ペルー政治情勢 2015年

1月の内政と外交


1 概要

(1)新最高裁長官にティコナ(Victor Ticona)最高裁判事が就任した。
(2)国家情報局長官が交代し,後任にブリセーニョ(Javier Briceno)氏が任命された。
(3)国家情報局による政治家への盗聴・追跡疑惑が持ち上がり,複数の政治家から被害の申告が行われた。
(4)オモンテ女性社会的弱者相の元私宅家政婦に対する社会保障費の未払い疑惑が持ち上がった。
(5)ボリビアに逃亡中の「ラ・セントラリータ」事件のベラウンデ・ロッシオ容疑者が同国で逮捕された。
(6)昨年12月に施行された青年労働法が廃止された。
(7)グティエレス外相がコスタリカで開催された第3回CELAC首脳会合に出席した。



2 内政

(1)新最高裁長官の就任
 5日,任期を満了したメンドーサ(Enrique Mendoza)最高裁長官の後任にティコナ(Victor Ticona)最高裁判事が就任した。向こう2年間の在任期間中は,司法と判事の独立性,司法システムの改善,司法の透明性と汚職対策,施設の近代化,司法へのアクセス促進の5点に重点的に取り組む見込み。

 

(2)国家情報局長官の交代
 8日,ゴメス(Victor Gomez)首相府国家情報局(DINI)長官が退任し,後任にブリセーニョ(Javier Briceno)氏が任命された。ブリセーニョ長官は退役軍人で,ウマラ大統領士官学校時代の同僚。鉱山会社のバリック・ゴールド社調達部門での勤務経験を有し,2011年からは国軍調達部部長の任に就いていた。

 

(3)国家情報局による政治家への盗聴・追跡疑惑
 15日,「コレオ」誌が,ガルシア第二次政権時代のカスティーヨ(Jorge del Castillo)元首相及びイダルゴ(Miguel Hidalgo)元内相が,DINI及び国家警察情報局(DIRIN)による盗聴・追跡を受けていた疑惑があると報じた。右報道を境にガルシア前大統領,ケイコ・フジモリ人民勢力党党首をはじめとする野党有力政治家が,同様の被害にあったとしてウマラ政権に対する批判を開始した。即座にウマラ大統領及びハラ首相が,政権の関与を否定した。
 他方,18日,エスピノサ第一副大統領に対する追跡行動が行われていたとの報道が流れ,政権による政敵に対する組織的諜報活動と唱える野党の見方は崩れた。19日,ウマラ大統領は,DINIエージェントによるエスピノサ第一副大統領に対する諜報活動の可能性を全面的に否定した上で,DINIに対する調査の開始を即時開始する用意があると示した。
 ハラ首相は,ウマラ大統領同様に本件に関する政府の関与を否定したものの,「仮に政府内に独自の関与を行った勢力があれば根絶する」との表現を用い,DINIの関与を完全に否定しなかった。また,エスピノサ第一副大統領は,SNS上で「大変腹立たしい。このような犯罪的慣行を拒否するとともに,徹底的調査を求める。背後に政府がいるとは考えたくない。」と述べた。

 

(4)オモンテ女性社会的弱者相のスキャンダル
 18日,オモンテ女性社会的弱者相の私宅で家政婦として働いていた女性が,昨年12月に出産のため退職した際,しかるべき社会保障の支払を受けていないと公表した。女性及び社会的弱者層を擁護する立場を代表する人物が,女性労働者の権利を奪う行為を働いたという点でオモンテ大臣は批判を受けたが,同大臣は,社会保障を支払ったと述べている。

 

(5)ボリビアにおけるベラウンデ・ロッシオ容疑者の逮捕
 20日,前アンカシュ州知事による政敵に対する諜報事件(「ラ・セントラリータ」事件)の容疑者で,隣国ボリビアに逃亡していたベラウンデ・ロッシオ容疑者が同国警察に逮捕された。同容疑者は,政治的な追跡を受けているとしてボリビア政府に亡命申請をしていた一方で,ペルー政府は,ボリビア政府に対し同容疑者の逮捕及び身柄引渡しを求めていた。ボリビアの最高裁はペルー政府の求めに応じ,国家亡命者理事会(CONARE)が同容疑者の亡命申請について決定を下すまでの予防拘禁措置として逮捕状を発出し,同日ベラウンデ・ロッシオ容疑者の身柄が拘束された。しかし,翌21日,最高裁大法廷は,同容疑者に対する処置を自宅軟禁措置へ変更した。

 

(6)天然資源開発に対する抗議活動
ア 23日,プーノ州ランパ郡オクビリ町で22日から発生していた鉱山会社ラス・アギラス-シエムサ(Las Aguilas-Ciemsa)社に対する抗議活動の対応に当たっていた警察官2名が抗議者からの攻撃を受け死亡した。抗議者側は,同鉱山会社が操業に関する情報共有を地元住民に行っていない点及び同社が地域の発展に対しどのように貢献する意志があるのかが明確になっていない点に不満を抱いていた。

 

イ 26日,ロレト州ロレト郡に位置するプルスペトロル社石油鉱区内施設が,パンパ・エルモサ地域に居住する先住民のアチュアル族(Achuar)380名により占拠された。占拠者は,石油採掘のための土地利用に対する賠償金の支払い等を同社に求めている。他方,プルスペトロル社は,占拠者は同社生産活動の範囲外に居住しているため補償の対象にはならないが対話に応じる構えを示している。

 

(7)青年労働法反対デモと廃止
 26日,臨時国会(23日にウマラ大統領が国民向けメッセージを発した中で招集)にて,客年12月16日に施行されていた青年労働法が廃止された。同法を巡っては,昨年12月から数えて第4回目の反対デモが15日に,第5回目の反対デモが25日に発生した。特に15日のデモでは,デモ参加者,警察から負傷者,逮捕者が出る状況となった。25日には,与党若手有力議員であったテハダ(Sergio Tejada)議員が,同法への対応を巡る党執行部と見解の相違が明らかになったとの理由により与党からの離党を表明した。

 

(8)大統領支持率
ア ダトゥム社:9〜13日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 28%(32%) 不支持 67%(64%)
イ イプソス・ペルー社:13〜16日実施,全国(対象1208名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 25%(30%) 不支持 70%(64%)
ウ GfK社:17〜20日実施,全国(対象1222名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 26%(23%) 不支持 70%(71%)

 


3 外交

 28日,グティエレス外相はコスタリカを訪問し,第3回CELAC首脳会合に出席した。同首脳会合のマージンでグティエレス外相は,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表,サイン・マロ・パナマ副大統領兼外相,グリンスパン・イベロアメリカ・サミット事務局長とペルーの関心事につき会談を行った他,ミード・メキシコ外相と第三国における大使館及び総領事館相互利用に関する覚書に署名した。

 

 


法的事項 | アクセシビリティについて | プライバシーポリシー |