ペルー政治情勢 2014年

7月の内政と外交


1 概要
(1)行政府では,コルネホ首相の辞任に伴う内閣改造が行われ,ハラ新内閣が発足した。新労働雇用促進相には,国会議長を務めていたオタロラ与党議員が就任した。

(2)国会では,与党6議員が与党会派を離脱し,新たに「尊厳と民主主義」会派を結成した。国会執行部選挙が行われ,与党のソロルサノ議員が新国会議長に就任した。

(3)政権4年目に向けて,教育,保健,治安に力点を置いた,大統領教書演説が発表された。

(4)外交面では,チリとの領海境界線画定にかかる国内法の整備の一環として基線法の改正が行われた。

(5)ウマラ大統領は,独,伯,墨を訪問し,伯では習近平中国国家主席他と会談した。

2 内政

(1)新大学法の公布
 8日,6月26日に国会で承認された,新大学法が公布された。新大学法の公布により,全国大学教育監督庁(SUNEDU)が新たに教育省の傘下に設置され,大学の設置認可の決定,教育サービスの質の監督,公的資金の使途の管理が行われる。また,新大学法では,学生に対しては学士(bachiller)の学位取得に際し,研究報告の提出及び外国語の取得を義務づける他,大学教員に対しては修士の学位取得を必要条件とすることを規定している。

 

(2)ロレト州知事の逮捕
 17日,ロレト地裁第二予備調査法廷は,イバン・バスケス・ロレト州知事に対して,4隻の船舶建造に係る入札において,特定企業が有利になるように便宜を図った疑いで,18か月の予防拘禁を命じた。これを受け,一時逃亡中であったバスケス州知事は,25日,当局に身柄が拘束された。

 

(3)新内閣の発足
 22日,コルネホ首相の辞任に伴う内閣改造が行われ,新首相にハラ労働雇用促進相が就任した他,オタロラ国会議長が労働雇用促進相に就任した。
 ●首相:アナ・ハラ
 46歳。弁護士。労働雇用促進相より昇格。2011年より与党(ペルー国民主義党)国会議員。女性社会的弱者相(2011年12 月-14年2月),労働雇用促進相(2014年2月-7月)を歴任。
 ●労働雇用促進相:フレディ・オタロラ
 53歳。今次入閣まで国会議長を務める。弁護士。与党国会議員。議員としては現在2期目。2013-2014年(1年間),国会議長を務める。

 

(4)国会議員の会派離脱及び新会派の結成
 22日,与党と連立を組むペルー・ポシブレ(PP)会派は,会派無所属であったシモン議員(人道党)のPP会派加入を正式に発表した。これにより,PP会派は,ペルー・ポシブレ党(8名),ソモス・ペルー党(2名),人道党(1名)の3党連合,計11名となった。
また,25日には,与党6議員が,国民主義-勝利するペルー(GP)会派からの離脱を正式に表明し,右6名で新たに「尊厳と民主主義(DD:Dignidad y Democracia)」会派の結成を発表した。

 

(5)国会新執行部選挙の実施
 26日,国会新執行部選挙が行われ,与党連合及び野党連合の双方から提出された候補者リストのうち,ソロルサノ議員を議長候補とする与党連合リストが2度目の投票で僅差で勝利(与党:59,野党:57,白票:6)し,当選した。この結果,2014年−2015年期の国会執行部メンバーは以下に決定した。
 国会議長  アナ・マリア・ソロルサノ(国民主義−勝利するペルー会派)
 第一副議長 モデスト・フルカ(ペルー・ポシブレ会派)
 第二副議長 ノルマン・レウィス(地域同盟会派)
 第三副議長 エステール・カプニャイ(国民連帯会派)

 

(6)大統領教書演説
 28日,ウマラ大統領は,政権4年目に向けた大統領教書を発表した。今次教書では,経済成長率が従来より低下しつつある中で,社会的包摂を伴う成長路線の維持・強化を目指すもので,教育,保健,治安に力点が置かれた。特に,教育及び保健分野では予算の増加を決定した他,社会政策面では従来の政策の拡充を発表した。

 

(7)ウマラ大統領支持率(カッコ内は前回の数値)
ア ダトゥム社:4〜9日実施,全国(対象1204名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持 24%(25%)  不支持 70%(68%)
イ イプソス・ペルー社:8〜10日実施,全国都市部(対象1533名),誤差±2.5%,信頼度95%
支持 25%(21%)  不支持 68%(74%)
ウ GfK社:20〜23日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1500名),誤差±2.5%,信頼度95%
支持 22%(21%)  不支持 72%(75%)


3 外交

(1)チリとの領海境界線画定にかかる国内法の整備:基線法の改正  2日,国会常設委員会は,本年1月のチリとの領海境界線画定にかかる国際司法裁判所(ICJ)の判決に従い,領海境界線の開始地点を,これまでの「コンコルディア地点(266地点)」から,ICJが定めた「標石1(Hito 1)」を通過する緯線平行線と低調線の交差する点に定めるべく,国会外交委員会が提出したペルーの領海基線法改正法案を可決。これを受け,11日には,右を定めた新たな基線法(30223号)が公布された。

 

(2)グティエレス新外相の中国訪問

 7日,グティエレス新外相は,駐中国大使を離任する挨拶のため中国を訪問し,王毅中国外交部長と会談を行った。同会談の中では,16日に行われる南米諸国首脳とBRICS首脳の会談(於:ブラジリア)の枠外で開催が予定されている,ウマラ大統領と習近平国家主席の会談,及び11月に北京で開催されるAPEC首脳会合の際に予定されているウマラ大統領の中国訪問について言及された。

 

(3)ウマラ大統領のドイツ訪問

 14日及び15日,ドイツを訪問したウマラ大統領は,ベルリンで開かれた気候変動に関する非公式閣僚級会合(ペータースベルク気候対話)に出席し,演説を行った他,右会合の枠外でメルケル独首相と首脳会談を行った。首脳会談では,両国の関係が非常に良いレベルに達している点を確認すると同時に,今後も更なる分野での協力が可能である旨確認した。

 

(4)ウマラ大統領のブラジル訪問

 16日,ブラジルを訪問したウマラ大統領は,ブラジリアで開催されたBRICSと南米諸国の首脳会合に出席した他,右会合の枠外で,習近平中国国家主席,モディ印首相,プーチン露大統領と会談を行った。習国家主席との会談では,農業,教育,保健,貧困削減の分野での協力を最優先に取り組むことを決定した他,会談後には両大洋間をつなぐ横断鉄道の建設に向けた秘・伯・中3か国の協力に係る共同宣言が発表された。また,モディ印首相との会談では,特に科学,技術,教育及び観光分野での協力を推進することで一致した他,プーチン露大統領との会談では,二国間関係,水力発電事業及び代替エネルギー開発における協力の可能性について触れた。

 

(5)ウマラ大統領のメキシコ訪問

 17日及び18日,メキシコを訪問したウマラ大統領は,ペニャ・ニエト墨大統領と会談を行った。両首脳は両国が麻薬違法取引対策,組織犯罪対策において協力して取り組む意思を再確認した。また今般,二国間の治安に関するハイレベル・グループが設立された他,両国間の戦略的連携協定を始めとする10件の協定(覚書を含む)の署名が行われた。

 

(6)第1回汎米国会議長会議の開催

 18日,当地において第1回汎米国会議長会議が開催され,米州機構(OAS)加盟各国の国会議長及びインスルサOAS事務局長等が出席した。米州地域の議会の統合の強化及び持続的可能な発展や社会的包摂に資する地域的課題の推進に向けて開かれた今次会合では,統合,透明性,気候変動,社会包摂,女性政治家の役割等のテーマについて話し合われた。

 

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