ペルーの経済情勢(2021年第3四半期)

令和3年10月28日
1 総論
最新のペルーの月例主要経済指標は、経済成長率11.83%(8月:前年同月比)、リマ首都圏のインフレ率5.23%(9月までの一年間)、対米ドル為替相場4.108ソル(9月平均値)、リマ首都圏の完全失業率10.0%(7月~9月)、財政収支3,700百万ソルの赤字(9月)、貿易収支1,146百万米ドルの黒字(8月)となった。

2
 各論
  (1) 主要経済指標
 ペルー中央準備銀行及び国家統計情報庁によると、ペルーの主要経済指標は次のとおり。

  ア 経済成長率
  最新の経済成長率(GDP成長率)について、8月は宿泊・飲食業、運輸・倉庫・郵便等及び建設業の大幅な伸びが見られた 
  一方、漁業がマイナスとなり、全体としてGDP成長率は11.83%(前年同月比)となった。

  


    

                                                   

  イ インフレ率
 9月のリマ首都圏のインフレ率(消費者物価指数(前月比))は、0.40%となり、最近12か月(2020年10月~2021年9月)の上昇
   率は、5.23%となった。

  


                      

  ウ 為替相場
  9月の対米ドル為替相場の平均は4.108ソルであった。

  

                    

  エ 失業率
 7月~9月のリマ首都圏の完全失業率は10.0%であった。

  

                   

  オ 財政収支
 9月の政府全体の財政収支は、歳入が対前年同月比で47.0%増となった。歳出は対前年同月比で26.2%増となった。全体で
   は、プライマリーバランスは3,700百万ソルの赤字となった。債務の利払いを含めると4,118百万ソルの赤字となった。


  
                            

  カ 貿易収支
 8月の輸出額は、伝統産品(鉱物資源、魚粉、コーヒー等)が対前年同月比58.1%増、非伝統産品(アスパラガスなどの近代
   的農業産品、繊維製品、工業製品等)が18.0%増となり、全体では5,284百万米ドル(対前年同月比45.0%増)となった。主要
   輸出品目は銅、金、魚粉であった。

   輸入額は、対前年同月比で消費財が9.4%増、中間財は89.3%増、資本財が34.0%増となり、全体で4,137百万米ドル(対前
   年
同月比49.4%増)となった。この結果、貿易収支は1,146百万米ドルの黒字となった。主要輸入品目は原油、携帯電話、軽
   油であった。

   


                                     

                               

  キ 外貨準備高
  9月末の外貨準備高は76,024百万米ドルとなった。

 


                

  ク 対外累積債務
  2021年6月末の対外債務累積総額は93,134百万米ドルとなった。

      


                 

                                                                                                                   (注)上記表中の数値は今後修正される可能性あり。
 

  (2) 最近の主な出来事
   ・CPTPPのペルーにおける発効
 7月14日、ペルー国会本会議において、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の批准が承認された。9月19日には、ペルーにおいて同協定が発効し、ペルーは8番目の同協定締約国となった。オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール及びベトナムの11か国により構成されるこの巨大貿易圏は、ペルーに加盟諸国に対する新たな市場と関税引き下げによる利益をもたらす。ペルー輸出業者協会(ADEX)は、小規模経営が多いペルー産農産品の輸出拡大に繋がると期待。
 
   ・鉱物石油エネルギー協会(SNMPE)発表:上半期金属鉱物関連輸出71.9%増加
 2021年上半期のペルーの金属鉱物関連輸出額は182億3,200万ドル、前年同期(106億500万ドル)比71.9%増となり、コロナ禍以前(2019年同期:135億4,300万ドル)比でも34.6%増加した。産品別では銅94億4,000万ドル、前年同期(51億1,700万ドル)比84.5%増、金46億1,800万ドル、前年同期(34億3,000万ドル)比34.6%増であった。6月単月では、鉱物輸出額が33億2,100万ドル、前年同月(18億9,600万ドル)比75.2%増となり、産品別では銅が国際相場価格高騰(+80.7%)により輸出量の減少(▲0.9%)にもかかわらず輸出額18億400万ドルと79%増加した。
 
   ・ペルー自動車協会(AAP)発表:1月~8月車両販売台数回復、普通車両販売61.3%増
 2021年1月~8月のペルーの車両販売はコロナ禍から回復に向かっている。特に、カハマルカ州では大型車両(バス・トラック)が前年同期比412%増、アンダワイラス郡ではオートバイ(二輪・三輪)が前年同期比591%増となった。普通車両(乗用車、SUV、ピックアップ車等)は前年同期比61.3%増(コロナ禍以前(2019年同期)比では▲2.7%)、8月単月では2019年同月比8.7%増と回復。今年末の普通車両販売総台数は前年比25%増を見込むが、2019年販売実績を下回ると予測。
 
   ・中銀(BCR)今年2度目の政策金利引上げ、0.5%から1.0%に上昇
 9月9日、中銀(BCR)理事会が政策金利引上げを決定した。8月(0.25%→0.50%)に続き今年2度目の引上げで1.0%となる。この政策金利引上げは、食糧や燃料の国際相場価格上昇等の要因により直近12か月のインフレ率が7月時点で3.81%、8月時点で4.95%と、中銀(BCR)の年間インフレ率目標枠(1%~3%)を超えていることに対応するインフレ抑制策の一環とされている。中銀(BCR)は、インフレ亢進は一時的で今後12か月のうちに鎮静化に向かうと予測。
 
                                                                    (了)