2月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

2019/6/24
【概要】
(内政)
●国会で全国司法評議会(JNJ)組織法案が可決成立した。
●マドレ・デ・ディオス州において違法鉱業及び関連犯罪の取締作戦が敢行された。
●アプリマック州ラス・バンバス鉱山を巡る社会紛争が長期化し政府が非常事態宣言の延長を決定した。
(外交)
●ポポリシオ外相がベネズエラ国軍に対しグアイド暫定大統領を支持するよう求めつつ,同国への軍事介入を拒否する旨発言した。
●スクル駐ペルー・ベネズエラ外交代表がビスカラ大統領に信任状を捧呈した。
●デ・セラ外務副大臣が当地紙に対しマドゥーロ政権側のペルー駐在外交官に退去を命じたと発言した。
●ビスカラ大統領がポルトガル及びスペインを公式訪問した。
 
【本文】
1 内政
(1)司法改革
1日,国会本会議において全国司法評議会(JNJ)組織法案が賛成多数により可決成立した。全国司法評議会は昨年9月の司法制度改革法案の可決成立及び同12月の国民投票により設置が決定したもの。全国司法評議会は全国司法審議会(CNM)の後継組織として,ペルーの全ての裁判官及び検察官の選抜,任命,審査及び制裁権を担う憲法上の独立機関となる。
(2)違法鉱業対策
19日,南東部マドレ・デ・ディオス州において軍・警察による違法鉱業取締作戦が行われた。マドレ・デ・ディオス州は金を中心とした地下資源採掘が地元産業の約半分を占めるなど鉱業が盛んであるが,採掘される金の少なくとも1割が違法に採掘されたものと言われ,森林伐採による環境破壊に加えて違法鉱業と深く結びつく麻薬取引,人身売買,資金洗浄等の犯罪が深刻な社会問題となっている。
(3)社会紛争
26日,政府は社会紛争対策として南部アプリマック,クスコ,アレキパの3州を縦断する国道(いわゆる「南部鉱山回廊」)の一部に対して2017年8月から発出していた非常事態宣言を延長した。アプリマック州に位置するラス・バンバス鉱山(中国・オーストラリア資本)を巡る周辺住民による抗議活動を理由とするもの。ラス・バンバス鉱山周辺は2015年の操業開始以来紛争が断続的に発生しているが,2019年2月以降,鉱山至近のチャルワワチョ町フエラバンバス共同体の住民等が道路を封鎖し鉱石の搬出ができなくなっている。報道によれば,ラス・バンバス鉱山は世界有数規模の銅山であり,生産量はペルーのGDPの1%に相当する。
(4)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:1~6日実施,全国(対象1204名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:63%(66%) 不支持:32%(28%)
イ イプソス社:13~15日実施,全国(対象1199名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:58%(63%) 不支持:32%(26%)
ウ IEP:16~20日実施,全国(対象1228名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:56%(60%) 不支持:32%(29%)
 
2 外交
(1)ベネズエラ情勢
ア ポポリシオ外相の発言
5日付当地報道によれば,ポポリシオ外相はカナダで行われたリマ・グループ会合後の共同記者会見において,ベネズエラ国軍はグアイド暫定大統領を支持し人道支援を受け入れるべきであると述べつつ,いかなる場面でも軍事介入オプションを拒否すると発言した。またカナダメディアによるインタビューの中で,グアイド暫定大統領により駐ペルー・ベネズエラ外交代表に任命されたカルロス・スクル氏をペルー政府が大使として接受したと述べた。なおポポリシオ外相は10日付当地紙によるインタビューでも同様の発言をしている。
イ スクル・駐ペルー・ベネズエラ外交代表による信任状捧呈
21日,ペルー外務省は,スクル(Carlos Scull)駐ペルー・ベネズエラ外交代表(representante diplomatico)がビスカラ大統領に対し信任状を捧呈したと発表した。ビスカラ大統領はスクル外交代表に対し,ベネズエラにおける自由で公正であり透明な大統領選挙の可能な限り早期の実施を通じて同国の民主主義が再建されるよう,ペルーとして変わらずコミットする旨再度表明した。
ウ デ・セラ外務副大臣の発言
26日,デ・セラ外務副大臣は当地紙のインタビューに対し,マドゥーロ政権により任命されたペルー駐在外交官に15日以内の国外退去を命じた旨述べた。またベネズエラに対する軍事介入の可能性につき,リマ・グループとして武力行使を拒否するとともに,今後外交・金融面の措置を強化すべきとの立場を表明した。
(2)ビスカラ大統領のポルトガル・スペイン歴訪
25~28日,ビスカラ大統領がポルトガル及びスペインを歴訪したところ,ペルー政府報道発表によれば概要以下のとおり。
ア ポルトガル訪問(25~26日)
レベロ・デ・ソウザ大統領及びコスタ首相と会談。今次訪問の機会に二国間航空運送協定及び両国の若者の就労ビザ取得に係る覚書に署名が行われた。
イ スペイン訪問(27~28日)
王室の歓迎式典,サンチェス首相との会談等に出席。また,スペイン国会でベネズエラ情勢,スペインからペルーへの投資,2021年ペルー独立200周年,汚職との闘い等をテーマに演説。
今次訪問の機会に,ペルー軍の災害対応能力向上のための訓練,組織犯罪・テロ関連犯罪対策に係る協力,両国の若者の就労目的での渡航を支援するための協定締結へ向けた意思表明等,7つの成果文書に署名が行われた。また,両国の戦略的パートナーシップ,二重課税防止協定締結交渉,ペルーのOECD加盟希望,イベロアメリカサミット,太平洋同盟,グアイド・ベネズエラ暫定大統領への支持等を内容とする共同宣言が発出された。
なお,当初ビスカラ大統領の外遊日程は3月3日までとなっていたが,最近の大雨によりペルー国内各地で死傷者が出る水害が発生しており,災害発生時に大統領が不在であることに対する批判の声がメディア及び野党を中心に上がったことから,同大統領はスペイン滞在を短縮して3月1日にペルーに帰国した。