6月のペルー内政及び外交・国際関係における主な動きは、以下のとおり
令和6年9月24日
【概要】
1 内政
●3-6日、外務省と国連との共催により、プーノ市において、武器・弾薬の違法取引撲滅のための訓練が実施された。
●5日、国会外交委員会は、ペルー国際協力庁(APCI)に関する改正法案を可決した。
10日、15の欧米諸国及び欧州委員会は、上記改正法案は市民社会の能力を制限するものであるとの懸念を表明した。13日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、10日の声明に関して(内政)干渉的なものであると発言した。また、14日には、アギナガ外交委員会委員長が10日の声明に対し反論文を発表し、更に20日には、ゴンサレス-オラエチェア外相が、ペルー・カナダ外交関係樹立80周年祝賀レセプションにおいて、カナダ他10日の声明に参加した国等を非難した。
●5日、国会本会議は、ボルアルテ大統領が23-30日に中国訪問のため出国することを承認した(国賓としての訪問は26-28日)。
●6日、国会本会議は、人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案に対する1回目の投票を行い、これを可決した。13日、最高検察官委員会は国会に対し、6日に可決された改正法案を廃案にするよう要求した。同日、国会は検察庁の要求を拒否する旨の声明を発表した。
●7日、最高裁判所は、カスティージョ前大統領に対する自主クーデターの容疑に関し、予防勾留措置を14か月延長することを決定(第1審)した旨を発表した。
●12日にはペレス-レジェス運輸通信相、13日にはムチョ・エネルギー鉱山相、14日にはアリスタ経済財政相に対する国会喚問が行われた。
●14日には国会女性・家族委員会が、25日には国会アンデス・アマゾン族、アフロペルー人、環境保護委員会及び児童保護超党特別委員会の臨時共同会合が、アマソナス州での未成年に対する性的暴行事件に関して説明を求めるため、ケロ教育相、エルナンデス女性社会的弱者相を召喚したが、両大臣はいずれの委員会・会合にも出席しなかった。
●15日、国会は、2023-2024年の第2会期を閉会した。
●18日、ボルアルテ大統領は、第2回国家治安評議会(Conasec)を開催した。
●18日、ロペス-アリアガ・リマ市長は、2026年大統領選挙に関し、出馬の可能性を示唆した。
●19日、ケイコ人民勢力党(FP)党首は、15日にフジモリ元大統領が同党に入党した旨を公表した。
●26日、フジモリ元大統領は腰部骨折のため入院した。30日、当地紙は、フジモリ元大統領が今後政治活動を行う旨を表明した27日付け書簡を掲載した。
●26日、カスティージョ前大統領は、未登録政党である「みな国民とともに(Todos con el Pueblo)」に入党した旨を発表した。
2 外交・国際関係
●1日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、ブケレ・エルサルバドル大統領の就任式に出席するとともにヒル同国外相と2国間外相会談を行った。
●3日、外務省は、メキシコでのシェインバウム大統領候補者の勝利を祝福する旨等を表明した。
●3日、ペルー外務省にて、カミノ外務副大臣とボロベッツ・ウクライナ外務副大臣との会合が開催された旨を発表した。
●5日、大統領府は、ボルアルテ大統領がウクライナ情勢等の協議のためゼレンスキー同国大統領と電話会談を行った旨を発表した。
●6-17日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、韓国・ソウル、スイス・ジュネーブ及びニートワルデン州を訪問した。
●13日、米州人権裁判所(Corte-IDH)はペルーに対し、6日に国会本会議が可決した人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案の手続きを停止するよう要求等する決定を発出した。14日、国会はCorte-DHによる同決定に関し、国会による決定に対する国内的・国外的介入を拒否する旨の声明を発出した。26日には、国連強制失踪委員会がペルーに対し、当該法案に関連して国際人権法の遵守を求める旨の声明を発出した旨のプレスリリースを発出した。
●16-22日、カミノ外務副大臣は、フィリピン及び日本を訪問し、それぞれにおいて2国間政策協議を行った。
●20日、5日に国会で承認された毎年2月1日をペルー中国友好の日と定める法律が公布された。
●21日、ペルー外務省にて、第16回ペルー・エクアドル隣国委員会が開催され、「2024リマ行動計画」が承認された。
●24日、チリ最高裁判所は、ペルー政府から要求されていたフジモリ元大統領に関する犯罪人引渡条約に基づく新たな8つの引渡事由のうち5つを認める旨決定したことを公表した。
●26日、大統領府は、ボリビア・ラパスでの騒擾事件に関し、同事件を強く非難する旨の声明を発表した。
●26-28日、ボルアルテ大統領は、国賓として中国を訪問した。
●26-28日、アラナ法務人権相及びカミノ外務副大臣は、パラグアイ・アスンシオンで開催された第54回米州機構定例総会に出席した。また、同総会中に実施されたCorte-IDHの裁判官選挙において、ペルー候補者が当選した。
【本文】
1 内政
(1)武器・弾薬の違法取引撲滅のための訓練実施
3-6日、外務省と国連の共催により、プーノ市(プーノ州)にて武器・弾薬の違法取引撲滅のための訓練が実施された。訓練は、国連ラテンアメリカ・カリブ海地域平和・軍縮・開発地域センター(UNLIREC)、国際刑事警察機構(INTERPOL)、チリ及びペルー首相府情報局(DINI)の専門家により行われ、ペルー国家警察(PNP)、治安業務、武器・弾薬及び爆発物の民間利用に係る国家監察局(SUCAMEC)、陸海軍、税務監督庁(SUNAT)及びプーノ市市民安全事務所から約25名が参加した。
(2)国会外交委員会によるペルー国際協力庁(APCI)に関する改正法案の可決
5日、国会外交委員会は、ペルー国際協力庁(APCI)に関する改正法案を賛成12、反対1にて可決した。同改正法案は、NPOsに対しAPCIに資金の提供先、提供金額を含む詳細な事業報告等を求め、NPOsが違反を犯した場合には、その程度により罰金、APCIでの登録抹消等の罰則を設けている。同改正案の主目的は、海外からの受け取った資金により政治的活動を行っているNPOsを監視・排除することにあるとされている。
(3)国会によるボルアルテ大統領の出国承認
5日、国会本会議は、賛成71、反対41、棄権6により、ボルアルテ大統領が23日-30日に中国訪問のため出国することを承認した。
(4)人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案可決
6日、国会本会議は、人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用及び範囲を明確化する法案に対する1回目の投票を行い、賛成60、反対36、棄権11により可決した。国会の説明では、国際刑事裁判所に関するローマ規定の発効日と戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約を検討し、法原則と遡及効の禁止に従って、上記ローマ規定発効日である2002年7月1日より以前にペルーで起こったいかなる犯罪も人道に対する犯罪、又は戦争犯罪に該当しないことになる。法案成立のためには、第2回目の投票での可決が必要である。
(5)最高裁判所によるカスティージョ前大統領に対する予防勾留措置の期間延長決定
7日、最高裁判所は6日に自主クーデターの容疑で18か月間の予防勾留措置の期間が満了したカスティージョ前大統領に対し、第1審として同措置の14か月の延長に係る決定を発出した。
(6)欧米諸国及び欧州委員会によるAPCI関連改正法案への懸念表明
10日、欧州委員会の他、米国、英国、ドイツ等の15の欧米諸国は、5日に国会外交委員会が可決したAPCIに関する改正法案に関し、市民社会の能力を制限するものであるとの懸念を示す共同声明を発出した。
(7)ペレス-レジェス運輸通信相に対する国会喚問
12日、ペレス-レジェス運輸通信相に対する国会喚問が行われ、5月14日にアヤクチョ州の高速道路で起こった交通事故、及び6月2日にリマの国際空港で発生し1万人以上の乗客に影響を与えた停電について喚問された。
(8)ムチョ・エネルギー鉱山相に対する国会喚問
13日、ムチョ・エネルギー鉱山相に対する国会喚問が行われ、チチカカ湖周辺の汚染問題や十分な専門的知識のない者が鉱山で雇用されている問題等について喚問された。
(9)ゴンサレス-オラエチェア外相による欧米諸国等のAPCI関連改正法案への懸念表明に対する批判・その1
13日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、ラジオ局によるインタビューにおいて、10日に発出された欧米諸国等による声明について(内政)干渉的なものであると述べた。
(10)最高検察官委員会による人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案の廃案要求及び国会による反論
13日、最高検察官委員会は国会に対し、6日に国会本会議が可決した人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案を廃案にするよう要求した。これに対し、同日、国会は、検察庁は権力分立の原則に従って国会の業務を尊重し、政治問題化すべきではないことを要求し、同庁の声明を拒否する旨の声明を発表した。
(11)アリスタ経済財政相に対する国会喚問
14日、アリスタ経済財政相に対する国会喚問が行われ、ペルーの経済状況や貧困問題等について喚問された。
(12)アギナガ国会外交委員会委員長による10日の欧米諸国等によるAPCI改正法案に関する声明への反論
14日、アギナガ外交委員会委員長の名で、概要以下の内容の反論文が発表された。
ア 国際協力は国の安定的・包括的発展に貢献するものであり、社会的弱者のニーズに合致するため、ペルーにとって国の努力を補足する役割として貴重なツールである。
イ ペルーはOECD加盟を目指しており、そのためのプロセスにおいて透明性に関する高い基準は、海外からの資金の管理においても必要である。
ウ NPOsは税金に係る特権を有しており、そのため国民は海外からの資金で何が行われているか、またNPOsによる提供が社会目的を満たしているか承知する権利を有する。
エ 我々は、APCIを通じてのUSAID、GIZ(ドイツ国際協力公社)、SDC(スイス外務省開発協力局)、SECO(スイス経済省対外経済庁)、AECID(スペイン国際開発協力庁)、JICA及びEU等からの協力に敬意を表するとともに、感謝している。これらの協力は、APCI法その他規則の規定に従って実施されており、透明性がある。
オ APCIを通じての協力資金により実施される民間団体によるプロジェクトについては、透明性があり、我々は楽観的である。我々の懸念は、領土内で登録されることなく外国から資金を受け取り実施されるプロジェクト、プログラム、活動に係る当該資金の透明性である。
カ 国として、我々の政治プロセスや安全保障に係る秩序、規範をリスクにさらす状況に背を向けることはできない。NPOsセクター関連したマネーロンダリングやテロリスト資金調達リスクに関し、2018―2020年間、疑わしい取引について195件の報告があった。
キ 15の国々と欧州委員会は、各国の法的管轄内の事項に対する不干渉の原則を尊重しており、治安リスクや脅威に対し国民を守るための国家主権を保証していると理解している。
ク よって、他国でも行われているように、ペルーが必要としている監督と透明性に関する厳格な法令をもって海外からの資金の透明性を保証するため、我々と力を合わせてくれることを求める。
(13)アマソナス州における未成年に対する性的暴行事件:関係大臣の国会委員会欠席・その1
14日、国会女性・家族委員会は、5月に発覚したアマソナス州における教員によるアワフン族未成年に対する性的暴行事件(当館注1)に関して説明を求めるためケロ教育相、エルナンデス女性社会的弱者相を召喚していたが、両大臣は同委員会を欠席した。
(14)国会閉会
15日、国会は、2023―2024年の第2会期を閉会した。
(15)第2回国家治安評議会(Conasec)の開催
18日、ボルアルテ大統領は、大統領府にて第2回国家治安評議会(Conasec)を開催した(当館注:第1回は1月25日に開催)。Conasecには、国の24機関、民間セクター、組合の代表者が参加し、以下の事項について合意した。
ア 内務省は、経済財政省との調整の下、ペルー治安計画(plan Peru Seguro)(当館注:本年1月6日に発出された内務省の省令)の実施の財源を確保し、実施を保証するために内務省に財源を移すための最高令(decreto supremo)案を作成する。
イ Conasec事務局は、関係法令に従って地方自治体・州政府がペルー国家警察(PNP)の業務のための財源を支出するよう促進するとともに、民間セクターにも奨励する。
ウ Conasec事務局は、企業同業者団体、労働組合、市民安全町(区)協議会(juntas vecinales de seguridad ciudadana)をConasecに組み入れるためにあらゆる手段をとる。
エ PNPは、恐喝罪専用通信ラインを設ける。
オ Conasec事務局は、違法武器を廃絶するために広告キャンペーンを実施する。
カ Conasec事務局は、市民安全強化のために太平洋同盟の企業評議会と作業部会を開催する。
キ 法務人権省は、刑務所が非常事態であることを宣言するための手段をとる。
ク Conasec事務局は、高い危険にさらされている児童、青少年の国家登録の整備を支援するための臨時会合を開催する。同様に、これら子ども、少年たちの保護のための国家システム設立や当該分野で憲法上自治権があるセクターや機構に対し、役割や機能を確定し付与するための法的枠組み創設も支援する。
ケ Conasecは、現行犯専門国家システムを設けるための法案可決を追求し、企業同業者組合及び労働組合の支援の下、現行犯ユニットの実施に貢献する。
コ Conasec事務局は、国家治安局の設立提案を分析・評価する。
サ 女性社会的弱者省は、刑期を務めている者の児童、少年の保護制度に係る提案を分析・評価する。
(16)ロペス-アリアガ・リマ市長の2026年大統領選出馬示唆
18日、ロペス-アリアガ・リマ市長(人民刷新党(RP)党首)は、2026年総選挙に向けて、“アマゾン地域希望の運動(Movimiento Esperanza Region Amazonica)”との同盟を発表するとともに、自身の大統領選出馬の可能性についても示唆した。
(17)フジモリ元大統領の人民勢力党(FP)入党
19日、ケイコ人民勢力党(FP)党首は、15日にフジモリ元大統領が同党入党のための書類にサインをした旨公表した。
(18)ゴンサレス-オラエチェア外相による欧米諸国等のAPCI関連改正法案への懸念表明に対する批判・その2
20日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、当地カナダ大使公邸にて開催されたペルー・カナダ外交関係樹立80周年祝賀レセプションにおいて、10日に発出されたAPCI関連改正案に関する欧米諸国の声明にカナダが参加したことを批判するとともに、同様に同声明に参加した国等を内政干渉であるとして非難した。
(19)アマソナス州における未成年に対する性的暴行事件:関係大臣の国会委員会欠席・その2
25日、国会アンデス・アマゾン族、アフロペルー人、環境保護委員会及び児童保護超党特別委員会の臨時共同会合は、5月に発覚したアマソナス州における教員によるアワフン族未成年に対する性的暴行事件に関して説明を求めるためケロ教育相、エルナンデス女性社会的弱者相を召喚していたが、両大臣は同共同会合を欠席した。
(20)フジモリ元大統領の腰部骨折
26日、フジモリ元大統領は、転倒して腰部を骨折したため入院し、集中治療室で治療を受けた。
(21)カスティージョ大統領の未登録政党への入党
26日、カスティージョ前大統領は、「みな国民とともに(Todos con el Pueblo)」党(当館注:全国選挙過程事務所(ONPE)には未登録)に入党した旨を発表した。同前大統領は、有罪判決や国会からの公職追放処分を受けていないため、現時点では2026年総選挙の国会議員ポストに立候補できる。
(22)フジモリ元大統領の政治活動への意欲表明
30日、エルコメルシオ紙は、フジモリ元大統領よる同紙への27日付け返信書簡を掲載した。同書簡において、フジモリ元大統領は、ペルー国民のために再度働きたく、あらゆるリスク負う決意と意思がある旨を述べている。
2 外交
(1)ゴンサレス-オラエチェア外相のエルサルバドル訪問
5月31日-6月3日、ゴンサレス-オラエチェア外相は米国及びエルサルバドルを外遊し、1日にブケレ・エルサルバドル大統領の就任式に出席するとともに、同日、ヒル同国外相と外相会談を開催し、2国間の協力強化について再確認した。また、ゴンサレス-オラエチェア外相は、米州人権裁判所(Corte-IDH)裁判官選挙に関し、エルサルバドルによるボレア候補者(Dr. Alberto Borea Odria)への支持について感謝の意を表した。
(2)外務省によるシェインバウム次期メキシコ大統領への祝意表明
3日、外務省は、Xにてメキシコ総選挙におけるシェインバウム大統領候補者の勝利に対するペルーからの祝福を表明するとともに、同候補者の任期中の成功を祈念し、対話、協力、相互尊重を通じて2国間関係を強化するとの両国のコミットメントを再確認する旨を表明した。
(3)ペルー・ウクライナ外務副大臣間会合
3日、外務省は、Xにてカミノ外務副大臣とボロベッツ・ウクライナ外務副大臣が同省において会合を開催し、ウクライナ情勢、2国間や地域に関係したテーマについて協議した旨発表した。
(4)ペルー・ウクライナ大統領間の電話会談
5日、大統領府は、Xにてボルアルテ大統領がゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行い、同国情勢や恒久的平和のための対話強化の必要性について協議した旨を発表した。
(5)ゴンサレス-オラエチェア外相の韓国及びスイス訪問
6-17日、ゴンサレス-オラエチェア外相は、韓国・ソウル、スイス・ジュネーブ及びニートワルデン州を訪問した。ソウルでは9日に趙外交部長官と外相会談を行った。また、10-11日には、2024韓国-ラ米・カリブ海地域間の未来協力フォーラムに参加した。ジュネーブでは、13-14日、UNCTAD設立60周年記念式典に出席し、13日にはパネルディスカッションのパネリストを務めた。更に、ニートワルデン州では15-16日に開催された「ウクライナの平和に関するサミット」に出席した。
(6)米州人権裁判所(Corte-IDH)による人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案の手続き停止要求
13日、米州人権裁判所(Corte-IDH)はペルーに対し、6日に国会本会議が可決した人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案について、アルトス地区事件(当館注2)及びラ・カントゥタ事件(当館注3)に関連して概要以下の決定を発出した。
ア アルトス地区事件及びラ・カントゥタ事件の被害者による司法へのアクセス権を保証するため、ペルー国に対し、人道に対する犯罪及び戦争犯罪に係る法案の手続きを直ちに停止するよう要求することを決定した。停止期間は、両事件に対する上記暫定措置の要求及びその影響について発表するために必要なすべての要素を考慮するまでである。
イ ペルー国、両事件の被害者代表、米州人権委員会(CIDH)に対し、第168回Corte-IDH通常会期中の6月17日8:30-10:00(コスタリカ時間)に開催されるオンライン形式の公聴会に出席するよう求める旨決定した。
(7)Corte-IDHによる人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案の手続き停止要求に対する国会による反論
14日、国会は、13日のCorte-IDH決定に対し、概要以下の声明を発出した。
ア ペルーは、民主的、社会的で独立した主権を有する共和国である。
イ ペルー国の主要権力機構である共和国国会は、憲法上、法律上のマンデートにより同様に決定を独立して行うことができる。
ウ よって、我々の決定に対するいかなる国内的・国外的介入も拒否する。
エ 完全な独立と自治を有する共和国国会は、適当と信じる機会には、相応する委員会によって採決された法案を審議する。
(8)カミノ外務副大臣のフィリピン及び日本訪問
16-22日、カミノ外務副大臣は、フィリピン及び日本を訪問した。マニラではペルー・フィリピン外交関係樹立50周年を祝うとともに、ペルー外務省・フィリピン外交部間で第1回2国間政策協議の共同議長を務めた。また、21日、東京では第3回2国間政策協議に出席した。
(9)ペルー中国友好の日設定に関する法律公布
20日、5日に国会で承認された毎年2月1日をペルー中国友好(confraternidad)の日と定める法律が公布された(官報掲載は21日)。なお、これまでの7月25日のペルー中国友好(amistad)の日は廃止された。
(10)第16回ペルー・エクアドル隣国委員会の開催
21日、ペルー外務省において、第16回ペルー・エクアドル隣国委員会が開催され、ゴンサレス-オラエチェア外相とソメルフェルド・エクアドル外相間において、引き続き協働していくための新たな行程表を定めた「2024リマ行動計画」を承認した。同行動計画では、2024-2025年の目標、協力プロジェクト、2国間の49のコミットメントを明らかにしている。また、両国は、「2022ロハ行動計画」の51のコミットメント関する検証も行った。
(11)チリ最高裁判所によるフジモリ元大統領に対する犯罪人引渡事由の追加承認
24日、チリ最高裁判所は、ペルー政府から要求されていたフジモリ元大統領が在職中(1990-2000)に犯したとされる罪状8つについて、駐ペルー日本大使公邸占拠事件を含む5つを両国間の犯罪人引渡条約に基づく引渡事由として新たに承認した旨発表した。
(12)ボリビアでの騒擾事件に関する大統領府声明発出
26日、大統領府は、ラパスでの騒擾事件発生直後にXにて、以下の内容の声明を発表した。
ア ペルーは、ボリビアでの憲法を破ることになる企てを強く非難する。
イ ペルーは、国民とアルセ大統領の合憲政府を支持し、同国の民主的・制度的秩序に反する行為を拒否する。
ウ また、同志国であるボリビアにおいて秩序及び法の支配を保つための関係機関の尽力に対し支持を表明する。
(13)国連強制失踪委員会による人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に関する法案についての国際人権法の遵守要求
26日、国連強制失踪委員会は、6日に国会が可決した人道に対する犯罪及び戦争犯罪の適用範囲に法案について、国会により承認されるすべての規則は国際人権法を遵守するよう要求する概要以下の声明(当館注4)を発出した旨のプレスリリースを発表した。
ア 14日に当委員会作業部会が表明した立場に従い、当委員会は、当該法案は、強制失踪を含む国際人権法及び国際的に重大な人道侵害に対する時効の適用に反していると考える。
イ 法案は、ペルーが2012年9月26日に加入した強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約に明らかに違反している。
ウ 加入以降、ペルーは、強制失踪の被害者を含む犠牲者に対して司法、真実及び賠償へのアクセスを保証するための努力を継続してきており、そのために1980-2000年間に失踪した者の捜索に関する法律の可決、失踪した者の捜索に係る国家計画の採択、失踪した者の捜索のための関係当局及び遺伝子データバンクの設立などの措置をとってきた。
エ 係る措置は、強制失踪に係る免罪を無くし、被害者の人権を促進するとのペルーのコミットメントを示すものであった。当該法案の今次可決は、これらの進捗を台無しに、深刻な後退をもたらしている。
(14)ボルアルテ大統領の中国国賓訪問
26-28日、ボルアルテ大統領は、国賓として中国を訪問した。訪問には、ゴンサレス-オラエチェア外相、アリスタ経済財政相、バスケス保健相、ペレス-レジェス運輸通信相、ペレス住宅建設上下水道大臣の他、ペルー企業が同行した。訪問中、ボルアルテ大統領は、習近平国家主席、李強首相、趙楽際全国人民代表大会常務委員会委員長と会談した。また、ゴンサレス-オラエチェア外相は、中国との13の合意文書に署名した。
(15)アラナ法務相・カミノ外務副大臣の第54回米州機構定例総会出席及びCorte-IDH裁判官選挙でのペルー候補者当選
26-29日、アラナ法務人権大臣及びカミノ外務副大臣は、パラグアイ・アスンシオンを訪問し、26-28日に開催された第54回米州機構定例総会に出席した。同総会中に実施されたCorte-IDHの裁判官選挙ではペルー候補のボレア氏が当選した。
(当館注1)5月、アワフン族女性審議会会長は、2010-2014年の間にアマソナス州において教員による未成年に対する性的暴行事件が524件あった旨を公にした。これに対し、6月13日、ケロ教育相は、係る性的暴行はアワフン族の文化的慣習であると述べて批判を浴び、17日、アドリアンセン首相がボルアルテ政権は係る行為を決して認めない旨釈明するとともに、被害者を支援する旨表明した。また、後日、アマソナス州のワンピス族に対しても同様の行為が行われていたことが判明した。
(当館注2)1991年、準国軍兵士(コリーナ部隊)がアルトス地区の建物に押し入り、テロリストと間違えて集まっていた民間人を殺害した事件。
(当館注3)1992-1993年、準国軍兵士(コリーナ部隊)がラ・カントゥタ教育大学に押し入り、テロリストと見られていた教授・学生を殺害した事件。
(当館注4)委員の1名はペルー人だが、同委員会規則に従い当該声明には参加していない。