ペルー政治情勢 2013年
12月の内政と外交
1 概要
(1)国会では二年半近く空席であった中銀理事3名の選出が行われた。
(2)国会第二次ガルシア政権調査委員会は,ガルシア前大統領が第二次政権期に,麻薬取引に関連した罪で服役中の犯罪人に対して,不当に減刑・恩赦を行ったとする問題で,同前大統領の憲法違反を告発する報告書を賛成多数で可決。
(3)与党国民主義党は,新党首にナディン・エレディア大統領夫人を任命。
(4)外交面では,チリとの領海境界線画定にかかるICJ裁判の判決公判が1月27日に行われる旨発表された。
(5)リバス外相がスペインを訪問。
(6)チリとの領海境界線画定ICJ判決に向けて,首相と政党の代表との会合が開催。
2 内政
(1)中銀理事の選出
12日,国会本会議にて,中銀(BCR)理事の選出が行われ,グスタボ・ヤマダ(パシフィコ大学経済学部長), エドゥアルド・ゴンサレス(元農業大臣(2003−2004年)),ドラゴ・キシック(コンサルタント会社Macroconsult理事)の3名が決定した。これにより2011年より二年半近く空席であった中銀理事ポストが埋まり7名全ての理事が揃った(任期は2016年7月28日まで)。
(2)国会会期の延長
12日,国会本会議は,懸案事項の審議のため(当初は12月15日までのところ)明年1月7日までの会期延長を決定した。
(3)国会第二次ガルシア政権調査委員会報告書
18日,国会第二次ガルシア政権調査委員会(委員長は与党のテハダ議員)は,ガルシア前大統領が第二次政権期に,麻薬取引に関連した罪で服役中の犯罪人に対して,不当に減刑・恩赦を行ったとする問題(通称narcoindulto)で,同前大統領の憲法違反を告発する報告書を賛成多数で可決。これを受けガルシア前大統領は,右結果に疑問を呈するとともに,公平性に欠けると主張。加えて,自身の2016年大統領選出馬を阻止し,大統領夫婦再選を達成するための与党の戦略が背後にあると批判。アプラ党執行部も不満を表明し,アプラ党の政治参加資格を剥奪しようとするのであれば,本件を米州人権裁判所に訴える構えである他,街頭で大規模な抗議活動を行うことも考えている旨表明。
(4)ウルテチョ議員の解任
18日,国会本会議は,10月より120日間の議員停止にあった国民連帯会派のウルテチョ議員(現国会一年目の国会第三議長)の解任並びに10年間の公民権停止を賛成多数で可決。また国会本会議は,同議員を公金横領及び不正蓄財の疑いで起訴することを決定。なお,同議員の欠員として,国民連帯会派は,ロサ・ヌニェス氏(アクーニャ・トルヒーヨ市長の元妻)の登用を決定した。
(5)与党国民主義党新党首の任命
30日,与党国民主義党は,第三回党大会において,新党首に任命されたナディン・エレディア大統領夫人の宣誓式を実施。同夫人を党首に任命したウマラ大統領は,同日,出席者に対して,これまでは大統領自身が党首を務めていたが,大統領職との関係で党首を続投するのが困難である旨説明した。ナディン夫人は,ツイッター上で,大統領に対して謝意を表すると共に,党首としての仕事と大統領夫人としての任務を混同することはない旨表明。
(6)大統領支持率(括弧内は前月)
ア CPI社:11月26日〜12月1日実施,全国主要都市(対象1450名)
支持 26.5%(26.0%) 不支持 69.8%(71.4%)
イ ダトゥム社:11月30日〜12月4日実施,全国(対象1204名)
支持 31%(35%) 不支持 61%(60%)
ウ アポヨ社:10〜11日実施,全国主要都市(対象1663名)
支持 25%(27%) 不支持 69%(64%)
エ Gfk社:16〜18日実施,全国主要都市(対象1272名)
支持 22%(23%) 不支持 73%(71%)
3 外交
(1)リバス外相のスペイン訪問
10〜11日,スペインを訪問したリバス外相は,ガルシア・マルガージョ外務・協力相と会談。同会談の中で両外相は,2013年はラホイ西首相のペルー訪問時に二国間の戦略協定の刷新計画への署名が行われるなど,両国の関係が再強化されるとともに,二国間関係が非常に高いレベルに達していることを確認した。また,本会談では,シェンゲン圏内(欧州26カ国)へのペルー人の入国に必要な短期滞在ビザの免除,経済・貿易関係,太平洋同盟,及び二国間協力等について話し合いが及んだ。
(2)ペルー・チリ領海境界線確定にかかるICJ判決日の発表
13日,国際司法裁判所(ICJ)は,ペルー・チリ領海境界線画定裁判の判決読み上げを2014年1月27日午後3時(ペルー時間の午前9時)にハーグの同裁判所にて行う旨発表。これを受け,ウマラ大統領及びリバス外相は,当日はハーグへは行かず,判決を国内で聞く旨表明した。
(3)ウマラ大統領からのバチェレ・チリ次期大統領に対する祝意表明
15日,ウマラ大統領は,チリの次期大統領に選ばれたミチェル・バチェレ氏に対して祝意を伝えると同時に,2014年3月に始まる新政権における同氏の成功を祈念する旨伝えた。併せて,両国民が信頼関係の中で,友好,統合,協力に基づく両国の関係作りに共に取り組んでいく意志を伝えた。
(4)ロシアからのヘリコプター購入
17日,ペルー政府は,両国の政府間協力に基づき,ロシアからのMI−171型ヘリコプター24機(総額約4億ドル)の購入手続きを完了。今回購入した機器は,アプリマック・エネ・マンタロ川渓谷(VRAEM)地域における軍の活動で使用される。また併せて,ロシア政府の協力により,ペルー人パイロット養成のための訓練所が設置される他,機器のメンテナンス及び修繕施設も建設される。
(5)チリとの領海境界線画定にかかるICJ判決に向けた会合
24日,主要政党の代表者10名は,ICJ判決に向けた団結と支持を求める会合を開催。同会合の参加者は,判決後は個別の声明を避け,行政府がペルー側の方針を宣言して以降,各政党のスポークスマンを通じて行うことで合意した。同会合には,アプラ党,キリスト教人民党,ペルー・ポシブレ党,進歩のための同盟,人民勢力党,ペルー・マス,新左派連合,国民連帯党,人民行動党,社会主義党の代表が参加。
また27日には,ビヤヌエバ首相が,ICJ判決に向けて国民の団結と信頼を固めるために,リバス外相及びワグネルICJ担当大使と主要政党の代表との会合を開催。同会合には15の政党及び政治グループの代表が参加(24日に参加した政党の他,与党国民主義党,人道党,ソモス・ペルー他の政党が参加)。参加者は,会合後,判決の遵守と政府への支援を約束する宣言に署名した。
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