ペルー政治情勢 2015年

5月の内政と外交


1 概要

1)ティア・マリア銅山開発プロジェクトに対する抗議活動で多数の死傷者が発生し,非常事態宣言が発令された。
(2)全国司法審議会がラモス・エレディア検事総長の罷免を決定した。
(3)「ラ・セントラリータ」事件のベラウンデ・ロッシオ容疑者の身柄がペルーに引き渡され,18か月の予防拘禁措置に処されることが決定された。
(4)ペルーとEUが,ペルー人に対する短期滞在ビザを免除することで合意に至った。
(5)李克強中国国務院総理が当地を訪問し,ウマラ大統領との会談の他,ペルー・ブラジル大洋間横断鉄道計画のF/S共同実施に関する覚書を含む複数の合意文書への署名等を行った。
(6)オルギン・コロンビア外相が当地を訪問し,サンチェス・ペルー外相と第1回ペルー・コロンビア合同閣議のフォローアップ等を行った。
(7)エルナンデス・ホンジュラス大統領が当地を訪問しFTAへの署名等を行った。



2 内政
((1)社会紛争
ア ティア・マリア銅山開発プロジェクト反対運動
(ア)3月23日から継続中のティア・マリア銅山開発プロジェクト(アレキパ州イスライ郡)の抗議者と治安部隊が衝突し,5日及び22日に地元住民が1名ずつ,6日には治安部隊の警察官1名が死亡した他,数百名の負傷者が発生した。4月22日に死亡した地元住民と合わせ,同ストライキによる死者は4人目となった。政府は抗議活動の過激化による治安悪化を受け,9日から軍隊を派遣し国家警察の後方支援を開始し,22日には,60日間(7月20日まで)の非常事態宣言を発令した。


(イ)15日,ウマラ大統領は,反対運動の大規模化に鑑み,国民向けメッセージを発出した。メッセージ発出直後,事業主のサザン・カッパー・ペルー社が,同プロジェクトを60日間一時停止する旨発表した。今後の地元住民との対話では,ベニテス農業灌漑相が政府側代表を務める他,プルガル・ビダル環境相,オルティス・エネルギー鉱山相及びカテリアノ首相も参加することが決まっている。


(ウ)27〜28日,カハマルカ,アプリマック,ワンカベリカ,モケグア,アヤクチョ,プノ,タクナ,クスコの8州で同プロジェクト反対運動に連帯する勢力がストライキを決行した。


イ 砂糖製造工場労働者による無期限ストライキ
19日,ペルー北部のランバイェケ州チクラヨ郡トゥマン町で行われていた砂糖製造工場の労働者組合によるストライキの参加者1名が何者かによる銃撃を受け死亡した。同労働者組合は,4月7日,砂糖製造工場の経営会社であるオビエド・グループ(Grupo Oviedo)の経営に対する不満を訴え,同社の撤退を求める無期限ストライキを開始していた。


(2)ラモス・エレディア検事総長の罷免
13日,全国司法審議会(CNM)は,昨年12月31日付で職務停止に処されていたラモス・エレディア検事総長を罷免した旨公表した。同検事総長は,アルバレス前アンカシュ州知事が関与する汚職事件の捜査を妨害したとされる。翌14日,検察庁は新検事総長選出までサンチェス現検事総長代行が引き続き検事総長の職務を代行する旨発表した。

(3)ベラウンデ・ロッシオ容疑者の一時逃亡と身柄引渡
ア 24日,ボリビア最高裁からペルー当局への身柄引渡まで自宅軟禁を言い渡されていた「ラ・セントラリータ(La Centralita)」事件のベラウンデ・ロッシオ(Martin Belaunde Lossio)容疑者(以下「ベ」容疑者)が,ラパス市内にある自宅軟禁先の親戚宅から逃亡した。「ベ」容疑者の逃亡を受け,アドリアンセン法務人権相を筆頭とするペルー政府代表団が急遽ボリビアに派遣された。


イ 28日,「ベ」容疑者がボリビア国内ベニ県マグダレナで身柄を確保され,翌29日,ペルー当局に身柄が引き渡された。「ベ」容疑者は,リマ市アンコン区にあるピエドラス・ゴルダス第一刑務所で同29日から18か月の予防拘禁措置に処されている。


(4)国会議員の資格停止
国会本会議で下記4名の国家議員の資格停止が可決された。
ア エリベルト・ベニテス議員(13日から120日間):無所属
イ ビクトル・グランデス議員(14日から120日間):無所
ウ ホセ・レオン議員    (14日から 60日間):ペルー・ポシブレ会派
エ ビクトル・クリソロゴ議員(15日から120日間):ペルー・ポシブレ会派
ベニテス議員及びクリソロゴ議員は「ラ・セントラリータ」事件の捜査妨害,レオン議員はメキシコ人麻薬密輸関係者との繋がり,グランデス議員については未成年者売春への関与について国会倫理委員会が調査した末,各議員の資格停止を国会に勧告していた。


(5)大統領支持率(括弧内は前月の数値)
ア ダトゥム社:4月30日〜5月5日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 28%(27%) 不支持 67%(67%)
イ イプソス・ペルー社:12〜15日実施,全国(対象1208名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 21%(27%) 不支持 72%(65%)
ウ CPI社:13〜17日実施,全国主要都市(対象1450名),誤差2.6%,信頼度95.5%
支持 23.5%(28.7%) 不支持 73.0%(68.7%)
エ GfK社:23日〜26日実施:,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1227名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 16%(24%) 不支持 77%(72%)



3 外交
(1)ペルー人に対するシェンゲン・ビザ免除
 20日,外務省は,ペルー人に対する短期滞在ビザを免除することでEUと合意に至った旨発表した。各種手続きが終了次第,シェンゲン協定加盟国を訪れるペルー人への短期滞在ビザ取得要求が撤廃される。なお,今次合意に伴い,ペルー政府は生体情報入りの旅券への移行を行う。ビザ免除の効果として観光及び短期交換留学の増加や経済関係者間のコンタクト簡易化が期待される。


(2)李克強中国国務院総理の訪問(22〜24日)
ア ウマラ大統領と李総理が大統領府にて会合を行った。同会合では,産業発展及び投資に関する政策対話の強化,統合的戦略パートナーシップ(Asociación Estrategica Integral)のフォローアップ,グローバル及びマルチレベルでの事案に関する意見交換が行われた。また,同会談の枠内で,二国間経済協力等に関する合計10の合意文書に署名がなされた。特に,ペルー・ブラジル大洋間鉄道のF/S共同実施に関する覚書への署名が大きく報道された。


イ 第1回ペルー・中国戦略的経済協力対話が外務省で開催され,ペルー側からは,サイラ運輸副大臣,シンノ鉱山副大臣,カリーヨ中小企業及び産業副大臣の他,生産省,住宅建設上下水道省,投資促進庁(ProInversion),国家戦略的計画センター(CEPLAN)各機関の代表者が,中国側からは,外交部,通商部,国家能源委員会他,主要企業や金融機関の代表が出席した。ペルー側各参加者から,中国側出席者に向けて,道路網の近代化や国内の鉄道敷設計画といった大規模インフラ・プロジェクトにつき説明が行われ,中国側から積極的な参加意志の表明がなされた。同メカニズムの第2回会合は来年に予定されている。


(3)オルギン・コロンビア外相の訪問
25日,オルギン・コロンビア外相が当地を訪問し,サンチェス・ペルー外相と会談を行い,昨年9月にロレト州イキトス市で開催された第1回ペルー・コロンビア合同閣議及び「ペルー・コロンビア国境統合地域開発計画(Plan de Desarrollo para la Zona de Integración Fronteriza)」のフォローアップと次回会合開催に向けた協議が行われた。また,第3回治安・司法協力ハイレベル会合及び両国外相と国防相が出席する2+2政策協議の実施が約束された他,人身売買の予防,分析,捜査,被害者に対する支援と保護に向けた取組に関する合意文書への署名が行われた。


(4)エルナンデス・ホンジュラス大統領の訪問(28〜29日)

エルナンデス・ホンジュラス大統領がペルーを訪問し,FTAへの署名等を行った。FTAの署名により,ペルー産品の80%が即時に無関税でホンジュラスに輸出される。残りの20%は,最長10年以内に行われる関税撤廃まで段階的優遇措置を受ける。また,刑事に関する共助協定への署名が行われた他,エルナンデス大統領が,ペルー・ホンジュラス企業フォーラムに出席した。

 

 


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