を対象とした脅迫、恐喝、殺人事件が発生しています。被害の対象とならないためには、普段からパターン化した行動を避け、犯人に行動を予知されないようにすることが大切です。さらに、リマ州サン・ファン・デ・ルリガンチョ区、サン・フアン・デ・ミラフローレス区、およびサン・マルティン・デ・ポーレス区では、犯罪組織による恐喝事件が急増しており、殺し屋による殺人事件や組織同士の対立による銃撃戦も発生しています。外出する際は、周囲への警戒を怠らないことが肝要です。
5 日本企業の安全に係わる状況
現在、特段の情報はありません