ペルー政治情勢 2015年

6月の内政と外交


1 概要

1)ナディン・エレディア大統領夫人の贅沢品購入や資金洗浄疑惑に関する調査結果の報道がきっかけとなり,大統領支持率及びナディン夫人の支持率が過去最低値を記録した。
(2)ブラジルの建設会社が,公共事業入札と引き換えにトレド元大統領及びガルシア前大統領政権関係者に賄賂を支払っていたというブラジル当局の捜査情報の存在が明らかになった。
(3)ガルシア前大統領が,石油鉱区の国際入札における収賄事件(通称"petroaudio")の証人として出廷した。
(4)特別国会にて,経済及び治安分野に関する国会から政府への90日間の立法権限委譲が可決された。
(5)ウマラ大統領が第2回CELAC−EU首脳会合に出席した。
(6)サンチェス外相が第45回米州機構総会に出席した。

(7)エギグレン元法務人権相が米州人権委員に選出された。

2 内政

(1)ナディン・エレディア大統領夫人のスキャンダル
ア 2日,ナディン夫人は,友人のカルデロン(Rocio Calderon)氏名義のクレジットカードを使い,総額約3万8,000米ドル相当の贅沢品購入を海外で行っていたことを認めた。ナディン夫人は,この購入品の7割はカルデロン氏から依頼を受けて購入,残りは自分用に購入したものと説明をしている。19日,カルデロン氏は,2011年から勤務していた政府契約監督機関(OSCE)を辞任した。


イ 9日,リマ第43刑事法廷は,ナディン夫人の資金洗浄疑惑に関し,ナディン夫人の保護請求を認め,2005〜2009年の資金洗浄疑惑にかかる再捜査の中止を検察庁に命じた。同判決を受け,11日,検察側は新たな証拠の存在を理由に再捜査を求め控訴,翌12日には,ナディン夫人側もすべての捜査の打ち切りを求め控訴した。リマ地方高等裁判所が今後の捜査の可否につき何らかの通知をする予定。


ウ 14日,人民行動・拡大戦線会派のガルシア・ベラウンデ(Victor Garcia Belaunde)議員が,ナディン夫人が約15万ソル(約5万米ドル)の残高がある銀行口座を所有していることを公表した。同口座には,約3万ソル(約1万米ドル)以上のまとまった額が複数回振り込まれている点,この口座に対応するクレジットカードでナディン夫人が高額の消費を行っていた点等が注目されている。


エ 19日,国会ベラウンデ・ロッシオ容疑者調査特別委員会(以下「ベ」委員会)が,資金のやりとりを巡る同容疑者との不透明な関係が指摘されているナディン夫人を同委員会の調査対象者リストに加えることを決定した。「ベ」委員会は,ナディン夫人の銀行口座情報の開示を銀行保険年金監督庁(SBS)に,納税関係書類,出入国,個人的な通信履歴などの提供を関係当局に請求する意向を示している。


(2)次期大統領候補の収賄疑惑
ア 11日,ブラジルの建設会社(Camargo Correa)が,大洋間横断道路建設の入札と引き換えにトレド元大統領及びガルシア前大統領政権関係者に賄賂を支払っていたというブラジル当局の捜査情報の存在が明らかになった。両大統領ともに収賄疑惑を否定しているが,ウォン(Enrique Wong)国会予算委員長が本件に関する特別調査委員会の設置を提案している他,19日には,検察庁が本件にかかる予備捜査を開始した。


イ 23日,ガルシア第2次政権の関係者が,ペルー国内の石油鉱区のコンセッション譲渡にかかる国際入札が行われた際,賄賂と引き換えにノルウェーの石油会社(Discovery Petroleum International:DPI社)に便宜を図ったとされる事件(通称"petroaudio")の証人として出廷した。ガルシア前大統領は,本件を政権関係者に持ちかけたとされるドミニカ人のカナアン(Fortunato Canaan)氏と数回会談したことやDPI社が入札に意欲を示していたことを承知していたことは認めたものの,自身が収賄に関与していたことについては全面的に否定した。


(3)国会から政府への立法権限委譲
18日,特別国会が招集され,経済及び治安分野に関する国会から政府への立法権限委譲に関する法案が可決された。経済分野については9項目のうち5項目が可決,4項目は否決された。治安分野については7項目全てが可決された。また,立法権限委譲の期間については,政府案の120日間から90日間に短縮された。


(4)国会議員の資格剥奪
16日,国会運営委員会にて,人民行動・拡大戦線会派のヨベラ議員の資格剥奪が決定された。同議員は,2011年国会議員選挙の際に学歴を詐称したとしてワヌコ州の裁判所より2年間の公民権停止判決を受けており,司法府から立法府に対して同議員の資格剥奪が求められていた。ヨベラ議員は当初,人民勢力党から選出されていたため,同党のベテタ議員が繰り上げで2016年7月までの残り任期を務めることとなり,人民勢力会派は議席数を36に伸ばした。


(5)大統領支持率
ア ダトゥム社:5日〜9日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 14%(28%) 不支持 82%(67%)
イ イプソス・ペルー社:9〜12日実施,全国(対象1178名),誤差±2.9%,信頼度95%
支持 17%(21%) 不支持 76%(72%)
ウ GfK社:20日〜23日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1242名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 10%(16%) 不支持 85%(77%)



3 外交
(1)ウマラ大統領の第2回CELAC−EU首脳会合出席
10〜11日,ウマラ大統領がブリュッセルで開催された第2回CELAC−EU首脳会合で2つのプレナリー・セッションに出席した他,シェンゲン・ビザ免除にかかる合意文書署名式及び複数の二国間会談等に臨んだ。また,ウマラ大統領は,トゥスク欧州理事会議長,ロヴェーン・スウェーデン首相,ベテル・ルクセンブルグ首相ともそれぞれ会談を行った。


(2)サンチェス外相の第45回米州機構総会出席
15日,第45回米州機構総会に出席したサンチェス外相は,米州機構の改革等に関する発言を行った。また,アルマグロ新事務総長との会談では,本年ペルーで開催される第1回米州若手議員会合等に関し意見交換を行った他,トルヒーヨ市(ペルー北部ラ・リベルター州都)で11月に開催される全米麻薬濫用取締委員会会合に関する合意書への署名を行った。


(3)エギグレン元法務人権相の米州人権委員選出
 16日,第45回米州機構総会で,米州人権委員会(CIDH)の委員選挙が行われ,ペルー政府の候補であったエギグレン元法務人権相(元在スペイン・ペルー大使)が賛成多数により選出された。任期は2016年から2019年まで。

 

 


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