1月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり
令和6年2月10日
【概要】
1 内政
●2日、リマ高等裁判所は、ベナビデス検事総長(停職中)から提出されていた全国司法審議会(JNJ)による同検事総長への懲戒手続きの停止要求を退けた。
●3日、ボルアルテ大統領は、パトロール強化式典に出席し、新たな警察官の配置について説明した。
●3日、ボルアルテ大統領は、司法府の仕事始め式に出席し、同府の2024年予算について説明した。
●5日、最高裁判所は、組織犯罪等によりカスティージョ前大統領に課されている36か月間の予防勾留措置について、同前大統領から要求のあった見直しを拒否した。
●9日、最高裁判所は、ママニビデオス事件の上訴審にて、ケンジ・フジモリ元国会議員等に対し、禁錮4年6か月(執行猶予付き)及び18か月間の公職追放の判決を下した。
●9日、最高検察官によるベナビデス検事総長(停職中)に対する予備捜査が開始された。
●12日、刑事専門高等裁判所は、フジモリ元大統領への恩赦にパティビルカ事件は含まれない旨を発表した。
●12日、高等裁判所は、コクテル事件に関してケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首に課されていた36か月間の出国禁止措置を取り消した。25日、同裁判所は、上記事件に関するケイコFP党首への公判を7月1日に開始する旨決定した。
●12日、検察庁はカスティージョ前大統領に対し、自主クーデターに関して禁錮34年を求刑した。
●17日、ボルアルテ大統領は、リマ市内の空軍基地で行われた小型飛行機の発進式に出席した。
●17日、ボルアルテ大統領は、イカ州を訪問し、不動産登記や上下水道整備について説明した。
●17日、サンマルティン反汚職支部は、ボルアルテ大統領の実兄が創設しようとしている党のために中央政府地方事務所代表を利用したとして、検察庁に捜査を依頼した。
●18日、国会常設委員会は、定年退職年齢を75歳に引き上げる改正法案に対する第1回投票を行い可決した。
●18日、ボルアルテ大統領は、リマ市制施行489周年式典に出席し、2027年パンアメリカン競技大会に関する同市開催地立候補を支持した。
●19日、ボルアルテ大統領は、マドレ・デ・ディオス州のヨミバト先住民コミュニティを訪問し、人道支援物資等を届けた。
●20日、ボルアルテ大統領は、衛生設備の工事開始のためアヤクチョ州を訪問した。
●20日、ボルアルテ大統領は、アヤクチョ州での道路建設着工式に出席中、女性2名に襲われた。これを受けて、21日には首相府情報局(DINI)局長、22日には国家警察(PNP)長官が交代した。
●25日、政府のマチュピチュ入場券の販売方法方針を巡り、マチュピチュ観光業関係者がストライキを開始した。26日からはマチュピチュへの鉄道も運行を停止した。30日、政府側とクスコ当局との間で会合が開かれ、政府側が譲歩した形でクスコ当局と今後の販売方法について合意した。31日、住民と組合代表者は、30日の政府・クスコ当局間の合意を受け入れて、ストライキを止めることを決定した。
●25日、ボルアルテ大統領は、第1回国家治安評議会(Conasec)を開催し、治安対策について協議等を行った。
●29日、ボルアルテ大統領は、50名以上の郡・町レベルの女性首長との会合を開催した。
●29日、刑事専門高等裁判所によりパティビルカ事件に関するモンテシノス元国家情報局特別顧問に対する公判が開かれ、同元特別顧問は罪状を認め結審を早めることを受け入れた。これにより、31日、禁錮25年の求刑に対し禁錮19年8か月の判決が同元特別顧問に言い渡された。
●30日、刑事専門高等裁判所によりパティビルカ事件に関するフジモリ元大統領への公判が開かれ、同元大統領を加重殺人罪に問うている検察側は同元大統領の自宅軟禁を要求したが、31日、同裁判所は、同元大統領に対し9か月間の出国禁止を命じた一方で、検察側の自宅軟禁の要求は退けた。
●30日、ボルアルテ大統領は、アマソナス州での軍事作戦43周年記念式典に出席した。
●31日、ボルアルテ大統領は、プーノ州の20名以上の郡・町レベルの首長と同州での公共投資プロジェクトの推進について協議した。
2 外交・国際関係
●1日、外務省は、令和6年能登半島地震に関して哀悼の意を表するメッセージを発信した。
●9日、外務省はエクアドルでの治安悪化を受けて、同国の平和及び安全の回復を希望等する旨の声明を発出した。
●10日、ボルアルテ大統領は、エクアドル情勢を受けて、ノボア同国大統領と電話会談を行った。
●10日、外務省は、北朝鮮に関して懸念を表明する声明を発出した。
●10-21日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、パナマ、スイス、オランダを外遊した。パナマシティではパナマ外相と、ダボスではフィンランド外相とそれぞれ外相会談を行った。
●14日、外務省はグアテマラ大統領就任式の開始が遅れていることに関し声明を発出した。上記就任式には、アラナ法務人権大臣が出席した。
●18日、国会常設委員会は、米州人権擁護システムの改革提案に関するハイレベル委員会を設ける法案について2回目の投票を行い可決した。
●21日、エクアドル情勢を受けて、リマにおいてアンデス共同体第24回外相評議会臨時会合が開催された。
●23-25日、チリを訪問したゴンサレス-オラエチェア外相は、バン・クラベレン同国外相と外相会談を行った他、第1回未来のための2国間会議(CBP)を開催した。
●26日、外務省はコロンビアの森林火災の鎮火支援のため、ペルー空軍の機材を同国に供与したと発表した。
●26日、ボルアルテ大統領等は、国際司法裁判所(ICJ)によるチリとの海の国境線画定10周年記念式典に出席した。
●30日、外務省は、26日のベネズエラ最高裁判所決定に関する懸念を表明し、昨年10月のバルバドス合意の遵守を求める声明を発出した。
●31日、外務省は、26日のICJによるイスラエルへの暫定措置命令を歓迎し、関係国に国際人道法の遵守を求める声明を発出した。
【本文】
1 内政
(1)ベナビデス検事総長(停職中)関係・その1
4日、リマ高等裁判所は、停職中のベナビデス検事総長から提出されていた全国司法審議会(JNJ)による同検事総長への即時の懲戒手続きの停止に関する保護訴訟に対し、これを拒否した。
(2)ボルアルテ大統領のパトロール強化式典出席
3日、ボルアルテ大統領は、リマにおける「警察のプレゼンスと市民向けサービスによるパトロール強化式典」に出席し、概要以下の説明を行った。
ア 今朝5,000名以上の新警察官が、犯罪と闘うために国内主要市でのパトロールに合流した。内陸部には捜査と公安秩序を専門とする警察官3600人以上が、リマ首都圏には1500人以上が配置される。
イ 市民の安全は、景気対策とともに、政府が2024年に掲げた2大目標のひとつである。
(3)ボルアルテ大統領の司法府仕事始め式出席
3日、司法府の仕事始め式に出席したボルアルテ大統領は、同府の2024年予算について、概要以下のとおり説明した。
ア 同府において近代化を進め、効率性を高めるための財源として、前年比で7%増の36億ソレス以上を割り当てた。
イ 政府としては、司法府からの現行犯ユニット(※)を増設し、家族関係の訴訟のために37%、労働訴訟のために22%を予算増したいとの要求に応えた。
ウ 2023年に現行犯ユニットは、緊急事態宣言を発出された地域(サンマルティン・デ・ポレス区、サンフアン・デ・ルリガンチョ区、スナヤ市)に設置されたが、本年、さらなる現行犯ユニットの設置のために1億4,400万ソレスが計上された。
(※)司法府、検察庁、国家警察、弁護士(当館注:公的擁護プログラムにより法務人権省が無償で提供している弁護士)の代表者が集まっているユニット。現行犯の起訴、審理、処罰を最大72時間以内に行う。
(4)カスティージョ前大統領関係・その1
5日、最高裁判所は、組織犯罪等の容疑のために昨年3月に課されたカスティージョ前大統領への36か月間の予防勾留措置に関し、同前大統領から要請のあった同措置の見直しを拒否した。なお、2022年12月7日の自主クーデターによる反逆等の容疑については、同年同月、18か月間の予防勾留措置が課されており、これに対しても同前大統領は取り消しを求めたものの、昨年12月23日、最高裁判所はこれを拒否した。
(5)ママニビデオス事件に関するケンジ・フジモリ元国会議員に対する判決言渡し
9日、最高裁判所は上訴審にて、ママニビデオス事件(当館注1)に関し、ケンジ・フジモリ元国会議員他2名の元国会議員に対し、禁錮4年6か月(同期間の執行猶予付き)及び18か月間の公職追放の判決を言い渡した。
(6)ベナビデス検事総長(停職中)関係・その2
9日、エスピノサ最高検察官は、6か月間の期間で停職中のベナビデス検事総長に対する予備捜査を開始した。
(7)パティビルカ事件関係・その1
12日、刑事専門高等裁判所は、2022年3月17日に憲法裁判所が判決を下し、昨年12月6日に執行されたフジモリ元大統領への恩赦にパティビルカ事件(当館注2)は含まれない旨を発表した。
(8)コクテル事件関係・その1
12日、高等裁判所は、コクテル事件(当館注3)捜査のため、昨年5月に課されたケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首他への36か月間の出国禁止措置を取り消した。
(9)カスティージョ前大統領関係・その2
12日、検察庁はカスティージョ前大統領に対し、自主クーデターによる反逆等の容疑に関し禁錮34年を求刑した。また、チャベス元首相、サンチェス元通商観光大臣、ウェルタ元内務大臣には禁錮25年、トーレス元首相には禁錮15年を求刑した。
(10)ボルアルテ大統領の小型飛行機発進式出席
17日、ボルアルテ大統領は、リマ市内のラス・パルマス空軍基地で行われた(デ・ハビランド・カナダ製)DHC-6-300 ツイン・オッター(以下「ツイン・オッター」)の発進式に出席し、概要以下のとおり説明した。
ア 政府は、国内での緊急事態に対応できるようペルー国軍及び国家警察の対応能力増強を図っている。また、政府は、陸海空軍及び国家警察におけるロジスティックスを改善してきている。
イ ツイン・オッターは、エルニーニョ現象、地震、森林火災、土石流等の深刻な事態に対応する際の一助となる。
(11)ボルアルテ大統領のイカ州訪問
17日、ボルアルテ大統領は、イカ州ティエラ・プロメティド町を訪問した際、概要以下のスピーチを行った。
ア 民間所有権形成機構(Cofopri:Organismo de Formalizacion de la Propiedad Informal)により実施された法的健全化により、イカ州の3,366世帯がその家屋の所有権を保有した。家屋の所有権保有により融資を受けることが可能となり、商売をより安全に行うことができる。
イ Cofopriは、学校や保健所の土地の公的登記も行った。
ウ 本年、イカ州の上下水道設備に1億2,900万ソレスを投資する。
(12)ボルアルテ大統領実兄への検察庁による捜査要求
17日、法務人権省国家代理人庁サンマルティン反汚職支部は、ボルアルテ大統領の実兄であるニコノル・ボルアルテ氏が、自身が創設しようとしている党の登録に必要な署名を集めるためにサンマルティン州の中央政府地方事務所代表(prefecto、subprefecto)(当館注4)に強制的に署名させた疑いで、検察庁に捜査を行うよう要請した。
(13)定年退職年齢引上げ改正法案に対する第1回投票(可決)
18日、国会常設委員会は、定年退職年齢を70歳から75歳に引き上げるための関連改正法案に対する第1回投票を行い、賛成13、反対10、棄権3にて可決した。改正法案では、被雇用者から要求があり、労働サービスの必要性からこれが正当化される場合、定年退職年齢が75歳に引き上げられるとされている(当館注:次期国会で第2回投票を予定、2回の可決で法案成立)。
(14)ボルアルテ大統領のリマ市制施行489周年式典出席
18日、ボルアルテ大統領は、オタロラ首相とともにリマ市制施行489周年式典に出席し、同市の2027年パンアメリカン競技大会の開催地立候補を全面的に支援する旨述べた。
(15)ボルアルテ大統領によるマドレ・デ・ディオス州訪問
19日、ボルアルテ大統領は、マドレ・デ・ディオス州のマヌー自然保護区の中心に位置するヨミバト先住民コミュニティを訪問し、人道支援物資、医薬品、衣服を届けた。同コミュニティを訪問した大統領は初。
(16)ボルアルテ大統領によるアヤクチョ州訪問・その1
20日、ボルアルテ大統領は、衛生設備の工事開始のためにアヤクチョ州を訪問した。衛生設備は、飲用可能な水の999の接続取付けと1,267の下水管敷設を含み、1万5,000人以上の住民に裨益する予定。政府は同州の上下水道整備のため、本年、1億2,400万ソレスの予算を計上した。
(17)ボルアルテ大統領によるアヤクチョ州訪問・その2
20日、ボルアルテ大統領は、アヤクチョ州での道路建設着工式に出席中、女性2名に襲われた。警察に取り押さえられて女性2名は、2022年12月の抗議デモ中に死亡した者の家族であることが判明した。
(18)首相府情報局(DINI)局長の交代
21日、20日のボルアルテ大統領への乱暴を受けて、政府は、首相府情報局(DINI)局長をアリスタ氏からガルシア氏に交代した。
(19)国家警察(PNP)長官の交代
22日、20日のボルアルテ大統領への乱暴を受けて、政府は、国家警察(PNP)長官をアングロ氏からサナブリア氏に交代した。
(20)マチュピチュにおけるストライキ・その1
25日、マチュピチュ入場券販売の民間企業(ジョインアス)への委託及びインターネット販売での1本化との文化省方針に反対して、マチュピチュ観光業関係者はストライキを開始した。ストライキを受けて、鉄道会社も翌26日からのマチュピチュへの鉄道運行停止を発表した。
(21)第1回国家治安評議会(Conasec)の開催
25日、ボルアルテ大統領は、大統領府において開催した第1回国家治安評議会(Conasec)にて議長を務めた。同評議会では、現行犯ユニットが適切に機能するよう法的枠組みの強化が合意された他、タクナ、ピウラ、ランバイェケ、アレキパ、イカの各市に現行犯ユニットを設置するために予算を移すことが発表された。また、本年、(1)包括的犯罪予防、(2)戦略的地域管理、(3)組織犯罪及び越境犯罪に対する闘い、(4)国家警察組織強化及び近代化から成るペルー安全計画が実施されることも言及された。
(22)コクテル事件関係・その2
25日、高等裁判所は、コクテル事件に関するケイコFP党首他への告訴に関し、7月1日に公判を開始することを決定した。
(23)ボルアルテ大統領と女性首長との会合開催
29日、ボルアルテ大統領は、郡・町レベルの50名以上の女性首長と会合をもった。
ア 同会合において、ボルアルテ大統領は、概要以下のとおり説明した。
(ア)女性首長の協働と団結が、男女平等、女性に対する暴力の排除、国の発展のために重要な教育・保健等への公平なアクセスに関する政策やプログラムを推進する上で重要である。
(イ)政府は、社会的なギャップやインフラ整備上の乖離を埋めていくために各地方政府と力を合わせていき、国民の生活の向上を図っていく。
イ 上記会合には、ポンセ教育大臣、コントレラス農業開発灌漑大臣、チョケウアンカ生産大臣、ペレス住宅建設上下水道大臣、トレンティノ女性社会的弱者大臣、ルイス環境大臣、ウルテアガ文化大臣の女性閣僚全員が出席した。
(24)パティビルカ事件関係・その2
29日、刑事専門高等裁判所によるパティビルカ事件に関する公判が開かれ、モンテシノス元国家情報局特別顧問(フジモリ政権)は罪状を認め、結審を早めることを受け入れた。
(25)パティビルカ事件・その3
30日、刑事専門高等裁判所によるパティビルカ事件に関する公判がフジモリ元大統領の健康状態のためビデオ会議形式で開かれ、検察側がフジモリ元大統領を加重殺人罪に問い、自宅軟禁(arresto domiciliario)を要求した。
(26)ボルアルテ大統領の軍事作戦43周年記念式典出席
30日、ボルアルテ大統領は、アマソナス州コンドル山脈での軍事作戦(当館注:エクアドルとの国境紛争に伴うもの)43周年記念式典において、概要以下のとおりスピーチした。
ア ペルー国軍の根気強い労働と犠牲的奉仕は、より安全で繁栄した国を造るために不可欠である。同軍は、大雨や洪水のような非常事態の他、アプリマック・エネ・マンタロ河渓谷(VRAEM)地域において、麻薬密売、テロ残党との闘いにも立ち向かっている。
イ エクアドルとの国境線は、今日、争う余地がなく受け入れられているものである。同国との歴史を共有する兄弟国との感情が、将来の協力・統合に向けて我々を動かしている。
(27)パティビルカ事件・その4
31日、刑事専門高等裁判所はモンテシノス元国家情報局特別顧問に対し、同元顧問がパティビルカ事件での罪状を認め、結審を早めることを受け入れたため、禁錮25年の求刑に対し、禁錮19年8か月の判決を下した。同元顧問は2021年から別罪により服役中。
(28)パティビルカ事件・その5
31日、パティビルカ事件を審理している刑事専門高等裁判所はフジモリ元大統領に対し、9か月間の出国禁止を命じた。他方、検察側によるフジモリ元大統領の自宅軟禁についての要求は退けた。
(29)マチュピチュにおけるストライキ・その2
30日夜、政府側からはウルテアガ文化大臣、マティウス通商観光大臣、ルイス環境大臣、クスコ当局側からはサルセド・クスコ州知事、ラ・トーレ・マチュピチュ村長等が出席して会合が開催され、主に以下の点について合意した。
ア インターネットで入場券販売を行う民間企業(ジョインアス)との契約終了日を早める。
イ 販売の分散化のため、移行措置として首相府に政府・DX事務局を設置する。
ウ マチュピチュ村の文化省クスコ支局において、1日千枚まで対面にて入場券を販売する。
(30)マチュピチュにおけるストライキ・その3
31日、住民と組合代表者との間で話し合いがなされ、30日の政府とクスコ当局による合意を受け入れてストライキを止めることを決定した。
(31)プーノ州における公共投資プロジェクトの促進
31日、ボルアルテ大統領は、大統領府において開催したプーノ州の20名以上の郡・町レベルの首長との会合において、同州での主なプロジェクトを推進するため、大臣から構成される代表団を同州に派遣することを発表した。また、公共投資に必須のレベルを促進していくため、政府と首長との調整を緊密化していく旨を確約するとともに、首長には2024年予算を100%執行するよう要請した。
2 外交・国際関係
(1)外務省による令和6年能登半島地震に関するメッセージ
1日、外務省は、令和6年能登半島地震に関して哀悼の意を表するメッセージをXにより発信した。
(2)外務省によるエクアドル情勢に関する声明
9日、外務省は、エクアドルでの武装グループによるテレビ局占拠事件を受けて、同国の平和及び安全の回復を希望等する旨の声明を発出した。
(3)ボルアルテ大統領とノボア・エクアドル大統領との電話会談
10日、ボルアルテ大統領は、エクアドルでの治安悪化を受けてノボア同国大統領と電話会談を行い、ペルーの同国との連帯を表明した。
(4)外務省による北朝鮮に関する声明
10日、外務省は、5日の北朝鮮による韓国2島付近への砲撃、ロシアへの武器移転に関して懸念を表明する声明を発出した。
(5)ゴンサレス-オラエチェア外相外遊
10-21日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、パナマ(パナマシティ)、スイス(ダボス、チューリッヒ、ジュネーブ)、オランダ(ワッセナー)を外遊した。パナマではテワニー外相と外相会談等を行った。スイスではダボス会議に出席した他、同会議のマージンを利用してヴァルトネン・フィンランド外相と外相会談を行い、ペルーでの教育システムの改善やデジタル社会発展に関する協力について協議した。
(6)外務省によるグアテマラ大統領就任式に関する声明
ア 14日、グアテマラにおいて大統領就任式の開始が大幅に遅れていることに関し、同国議会がアレバロ当選大統領(当時)及びエレラ当選副大統領(当時)に権限を委譲するよう求める声明を発出した。
イ 上記大統領就任式には、12-16日に同国を訪問したアラナ法務人権大臣が出席した。
(7)米州人権擁護システムに係るハイレベル委員会の設置決定
18日、国会常設委員会は、米州人権擁護システムの改革提案の準備のためのハイレベル委員会を設ける法案について2回目の投票を行い、これを可決した。
(8)アンデス共同体第24回外相評議会臨時会合の開催
21日リマにおいて、エクアドル情勢を受けてのアンデス共同体第24回外相評議会臨時会合が開催され、ボリビア(議長国)、コロンビア、エクアドル、ペルーから外相又は外務省高官の他、各国治安担当大臣・高官が出席した。同会合では、麻薬密売、人身売買、違法採掘、武器等の違法売買と闘うための措置や治安を改善していくための方策をまとめた行動計画が採択された。
(9)ゴンサレス-オラエチェア外相のチリ訪問
23-25日、太平洋同盟閣僚理事会出席のためチリを訪問したゴンサレス-オラエチェア外相は、バン・クラベレン外相と両国間の関心テーマについて外相会談を行った。また、昨年8月1日に創立のための文書に両国で署名した未来のための2国間会議(CBP:Consejo Bilateral de Prospectiva)(※)の第1回会合を行った。
(※)CBPは、未来志向で共通の関心事項を特定するとともに、外交政策について新たに共同の行動を展開していくことが可能であり、適切でもあるテーマを調査していくための検討・分析の場。
(10)コロンビアにおける森林火災に係る支援
26日、外務省は、コロンビアの森林火災の鎮火支援のため、ペルー空軍の消火管理機材を同国に供与したと発表した。同機材は、飛行機やヘリコプターに取り付け、空中から放出するための大量の水を運搬することができる装置。コロンビア空軍がカヤオ空軍基地にて同機材を引き取った。
(11)ボルアルテ大統領のチリとの海の国境線画定10周年記念式典出席
26日、ボルアルテ大統領、オタロラ首相、ゴンサレス-オラエチェア外相等が出席の下、国際司法裁判所(ICJ)によるチリとの海の国境線画定(当館注:判決が下されたのは、2014年1月27日)10周年記念式典が開催された。同式典においてボルアルテ大統領は概要以下のとおりスピーチした。
ア 国境線画定は、ペルー南部の漁業活動の発展、天然資源の探査、投資促進を後押しした。
イ チリとの関係では、相互信頼が強化され、安全保障の面での協力や協働の新たな機会が開かれた。
ウ 国々を分断する国際紛争・戦争が起こっている中、ペルーとチリは問題を平和裏に解決できる模範国である。
(12)外務省によるベネズエラ情勢に関する声明
30日、外務省は、26日のベネズエラ最高裁判所による公職就任資格停止に係る決定に関する懸念を表明し、同国の大統領選挙が自由で民主的かつ国民の意思を尊重したものとなるよう、昨年10月のバルバドス合意の遵守を求めた声明を発出した。
(13)外務省による中東情勢に関する声明
31日、外務省は、南アフリカによるイスラエルに対するICJへの提訴に係る26日の暫定措置命令を歓迎し、中東の紛争当事国に対し国際人道法の遵守を求める声明を発出した。
(当館注1)2018年、クチンスキー大統領(2016-2018)に対する2度目の罷免要求があった際、同大統領がこれを避けるため国会議員を買収したとされる事件。
(当館注2)1992年、リマ州バランカ郡パティビルカ町において、準国軍兵士(コリーナ部隊)によりテロリストと疑われた6名が誘拐された後、殺害された事件。
(当館注3)ケイコ党首及びFP旧執行部が、2011年及び2016年の選挙キャンペーン中、献金を隠すためにマネーロンダリングを行ったとされている事件。
(当館注4)政府によって任命され、「prefecto」は州レベルで、「subprefecto」は郡・町レベルで、各1名存在する。任務は、公序、ガバナンス、社会的安寧に貢献することであり、地域における政治的又は社会的集会・行進、スポーツ行事その他の野外イベントの開催に関し申請を受理し、許可・不許可を決定する他、社会的争いの状況を内務省内政総局(DGIN)に報告し、管轄区域内の国の社会プログラムや活動等に参加等する。市民安全地域委員会のメンバーでもある。政府は、代表の任命・解雇を随時行える。
1 内政
●2日、リマ高等裁判所は、ベナビデス検事総長(停職中)から提出されていた全国司法審議会(JNJ)による同検事総長への懲戒手続きの停止要求を退けた。
●3日、ボルアルテ大統領は、パトロール強化式典に出席し、新たな警察官の配置について説明した。
●3日、ボルアルテ大統領は、司法府の仕事始め式に出席し、同府の2024年予算について説明した。
●5日、最高裁判所は、組織犯罪等によりカスティージョ前大統領に課されている36か月間の予防勾留措置について、同前大統領から要求のあった見直しを拒否した。
●9日、最高裁判所は、ママニビデオス事件の上訴審にて、ケンジ・フジモリ元国会議員等に対し、禁錮4年6か月(執行猶予付き)及び18か月間の公職追放の判決を下した。
●9日、最高検察官によるベナビデス検事総長(停職中)に対する予備捜査が開始された。
●12日、刑事専門高等裁判所は、フジモリ元大統領への恩赦にパティビルカ事件は含まれない旨を発表した。
●12日、高等裁判所は、コクテル事件に関してケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首に課されていた36か月間の出国禁止措置を取り消した。25日、同裁判所は、上記事件に関するケイコFP党首への公判を7月1日に開始する旨決定した。
●12日、検察庁はカスティージョ前大統領に対し、自主クーデターに関して禁錮34年を求刑した。
●17日、ボルアルテ大統領は、リマ市内の空軍基地で行われた小型飛行機の発進式に出席した。
●17日、ボルアルテ大統領は、イカ州を訪問し、不動産登記や上下水道整備について説明した。
●17日、サンマルティン反汚職支部は、ボルアルテ大統領の実兄が創設しようとしている党のために中央政府地方事務所代表を利用したとして、検察庁に捜査を依頼した。
●18日、国会常設委員会は、定年退職年齢を75歳に引き上げる改正法案に対する第1回投票を行い可決した。
●18日、ボルアルテ大統領は、リマ市制施行489周年式典に出席し、2027年パンアメリカン競技大会に関する同市開催地立候補を支持した。
●19日、ボルアルテ大統領は、マドレ・デ・ディオス州のヨミバト先住民コミュニティを訪問し、人道支援物資等を届けた。
●20日、ボルアルテ大統領は、衛生設備の工事開始のためアヤクチョ州を訪問した。
●20日、ボルアルテ大統領は、アヤクチョ州での道路建設着工式に出席中、女性2名に襲われた。これを受けて、21日には首相府情報局(DINI)局長、22日には国家警察(PNP)長官が交代した。
●25日、政府のマチュピチュ入場券の販売方法方針を巡り、マチュピチュ観光業関係者がストライキを開始した。26日からはマチュピチュへの鉄道も運行を停止した。30日、政府側とクスコ当局との間で会合が開かれ、政府側が譲歩した形でクスコ当局と今後の販売方法について合意した。31日、住民と組合代表者は、30日の政府・クスコ当局間の合意を受け入れて、ストライキを止めることを決定した。
●25日、ボルアルテ大統領は、第1回国家治安評議会(Conasec)を開催し、治安対策について協議等を行った。
●29日、ボルアルテ大統領は、50名以上の郡・町レベルの女性首長との会合を開催した。
●29日、刑事専門高等裁判所によりパティビルカ事件に関するモンテシノス元国家情報局特別顧問に対する公判が開かれ、同元特別顧問は罪状を認め結審を早めることを受け入れた。これにより、31日、禁錮25年の求刑に対し禁錮19年8か月の判決が同元特別顧問に言い渡された。
●30日、刑事専門高等裁判所によりパティビルカ事件に関するフジモリ元大統領への公判が開かれ、同元大統領を加重殺人罪に問うている検察側は同元大統領の自宅軟禁を要求したが、31日、同裁判所は、同元大統領に対し9か月間の出国禁止を命じた一方で、検察側の自宅軟禁の要求は退けた。
●30日、ボルアルテ大統領は、アマソナス州での軍事作戦43周年記念式典に出席した。
●31日、ボルアルテ大統領は、プーノ州の20名以上の郡・町レベルの首長と同州での公共投資プロジェクトの推進について協議した。
2 外交・国際関係
●1日、外務省は、令和6年能登半島地震に関して哀悼の意を表するメッセージを発信した。
●9日、外務省はエクアドルでの治安悪化を受けて、同国の平和及び安全の回復を希望等する旨の声明を発出した。
●10日、ボルアルテ大統領は、エクアドル情勢を受けて、ノボア同国大統領と電話会談を行った。
●10日、外務省は、北朝鮮に関して懸念を表明する声明を発出した。
●10-21日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、パナマ、スイス、オランダを外遊した。パナマシティではパナマ外相と、ダボスではフィンランド外相とそれぞれ外相会談を行った。
●14日、外務省はグアテマラ大統領就任式の開始が遅れていることに関し声明を発出した。上記就任式には、アラナ法務人権大臣が出席した。
●18日、国会常設委員会は、米州人権擁護システムの改革提案に関するハイレベル委員会を設ける法案について2回目の投票を行い可決した。
●21日、エクアドル情勢を受けて、リマにおいてアンデス共同体第24回外相評議会臨時会合が開催された。
●23-25日、チリを訪問したゴンサレス-オラエチェア外相は、バン・クラベレン同国外相と外相会談を行った他、第1回未来のための2国間会議(CBP)を開催した。
●26日、外務省はコロンビアの森林火災の鎮火支援のため、ペルー空軍の機材を同国に供与したと発表した。
●26日、ボルアルテ大統領等は、国際司法裁判所(ICJ)によるチリとの海の国境線画定10周年記念式典に出席した。
●30日、外務省は、26日のベネズエラ最高裁判所決定に関する懸念を表明し、昨年10月のバルバドス合意の遵守を求める声明を発出した。
●31日、外務省は、26日のICJによるイスラエルへの暫定措置命令を歓迎し、関係国に国際人道法の遵守を求める声明を発出した。
【本文】
1 内政
(1)ベナビデス検事総長(停職中)関係・その1
4日、リマ高等裁判所は、停職中のベナビデス検事総長から提出されていた全国司法審議会(JNJ)による同検事総長への即時の懲戒手続きの停止に関する保護訴訟に対し、これを拒否した。
(2)ボルアルテ大統領のパトロール強化式典出席
3日、ボルアルテ大統領は、リマにおける「警察のプレゼンスと市民向けサービスによるパトロール強化式典」に出席し、概要以下の説明を行った。
ア 今朝5,000名以上の新警察官が、犯罪と闘うために国内主要市でのパトロールに合流した。内陸部には捜査と公安秩序を専門とする警察官3600人以上が、リマ首都圏には1500人以上が配置される。
イ 市民の安全は、景気対策とともに、政府が2024年に掲げた2大目標のひとつである。
(3)ボルアルテ大統領の司法府仕事始め式出席
3日、司法府の仕事始め式に出席したボルアルテ大統領は、同府の2024年予算について、概要以下のとおり説明した。
ア 同府において近代化を進め、効率性を高めるための財源として、前年比で7%増の36億ソレス以上を割り当てた。
イ 政府としては、司法府からの現行犯ユニット(※)を増設し、家族関係の訴訟のために37%、労働訴訟のために22%を予算増したいとの要求に応えた。
ウ 2023年に現行犯ユニットは、緊急事態宣言を発出された地域(サンマルティン・デ・ポレス区、サンフアン・デ・ルリガンチョ区、スナヤ市)に設置されたが、本年、さらなる現行犯ユニットの設置のために1億4,400万ソレスが計上された。
(※)司法府、検察庁、国家警察、弁護士(当館注:公的擁護プログラムにより法務人権省が無償で提供している弁護士)の代表者が集まっているユニット。現行犯の起訴、審理、処罰を最大72時間以内に行う。
(4)カスティージョ前大統領関係・その1
5日、最高裁判所は、組織犯罪等の容疑のために昨年3月に課されたカスティージョ前大統領への36か月間の予防勾留措置に関し、同前大統領から要請のあった同措置の見直しを拒否した。なお、2022年12月7日の自主クーデターによる反逆等の容疑については、同年同月、18か月間の予防勾留措置が課されており、これに対しても同前大統領は取り消しを求めたものの、昨年12月23日、最高裁判所はこれを拒否した。
(5)ママニビデオス事件に関するケンジ・フジモリ元国会議員に対する判決言渡し
9日、最高裁判所は上訴審にて、ママニビデオス事件(当館注1)に関し、ケンジ・フジモリ元国会議員他2名の元国会議員に対し、禁錮4年6か月(同期間の執行猶予付き)及び18か月間の公職追放の判決を言い渡した。
(6)ベナビデス検事総長(停職中)関係・その2
9日、エスピノサ最高検察官は、6か月間の期間で停職中のベナビデス検事総長に対する予備捜査を開始した。
(7)パティビルカ事件関係・その1
12日、刑事専門高等裁判所は、2022年3月17日に憲法裁判所が判決を下し、昨年12月6日に執行されたフジモリ元大統領への恩赦にパティビルカ事件(当館注2)は含まれない旨を発表した。
(8)コクテル事件関係・その1
12日、高等裁判所は、コクテル事件(当館注3)捜査のため、昨年5月に課されたケイコ・フジモリ人民勢力党(FP)党首他への36か月間の出国禁止措置を取り消した。
(9)カスティージョ前大統領関係・その2
12日、検察庁はカスティージョ前大統領に対し、自主クーデターによる反逆等の容疑に関し禁錮34年を求刑した。また、チャベス元首相、サンチェス元通商観光大臣、ウェルタ元内務大臣には禁錮25年、トーレス元首相には禁錮15年を求刑した。
(10)ボルアルテ大統領の小型飛行機発進式出席
17日、ボルアルテ大統領は、リマ市内のラス・パルマス空軍基地で行われた(デ・ハビランド・カナダ製)DHC-6-300 ツイン・オッター(以下「ツイン・オッター」)の発進式に出席し、概要以下のとおり説明した。
ア 政府は、国内での緊急事態に対応できるようペルー国軍及び国家警察の対応能力増強を図っている。また、政府は、陸海空軍及び国家警察におけるロジスティックスを改善してきている。
イ ツイン・オッターは、エルニーニョ現象、地震、森林火災、土石流等の深刻な事態に対応する際の一助となる。
(11)ボルアルテ大統領のイカ州訪問
17日、ボルアルテ大統領は、イカ州ティエラ・プロメティド町を訪問した際、概要以下のスピーチを行った。
ア 民間所有権形成機構(Cofopri:Organismo de Formalizacion de la Propiedad Informal)により実施された法的健全化により、イカ州の3,366世帯がその家屋の所有権を保有した。家屋の所有権保有により融資を受けることが可能となり、商売をより安全に行うことができる。
イ Cofopriは、学校や保健所の土地の公的登記も行った。
ウ 本年、イカ州の上下水道設備に1億2,900万ソレスを投資する。
(12)ボルアルテ大統領実兄への検察庁による捜査要求
17日、法務人権省国家代理人庁サンマルティン反汚職支部は、ボルアルテ大統領の実兄であるニコノル・ボルアルテ氏が、自身が創設しようとしている党の登録に必要な署名を集めるためにサンマルティン州の中央政府地方事務所代表(prefecto、subprefecto)(当館注4)に強制的に署名させた疑いで、検察庁に捜査を行うよう要請した。
(13)定年退職年齢引上げ改正法案に対する第1回投票(可決)
18日、国会常設委員会は、定年退職年齢を70歳から75歳に引き上げるための関連改正法案に対する第1回投票を行い、賛成13、反対10、棄権3にて可決した。改正法案では、被雇用者から要求があり、労働サービスの必要性からこれが正当化される場合、定年退職年齢が75歳に引き上げられるとされている(当館注:次期国会で第2回投票を予定、2回の可決で法案成立)。
(14)ボルアルテ大統領のリマ市制施行489周年式典出席
18日、ボルアルテ大統領は、オタロラ首相とともにリマ市制施行489周年式典に出席し、同市の2027年パンアメリカン競技大会の開催地立候補を全面的に支援する旨述べた。
(15)ボルアルテ大統領によるマドレ・デ・ディオス州訪問
19日、ボルアルテ大統領は、マドレ・デ・ディオス州のマヌー自然保護区の中心に位置するヨミバト先住民コミュニティを訪問し、人道支援物資、医薬品、衣服を届けた。同コミュニティを訪問した大統領は初。
(16)ボルアルテ大統領によるアヤクチョ州訪問・その1
20日、ボルアルテ大統領は、衛生設備の工事開始のためにアヤクチョ州を訪問した。衛生設備は、飲用可能な水の999の接続取付けと1,267の下水管敷設を含み、1万5,000人以上の住民に裨益する予定。政府は同州の上下水道整備のため、本年、1億2,400万ソレスの予算を計上した。
(17)ボルアルテ大統領によるアヤクチョ州訪問・その2
20日、ボルアルテ大統領は、アヤクチョ州での道路建設着工式に出席中、女性2名に襲われた。警察に取り押さえられて女性2名は、2022年12月の抗議デモ中に死亡した者の家族であることが判明した。
(18)首相府情報局(DINI)局長の交代
21日、20日のボルアルテ大統領への乱暴を受けて、政府は、首相府情報局(DINI)局長をアリスタ氏からガルシア氏に交代した。
(19)国家警察(PNP)長官の交代
22日、20日のボルアルテ大統領への乱暴を受けて、政府は、国家警察(PNP)長官をアングロ氏からサナブリア氏に交代した。
(20)マチュピチュにおけるストライキ・その1
25日、マチュピチュ入場券販売の民間企業(ジョインアス)への委託及びインターネット販売での1本化との文化省方針に反対して、マチュピチュ観光業関係者はストライキを開始した。ストライキを受けて、鉄道会社も翌26日からのマチュピチュへの鉄道運行停止を発表した。
(21)第1回国家治安評議会(Conasec)の開催
25日、ボルアルテ大統領は、大統領府において開催した第1回国家治安評議会(Conasec)にて議長を務めた。同評議会では、現行犯ユニットが適切に機能するよう法的枠組みの強化が合意された他、タクナ、ピウラ、ランバイェケ、アレキパ、イカの各市に現行犯ユニットを設置するために予算を移すことが発表された。また、本年、(1)包括的犯罪予防、(2)戦略的地域管理、(3)組織犯罪及び越境犯罪に対する闘い、(4)国家警察組織強化及び近代化から成るペルー安全計画が実施されることも言及された。
(22)コクテル事件関係・その2
25日、高等裁判所は、コクテル事件に関するケイコFP党首他への告訴に関し、7月1日に公判を開始することを決定した。
(23)ボルアルテ大統領と女性首長との会合開催
29日、ボルアルテ大統領は、郡・町レベルの50名以上の女性首長と会合をもった。
ア 同会合において、ボルアルテ大統領は、概要以下のとおり説明した。
(ア)女性首長の協働と団結が、男女平等、女性に対する暴力の排除、国の発展のために重要な教育・保健等への公平なアクセスに関する政策やプログラムを推進する上で重要である。
(イ)政府は、社会的なギャップやインフラ整備上の乖離を埋めていくために各地方政府と力を合わせていき、国民の生活の向上を図っていく。
イ 上記会合には、ポンセ教育大臣、コントレラス農業開発灌漑大臣、チョケウアンカ生産大臣、ペレス住宅建設上下水道大臣、トレンティノ女性社会的弱者大臣、ルイス環境大臣、ウルテアガ文化大臣の女性閣僚全員が出席した。
(24)パティビルカ事件関係・その2
29日、刑事専門高等裁判所によるパティビルカ事件に関する公判が開かれ、モンテシノス元国家情報局特別顧問(フジモリ政権)は罪状を認め、結審を早めることを受け入れた。
(25)パティビルカ事件・その3
30日、刑事専門高等裁判所によるパティビルカ事件に関する公判がフジモリ元大統領の健康状態のためビデオ会議形式で開かれ、検察側がフジモリ元大統領を加重殺人罪に問い、自宅軟禁(arresto domiciliario)を要求した。
(26)ボルアルテ大統領の軍事作戦43周年記念式典出席
30日、ボルアルテ大統領は、アマソナス州コンドル山脈での軍事作戦(当館注:エクアドルとの国境紛争に伴うもの)43周年記念式典において、概要以下のとおりスピーチした。
ア ペルー国軍の根気強い労働と犠牲的奉仕は、より安全で繁栄した国を造るために不可欠である。同軍は、大雨や洪水のような非常事態の他、アプリマック・エネ・マンタロ河渓谷(VRAEM)地域において、麻薬密売、テロ残党との闘いにも立ち向かっている。
イ エクアドルとの国境線は、今日、争う余地がなく受け入れられているものである。同国との歴史を共有する兄弟国との感情が、将来の協力・統合に向けて我々を動かしている。
(27)パティビルカ事件・その4
31日、刑事専門高等裁判所はモンテシノス元国家情報局特別顧問に対し、同元顧問がパティビルカ事件での罪状を認め、結審を早めることを受け入れたため、禁錮25年の求刑に対し、禁錮19年8か月の判決を下した。同元顧問は2021年から別罪により服役中。
(28)パティビルカ事件・その5
31日、パティビルカ事件を審理している刑事専門高等裁判所はフジモリ元大統領に対し、9か月間の出国禁止を命じた。他方、検察側によるフジモリ元大統領の自宅軟禁についての要求は退けた。
(29)マチュピチュにおけるストライキ・その2
30日夜、政府側からはウルテアガ文化大臣、マティウス通商観光大臣、ルイス環境大臣、クスコ当局側からはサルセド・クスコ州知事、ラ・トーレ・マチュピチュ村長等が出席して会合が開催され、主に以下の点について合意した。
ア インターネットで入場券販売を行う民間企業(ジョインアス)との契約終了日を早める。
イ 販売の分散化のため、移行措置として首相府に政府・DX事務局を設置する。
ウ マチュピチュ村の文化省クスコ支局において、1日千枚まで対面にて入場券を販売する。
(30)マチュピチュにおけるストライキ・その3
31日、住民と組合代表者との間で話し合いがなされ、30日の政府とクスコ当局による合意を受け入れてストライキを止めることを決定した。
(31)プーノ州における公共投資プロジェクトの促進
31日、ボルアルテ大統領は、大統領府において開催したプーノ州の20名以上の郡・町レベルの首長との会合において、同州での主なプロジェクトを推進するため、大臣から構成される代表団を同州に派遣することを発表した。また、公共投資に必須のレベルを促進していくため、政府と首長との調整を緊密化していく旨を確約するとともに、首長には2024年予算を100%執行するよう要請した。
2 外交・国際関係
(1)外務省による令和6年能登半島地震に関するメッセージ
1日、外務省は、令和6年能登半島地震に関して哀悼の意を表するメッセージをXにより発信した。
(2)外務省によるエクアドル情勢に関する声明
9日、外務省は、エクアドルでの武装グループによるテレビ局占拠事件を受けて、同国の平和及び安全の回復を希望等する旨の声明を発出した。
(3)ボルアルテ大統領とノボア・エクアドル大統領との電話会談
10日、ボルアルテ大統領は、エクアドルでの治安悪化を受けてノボア同国大統領と電話会談を行い、ペルーの同国との連帯を表明した。
(4)外務省による北朝鮮に関する声明
10日、外務省は、5日の北朝鮮による韓国2島付近への砲撃、ロシアへの武器移転に関して懸念を表明する声明を発出した。
(5)ゴンサレス-オラエチェア外相外遊
10-21日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、パナマ(パナマシティ)、スイス(ダボス、チューリッヒ、ジュネーブ)、オランダ(ワッセナー)を外遊した。パナマではテワニー外相と外相会談等を行った。スイスではダボス会議に出席した他、同会議のマージンを利用してヴァルトネン・フィンランド外相と外相会談を行い、ペルーでの教育システムの改善やデジタル社会発展に関する協力について協議した。
(6)外務省によるグアテマラ大統領就任式に関する声明
ア 14日、グアテマラにおいて大統領就任式の開始が大幅に遅れていることに関し、同国議会がアレバロ当選大統領(当時)及びエレラ当選副大統領(当時)に権限を委譲するよう求める声明を発出した。
イ 上記大統領就任式には、12-16日に同国を訪問したアラナ法務人権大臣が出席した。
(7)米州人権擁護システムに係るハイレベル委員会の設置決定
18日、国会常設委員会は、米州人権擁護システムの改革提案の準備のためのハイレベル委員会を設ける法案について2回目の投票を行い、これを可決した。
(8)アンデス共同体第24回外相評議会臨時会合の開催
21日リマにおいて、エクアドル情勢を受けてのアンデス共同体第24回外相評議会臨時会合が開催され、ボリビア(議長国)、コロンビア、エクアドル、ペルーから外相又は外務省高官の他、各国治安担当大臣・高官が出席した。同会合では、麻薬密売、人身売買、違法採掘、武器等の違法売買と闘うための措置や治安を改善していくための方策をまとめた行動計画が採択された。
(9)ゴンサレス-オラエチェア外相のチリ訪問
23-25日、太平洋同盟閣僚理事会出席のためチリを訪問したゴンサレス-オラエチェア外相は、バン・クラベレン外相と両国間の関心テーマについて外相会談を行った。また、昨年8月1日に創立のための文書に両国で署名した未来のための2国間会議(CBP:Consejo Bilateral de Prospectiva)(※)の第1回会合を行った。
(※)CBPは、未来志向で共通の関心事項を特定するとともに、外交政策について新たに共同の行動を展開していくことが可能であり、適切でもあるテーマを調査していくための検討・分析の場。
(10)コロンビアにおける森林火災に係る支援
26日、外務省は、コロンビアの森林火災の鎮火支援のため、ペルー空軍の消火管理機材を同国に供与したと発表した。同機材は、飛行機やヘリコプターに取り付け、空中から放出するための大量の水を運搬することができる装置。コロンビア空軍がカヤオ空軍基地にて同機材を引き取った。
(11)ボルアルテ大統領のチリとの海の国境線画定10周年記念式典出席
26日、ボルアルテ大統領、オタロラ首相、ゴンサレス-オラエチェア外相等が出席の下、国際司法裁判所(ICJ)によるチリとの海の国境線画定(当館注:判決が下されたのは、2014年1月27日)10周年記念式典が開催された。同式典においてボルアルテ大統領は概要以下のとおりスピーチした。
ア 国境線画定は、ペルー南部の漁業活動の発展、天然資源の探査、投資促進を後押しした。
イ チリとの関係では、相互信頼が強化され、安全保障の面での協力や協働の新たな機会が開かれた。
ウ 国々を分断する国際紛争・戦争が起こっている中、ペルーとチリは問題を平和裏に解決できる模範国である。
(12)外務省によるベネズエラ情勢に関する声明
30日、外務省は、26日のベネズエラ最高裁判所による公職就任資格停止に係る決定に関する懸念を表明し、同国の大統領選挙が自由で民主的かつ国民の意思を尊重したものとなるよう、昨年10月のバルバドス合意の遵守を求めた声明を発出した。
(13)外務省による中東情勢に関する声明
31日、外務省は、南アフリカによるイスラエルに対するICJへの提訴に係る26日の暫定措置命令を歓迎し、中東の紛争当事国に対し国際人道法の遵守を求める声明を発出した。
(当館注1)2018年、クチンスキー大統領(2016-2018)に対する2度目の罷免要求があった際、同大統領がこれを避けるため国会議員を買収したとされる事件。
(当館注2)1992年、リマ州バランカ郡パティビルカ町において、準国軍兵士(コリーナ部隊)によりテロリストと疑われた6名が誘拐された後、殺害された事件。
(当館注3)ケイコ党首及びFP旧執行部が、2011年及び2016年の選挙キャンペーン中、献金を隠すためにマネーロンダリングを行ったとされている事件。
(当館注4)政府によって任命され、「prefecto」は州レベルで、「subprefecto」は郡・町レベルで、各1名存在する。任務は、公序、ガバナンス、社会的安寧に貢献することであり、地域における政治的又は社会的集会・行進、スポーツ行事その他の野外イベントの開催に関し申請を受理し、許可・不許可を決定する他、社会的争いの状況を内務省内政総局(DGIN)に報告し、管轄区域内の国の社会プログラムや活動等に参加等する。市民安全地域委員会のメンバーでもある。政府は、代表の任命・解雇を随時行える。