ペルー政治情勢 2013年
11月の内政と外交
1 概要
(1)ペドラサ内相が辞任し,後任にアルバン新内相が就任した。
(2)ビヤヌエバ首相が国会にて所信表明演説を行い,信任投票の結果,信任された。
(3)リマ市議会議員の補欠選挙が行われ,右派のキリスト教人民党が市議会第一党となった一方,ビリャラン市長の属する「祖国と尊厳」は議席を大幅に減らし少数与党となった。
(4)国会では,二院制への移行にかかる法案が国会憲法条例委員会で承認。
(5)外交面では,ルセーフ伯大統領,ホンジュラス外相が当地訪問した他,北部ピウラ市ではコレア大統領を迎え第7回ペルー・エクアドル合同閣議が開催された。また,カテリアノ国防相が韓国を訪問。
2 内政
(1)内相の交代
15日,ペドラサ内相が辞任を表明し,19日に後任としてアルバン(Walter ALBAN Peralta)米州機構ペルー常駐代表が新内相に就任した。今次ペドラサ内相の辞任にあたっては,フジモリ政権時における種々の犯罪への関与で収監中のモンテシノス元国家諜報局顧問の関係者であったロペス・メネセス(元フジモリ派顧問)の集合住宅に対し,国家警察が警察官を過剰に配置して警備を行っていた件で,政府に批判が集まり,ペドラサ内相は14日,国会に召喚されていた。また,本件に関係しては,警察幹部の交代や内務副大臣も辞任するなど,本件をめぐる警察のスキャンダルで関係者の辞任が相次いだ。
(2)ビヤヌエバ首相の所信表明演説
20日,前月31日に就任したビヤヌエバ首相が国会にて所信表明演説を行い,質疑応答の後,21日未明,同内閣は賛成74票,反対39票,棄権1票で信任された。同首相演説は5つの基本方針(治安,汚職との闘い,国土開発及び公共投資,社会的包摂,対外関係)に触れ,特に今般の国家警察のスキャンダルに端を発した内相辞任の事態を受け,所信表明演説の内容は治安問題・警察改革に重点が置かれた。
(3)リマ市会議員補欠選挙
24日,本年3月17日に行われたリマ市議会議員リコール投票の結果,退任が決定した22名の市議会議員の補欠選挙が行われ,今般7議席を獲得したキリスト教人民党(PPC)が,リマ市議会(市長を含む総議席40)において17議席を有する議会第一党となった。次いで今般6議席を獲得したソモス・ペルー党が総議席数を7に拡大。また,2議席を獲得したペルー・ポシブレ党と「恒常的団結」,「祖国と尊厳」がそれぞれ総議席数を3とした他,人民行動党(2議席),人道党(1議席)が新たに市議会に参入した。他方,今次選挙では,ビリャラン・リマ市長の旧社会勢力党を含む「祖国と尊厳」は,2議席を獲得したのみで,リコール選挙で失った議席を回復するには至らず総議席数3と少数与党となった。またこの他,国家復興党(2議席),急進的改革党(1議席)も新たな議席獲得に至らず現状維持に留まった。
(4)国会憲法条例委員会における二院制への移行法案承認
26日,国会憲法条例委員会は,上院の設置による二院制への移行法案を賛成多数で可決した(賛成9票,反対4票(人民勢力会派))。本法案は,今後国会本会議で承認される必要があるが,二院制への移行は,一院制を規定する現行憲法90条を改正することを要する。憲法改正には,議員定数の2/3以上(87票)の賛成を,本会議において二年連続して得る必要がある。
なお,二院制により新設される上院は,全国一区の非拘束式比例制で定数は60名,下院は現国会と同じ州毎の非拘束式比例制で選出される選挙システムで定数は130名である。なお,上院の被選挙権は35歳以上,下院の被選挙権は25歳以上で,前・元大統領には終身上院議員の資格が与えられる。また,上院と下院の機能に関しては,憲法99条等を改正し,下院は,議員立法及び行政府の提案する行政法案を審議し,上院は下院の検閲機能を果たすと共に,憲法裁判事,人権擁護官,国家会計検査官,中銀理事及び銀行保険年金監督官等の公職ポストの選出を担当する機能を有することとなる他,上院は大統領及び大臣等の政府高官の外遊の許可も担当する。
(5)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回結果)
ア CPI社:10月29日〜11月3日実施,全国主要都市(対象1450名)
支持 26.0%(29.1%) 不支持 71.4%(66.8%) 無回答 2.6%
イ ダトゥム社:11月1日〜5日実施,全国(対象1202名)
支持 35%(30%) 不支持 60%(63%)
ウ アポヨ社:13〜15日実施,全国都市部(対象1197名)
支持 27%(26%) 不支持 64%(66%)
エ Gfk社:18〜20日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1234名)
支持 23%(24%) 不支持 71%(71%)
3 外交
(1)ルセーフ伯大統領の国賓訪問
11日, ペルーを国賓訪問したルセーフ伯大統領は,ウマラ大統領と会談した。首脳会談後には,両国閣僚が参加し拡大首脳会談が開かれ,この10年間のペルー・ブラジル戦略連携の進捗を強調した共同宣言を行った。同共同宣言では,石油化学,インフラ,公共輸送機関,エネルギー産業,農業拡大,ブロードバンド,光ファイバー及びローミングの統合,港湾及び空港の近代化について言及した他,国民に薬剤を届ける人民薬局計画についても触れられた。また,両国は社会政策関連省間の交流関係を強化する点で一致するとともに,今般,水質管理協定,労働分野における二国間の経験共有及び協力拡大,両国国境地帯における携帯電話での国際電話への国内料金の適用に関する協定への署名を行った。
(2)第7回ペルー・エクアドル合同閣議の開催
14日,ペルー北部ピウラ市において,第7回ペルー・エクアドル合同閣議が,ウマラ大統領及びコレア・エクアドル大統領が出席して行われ,同閣議において,両国は治安,電化,保健等に関する合意書に署名した。ウマラ大統領は,両国が双方の発展推進のために共に調整し活動していることは,ラ米及び全ての世界に向けた模範となる旨主張。コレア大統領も軍事紛争を行った国同士が,あたかも一つの国の閣議のように合同閣議を毎年開催するような経験をしたことはこれまで例がないとコメントした。
(3)ホンジュラス外相の当国訪問
13日より,当国を公式訪問していたアグエロ・デ・コラレス・ホンジュラス外相は,15日にリバス外相と会談し,両国間の観光査証免除に関する合意書に署名した。また,両外相は,エネルギー・鉱山といった分野における政策対話及び協力の強化の意思の重要性を表明すると同時に,知見の交換を促進・推進するためのホンジュラス共和国地質学・鉱物庁(INHGEROMIN)及びペルー共和国エネルギー鉱山省による機関間協力合意書に署名した。
(4)カテリアノ国防相の韓国訪問
26日より韓国を公式訪問したカテリアノ国防相は,27日,治安及び防衛分野における二国間の協力強化を目指し,キム韓国国防相と会談した。同会談では,二国間の共通課題,特に2012年に両国政府により署名が行われたKTー1P型航空機の共同制作にかかる協定の進捗について言及。また,キム韓国国防相は,両国は双方の利益のために防衛分野における協力(兵器の販売を含む)を強化することで一致している旨述べるとともに,ペルーは韓国製品をラテンアメリカの防衛市場に流通させるための中心基盤となる点を強調した。さらに,韓国政府は,ペルーに対する兵器の販売と近代化への韓国企業の更なる参入を要請した。
|