ペルー政治情勢 2013年

8月の内政と外交


1 概要
(1)現国会の新たな会期(3年目)が始まり,新設1会派を含む各会派の議席及び委員会委員長ポストが決定した。

(2)7月から行われていた医療関係者のストライキは,保健省との賃上げ交渉が妥結し収束。

(3)軍と警察の合同オペレーションにより,VRAEM地域のテロリスト幹部「アリピオ」と「ガブリエル」の2名が死亡した。

(4)外交面では,ウマラ大統領がパラグアイ大統領就任式及びスリナムで開催された第7回南米諸国連合首脳会合出席し,同連合議長国をスリナムに引き継いだ。

(5)リバス外相は,国連安保理の公開討論会に出席した他,シルバ通商観光相と共に太平洋同盟外務大臣及び通商大臣会合出席。

2 内政
(1)カテリアノ国防相の国会召喚  

 1日,国会本会議はカテリアノ国防相に対し,本年5月に発生したラ・コンベンシオン郡における軍及び警察による市民への誤射事件,抽選による徴兵制,軍による武器の秘密購入等に関し,約6時間に亘り39の質問を行った。

 

(2)日本大使公邸占拠事件チャビン・デ・ワンタル救出作戦裁判にかかる司法及び行政関係者による会合の音声流出

 4日,2012年5月31日に,当時最高裁長官であったサン・マルティン判事(チャビン・デ・ワンタル救出作戦にかかる第二審では裁判長)が開いた,ロハッシ判事(当時チャビン・デ・ワンタル救出作戦の一審(リマ高裁)を担当)とヒメネス首相(当時人権相),及びカテリアノ国防相(当時米州人権裁判所における本件のペルー国家訴訟代理人)との内輪の昼食会の会話を伝える音声がYou Tube上に流出し報道された。同会話の中では,チャビン・デ・ワンタル作戦にかかる裁判の内容について触れられており,当時ペルー政府は,右救出作戦の際に違法な殺害があったとして,米州人権裁判所に告訴されていたと同時に,リマ高裁では右救出作戦にかかる裁判の判決結果を控えていた時期であったことからも,昼食会での会話は,判事に対する不当な圧力であり,判事の見解に影響を与えると同時に,司法の独立を侵害するものであるとして,立法府からは右昼食会に出席した関係者を非難する声が上がった。

 

(3)医療関係者のストライキ 

 9日,ペルー看護師連盟(国立病院勤務の看護師)と保健省との間で,賃上げ交渉が妥結し,7月9日から継続していた看護師のストライキが解除された。 また,14日,同じく賃上げを要求し先月よりストライキを続けてきた,保健省傘下の国立病院の医師も,保健省との間で賃上げ交渉が妥結し,現行賃金平均3,000ソル(約1,071米ドル)が,4,500ソル(1,607ドル)まで引き上げられることになったことで,29日ぶりにストライキを解除した。

 

(4)2013−2014年会期の国会委員長ポスト及び国会内会派議席数の決定

 9日,現国会3年目(2013−2014年)の国会内会派の議席数及び常設委員会委員長ポストが決定した(括弧内は委員長ポスト数)。 国民主義勝利するペルー会派(GP):43議席(8) 人民勢力会派(FP:フジモリ派):36議席(7) ペルー・ポシブレ会派(PP):10議席(2) 人民行動・拡大戦線会派(AP・FA):10議席(2) 国民連帯会派(SN):9議席(2) 地域同盟会派(UR):9議席(1) キリスト教人民・進歩のための同盟(PPC・APP):7議席(1) 協調会派(CP):6議席(1)

 

(5)フジモリ政権時代の人権侵害事件に対するやり直し裁判

 9日,客年9月に最高裁常設刑事法廷で取り消された,フジモリ政権時代の1991年から1992年の人権侵害事件であるバリオス・アルトス事件,エル・サンタ事件及びペドロ・ヤウリ事件への間接正犯としてのモンテシノス元国家諜報局(SIN)顧問及びエルモサ元三軍統合司令官並びに実行犯であるコリーナ・グループへの第二審(控訴審)のやり直し裁判の判決が下され,最高裁常設刑事法廷は,バリオス・アルトス殺戮事件,エル・サンタ失踪事件及びペドロ・ヤウリ新聞記者殺害事件の主犯格のほとんどに対し,リマ高裁第一特別刑事法廷で下された禁錮25年の刑を確認した。

 

(6)テロリスト幹部の死亡

 12日,軍と警察の合同オペレーションにより,アプリマク・エネ・マンタロ川渓谷地域(VRAEM)のセンデロ・ルミノソ(SL)の残党勢力で,SLの幹部の「アリピオ」ことアレハンドロ・ボルダ・カサフランカと「ガブリエル」ことマルコ・アントニオ・キスペ・パロミノを含む3名のテロリストが死亡した。今回のSL幹部死亡を受け,ウマラ大統領は,VRAEM地域のセンデロ・ルミノソ(SL)に対し組織的に大打撃を与えたことになるとコメントした。

 

(7)ウマラ大統領支持率

ア ダトゥム社:2日〜6日実施,全国(対象1200名) 支持 35%(39%)  不支持 58%(54%)

イ アポヨ社:13〜14日実施,全国(対象1200名) 支持 29%(33%)  不支持 62%(59%)

ウ Gfk社:19日及び20日実施,全国都市部(対象1250名) 支持 26%(32%) 不支持 67%(61%)

エ CPI社:26日〜31日実施,全国都市部(対象1450名) 支持 29.1%(35.9%) 不支持 66.8%(61.4%) 無回答 4.1%

3 外交

(1)リバス外相の国連安全保障理事会出席  

 6日,リバス外相は国連安全保障理事会に出席し,「国際的な平和と安全の維持のための国連と地域機関間の協力」と題する公開討論で南米諸国連合(UNASUR)議長国として同連合の立場を表明した。また発言の中でリバス外相は,UNASURが紛争の予防と論争の平和的解決の促進に寄与してきた点を強調した。

 

(2)南米諸国連合へのパラグアイの参加停止解除の通知

 9日,南米諸国連合(UNASUR)の議長国としてペルー外務省は,ルゴ大統領弾劾裁判後の客年6月29日より同連合への参加が停止されていたパラグアイの右参加権停止を8月15日より解除するUNASUR首脳審議会決議が採択された旨コミュニケを通じて発表した。今次解除は,オラシオ・カルテス候補(当時)が選出された先般の大統領選挙が正常に実施され,また同選挙に多くの国民が参加したことが確認されたことによる。

 

(3)EUとの査証免除に関するウマラ大統領とラホイ西首相との電話会談

 11日,ラホイ西首相は電話で,ウマラ・ペルー大統領及びサントス・コロンビア大統領と個別に会談し,ペルー人及びコロンビア人の欧州内の短期滞在に関し,査証を必要とするシェンゲン協定の対象国から外すことを要請するというスペイン政府の決定を,欧州委員会に対し通報する旨述べた。これに対して,欧州委員会は,欧州の査証政策の再考については,2014年となるであろう旨,欧州委員会筋は述べた。

 

(4)ウマラ大統領のパラグアイ大統領就任式出席

 15日,ウマラ大統領は,オラシオ・カルテス・パラグアイ大統領の就任式に出席した。同式典には,フェルナンデス亜大統領,ルセーフ伯大統領,ピニェラ・チリ大統領,ムヒカ・ウルグアイ大統領,フェリペ西皇太子も出席し,ペルーからはリバス外相も出席した。

 

(5)リバス外相及びシルバ通商観光相の太平洋同盟外務大臣及び通商大臣会合出席

 25日及び26日,リバス外相及びシルバ通商観光相は,メキシコ(カンクン)で開かれた太平洋同盟4ヶ国の外務大臣及び通商大臣に出席した。同会合では,5月にカリで行われた首脳会合の際に作成された太平洋同盟枠組み協定追加議定書にかかる交渉が行われた。会合の中でリバス外相は,太平洋同盟が目指す本質である統合という点について強調すると同時に,今次成果はペルーにとっては近い将来具体的な利益となる旨強調した。

 

(6)ウマラ大統領の第7回南米諸国連合首脳会合出席

 8月30日及び31日,ウマラ大統領はスリナムで開催された第7回南米諸国連合(UNASUR)首脳会合に出席した。ウマラ大統領は,今次会合で,議長国をスリナムに引き継ぐとともに,ペルーが同連合の議長を務めた期間(2012年6月29日〜2013年8月30日)の報告書を提出し,右期間には,不平等の解消に向けて各国の力を集中させてきた点を強調した。

 


法的事項 | アクセシビリティについて | プライバシーポリシー |