ペルー安全対策情報(2025年4~6月分:邦人被害例等)
令和7年7月1日
在ペルー日本国大使館
1 社会・治安情勢(1)2022年12月7日の国会によるカスティージョ前大統領の罷免、ボルアルテ大統領の就任から2年以上が経過し、同時期に継続していた大統領の辞任及び選挙の早期実施等を求める抗議活動は沈静化しています。他方、一部山間部地域、国境地帯、トゥンベス州、ラ・リベルタ州の一部地域や一部の国道及びその両側500メートルの場所に対して非常事態宣言が継続され、リマ市の一部地域およびカヤオ憲法特別市全域に対しては治安対策のための非常事態宣言が継続するなど、依然として社会・治安情勢は流動的です。また、下記2(1)のとおり犯罪件数の増加も顕著であり、下記2(2)アのとおり窃盗等の邦人被害も発生しており、外出時にはより一層の注意が必要です。
(2)観光客が多く訪れるマチュピチュも、デモ隊による線路封鎖や大雨被害による土砂崩れ等により鉄道の運行が休止することがあり、その場合には、他に移動手段が徒歩だけとなるので最新の情報の入手に努めてください。
(3)テロ組織は一部山間部地域に潜伏し、麻薬密輸を資金源に現在も活動を続け、軍や国家警察に対する武力攻撃を続けています。
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)全般
ア 20024年中の刑法犯罪認知件数は、全国で566,678件(前年比0.7%減)と高止まりの状況が続いています。
2021年以降、コロナ禍の各種制限の撤廃に伴い、都市部を中心に急激に犯罪が増加しています。
罪種別の統計では、強盗や窃盗等の財産に対する犯罪が372,475件(前年比1.8%減)となっており、これらの犯罪は、首都リマ市・カヤオ憲法特別市において集中的に発生しています。これらの件数はあくまで警察に被害申告がなされたことにより把握された犯罪認知件数の統計であり、未申告の犯罪を含めると、実際には更に多くの犯罪が発生しているものと考えられます。
イ コロナ収束後、外国人観光客が被害者となる長距離バス車内での犯罪やタクシー強盗被害が報告されています。具体的には夜間、知らないうちに人気のない場所に連れていかれ、その場所で待ち伏せていた強盗犯人が乗り込み乗客の金品を奪い立ち去る手口の他、運転手や他の乗客から薬物が混入した菓子や飲み物等を勧められ口にしたところ昏睡してしまい、所持品を奪われる等の手口が挙げられます。長距離バスやタクシー利用時はなるべく夜間の利用は避ける、運転手や乗客の身分確認が徹底されている会社を選び、タクシー会社や配車アプリに登録していないタクシー等の利用は避けてください。
ウ 比較的安全とされているミラフローレス区やサン・イシドロ区等においても、日中から、オートバイを利用した犯人らによる、ひったくりや強盗が多発しています。また高級腕時計や貴金属を持つ者の後をつけ、人気の無い場所で襲うといった手口は従来から継続して発生しており装飾・携行品には特に注意してください。
エ 特に携帯電話を使用中の歩行者を狙った、ひったくりの発生が急増しており被害時に抵抗したため犯人から銃撃される事例が多く発生しています。国内で1日あたり5,000件を超える携帯電話の盗難が発生しているとの統計もあり、外出時は自身の持っている携帯電話は犯人にとって「高級品」であることを自覚し、十分注意すると共に、被害時には絶対に抵抗しないことが重要です。また、携帯電話の盗難件数の増加に伴い、被害品の携帯電話に保存された個人情報を悪用したインターネット犯罪も増加しています。歩きながらの携帯電話の使用は控え、やむを得ず、携帯電話を屋外で使用する場合は、周囲をよく警戒することが重要です。
オ 強盗の手口として、一般人を装った共犯者(連絡役)が市内各所(店舗の出入口、銀行・ATM前、飲食店内、空港の出入口付近等)に配置されており、共犯者が、被害者を物色・選定し、実行犯に連絡するという手法が取られていることから、これまで以上に所持品・携行品は他人から見えない様に携行し、華美な服装は避ける等といった、ターゲットにならないための注意を払う必要があります。特に被害者が金融機関を利用した直後に襲われる事件が多発しています。
(2)主な犯罪発生例等
ア 邦人被害例
(恐喝)リマ市ラ・ビクトリア区付近でタクシーを降車し深夜0時に歩いていたところ、前方から来る男性3名に呼び止められ、財布、携帯電話等を強奪される被害に遭った。
(窃盗)休日の夕刻、リマ旧市街での観光を終え、ミラフローレス区へ移動するため公共バスを利用した旅行者が、満員のバス車内において、お腹の前に装着していたウエストポーチからパスポート及び財布を盗まれるスリの被害に遭った。被害者は降車後、ウエストポーチに違和感を覚え、中身を確認したところチャックが開けられており、貴重品が盗まれていることに気づいた。
イ リマ市内での犯罪発生例
(殺人)リマ市サン・ミゲル区(市場)
デリバリー業者を装ったバイクの男により、市場内の肉屋の店主が銃撃され殺害された。犯行の動機は、「みかじめ料」の支払いを拒否したことが原因とされている。
(殺人)リマ市リマ区(チャイナタウン)
ATMを利用しようとしていた男性が、バイクに乗った2人組に襲撃され、14発の銃撃を受け殺害される事件が発生した。
(殺人)リマ市リマ区(スポーツセンター)
サッカーの試合中に何者かが施設に侵入し、施設利用者1名を銃撃し殺害、他2名が重傷を負う事件が発生。本件は、いわゆる「殺し屋」による犯行とみられている。
(殺人)リマ市サン・マルティン・デ・ポレス区(学校前)
妻と息子を自家用車に乗せ駐車していた男性が、殺し屋に銃撃され殺害された。
(強盗)リマ市ミラフローレス区
車両故障のため車内待機中の家族が、銃器を持った犯人グループに襲撃され、パソコン、携帯電話などを強奪された。さらにネットバンキングの暗証番号をその場で強要され、預金を引き出される被害も発生。
(強盗)リマ市ヘスス・マリア区
友人を迎えに来た男性が車内で待機中、犯人グループの襲撃を受け、金品を奪われた。その後、車両に乗車しようとした友人も強盗の被害に遭った。
(傷害)リマ市コマス区(市場内)
市場内のトイレに手榴弾が投げ込まれ、爆発により利用者2名が負傷する事件が発生。現場では「みかじめ料」を要求する脅迫文が発見された。
(恐喝)リマ市コマス区(レストラン)
レストラン内に爆弾を投げ込まれ、店の玄関などを損壊。犯人は徒歩で逃走したが、幸い負傷者はいなかった。
(恐喝)リマ市コマス区(学校)
学校に爆発物が仕掛けられる事件が発生。犯人は、「みかじめ料」の支払いを学校側に要求していた。
(窃盗)リマ市サンティアゴ・デ・スルコ区(学校前)
登下校時の送迎で路上駐車していた複数の車内から金品が盗まれる連続窃盗事件が発生。
ウ 募金活動を装った恐喝事件
リマ市コマス区において、チャリティーを名目とした募金活動を装い、日中に主婦や高齢者が在宅している家庭を訪問する恐喝事案が報告されています。犯人は当初、親しげに会話をしながら通常の募金を依頼する様子を見せますが、次第に態度が高圧的になり、最終的には賛助金の提供を強要する恐喝事件が確認されています。
エ 返金トラブルの発生
インターネット上のホームページを通じて、ペルー国内のツアー旅行を申し込んだ方から、ツアーがキャンセルされたが返金されないというトラブルが報告されています。インターネット上の旅行業者にツアーを申し込む際には、1)キャンセルの条件や規約などを確認し、内容を十分理解したうえで利用すること、また、2)ペルー通商観光省に登録されている旅行業者か確認するなどして、信頼できる業者であることを十分確認することの2点を強くお勧めいたします。
ペルー国内に所在する旅行代理店は、ペルー通商観光省(MINCETUR)への登録が義務づけられており、登録の有無及び旅行業者の情報は以下の手順で確認することが可能です(スペイン語表記)。なお、IATA(国際航空運送協会)への登録(ロゴマークの表示)の有無などにより信頼性を確認することもできます。
(1)まず、旅行代理店の納税者番号を確認します。以下のリンクより、ペルー国家税関税務監督庁(SUNAT)のHPにアクセス。
http://e-consultaruc.sunat.gob.pe/cl-ti-itmrconsruc/jcrS00Alias
・左下の「Por Nomb. /Raz. Soc.」の欄を押して、検索ボックスに旅行代理店の名称を入力した上で、検索「Buscar」をクリックします。
・法人情報をクリックして、納税者登録番号(Numero de RUC)を確認します。
※類似名の事業者が表示される場合がありますのでご注意ください。
(2)次に、以下のリンクより、ペルー通商観光省(MINCETUR)のHPにアクセスし、旅行代理店として登録されているか確認します。
https://consultasenlinea.mincetur.gob.pe/directoriodeserviciosturisticos/DirPrestadores/DirBusquedaPrincipal/AgenciaViajes?IdGrupo=2
・「N° RUC」の欄に先ほどSUNATで確認した納税者登録番号(Numero de RUC)を入力し、検索「Buscar」をクリックします。旅行代理店として通商観光省に登録がある場合は、同社の情報が表示されます。
3 テロ・爆弾事件発生状況
アプリマック・エネ・マンタロ川渓谷(VRAEM)地域の一部地域では、引き続き武装組織と治安部隊との衝突が度々発生しています。同地域における非常事態宣言は今後も継続される見通しです。これらの地域に対しては、日本政府としても危険情報のレベル3(渡航中止勧告)を発出していますので、理由の如何にかかわらず立ち入らないでください。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
ペルーではリマ市を含む各地で、年少者被害の誘拐や、ATMから現金を引き下ろさせる目的の誘拐強盗(短時間誘拐)が発生しています。
また、富裕層を対象とした脅迫、恐喝、殺人事件が報告されており、深刻な治安上の懸念となっています。こうした犯罪の被害に遭わないためには、日常生活において行動パターンを固定化せず、犯人に行動を予測されないように注意することが極めて重要です。また、リマ市内においても犯罪組織による恐喝事件が急増しており、殺し屋による殺人事件や組織間の抗争に伴う銃撃事件、さらには警察との銃撃戦に至るケースも確認されています。これらの犯罪は、時間・場所を問わず発生し得るという認識のもと、外出時には常に周囲の状況に注意を払い、安全確保に十分留意することが重要です。
5 日本企業の安全に係わる状況
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