ペルー政治情勢 2014年
4月の内政と外交
1 概要
(1)最高検察庁で次期検事総長選挙が行われ,互選によりラモス・エレディア最高検検事が選出された。
(2)テロ組織センデロ・ルミノソから派生した組織MOVADFの幹部等28名が逮捕された。
(3)人民勢力党(フジモリ派)の新幹事長にハイメ・ヨシヤマ氏に代わり,ホアキン・ラミレス人民勢力党議員が就任。
(4)外交関係では,ウマラ大統領がカナダ,パナマ,コロンビアを訪問。当地へは,アブダッラーUAE外相,ラヴロフ露外相が訪問。
(5)当地では,南米アラブ諸国(ASPA)保健大臣会合,ASPA女性リーダーズ会合,及び太平洋同盟第一回オブザーバー国との会合が開催された。
2 内政
(1)チリ北部沖地震によるペルー南部被害
1日,チリ北部のタラパカ州沖で発生したマグニチュード8.2の地震の影響により,ペルーでは同日(当地時間18時46分),南部のタクナ州,モケグア州,アレキパ州,プノ州において揺れを観測した。右3州では地震後一部の地域で一時停電した他,数名の負傷者,家屋・公共施設損壊等の被害が報告されたものの,大きな人的物的被害は報告されなかった。
(2)ラモス・エレディア新検事総長の選出
9日,最高検察庁にてペラエス検事総長の任期満了に伴う次期検事総長選挙が行われ,互選によりラモス・エレディア最高検検事(ナディン・エレディア・ウマラ大統領夫人の又従兄弟)が新検事総長に選出された。新検事総長の就任式は5月12日に行われ,任期は2017年までの3年間である。
(3)収監中テロリストの一般刑務所への移監請求の棄却
9日,憲法裁判所は,現在収監中であるトゥパク・アマル革命運動(MRTA)リーダーであるビクトル・ポライら4名のテロリストの一般刑務所への移監請求を棄却する判決を下した。本件については,リマ高裁が3月,右請求を認める判決を下したが,国家刑務所庁(INPE)は,右判決を不服として,憲法裁に上訴していた。
(4)MOVADEF幹部等の大量逮捕
9日,国家警察テロ対策局は,テロ組織センデロ・ルミノソ(SL)から派生した組織「恩赦と基本的権利のための運動(MOVADEF)」の幹部等28名をテロ犯罪等の容疑で逮捕した。今般の逮捕者の中には,アビマエル・グスマンの弁護人でありMOVADEFのリーダーであるアルフレド・クレスポ弁護士の他,地方の教職員労働組合のメンバー等も含まれている。逮捕容疑はそれぞれ異なるが,テロ組織に属する罪,マネーロンダリングに関する罪及びテロ組織に協力した罪等で,アルバン内相によると,今次逮捕者の多くが20〜25年の懲役を言い渡されることになる。
(5)フジモリ派新幹事長の就任
27日,人民勢力党の党執行委員会(CEN)メンバーの選出が行われ,新幹事長にはハイメ・ヨシヤマ氏に代わりホアキン・ラミレス議員の就任が決定した。新CENには,ラミレス議員の他,ケイコ党首が信頼を置く5名の人民勢力党議員が含まれている。人民勢力党は,このメンバーで本年の統一地方選挙及び2016年の大統領選挙に挑むことになる。
(6)ウマラ大統領支持率(括弧内は前回結果)
ア CPI社:3月29日〜4月2日実施,全国主要都市(対象1450名),誤差±2.6%,信頼度95.5%
支持 21.2%(40.7%) 不支持 74.5%(51.8%)
イ ダトゥム社:4月4日〜8日実施,全国(対象1200名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持 28%(24%) 不支持 67%(71%)
ウ アポヨ社:13〜16日実施,全国都市部(対象1216名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 24%(25%) 不支持 68%(60%)
エ Gfk社:21日〜23日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1296名),誤差±2.7%,信頼度95%
支持 20%(20%) 不支持 75%(76%)
3 外交
(1)南米アラブ諸国首脳会議(ASPA)保健大臣会合及び女性リーダーズ会合の開催
2〜4日,当地にてASPA保健大臣会合が開催され,両地域の27ヵ国の保健大臣が,プライマリー・ケア及び地域医療について意見交換を行った。同会合では保健分野に関する共同宣言が提出された。
また,7〜9日には,ASPA女性リーダーズ会合が開催され,32ヵ国の代表が参加し,女性の権利や女性の状況について話し合いが行われた。同会合参加者は,世界における女性の政治的,社会的,経済的進出を促進させることで合意した。
(2)太平洋同盟第1回オブザーバー国との会合
7〜8日,当国外務省にて,第1回太平洋同盟オブザーバー国との会合が開催され,太平洋同盟のメンバー国代表が,オブザーバー国のうちスペイン,日本,中国,カナダ,オーストラリア,米国,フランス,ニュージーランド,韓国の代表と個別の会合を開き,共同で取り組むことが可能な協力や計画について意見交換を行った。
また,9日には,ペルー外務省及び通商観光省から副大臣が出席し,高級実務者(GAN)会合が開催され,これまで実施された取り組みについての報告書が提出されると共に,6月の次期首脳会合までに実施すべきフォローアップ事項が提出された。
(3)ウマラ大統領のカナダ訪問
8日〜12日,ウマラ大統領は国賓としてカナダを訪問し,ハーパー首相,ジョンストン総督他との会談を行った。なお,今次訪問には,ナディン・エレディア大統領夫人,リバス外相,カテリアノ国防相,シルバ通商観光相,プルガル・ビダル環境相の他,教育副大臣及びエネルギー鉱山副大臣が同行した。9日に行われたジョンストン総督との会談では,教育,科学技術,社会保障分野における協力について話し合いが行われた。また,10日にはハーパー首相と会談し,教育,科学,技術,及び防衛分野における協力について協議した。
(4)フランスからの地球観測衛星の購入
24日,ペルー政府は,フランスとの政府間メカニズムを通じて,当国史上初となるサブメートル級地球観測衛星を5億9700万ソルで購入した。本衛星は,自然災害や地震等の災害,違法鉱業,違法漁業,森林破壊,及びあらゆる違法活動に対する対策の強化に資するものであり,2016年5月に打ち上げが予定されている。
(5)ウマラ大統領のパナマ訪問
28日,パナマを公式訪問したウマラ大統領は,マルティネリ大統領と両国の統合及び協力に関するテーマについて会談を行った。同会談では,ペルー海軍工業局(SIMA)のパナマ運河進出に向けた両国の協力協定の促進について触れた他,太平洋同盟の進展や強化についても話し合いが行われた。また,2012年5月に発効した両国の自由貿易協定についても言及し,ウマラ大統領は,パナマを通じた中米との統合への決意を再確認した。
(6)ウマラ大統領のコロンビア訪問
29日,ウマラ大統領は,第27回ボゴタ国際図書展の開幕式に出席するためコロンビアを訪問した。今般ペルーは右図書展に特別招待国として参加した。また,開幕式の前に,ウマラ大統領はサントス・コロンビア大統領との会談を行った。
(7)アブダッラーUAE外相の当国訪問
30日,アブダッラーUAE外相が当国を公式訪問し,ウマラ大統領及びリバス外相と会談した。ウマラ大統領との会談では,二国間関係の強化と両国の投資及び貿易分野における協力に向けた話し合いが行われた。また,リバス外相との会談では,二国間の主要課題として,特に投資や貿易振興について対話を行った。
(8)ラヴロフ露外相の当国訪問
30日,ロシアのラヴロフ外相が,当国を公式訪問し,ウマラ大統領及びリバス外相と会談を行った。今次訪問は,秘露外交関係樹立45周年を記念して行われたものである。ウマラ大統領との会談では,軍事技術,教育,科学技術,薬物の不法取引の統制等における協力について話し合いが行われた。リバス外相との会談では,教育,軍事技術協力の分野についての協力の強化について対話が行われた。また,リバス外相は,ロシアとの自由貿易協定の締結を提案した他,両国間の経済関係強化を目的にモスクワにペルー貿易事務所を開設した旨述べた。
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