ペルー政治情勢 2014年
3月の内政と外交
1 概要
(1)コルネホ首相の所信表明演説が行われ,新内閣が重点的に取り組むべき点として教育,保健,治安,投資促進の4つを掲げた。同内閣は国会における3度目の投票で信任された。
(2)リマ市のラ・ビクトリア区にある旧中央卸売市場が完全に閉鎖し,取壊し作業が行われた。
(3)違法鉱山業者による抗議活動がリマ他,国内各地で行われた。
(4)ウマラ大統領はバチェレ・チリ大統領就任式出席のためにチリを訪問。
(5)ペルー・チリ領海境界線の基点の確定にかかる一連の作業が終了した。
(6)リバス外相は,チリで開催された南米諸国連合(UNASUR)緊急首脳会合に出席した。
(7)ミード墨外相が当地を訪問し,第9回ペルー・メキシコ政策協議会合が開催された。また,マチャド・ベネズエラ野党議員が訪問し,与党を除く国会外交委員会メンバーとの会合を行った。
(8)左腕の麻痺を訴えたフジモリ元大統領は,検査の結果,軽度の脳梗塞にあることが判明した。
2 内政
(1)コルネホ首相の所信表明演説及び信任投票
14日,国会本会議にて,コルネホ新内閣の所信表明演説が行われ,17日に行われた通算3度目の投票により,右内閣が信任された(賛成:66票,反対:52票,棄権:9票)。演説の中でコルネホ首相は,同内閣が重点的に取り組むべき点として,教育,保健,治安,投資促進の4つを掲げた。
(2)旧中央卸売市場の完全閉鎖
16日,2012年10月に移転が開始された,リマ市ラ・ビクトリア区の中央卸売市場「ラ・パラーダ」の完全閉鎖が完了し,リマ市によって旧卸売市場の取壊し作業が行われた。移転開始後も旧市場に残っていた卸売人の大部分は,サンタ・アニータ区の新卸売市場に移転したが,一部の卸売人は,閉鎖された旧卸売市場の周囲や向かいの小売市場で商業活動を行うことになった。旧卸売市場跡地は,今後公園として整備される計画で,年内(9月頃まで)には完了予定。
(3)違法鉱山業者による抗議活動
20日〜27日,違法鉱山業者の合法化にかかる手続き期間(4月19まで)の延長を求めて,プノ州及びマドレ・デ・ディオス州出身の違法鉱山労働者等がリマ市内において抗議活動を展開し,暴徒化した一部の労働者と治安部隊との衝突により,逮捕者及び負傷者が発生した。また,同時期にイカ州,アレキパ州,プノ州でも鉱山労働者による道路封鎖等が行われた。
(4)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回結果)
ア ダトゥム社:2月28日〜3月5日実施,全国(対象1200名)
支持 24%(39%) 不支持 71%(56%)
イ アポヨ社:11日〜14日実施,全国都市部(対象1206名)
支持 25%(33%) 不支持 70(60%)
ウ Gfk社:18〜19日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1297名)
支持 20%(21%) 不支持 76%(71%)
3 外交
(1)シプリアーニ枢機卿のバチカン経済審議会メンバー就任
9日付当地各紙は,シプリアーニ枢機卿がバチカン経済審議会のメンバーに任命された旨報じた。本年新設された同経済審議会は,8名の枢機卿と7名の世俗の代表から構成され,任期は5年となっている。経済審議会のメンバーは, 定期的に会合を開き,バチカンの経済活動に関する報告書の作成や分析を行う。最初の会合は5月に予定されている。
(2)ウマラ大統領のチリ訪問
10〜11日,ウマラ大統領は,バチェレ・チリ大統領就任式出席のためチリを訪問し,バチェレ大統領の他,同就任式出席のためにチリを訪問したバイデン米副大統領,タヤーニ欧州委員会副委員長と個別に会談した。バチェレ大統領との会談では,両国が将来に向かって二国間関係を強化することで一致した他,両国の領海境界線画定にかかるICJ判決で両国が約束した,判決の履行を引き続き進めていく意志を確認した。バイデン米副大統領との会談では,両国の治安・防衛分野における協力にかかる新たな合意書の精査を行った。タヤーニ欧州委員会副委員長との会談では,ペルー国民に対するシェンゲン・ビザ免除に向けた支援について言及した他,欧州及びペルーの中小企業の国際化,インフラ分野における欧州の対ペルー投資の促進,観光面における協力,及び衛星分野における双方の協力強化について話し合った。
(3)リバス外相の南米諸国連合外相会合出席
12日,リバス外相は,チリで開催された南米諸国連合(UNASUR)緊急首脳会合に出席した。ベネズエラ情勢について話し合うべく開かれた同会合では,ベネズエラの政治勢力間の対話を支援するための委員会の創設を決定した。
(4)ミード墨外相の当地訪問
21日,メキシコのミード外相が当地を訪問し,当国外務省にて,両国の関係強化に向けた政治的対話及び協力の強化を目指す第9回ペルー・メキシコ政策協議会合が開催された。会合後,両外相は,二国間関係における共通目標及び様々な合意事項を盛り込んだ共同宣言を発表した。また,同日夜ミード墨外相は,ウマラ大統領と会談し,両国の発展と貿易関係促進に向けた政治的対話を通じた二国間関係と協力促進を強化する,ペルー・メキシコ戦略的連携協定について話し合いを行った。
(5)ペルー・チリ領海境界線画定作業の終了及び報告書への署名
25日,2月17日より行われたペルー・チリ領海境界線画定にかかる一連の作業が終了し,ペルー外務省にて,両国の代表者が,右共同作業の結果確定した領海境界線の経緯度を示した作業報告書への署名を行った。また,今般ICJが決定した領海境界線の始点(PIFM)から基点A,B,Cを通る領海境界線の製図方法を示した地図が承認された。右地図には,領海境界線のコースと両国それぞれの海岸の基準点とその経緯度が示されている。今後は正式な登録を行うために右文書を国連に送り,最終的に全ての手続きが終わった時点でICJに通知することになる。
(6)コリーナ・マチャド・ベネズエラ野党議員の当地訪問
25日,ペルーを訪問したマリア・コリーナ・マチャド議員は,ペルー国会にて,マルティン・ベラウンデ国会外交委員会委員長を始めとする同委員会に属する各会派の議員との非公開会合に出席した。同会合でマチャド議員はベネズエラの悲惨な状況について説明すると同時に自身が未だベネズエラの国会議員であり続けている旨述べた。なお,今般,与党国民主義党だけが右会合にも参加しなかった上,与党のオタロラ国会議長は,マチャド議員からの会談の要請を他用を理由に受けなかった。 |