ペルー政治情勢 2013年

9月の内政と外交


1 概要
(1)国会では外交委員会でイロ協定の補完議定書が承認された他,保健省傘下の医療従事者に対する新賃金法が公布された。

(2)国内では,ペルー労働者総連による全国レベルの抗議活動が発生した他,アレキパ州沖地震により同州を含む南部3州が被災した。

(3)外交面では,ウマラ大統領が第68回国連総会に出席し演説を行った他,オーストリア,スペイン,チリの首脳と会談した。リバス外相は,国連総会のマージンで,ブラジル,韓国,カナダの外相と二国間会談を行った。

(4)チリとの領海境界線画定裁判の判決の2014年への延期が伝えられた。

2 内政
(1)イロ協定の補完議定書の国会外交委員会通過

 9日,国会外交委員会は,ボリビアに対してイロ港を通じた太平洋へのアクセスを認めるイロ協定,通称「ボリビアマール」を承認した。本協定については,2010年10月19日にガルシア大統領(当時)とモラレス・ボリビア大統領との間でボリビアに対し海への出口を許可する等の内容を盛り込んだ,イロ協定補完・拡張議定書への署名が行われていたが,それ以来3年,ペルー国会での承認の審議が進退を続けてきた。今後,国会本会議で承認に向けた審議が行われる予定である。

 

(2)保健省傘下の医療従事者の賃金改正
 13日,保健省傘下の医療従事者の新賃金法が公布され,外科医を含む計12種の右医療関係者に対して9月より新賃金体系が適用されることが決定した。外科医については,全5レベルで平均約40%上昇し最大で5,330ソル(約186,550円)が支払われる他,歯科医(口腔外科医),薬剤師,産科医,看護師,臨床検査技師,細胞検査士,精神科医,衛生士,獣医,栄養士,社会福祉士については,最大で約3倍となり2,799ソル(約98,000円)が支払われる。また,保健省及び地方州政府傘下のプライマリー・ケア施設(入院設備を持たない医院もしくは診療所)における勤務促進のために,同医療施設に勤務する外科医には10月より更に450ソル,これ以外の上記11種の医療関係者については350ソルが上乗せされる。

 

 

(3)フルカ議員の議員資格停止
 19日,国会本会議は,2011年に親族であることを隠匿して義理の娘の国会顧問への就職を斡旋した件で,フルカ議員(ペルー・ポシブレ会派)の120日間の議員停止を決定した。

 

 

(4)第二次ガルシア政権調査委員会の活動に対するリマ高裁判決

 20日,リマ高裁第5憲法法廷は,本年6月21日に,ガルシア前大統領が,国会第二次ガルシア政権調査委員会の活動停止を求め,同法廷に対し行った庇護請求の一部を認める判決を下した。ガルシア前大統領は,同調査委員会が,国会への同前大統領の召喚に際して召喚理由等を明らかにせず,ガルシア前大統領の基本的権利を侵害しているとして庇護請求を行っていた。

 

 

(5)アレキパ州沖における地震発生

 25日午前11時42分,南部アレキパ州沖(リマ市南約650kmの海底,震源の深さ37km)で,マグニチュード6.9の地震が発生し,アレキパ州を中心に国内11州で揺れを感じた。今次地震による死者は確認されなかったものの,負傷者16名,997名が家屋損壊等の被害を受けた他,学校や病院等の公共施設でも建物損壊の被害が報告された。これに伴い,被害の大きかったアレキパ州,イカ州,アヤクチョ州では,27日,60日間の非常事態宣言が発令された。

 

 

(6)ペルー労働者総連による抗議活動
 26日,国内各地で,ペルー労働者総連(CGTP)による抗議活動が発生し,リマ市では4千人以上が大統領府に向かってデモ行進を行った他,トルヒーリョ市等では道路封鎖が行われた。なお,今般,CGTPが提示した抗議文書の内容は多岐に亘り,市民サービス法の廃止,最低賃金の引き上げの他,経済政策の転換,カスティーヤ経済財政相の辞任,南米諸国連合の強化,治安,漁業問題等を含む34の項目に及び,労組が目指す本来の労働に関わる要求に限らず,政治的な要求が含まれた。

 

 

(7)ウマラ大統領支持率(括弧内は前月結果)
ア ダトゥム社:8月30日〜9月3日実施,全国(対象1200名)
 支持 32%(35%) 不支持 62%(58%)
イ アポヨ社:10〜11日実施,全国都市部(対象1200名)
 支持 27%(29%) 不支持 67%(62%)
ウ Gfk社:23〜25日実施,全国都市部(対象1241名)

 支持 26%(26%) 不支持 69%(67%)



3 外交

(1)シンガポール外相兼法相の当地訪問
 12日,K・シャンムガム・シンガポール外相兼法相が当国を訪問し,リバス外相と二国間関係の強化に向けた会談を行った。同会談では,教育,科学,技術,観光分野での協力の強化,貿易及び投資の促進を始めとする両国の関心問題について話し合いが行われた他,ASEAN,APEC,TPP及び太平洋同盟についても触れられた。なお,シンガポールの外相の当国訪問は,33年間に及ぶ両国の外交関係の中で,今回が初である。

 

(2)第12回ペルー・エクアドル隣国委員会会議

 17日,ペルー外務省にて,第12回ペルー・エクアドル隣国委員会会議が開催され,リバス外相及びパティーニョ・エクアドル外相率いる代表団が出席した。同会議では,近年両国間で実施している二ヶ国計画について触れた他,両外相により,保健,社会的安全,教育,インフラの他,エネルギー統合,人身売買,貿易交流等の連携分野について取り決めた最終報告書への署名が行われた。

 

(3)アンデス共同体外務及び通商大臣会合

 19日,ボリビア,コロンビア,エクアドルの外務大臣及び通商大臣出席の下,CANの外務及び通商大臣会合がリマのアンデス共同体(CAN)本部において開催された。今次会合で,ペルーは2013−2014年期のCAN議長国に就任した。同会合で議長国を引き継いだリバス外相は,ペルーがアンデス地域の統合に向けて指導的立場を担って行く決意を表明した。

 

(4)ウマラ大統領の第68回国連総会出席

 22日〜27日,ウマラ大統領は,第68回国連総会出席のためニューヨークを訪問し,25日には一般討論演説を行い,シリア情勢を含む昨今の国際情勢について触れた他,国連安保理の改革と拡大の必要性を主張した。また,ウマラ大統領は,ニューヨーク滞在中,太平洋同盟ビジネス会合に出席した他,オーストリア,スペイン,チリの首脳との二国間会談,李国連鉱業開発機構(UNIDO)事務局長,バローゾ欧州委員会委員長,モレノ米州開発銀行(IDB)総裁とも個別に会談した。なお,今次訪問には,ナディン・エレディア大統領夫人の他,閣僚からはリバス外相,プルガル環境相,カスティーヤ経済財政相,及びサラス教育相が同行した。

 

(5)国連総会におけるリバス外相と各国外相との会談
 27日,第68回国連総会出席のためニューヨークを訪問したリバス外相は,同総会のマージンでブラジル,韓国,カナダの外相と二国間会談を行い,各国との関係強化に向けた話し合いを行った。また同日,リバス外相は,米州協会のセガル氏とも会談し,社会的包摂,開発,経済,女性の権利促進等の分野におけるペルー政府と同協会との協力の詳細について調整を行った他,国連総会のマージンで開かれた南米諸国連合(UNASUR)の会合にも出席した。

 

(6)ペルー・チリ領海境界線画定裁判判決延期
 28日,チリの「ラ・テルセラ」紙は,国際司法裁判所(ICJ)が,ペルー・チリ領海境界線画定裁判の判決を2014年1月以降に延期する旨,両国の在オランダ大使館を通じて伝えた旨報じた。同紙によると,今次延期の背景には,11月に行われるチリの大統領選挙が間近に迫っていること及びICJが業務過多にあることが影響しているとしている。ICJが判決延期を通知するのは,7月10日に続いて,これで二回目である。右報道を受け,30日,リバス外相は,ペルー外務省に対してICJからの公式情報は届いておらず,判決の日付は未だ決まっていないと,右報道内容を否定した。

 


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