ペルー政治情勢 2014年

11月の内政と外交


1 概要
(1)デ・ハビッチ保健相が辞任。医師連盟によるストライキの妥結に手間取ったことからその能力が疑問視されていた。後任はベラスケス保健副大臣。
(2)2015年予算案が可決。予算総額は1,306億2,100万ソル(約441.3億米ドル)。
(3)ウマラ大統領は外交関係樹立以来初となるペルー大統領によるロシア訪問を果たした。また,北京APECに出席,安倍総理,習近平中国国家主席他と首脳会談を行い,その後バチカンを訪問した。
(4)最高裁は,フジモリ元大統領に対する自宅軟禁措置適用に関する裁判及び25年の禁錮刑判決が下っている人権侵害事件の再審請求を棄却。


2 内政

(1)保健相の交代
 5日,デ・ハビッチ保健相が辞任し,同日,本年9月から保健副大臣を務めていたベラスケス新保健相の宣誓式を行った。ベラスケス新保健相はウマラ政権で3人目の保健相となる。デ・ハビッチ保健相は,ペルー医師連盟(FMP)によるストライキ妥結に手間取ったことから,能力に疑問が呈され,国会に召喚されるなど,非難を受けていた。野党各党は同保健相の不信任動議を発動すべく署名し,動議の可決に必要な票数は確保されていた。6日にも本件につき本会議で議論が予定されていた。
 
(2)2015年予算案の可決
 29日,2015年予算案が賛成47票,反対34票,棄権10票で可決された。予算総額は1,306億2,100万ソル(約441.3億米ドル(1米ドル=2.96ソル))。

 

(3)ウマラ大統領支持率
ア ダトゥム社:1〜4日実施,全国(対象1202名),誤差±2.8%,信頼度95%

 支持 33%(33%) 不支持 62%(61%)

イ イプソス・ペルー社:8〜10日実施,全国都市部(対象1201名),誤差±2.8%,信頼度95%

 支持 25%(27%) 不支持 67%(64%)

ウ CPI社:12〜16日実施,全国主要都市(対象1450名),誤差±2.6%,信頼度95.5%

 支持 26.4%(25.8%) 不支持 73.0%(71.0%)

エ GfK社:22〜25日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1205名),誤差±2.8%,信頼度95%

 支持 24%(25%) 不支持 70%(67%)

 


3 外交

(1)ウマラ大統領のロシア訪問
 7〜9日,ウマラ大統領がロシアを訪問した。なお,今次訪問は,両国国交樹立以来初のペルー大統領による同国公式訪問となった。

 

ア プーチン露大統領との首脳会談では,両首脳は歴史的な友好的姉妹関係の強化に資する協力のための合意文書署名の重要性を強調した。今次署名された二国間協力協定により,両国間の市場アクセスを簡易化するための関連用語の統一化が図られる。防衛分野に関しては,技術移転及び共同生産に関する合意を強調した。また,教育分野に関しては,ペルーの青年がロシアにおける高等教育を受けることができるよう国家奨学金システムとの協力を進めていると述べた。さらに,ウマラ大統領は,プーチン大統領に対し,ペルー訪問を招請した。

同会談では,税関情報の交換,薬物対策協力,環境保護及び観光振興に関する合意文書が署名された。

 

イ フリステンコ(Victor Khristenko)ユーラシア関税同盟委員長との会談では,ウマラ大統領はユーラシア経済同盟条約発効後,同同盟とFTA交渉を開始することへの関心を表明し,また,ペルーがオブザーバー国資格を得ることも期待している旨表明した。

 

ウ ヤクーニン(Vladimir Yakunin)ロシア鉄道公開株式会社社長との会談では,ロシア側よりペルーとブラジルを結ぶ大洋間横断鉄道計画及び国家鉄道計画(Plan Ferroviario Nacional)に含まれる計画への参加に対する関心が示された。また中央道の問題を解決するための「アンデス横断トンネル」建設の展望について議論された。

 

エ セルゲエフ(Maxim Sergeev)Inter Rao Export社長との会談では,マチュピチュ水力発電所拡張計画及びプリマベーラ水力発電所の機材提供の開始を前倒しする手続きを開始した。また,Inter Rao社は省エネ及びエネルギー効率の向上に関する分野及び様々な規模の地熱及び水力発電施設建設での協力をする用意がある旨述べた。

 

(2)ウマラ大統領のAPEC出席
 10〜12日,ウマラ大統領は中国を訪問し,北京で開催されたAPEC首脳会議に出席した他,安倍総理を含む各国の首脳と二国間会談を行った。

 

ア APEC首脳会議

 APEC首脳会議に出席したウマラ大統領は,社会的包摂が現政権の優先課題である旨強調するとともに,平等の達成が最大の目標である旨述べた。また,教育及び保健面における社会的包摂が不平等の是正につながる旨主張した。

 また,ウマラ大統領は,同地より放映されたテレビ・インタビュー(TV Peru)の中で,APEC参加国の投資家から,地域の成長を牽引する非常にダイナミックな経済であるペルーは,大きな期待感を持って見られている旨述べた。

 

イ 二国間会談

(ア)10日,ウマラ大統領はリー・シェンロン・シンガポール首相と会談し,両国間の商用機の運行に向けた交渉締結の必要性について一致した他,オルモス(Olmos)工業地帯のデザインと建設に向けた協力,大統領奨学金を利用したペルー人の留学枠の確保に向けたシンガポールの大学との覚書の締結について話し合いが行われた。

(イ)APEC終了後の12日,ウマラ大統領は,習近平中国国家主席との会談を行った。同会談で両首脳は,両国の戦略的連携協定を進展させることで一致した。また,同会談では,観光促進,教育,鉱山・エネルギー,環境保護,インフラ開発等に関わる協定及び覚書の他,ペルーとブラジルを結ぶ大洋間横断鉄道のフィージビリティスタディを行う作業グループの発足にかかる覚書への署名も行われた。さらにウマラ大統領は,習国家主席をペルーへ招請した。

 

(3)ウマラ大統領のバチカン訪問
 14日,ウマラ大統領はバチカン法王庁にて法王フランシスコに謁見した。謁見後の記者会見において,ウマラ大統領は,フランシスコ法王が飢餓,慢性的な栄養失調,温暖化等,今日地球上で起こっている問題に対する懸念を示した点を強調した。なお今次訪問は,法王フランシスコのペルー訪問招請と,特に教育及び社会分野におけるペルーとバチカンの協力関係の強化を目的としたものである。

 

(4)張徳江中国全人代常務委員長の当地訪問
 21日,張徳江(Zhang Dejiang)中国全人代常務委員長が当地を訪問し,ソロルサノ国会議長及びウマラ大統領とそれぞれ会談を行った。ソロルサノ議長との会談では,両国首脳による合意を実現するためには,両国議会間の協力が重要である旨述べた。また,2009年のFTA締結以来,両国の貿易関係は著しく成長し,昨年は150億ドルに達し,ペルーは最も重要な貿易パートナーのひとつであり,中国による投資額は60億ドルを超えた旨指摘した。

 また,ウマラ大統領との会談においては,両国の経済,貿易関係の効果的な進化をもたらした戦略的統合協定について話し合われた。また,保健及び教育分野の二国間アジェンダ及びペルーとブラジルを結ぶ大洋間横断鉄道に関する三者ワーキンググループ創設のための覚書につき確認した。

 


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