8月のペルー内政及び外交・国際関係における主な動きは、以下のとおり

令和6年9月24日
 
【概要】
1 内政
●2日、フジモリ元大統領に対する終身年金の付与が7月10日に国会にて可決されていたことが明らかになった。
●2日、カスティージョ前大統領が自身に対する終身年金を申請することが明らかになった。
●2日、ウィリアム・メサ氏を党首とするPartido Pais para Todosが全国選挙審査会(JNE)に政党登録を完了させた。
●5日、国会会派調整委員会(Junta de Portavoces)は、2024-2025年度国会会期における各委員会所属議員定数を策定した。
●5日、全国選挙過程事務局(ONPE)は、ロペス・アリアガ・リマ市長及びアクーニャ・ラ・リベルタ州知事に対し提出されていたリコール申請を承認したと発表した。
●7日、米州人権裁判所は、7月8日に同裁判所に対し、ボルアルテ大統領及びソト前議長が連名で提出した書簡に回答した。
●7日、次期総選挙を見越して、モリネリ元開発社会包摂大臣を党主とする現代勢力党が全国選挙審査会(JNE)に政党登録を完了させた。
●9日、国会は、法令第32107号(通称:人道的罪に関する法律)及び法令32108号(通称:組織犯罪に関する法律)を正式に承認し、発布した。
●14日、アドリアンセン首相は、逃亡中のセロン・ペルー・リブレ党首の逮捕について、いつになるか期日を明言することはできないとした。
●17日、クチンスキー元大統領が、7日に政党登録を完了した現代勢力党に党員登録した。
●20日、ダトゥム社による次期大統領選に関する世論調査が公表された。
●20日、2024-2025年度国会外交委員会執行部員の選出が行われ、委員長には、アウリステラ・オバンド人民勢力党議員が選出された。
●22日、当国検察庁は、カスティージョ前大統領及びベジド・ポデモス・ペルー党議員に対し、2021年にカラスコ元内相を不正に任命した罪で憲法訴追案を提出した。
●27日、イプソス社による権力の所在に関する世論調査結果が公表された。
●30日、マチルデ・デル・カルメン女性社会的弱者副大臣が辞表を提出し、同日、後任にエルバ・エスピノサ氏が任命された。
 
2 外交・国際関係
●2日、当国外務省創立203周年記念式典が同省トーレ・タグレ宮で開催され、ボルアルテ大統領及びゴンサレス-オラエチェア外相が出席した。
●5日、同日から伯がベネズエラにおいて、ペルーに代わって在ベネズエラ・ペルー国民に対する領事業務等を行うことでペルーの国益を保護することが明らかになった。
●7日、当国外務省は、中東情勢の悪化をうけ、レバノン、イスラエル及びイランに居住または短期滞在しているペルー国民に対する勧告を発表した。
●11日、ダトゥム社によるベネズエラ情勢に関する世論調査結果が公表された。
●11日、当国外務省は、子どもや民間人を含む多くの死者と負傷者を出したガザ地区のアル・タビーン校への空爆に対し、非難声明を発出した。
●16日、当国外務省は、ドミニカ共和国サント・ドミンゴにおいて、ベネズエラ情勢に関する共同声明が採択されたと発表した。
●19日、エンリケ・モレイ新国連ペルー代表は、グテーレス国連事務総長に対し、信任状を提出した。
●21日、駐中国ペルー大使館は、ペルー独立203周年及び独立確立200周年記念レセプションを開催し、華春瑩中国外務部副部長が出席した。
●23日、当国外務省は、アルゼンチン、コスタリカ、チリほか(ペルー政府を含む)政府が、ベネズエラ最高裁(TSJ)のベネズエラ大統領選に関する決定を拒否すると発表した。
●28日、ボルアルテ大統領は、ルーラ伯大統領と電話会談を行い、チャンカイ港建設ほかペルーのメガプロジェクトがもたらす潜在的なビジネスチャンスについて議論した。
 
【本文】
1 内政
(1)フジモリ元大統領に対する終身年金の付与
 2日、フジモリ元大統領に対する終身年金の付与に関する審議が行われ、7月10日に国会にて可決されていたことが明らかになった。また、リエラ・フジモリ元大統領弁護士は、同元大統領が、アシスタント契約費として月3700ソルとガソリン月150ガロンを受け取ることができると述べた。
 
(2)カスティージョ前大統領の終身年金受取申請
 2日、アヤラ・カスティージョ前大統領弁護士は、国会において、フジモリ元大統領への終身年金付与に関する審議が行われ承認されたことを受け、同前大統領が自身に対する終身年金を申請する旨明らかにした。
 
(3)政党登録・その1
 2日、ウィリアム・メサ氏を党首とするPartido Pais para Todosが全国選挙審査会(JNE)に政党登録を完了させ、登録政党総数が34となった。
 
(4)国会各種委員会所属議員定数の策定
 5日、国会会派調整委員会(Junta de Portavoces)は、2024-2025年度国会会期における各委員会所属議員定数を策定した。なお、外交委員会の所属議員定数は21名。
 
(5)ロペス・アリアガ・リマ市長及びアクーニャ・ラ・リベルタ州知事に対するリコール 
ア 5日、全国選挙過程事務局(ONPE)は、ロペス・アリアガ・リマ市長及びアクーニャ・ラ・リベルタ州知事に対し提出されていたリコール申請を承認したと発表した。
 
イ ロペス・アリアガ市長に対するリコールは、同市長の選挙公約の不履行及び政策実行の不十分さに起因する。
 
ウ アクーニャ知事に対するリコールは、トルヒージョ市ほかにおける治安の悪化及び公共事業の不十分さが原因となった。
 
(6)米州人権裁判所のボルアルテ大統領及びソト前国会議長発書簡に対する回答
ア 7日、米州人権裁判所は、7月8日に同裁判所に対し、ボルアルテ大統領及びソト前議長が連名で提出した書簡(当館注1)に回答した。
 
イ 同裁判所は、ペルーが国内司法を支援する役割を担う人権擁護のための米州システムを堅持し、米州人権条約及びその他国際的取決めに対する揺るぎないコミットメントを示す重要性を再認識する旨ペルー側に伝達した。
 
(7)政党登録・その2
 7日、次期総選挙を見越して、モリネリ元開発社会包摂大臣を党主とする現代勢力党(Fuerza Moderna)が全国選挙審査会(JNE)に政党登録を完了させ、登録政党総数が35となった。
 
(8)人道的罪に関する法律及び組織犯罪に関する法律改正
 9日、国会は、法令第32107号(通称:人道的罪に関する法律)及び法令32108号(通称:組織犯罪に関する法律)を正式に承認し、発布した。
 
(9)セロン・ペルー・リブレ党首の状況
 14日、アドリアンセン首相は、逃亡中のセロン・ペルー・リブレ党首(当館注2)の逮捕について、いつになるか期日を明言することはできないとした。また、国家警察が莫大な努力をし、同党首逮捕のための特別チームが結成された旨述べた。
 
(10)クチンスキー元大統領の党員登録
ア 17日、クチンスキー元大統領は、7日に政党登録を完了した現代勢力党に党員登録した。
 
イ 当地主要紙ラ・レプブリカ紙は、モリネリ同党首が、2026年大統領選挙立候補を検討している報じた。
 
(11)ダトゥム社による次期大統領選に関する世論調査
 20日、ダトゥム社による次期大統領選に関する世論調査が公表され、80%の国民がどの候補者に投票するのか決めておらず、次期政権の一番の優先課題として、27%の国民が経済状況の改善及び雇用の創出を挙げたことが明らかになった。
 
(12)国会外交委員会執行部員の任命
 20日、2024-2025年度国会外交委員会執行部員の選出が行われ、委員長には、アウリステラ・オバンド人民勢力党議員、副委員長には、ホルヘ・セバジョス人民刷新党議員、幹事長には、フアン・カルロス・リサルサブル進歩のための同盟党議員がそれぞれ選出された。
 
(13)カスティージョ前大統領に対する憲法訴追
 22日、当国検察庁は、カスティージョ前大統領及びベジド・ポデモス・ペルー党議員に対し、2021年にカラスコ元内相を不正に任命した罪で憲法訴追案を提出した。同元内相が、同職を不法に引き受けたとして、2023年6月、国会は同元内相に対する刑事手続きの開始を承認していた。
 
(14)イプソス社による権力の所在に関する世論調査
 27日、イプソス社による権力の所在に関する世論調査結果が公表され、64%の国民が、国会が一番強い権力を有していると感じていることが明らかになった。なお、ボルアルテ大統領が一番強い権力を有していると答えた国民の割合は、29%にとどまった。
 
(15)女性社会的弱者副大臣の交代
 30日、マチルデ・デル・カルメン女性社会的弱者副大臣が辞表を提出し、同日、エルバ・エスピノサ氏が新副大臣に任命された。
 
2 外交・国際関係
(1)当国外務省創立203周年記念式典の開催
ア 2日、当国外務省創立203周年記念式典が同省トーレ・タグレ宮で開催され、ボルアルテ大統領及びゴンサレス-オラエチェア外相が出席した。
 
イ 同式典において、ボルアルテ大統領は、ペルー外務省が2世紀以上におよぶ歴史を通じて、国内外から広く認められる外交の伝統を築いてきたと述べた。
 
(2)伯によるベネズエラにおけるペルー国益の保護
 5日、同日から伯がベネズエラにおいて、ペルーに代わって在ベネズエラ・ペルー国民に対する領事業務等を行うことでペルーの国益を保護することが明らかになった。
 
(3)外務省による声明発出:中東情勢の悪化
 7日、当国外務省は、中東情勢の悪化をうけ、レバノン、イスラエル及びイランに居住または短期滞在しているペルー国民に対し、予防措置を適用した上で、慎重に行動し、当局の指示に従うとともに、治安状況の変化について常に情報収集するよう勧告した。
 
(4)ダトゥム社によるベネズエラ情勢に関する世論調査
ア 11日、ダトゥム社によるベネズエラ情勢に関する世論調査結果が公表され、91%のペルー国民が、7月28日に行われたベネズエラ大統領選において不正があったと考えていることが明らかになった。
 
イ 他方、ベネズエラ野党だけでなく、国際的なオブザーバーや各国からも疑問視されている同選挙が公正であったと考えているのは、わずか3%であった。
 
(5)外務省による声明発出:ガザ地区の学校空爆
 11日、当国外務省は、子どもや民間人を含む多くの死者と負傷者を出したガザ地区のアル・タビーン校への空爆を非難し、無差別で比例なき武力行使は、中東の緊張を著しく高めると公式声明で発表した。
 
(6)外務省による声明発出:ベネズエラ情勢・その1
ア 16日、当国外務省は、ドミニカ共和国サント・ドミンゴにおいて、ベネズエラ情勢に関する共同声明が、20カ国(当国、アルゼンチン、カナダ、チリほか)連名で採択されたと発表した。
 
イ 同声明において、署名国は、ベネズエラとラ米地域とって極めて重要な今、すべての社会・政治的アクターが、公的活動において最大限の自制を行使しなければならないと述べた。
 
(7)新国連ペルー代表による信任状の提出
 19日、エンリケ・モレイ新国連ペルー代表は、グテーレス国連事務総長に対し、信任状を提出した。
 
(8)中国におけるペルー独立記念レセプションの開催
ア 21日、駐中国ペルー大使館は、ペルー独立203周年及び独立確立200周年記念レセプションを開催し、華春瑩中国外務部副部長が出席した。
 
イ 同レセプションにおいて、華副部長は、ボルアルテ大統領訪中の成果物と、両国の包括的戦略パートナーシップ深化への貢献に対し、感謝の意を表した。
 
(9)外務省による声明発出:ベネズエラ情勢・その2
 23日、当国外務省は、アルゼンチン、コスタリカ、チリほか(ペルー政府を含む)政府が、ベネズエラ最高裁(TSJ)が、全国選挙評議会(CNE)が公表した大統領選結果に関する検証を終了し、CNEが発表した根拠のない結果を有効とする意向を示した発表を断固として拒否する内容の声明を発出した。
 
(10)ボルアルテ大統領とルーラ伯大統領の電話会談
ア 28日、ボルアルテ大統領は、ルーラ伯大統領と電話会談を行い、チャンカイ港建設ほかペルーのメガプロジェクトがもたらす潜在的なビジネスチャンスについて議論した。
 
イ また、ボルアルテ大統領は、ベネズエラとの国交断絶後、ペルーに代わって、伯がベネズエラにおいてペルーの国益を保護していることに感謝の意を表した。
 
(当館注1)当国の人道的罪に関する法律改正に関する同裁判所の関与が内政干渉にあたるとする内容。
 
(当館注2)昨年10月に禁錮3年6ヶ月の有罪判決を受けた後、逃亡している。ボルアルテ大統領が同氏が逮捕されないよう匿っていると噂されている。