ペルー政治情勢 2015年
12月の内政と外交
1 概要
内政
(1)各政党が大統領候補及び第一・第二副大統領候補選出の党内選挙を終えた。
(2)ビヤヌエバ元首相がアクーニャ前ラ・リベルター州知事(以下アクーニャ前州知事)の大統領選挙陣営に加入した。
(3)ケイコ・フジモリ人民勢力党党首(以下ケイコ党首)が2016年国会議員選挙に同党の現国会議員のうち18名が立候補しないことを公表した。
(4)2016年度予算が公布された。
(5)ナディン・エレディア大統領夫人(以下ナディン夫人)が,自身の資金洗浄疑惑に関する検察の取り調べに応じた。
(6)ガルシア第二次政権中の大統領恩赦問題に関し,ファクンド・チンゲル被告に有罪判決が下された。
(7)国会本会議で政党法改正法案が再度可決された。
外交
(1)ウマラ大統領がCOP21に出席した。
(2)ウマラ大統領がアルゼンチン大統領就任式に出席した。
(3)サンチェス外相がイベロアメリカ外相会合に出席した。
(4)ウマラ大統領がフランスの協力を得た国立衛星画像オペレーション・センターの引渡式典に出席した。
(5)ウマラ大統領がペルー・エクアドル首脳会合及び第9回合同閣議に出席した。
2 内政
(1)2016年大統領選挙
ア 各政党が大統領候補及び第一・第二副大統領候補選出のための党内選挙を終えた。主要政党の大統領候補及び副大統領候補は以下のとおり。
(ア)人民勢力党
大統領候補:ケイコ・フジモリ党首
第一副大統領候補:クリンペル党副幹事長兼外交委員長
第二副大統領候補:ワロック元首相府国家対話・持続可能性事務所所長
(イ)「変革のためのペルー国民」
大統領候補:クチンスキー元首相(「変革のためのペルー国民」党首)
第一副大統領候補:ビスカラ前モケグア州知事
第二副大統領候補:アラオス元経済財政大臣
(ウ)「ペルーの進歩のための同盟」(進歩のための同盟,国家復興党及びソモス・ペルー党の連合)
大統領候補:アクーニャ前州知事(「進歩のための同盟」党首)
第一副大統領候補:タウンセンド元女性社会開発大臣
第二副大統領候補:ライ国家復興党党首(国会議員)
(エ)「人民同盟」(アプラ党,キリスト教人民党及びバモス・ペルー党の連合)
大統領候補:ガルシア前大統領(アプラ党党首)
第一副大統領候補:フローレス前キリスト教人民党党首
第二副大統領候補:サラサール元アプリマック州知事
(オ)ペルー・ポシブレ党
大統領候補:トレド元大統領(ペルー・ポシブレ党党首)
第一副大統領候補:アヤイポマ元国会議長(ペルー・ポシブレ党幹事長)
第二副大統領候補:オモンテ前女性社会的弱者大臣(国会議員)
(カ)国民主義党
大統領候補:ウレスティ前内相(与党国民主義党員)
第一副大統領候補:ビヤラン前リマ市長
第二副大統領候補:ディアス前ワンカベリカ州知事
イ 4日,イカ州パラカス市で開催された2015年企業幹部年次会合(CADE)で,世論調査で上位につけているケイコ党首,クチンスキー元首相,アクーニャ前州知事,ガルシア前大統領及びトレド元大統領が各政権プラン概要の発表及び質疑応答に臨んだ。
ウ 15日,ビヤヌエバ元首相(ウマラ政権)が2016年大統領選挙でアクーニャ前州知事陣営に加入することが明らかとなった。ビヤヌエバ元首相は,以前に州知事を務め,自身の地方政党が支持基盤を有するサン・マルティン州の国会議員リストの筆頭に名を連ねる可能性が示唆されている。
エ 29日,ケイコ党首は,現在人民勢力党の国会議員である35名のうち,18名が大統領選挙と同時に行われる国会議員選挙に立候補しない旨公表した。上記18名の中には,フジモリ元大統領時代の主要議員であるチャベス議員,アギナガ議員,ククリサ議員が含まれる。
(2)大統領選挙主要候補予想得票率(括弧内は11月数値)
ア ダトゥム社:11月27日〜12月2日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
ケイコ党首 35%(35%)
クチンスキー元首相 14%(19%)
アクーニャ前州知事 12% (9%)
ガルシア前大統領 7% (7%)
トレド元大統領 4% (5%)
イ イプソス社:5〜10日実施,全国(対象1846名),誤差±2.3%,信頼度95%
ケイコ党首 33%(34%)
クチンスキー元首相 16%(16%)
アクーニャ前州知事 13%(10%)
ガルシア前大統領 8% (9%)
トレド元大統領 5% (5%)
ウ CPI社:7〜10日,全国(対象1450名),誤差2.6%,信頼度95.5%
ケイコ党首 33.1%(33.5%)
クチンスキー元首相 17.6%(17.1%)
アクーニャ前州知事 12.1% (9.8%)
ガルシア前大統領 8.2% (7.8%)
トレド元大統領 4.8% (4.2%)
エ GfK社:11〜15日実施,全国(対象1267名),誤差±2.8%,信頼度95%
ケイコ党首 30%(32%)
クチンスキー元首相 11% (9%)
アクーニャ前州知事 8% (7%)
ガルシア前大統領 5% (6%)
トレド元大統領 3% (3%)
(3)2016年度予算公布
6日,国会で11月28日に可決されていた2016年度予算が公布された。予算総額は1384億9051万ソル(約415.9億米ドル)で2015年予算に比して6.6%増加した。
(4)ナディン・エレディア大統領夫人の資金洗浄疑惑
11日,資金洗浄疑惑の捜査対象となっているナディン・エレディア大統領夫人(以下ナディン夫人)は,検察の取り調べに応じた。今回の取り調べでは,同夫人のものとされる手帳の内容,2006年及び2011年大統領選挙における国民主義党の選挙資金,ナディン夫人の近親者に対するベネズエラからの送金,友人のクレジットカードを使ったナディン夫人の消費を中心とした質問がなされた旨報道されている。
(5)ファクンド・チンゲル被告有罪判決
14日,ガルシア第二次政権中,麻薬取引に関与した受刑者に対し不透明な減刑・もしくは恩赦が与えられたとされる問題(通称"narcoindultos")で当時本件の主担当であったファクンド・チンゲル被告(元大統領恩赦委員長)に対し禁錮13年8か月の有罪判決が下された。
(6)政党法改正法案の再可決
15日,国会本会議で,行政府から差し戻しされていた政党法改正法案が再度可決され,近日中に公布される見込みとなった。今次法改正では,特に,?@選挙連合を形成する場合に国会で議席を獲得するための全国有効投票率は,連合を形成する政党が一つ増えるごとに1%上乗せされる(注:現行法では,全国で5%の有効投票率を獲得することが必要。改正後は,2つの政党の連合の場合6%,3つの政党の連合の場合7%の有効投票率獲得が必要となる。),?A党内選挙を経ることなく擁立可能な国会議員候補者の割合を25%に引き上げる(注:現行20%),?B政党への公的資金提供,?C二回連続で国政選挙に参加しない場合政党登録を取り消す
(注:現在は国政選挙に一度参加しないだけで登録を抹消される。)の4点が注目を集めている。本年の国会議員選挙から今次改正法案が適用される可能性も示唆されている。
(7)ウマラ大統領支持率(括弧内は11月数値)
ア ダトゥム社:11月27日〜12月2日実施,全国(対象1200名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 17%(18%) 不支持 80%(79%)
イ イプソス社:5〜10日実施,全国(対象1846名),誤差±2.3%,信頼度95%
支持 16%(15%) 不支持 78%(78%)
ウ CPI社:7〜10日,全国(対象1450名),誤差2.6%,信頼度95%
支持 18.1%(14.1%) 不支持 79.9%(84.6%)
エ GfK社:11〜15日実施,全国(対象1267名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持 16%(11%) 不支持 79%(87%)
3 外交
(1)ウマラ大統領のCOP21出席
11月30日〜12月3日,COP21出席のためフランスを訪問したウマラ大統領は,首脳会合でペルー政府による気候変動への取組に言及するスピーチを行った。また,プーチン・ロシア大統領との首脳会談では,ペルーとロシアの二国間関係のレベルを「戦略的パートナーシップ」に引き上げる共同宣言に署名した。さらに,ウマラ大統領は,オランド・フランス大統領ともテレビ会談を行い,二国間関係のレベルを治安,国防,医療,教育分野に重点を置いた「戦略的パートナーシップ」に引き上げることに意欲を示した。他方,オランド大統領からは,2016年7月までのペルーの人工衛星完成と打ち上げ,ペルー人に対するシェンゲン・ビザ免除に引き続き協力する意思が表明された。
(2)ウマラ大統領のアルゼンチン大統領就任式出席
10日,アルゼンチン大統領就任式のため同国を訪問したウマラ大統領は,マクリ新大統領と会談を行った。両大統領は,国防,治安,司法,麻薬対策,経済,貿易と投資,移民,社会及び文化,技術,科学,テクノロジー及び南極といった分野における協力への期待を示した。また,ウマラ大統領は,アルゼンチン企業家による対ペルー投資への期待を示すとともに,マクリ政権が同国の太平洋同盟への接近を推進するだろうと述べた。また,二国間関係再活性化を念頭に置いたマクリ大統領によるペルー訪問早期実現を提案した。
(3)サンチェス外相のイベロアメリカ外相会合出席
12日,サンチェス外相は,第25回イベロアメリカ・サミットの準備会合としてコロンビアのカルタヘナで開催された第1回イベロアメリカ外相会合に出席した。同会合では,主催国のコロンビアから次回サミットのテーマが発表された他,各国外相がメキシコのベラクルスで開催された前回サミットでの合意事項実施状況の評価を行った。サンチェス外相は,格差,テロ,気候変動,越境犯罪といった分野におけるイベロアメリカ・サミットの役割強化の必要性,ペルー政府による国内若者向けの雇用や奨学金プログラムへの取組は次回サミットのテーマに沿ったものである点等に言及した。
(4)ウマラ大統領の国立衛星画像オペレーション・センター引渡式典出席
16日,ウマラ大統領は,リマ市の南方に位置するプクサーナに建設された国立衛星画像オペレーション・センターの引渡式典に出席した。ウマラ大統領は,フランス政府との協力により今後の打ち上げが予定される人工衛星の導入を通じ,ペルーがラテンアメリカ諸国の一歩先を行くことになる点,また,人工衛星をエネルギー・鉱山,治安,教育,文化,森林保護といった分野に活用する予定である点に言及した。
(5)ウマラ大統領のペルー・エクアドル首脳会合及び第9回合同閣議出席
18日,ペルー北部のカハマルカ州ハエン市で開催されたペルー・エクアドル首脳会合及び第9回合同閣議にウマラ・ペルー大統領及びコレア・エクアドル大統領が出席した。同会合の成果として,主に両国国境地域における社会,医療保健,治安,貿易,環境,エネルギー,鉱業,インフラ,地域統合といった分野における二国間協力の成果を取りまとめた「ハエン宣言」が発出された。
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