ペルー政治情勢 2015年

3月の内政と外交


1 概要

(1)政治家等に対する盗聴・追跡活動への批判を受けていた首相府国家情報局を180日間の機構改革に処す旨の大統領令が公布された。
(2)野党党首と与党の対話を目的とする第2回与野党対話が実施され,法改正に関する各党からの提案と議論が行われた。
(3)州知事のスペイン語呼称の変更及び州知事及び市長の連続再選を禁止する憲法改正が行われた。
(4)国会本会議においてハラ首相に対する不信任案が可決された。
(5)国会第2次ガルシア政権汚職調査委員会が,ビジネス・トラック社(BTR)及び「国民学校」の2件に関する調査報告書を国会に提出し,賛成多数で可決された。
(6)ボリビア最高裁は,「ラ・セントラリータ」事件に関与していたとされるベラウンデ・ロッシオ容疑者の予防拘禁措置を60日間延長した。
(7)検察庁は,トレド元大統領の義母が不透明な資金運用により高額資産を購入していたとされる件(いわゆる「エコテバ(Ecoteva)」事件)につき,トレド元大統領を含む関係者に対する刑事訴追をリマ地方裁判所に申請した。
(8)アレキパ州イスライ郡でSouthern Copper社によるティア・マリア銅山プロジェクトに対し,地元農家を中心とした無期限ストライキが開始された。
(9)チリによるペルーに対する諜報活動に関し,チリ政府から回答文書が接到した。
(10)グティエレス外相がエクアドルのキトで開催された南米諸国連合(UNASUR)外相会合に出席した。
(11)米国ワシントンで開催された米州機構(OAS)総会にグティエレス外相が出席した。
(12)ガウク・ドイツ大統領がペルーを国賓訪問し,ウマラ大統領等と会談を行った。
(13)ハラ首相がベネズエラの野党主導者の夫人と会談を行った。

(14)エリヤヴェツ・スロベニア副首相がペルーを公式訪問し,グティエレス外相と第1回政策協議を共同開催した。



2 内政

(1)首相府国家情報局機構改革
 1日,政治家等に対する盗聴・追跡活動への批判を受けていた首相府国家情報局(DINI)を180日間の機構改革に処す旨の大統領令が公布された。機構改革に向けた法令の整備を担当するコミッショナー3名と技術・管理面でのサポートを行う補佐官1名から構成されるハイレベル・コミッションは,構成員4名の任命から150日以内に,機構改革への提案を網羅した最終報告書を首相に提出する。DINIの機構改革中は,国防の観点から,国防省,外務省,内務省が各自既存の部門で情報収集を行い,DINIに代わって大統領及び首相府に対し報告を行う。

 

(2)第2回与野党対話の開催
 3日,大統領府にて第2回与野党対話が実施され,法改正に関する各党からの提案と議論が行われた。特に,同会合で各党参加者が合意に達した州知事及び市長の連続再選禁止にかかる憲法改正は,4日,国会で賛成多数により可決された。

 

(3)州知事スペイン語呼称の変更と連続再選の禁止
 11日,州知事のスペイン語呼称の変更及び州知事及び市長の連続再選を禁止する憲法改正が発効した。今次改正により,現職州知事及び市長は次回(2018年)地方選挙に立候補できなくなった。また,州知事のスペイン語呼称が現行のpresidente regionalからgobernador regionalに,同様に副知事もvicepresidente regionalからvicegobernador regionalに改称された。

 

(4)ハラ内閣不信任案の可決
 19日,ハラ首相は首相府国家情報局(DINI)による政治家等に対する諜報活動に関し国会に召喚されたが,同活動に対する調査及び責任の追求が不十分であるとの理由により,翌20日,人民勢力,議会の協調,キリスト教人民勢力会派は,38票の署名をもってハラ首相に対する不信任案を国会に提出した。30日,国会本会議においてハラ首相に対する不信任案が審議され,可決された(賛成72,反対42,棄権2)。

 

(5)与野党のスキャンダルに関する報道
ア 第2次ガルシア政権の汚職に関する調査報告書の提出
 12日,国会第2次ガルシア政権汚職調査委員会(通称「メガ・コミッション」)が,同政権期間中に退役海軍士官等を雇用し盗聴活動を行っていたとされるビジネス・トラック社(BTR)及び「国民学校(colegios emblematicos)」の校舎改修工事の不透明な入札の2件に関する調査報告書が国会に提出され,賛成多数で可決された。同調査報告書は,ガルシア前大統領及び関係閣僚に対する責任の追及を求めている。2014年に同じく国会で可決された麻薬取引に関連した受刑者に対し減刑・もしくは恩赦を行ったとする問題(通称"narcoindulto")とリマ上下水道公社(SEDAPAL)による上下水道インフラ整備工事の不透明な入札手続きに関する2件の報告書と合わせ,9件の汚職調査の内4件に関する調査報告書が出揃った。

 

イ [ラ・セントラリータ」事件関連
 19日,ボリビア最高裁は,「ラ・セントラリータ」事件の容疑者ベラウンデ・ロッシオ容疑者の予防拘禁措置を60日間(5月21日まで)延長した。同日,ペルー政府は,ボリビア政府にベラウンデ・ロッシオ容疑者の身柄引渡を求める文書を送付した。

 

ウ トレド元大統領の資金洗浄疑惑に関する捜査
 27日,検察庁は,トレド元大統領の義母が不透明な資金運用により高額資産を購入していたとされる件(通称「エコテバ(Ecoteva)事件」)につき,トレド元大統領,同夫人,義母他に対する刑事訴追をリマ地方裁判所に申請した。同裁判所第16刑事法廷は,30日以内にトレド元大統領に対する刑事訴訟を開始するか否か告知する。

 

(6)社会紛争
 23日,アレキパ州イスライ郡で,Southern Copper社によるティア・マリア銅山プロジェクトに対し地元農家を中心とした無期限ストライキが開始された。政府は農業大臣等を現地に派遣し抗議者と対話をする姿勢を示したものの,抗議者側は強硬姿勢を崩さず,Southern Copper社の完全撤退を求めている。

 

(7)大統領支持率(括弧内は前月の数値)
ア ダトゥム社:2月27日〜3月3日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 28%(28%) 不支持 67%(67%)
イ イプソス・ペルー社:10〜12日実施,全国(対象1230名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 25%(22%) 不支持 68%(71%)
ウ GfK社:21〜24日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1239名),誤差±2.8%,信頼度95%
 支持 25%(21%) 不支持 68%(73%)

 


3 外交

(1)チリによるペルーに対する諜報活動に対する回答文書の送付
 3日,ペルー外務省は,在チリ・ペルー大使館を通じ,チリ政府関係者によるペルー海軍士官に対する諜報活動に関するチリ外務省からの回答文書を受領した。
 6日,ペルー外務副大臣及び米州局長は,在ペルー・チリ大使館を通じ,諜報活動を断固として拒絶し,深い懸念を伝達する外交文書を手交した。同文書では,諜報活動の事実は証明済みである点を強調し,2月20日に伝達済みの抗議文書に新たな情報を追加した。また,チリ国内で行われている本件調査結果の早急な報告と再発防止を改めて要請した。上記の点に関し,納得できる回答が得られない場合には,在チリ・ペルー大使を召還する意向を示した。

 

(2)グティエレス外相の南米諸国連合外相会合出席
 14日,グティエレス外相(当時)が,エクアドルのキトで開催された南米諸国連合(UNASUR)外相会合に出席し,オバマ米大統領がベネズエラを「安全保障上の脅威」と評し同国政府高官に制裁措置を採った動きにつき参加国の外相と会談を行った。

 

(3)グティエレス外相の米州機構総会出席(17〜19日)
ワシントンで開催された米州機構(OAS)総会にグティエレス外相(当時)が出席し,パティーニョ・エクアドル外相と二国間協力,OASメンバー国間での関係強化に関し会談を行った他,太平洋同盟加盟国であるコロンビアのオルギン外相,メキシコのミード外相,リベーロス・チリ副外相と太平洋同盟のフォローアップを行った。

 

(4)ガウク・ドイツ大統領の訪問
 20日,ガウク大統領が当地を公式訪問し,ウマラ大統領,グティエレス外相(当時),サアベドラ教育相,シルバ通商観光相,アルバレス文化相との会談を行い,二国間協力,気候変動,環境問題,教育プログラムの拡大,国内における暴力蔓延からの回復プロセスにつき意見を交換した。また,ペルーの国家文化遺産返還への取組に対する協力として,ドイツ政府から,先スペイン期ランバイエケ文化の儀式用ナイフがペルー政府に返還された。
 また,翌21日には,ドイツ政府の資金援助により建設されたテロ被害者追悼博物館(Lugar de la Memoria)常設展を観覧した他,22〜23日には,アヤクチョ州及びクスコ州におけるドイツ政府の開発プロジェクトの視察を行った。

 

(5)ハラ首相とベネズエラ野党関係者の夫人との会談
 25日,ハラ首相(当時)は,ベネズエラで反政府運動を展開する野党主導者で現在当局に身柄を拘束されているロペス(Leopordo Lopez)大衆意志党党首及びレデスマ(Antonio Ledezma)カラカス大市長両夫人と会談を行い,ベネズエラの内情等につき説明を受けた。ウマラ大統領自身が夫人と直接会談しなかった点,政府としてベネズエラの現状に対し断固とした態度を表明しない点につき国内各方面から批判を浴びた。

 

(6)スロベニア副首相の訪問
 27日,エリヤヴェツ・スロベニア副首相(兼外相)が二国間関係強化を目的に当地を公式訪問し,グティエレス外相(当時)と第1回政策協議を共同開催した。同協議では,両国間の貿易促進,麻薬対策,文化遺産の本国への返還,自然災害対策の分野における協力関係の強化が主な議題となった。

 

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