ペルー政治情勢 2015年

8月の内政と外交


1 概要

(1)ブラジル大手建設企業が関与した汚職事件が連日大きく報道され,ガルシア前大統領と汚職の関係が再度クローズアップされることとなった。
(2)国会第二次ガルシア政権汚職調査特別委員会による「万人に水を」に関する調査報告書が国会本会議で可決された。
(3)国会ベラウンデ・ロッシオ容疑者調査特別委員会が,検察によるナディン・エレディア大統領夫人の資金洗浄疑惑の捜査を勧告する調査報告書を公表した。
(4)次期大統領選挙への立候補を表明しているクチンスキー元首相が,大統領選挙に向けた自身の政権プラン概要及び経済政策チームの発表を行った。
(5)エル・ニーニョ現象への対応を目的とした国会特別委員会設置案が国会本会議で可決された。
(6)現国会最終年の各会派スポークス・パーソンが決定した。
(7)24の国会常任委員会で,現国会最終年の委員長ポストが決定した。
(8)ウマラ大統領がベルギー副首相と会談を行った他,ペルー・ベルギー政策協議メカニズム創設に関する合意書に共同署名が行われた。
(9)エスピノサ第一副大統領がアルマグロOAS事務局長と会談を行った。
(10)マルティネッティ外務副大臣がベトナム商工副大臣と二国間ハイレベル委員会の設立に関する合意書に共同署名を行った。



2 内政

(1)主要政治家の汚職疑惑
ア ブラジル大手建設企業が関与した汚職事件で,ペルー国内への飛び火の可能性がある「ラバ・ジャト」事件が連日大きく報道された。ペルー国内では,ブラジル企業とペルー政府関係者との仲を取り持ったとされるシソン氏の名前が大きく取り上げられ,シソン氏の夫が,ガルシア政権で要職に就いていたアプラ党の政治家であることから,ガルシア前大統領と汚職の関係が再度クローズアップされることとなった。同汚職事件については,トレド元大統領及びウマラ大統領の関与も疑われている。


イ 26日,国会第二次ガルシア政権汚職調査特別委員会(通称「メガ・コミッション」)による「万人に水を(Agua Para Todos)」に関する調査報告書が国会本会議で審議され,賛成多数で可決された。同調査報告書は,ガルシア前大統領,ガリード元住宅建設上下水道大臣及びデル・カスティーヨ元首相の起訴を勧告している。
今次調査報告書の可決により,メガ・コミッションが調査した計9件の汚職調査報告書のうち8件が可決されたこととなった。今後,緊急令の公布によりインフラ事業認可手続き等を不正に簡略化したとされる件の調査報告書が審議される予定。


ウ 31日,国会ベラウンデ・ロッシオ容疑者調査特別委員会(以下「ベ」委員会)は,検察によるナディン・エレディア大統領夫人(以下ナディン夫人)の資金洗浄疑惑の捜査を勧告する調査報告書を公表した。同報告書では,ナディン夫人が資金洗浄を行ったことを示す兆候が確認されたこと,ベラウンデ・ロッシオ容疑者が過去に代表を務めていた複数企業の実質のオーナーがナディン夫人であることを示す証言を得られたこと等が示されている。

(2)次期大統領選挙に向けたクチンスキー元首相の動き
27日,次期大統領選挙への立候補を表明しているクチンスキー元首相が,大統領選挙に向けた自身の政権プラン概要及び経済政策チームの発表を行った。政権プランでは,特に,現在19ある省を10省程度に集約する省庁改編案及び,企業のフォーマル化推進のための付加価値税(IGV)と所得税減額案に注目が集まった。経済政策チームの主要メンバーには,現在,投資コンサルタント会社社長のトルネ氏,コンサルタント会社役員兼大学教授のモリネッリ氏,民間企業役員のオラエチェア氏が名を連ねた。

(3)エル・ニーニョ現象対策国会特別委員会設置案の可決 20日,国会本会議にて,本年から来年にかけての発生が予測されるエル・ニーニョ現象への対応を目的とした国会特別委員会設置案が可決された。同委員会は政府によるエル・ニーニョ現象対策の監督を行い,設置から3か月を目処に事前報告書,2016年6月には最終報告書を提出する見込み。

(4)国会関係
ア 4日,各会派のスポークス・パーソンが決定した。顔ぶれは以下のとおり。 人民勢力:ペドロ・スパダロ
国民主義・勝利するペルー:ウーゴ・カリーヨ
尊厳と民主主義:フスティニアーノ・アパサ
ペルー・ポシブレ:レナン・エスピノサ
議会の協調:ハビエル・ベラスケス
人民行動・拡大戦線:ジョニー・レスカーノ
キリスト教人民・進歩のための同盟:ハビエル・ベドヤ
国民連帯:エステル・カプニャイ
地域同盟:ノルマン・レウィス

イ 4日,ウィルデル・ルイス議員が与党国民主義・勝利するペルー会派から尊厳と民主主義会派に所属を変更する旨表明した。上記変更に伴い,与党国民主義・勝利するペルー会派の議席数は31議席に減少した一方,野党尊厳と民主主義の議席数は12議席となり,国会第三の勢力となった。
ウ 14〜19日,24の国会常任委員会で,現国会最終年の委員長ポストが決定し,外交委員長には,議会の協調会派のロドリゲス議員(アプラ党所属)が就任した。36議席を有する国会最大会派の人民勢力会派は,前年に引き続き,全会派中最多の7ポスト,昨年から議席数を減らした与党国民主義・勝利するペルー会派は,昨年比マイナス1の6ポスト,過去一年で議席数を伸ばした尊厳と民主主義会派は,前年比プラス1の2ポストを担うこととなった。

(5)ウマラ大統領支持率
ア ダトゥム社:1日〜4日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%,(括弧内は前月の数値) 支持 23%(18%) 不支持 73%(77%)
イ イプソス・ペルー社:11〜14日実施,全国(対象1210名),誤差±2.8%,信頼度95%,(括弧内は前月の数値) 支持 17%(19%) 不支持 76%(74%)
ウ GfK社:22日〜26日実施,リマ首都圏及び全国主要都市(対象1318名),誤差±2.7%,信頼度95%,(括弧内は前月の数値) 支持 16%(15%) 不支持 79%(80%)


3 外交
(1)レンデルス・ベルギー副首相兼外務大臣の訪問
19日,ウマラ大統領は,レンデルス・ベルギー副首相兼外務大臣と会談を行った。同会談では,両国の友好関係,今後のベルギーからペルーに対する協力の方針等に言及がなされた。
また同日,サンチェス外相及びレンデルス副首相が,ペルー・ベルギー政策協議メカニズム創設に関する合意書に共同署名を行った。同文書への署名を通じ,政策,経済,教育及び文化面に重点を置いた二国間協力関係の深化が期待される。

(2)エスピノサ副大統領とアルマグロOAS事務局長の会談
 27日,ワシントン滞在中のエスピノサ第一副大統領が,アルマグロOAS事務局長と会談を行い,全米麻薬濫用取締委員会(CICAD)が作成したペルーにおける麻薬濫用対策報告書を手交した。エスピノサ副大統領は同会談で,今年11月にアレキパで開催される麻薬と治安に関する国際会議は,組織犯罪,依頼殺人及び治安悪化といった課題にどう立ち向かうかについて各国がグッド・プラクティスを共有する絶好の機会となる旨発言した。

(3)ベトナム商工副大臣の訪問
 31日,マルティネッティ外務副大臣は,トラン・トゥアン・アン・ベトナム商工副大臣と二国間ハイレベル委員会の設立に関する合意書に共同署名を行った。同ハイレベル委員会設立の成果として,二国間の友好関係,協力,経済・通商関係の強化が期待される。

 

 


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